白い部屋。白い服。部屋は見慣れないが、服は毎日のように見ていた。拘束衣なんて不自由なものを、どうしてあの女は愛用していたのだろうか。
 嗚呼、と寝起きの頭で考える。
 そうか。捕まったのか。
 スザクに、あの、嘗ての友人に――。



マリオネットの糸は紡がれた



 問答無用で殺されなかったことを意外に思った。しかもゼロという犯罪者を捕らえるにしては、妙に小奇麗な部屋。一体何がと思考していると、タイミングよく扉がノックされた。監視カメラでもどこかに取り付けられているのだろうか。
 猿轡が邪魔して返事も出来ない。無言で扉を睨みつけると、テレビで見慣れた兄が入ってきた。本国にいたはずの彼がここにいるということは、あれから何日経っているのだろうか。それともルルーシュはブリタニアに移送されたのか。

「久しぶりだね、ルルーシュ。まさか君がゼロだとは思わなかったよ?」

 真意の見えない笑みが気持ち悪い。
 一体こいつは何をしに来たのか。その思いを汲み取ったかのように、兄――シュナイゼルは笑みを深くした。

「弟の“功績”を称えに来てはいけないかな?」

 ルルーシュは瞬きをする。功績? 嫌味か、それとも何か含みがあるのか。
 クロヴィスを殺し、散々にブリタニア軍を翻弄し、ユーフェミアとコーネリアをも手にかけた。罪悪と断じられはしても褒められるようなことをした記憶はない。

「ユーフェミア発案の特区と同じだよ。愚かなイレブンを寄せ集めて殺す。うん、ご苦労様」

 ひゅっ、とルルーシュは不自由な口で息を呑んだ。
 不幸にも回転の速い彼の頭は、シュナイゼルの意図を正確に把握してしまったのだ。
 エリア11は反抗勢力がどの地域よりも大きかった。虱潰しに当たっていくには数が多すぎたのだ。だからその烏合の衆たるレジスタンスを纏め上げて崩壊させる、全てはエリア11を統制するためのシナリオだったのだと。
 クロヴィスはただの病死か何かだった。それを利用したシナリオだった。コーネリアとの数々の戦いは、単なる演技だった。――いくらでも言い訳は出来る。その力が、ブリタニアにはある。
 外側からではなく、内部から――奇しくも例の彼の言葉通りの行動をしてしまったことにされてしまうのか、勝手に。
 冗談じゃない。その彼の裡を知っているのだろう、悠々と彼は笑う。

「ところでナナリーが見当たらないんだけれど、どこに隠したんだい?」

 殺す気、か。
 彼女の存在は、そのシナリオでは邪魔にしかならない。母親をテロで亡くし妹もまた不自由となった、その彼の経緯はゼロが本当にブリタニアに反抗していたのだとの推測を呼ぶだろう。
 不幸中の幸いとでも言うべきなのだろうか。攫われたナナリーの行方が分からないのは気になるが、まだブリタニアの手に落ちていないなら最悪の事態というわけではないだろう。
 まあいいけれどね、とシュナイゼルは嘯く。車椅子の少女一人程度、簡単に見つけられると思っているのだろう。
 ギアスを使うべきか、取っておくべきか。ルルーシュは悩む。状況が殆ど分からない今、安易に使うのは危険だろうか。しかし今後シュナイゼルという強大な権力者と目を合わせる機会が訪れるかは分からない。そもそも彼には母親の死の真相を教えてもらわなければならないのだ。
 その葛藤をどう捕らえたのか、彼は不気味に優しくルルーシュの頭を撫でる。スザクに割られた額は手当てを受けたのか包帯が巻いてあった。やけに囚人に優しいじゃないか。

「大丈夫、世間にはちゃんと、ゼロは皇族だったって発表しておくから」

 気が落ち込むのが分かった。そうだろうとは思っていた。
 ただゼロを処刑するだけではなく、正体を露見させるということが含む意味は重い。
 正義の味方を称する彼らの人気は、今やナンバーズに留まらない。彼らに助けられたブリタニア人も多くいた。――その人気をそっくりそのまま頂くことが出来る。
 一般人の犠牲も多くあったが、黒の騎士団が意図して殺害した記録は一切無い。ナリタでのことは不幸な失敗であったのだと、遺族に補償すれば良いだけだ。
 それでも許せないと憤るブリタニア人がいたならば、全てをゼロの暴走として片付けてしまえば良い。このような些細なことでブリタニア皇族への心証が変わることはない。
 そう、それは、あのユーフェミアのように。

「おしまいだろうね、黒の騎士団は」

 もう彼らには立ち上がる気力さえも残されはしないだろう。ただゼロを失ったというだけならば、残された騎士団を利用する輩が現れないとも限らない。時間はかかるかもしれないが、ゼロの遺志の元に一つに集うこともできるだろう。
 しかしゼロが皇族だとすれば?
 騎士団の、ゼロへの信頼は塵と消える。利用されていたのかと、手のひらで踊らされていたのかと。ブリタニアとの戦いでいきなりどこかへ消えてしまった理由は、そういうことだったのかと。
 彼らは怒り狂うだろう。騎士団にブリタニアの手が入っていないかと疑心暗鬼になるだろう。実際に、騎士団にはそれなりに多くのブリタニア人が混じっているとの報告もあった。彼らはおそらくスパイと疑われて殺されるのだ。
 ゼロの居場所を公表したらどうなるだろう?
 復讐に燃える彼らは、間違いなくやってくる。そして、愚直になった人間ほど扱いやすいものはない。ゼロの手により巨大となった組織を、おそらく彼らは自らの力と勘違いしている。混乱の中統制できるはずもなく、そのまま自壊するか、ブリタニア軍に潰されるか。

「全てが終わったら、病死してもらうよ。だから、それまでは」



(そこで一人、絶望しているといい)







シュナイゼルって便利だなー小説書くのに。
性格の悪いことは全部やってくれそう

20080404








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