ここから始めていこう



 ああ、そうだ。あの時も。
 肩にかけられた彼の上着。その温度を感じながら、カレンは不意に泣きたくなった。
 クラブハウスのシャワー室。あそこでも、彼女はゼロと会話を交わした。
 あの日、カレンは未だゼロのことを不審に思っていた。まさかゼロの正体はルルーシュなのではないか、と。それは結局のところ正しかったわけだが、カレンは容易く騙されてしまったのだった。
 ルルーシュはルルーシュで、ゼロはゼロ。
 全くの別人なのだと、彼に借りた服を着ながらそう考えたものだった。
 そこから始まった黒の騎士団。彼は謎めいた男、ゼロとして。カレンは彼に寄り添うエースパイロットとして。
 冷静に思い起こすと、余りに歪んだ関係であったのだと思う。彼女はゼロに恋などしていなかった。ゼロは、日本を救ってくれる。あまりにカレンにとって都合の良い人間であったから。少なくとも、仮面で断絶された血の通わぬ関係などに信頼を寄せるのは間違っている。
 彼に向けたナイフは、本当は降ろしてはならなかったのだ。

 今日、やはりカレンはゼロのことを不審に思っていた。ゼロと同じように振舞うルルーシュはまるで悪夢のようだが、しかし今度はカレンを誤魔化そうとはしなかった。
 ゼロはゼロで、ルルーシュはルルーシュ。
 結論だけを見れば同じだが、ここには大きな差異がある。まるで別人のようだけれど、彼らは同一人物なのだ。
 これまでのカレンは全て彼女自身の意志で作られたものだと、そう諭す彼は――そうだ。嘗て、カレンに逃げ道を指し示したゼロと酷似している。カレンを道具としてしか見ていなかったのならば、あのような言葉は出てこなかった。
 彼に向けた銃口は、静かに降ろされた。

 あの運命の日。カレンはルルーシュから逃げた。スザクとゼロから、その責務全てから。
 そうして消えたルルーシュの身に起こった出来事をカレンは知らない。ただCCによれば何らかの処置を施されていたらしく、実際にカレンのことを綺麗に忘れていた様子を見せた。そこには彼女には窺い知れない悲劇が存在したのだろう。直後にスザクがラウンズに昇格したのを見て取ればそれは明らかだ。
 カレンは彼から逃げるべきではなかった。ゼロはルルーシュであったから仕方ないと自分に何度も言い聞かせたが、結局は現実を直視できなかっただけなのだ。騙されていた可哀想な私――それではブリタニアの暴挙をただただ甘受する日本人と同じではないか。
 だからカレンは奴隷になった。現実がなんであれ、日本を救えるのは彼しかいないのだ。そう理解すればカレン一人のちっぽけなプライドなどどうってことなかった。もちろん辛くはあったが希望があった。ゼロが戻ることを夢見てルルーシュを待ち望むその姿は、恋というに近かったかもしれない。
 ブリタニアに向けた矛先は、日本を取り戻すまでは降ろさない。

「ねえ」
「なんだ?」
「私たち、ここからが始まりね」

 ゼロとして指示を出すルルーシュが瞬く。
 しかし頭のいい彼はすぐにカレンの発言の意図を察し、シニカルに笑う。

「……どっちに言っている?」

 ゼロと、ルルーシュ。
 ここには一人しかいなかったが、二人いた。一体カレンはどちらと共に歩みたいのか?
 そう問う彼に、彼に負けないくらい意地の悪い笑みを浮かべる

「両方よ」

 彼が何もかもをさらけ出したあの瞬間、全ての事は白紙に戻った。
 カレンとルルーシュの会話は嘘ばかりだった。カレンとゼロの会話もまた然り。
 ならば、やり直せばいいのだ。壊れたって諦めなければ大丈夫。破壊された日本を修正しながら、二人の関係も一から始めよう。
 まだルルーシュを心から信じたわけではない。けれど、ゼロの正体がなんであれ、共に戦った日々が嘘になるわけではないのだ。

「これからよろしくね」
「こちらこそ」

 彼の制服はとても温かかったから、少しくらい体温を共有してもいいのだと。カレンはそっと微笑んだ。



(今度は共に立っていこう。もう、あなたを一人にはしないから)







カレンのおっぱいが相変わらずで安心した

20080414








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