連鎖
「やはり、君がゼロだったんだな」
つい先日まで無垢な子羊を装っていたはずのルルーシュは、不敵に笑ってスザクに相対した。肯定の言葉はないが、否定の言葉もない。その余裕あふれる姿に苛立ちを隠せず、彼はルルーシュに詰め寄る。
何故ユフィを殺した? 何故シャーリーを殺した? 何故無辜の人々を殺した、ゼロ。
一瞬だけ痛そうな顔をした彼の様子には気づかず――否、本当は気づいていた。でも気付かない振りをした。だってルルーシュは悪逆非道のゼロだ。冷酷非道でなければならない――スザクは捲し立てる。
「もっと他に方法があったはずだ」
内側から変えていく方法。ナンーバーズであるスザクでさえもラウンズ入りを果たしたのだ、不可能なことなどないはずだ。ラウンズ入りを認められた功績がどのようなことであったかも忘れて彼はルルーシュを責め立てる。
どうしてルルーシュがゼロなんだ。どうして自分の友人がゼロなんだ。どうしてゼロになったんだ。
「方法? 何もなかったさ、俺には。時間もな」
「だから、殺したというのか」
肯定はしない。しかしやはり、否定も。
ルルーシュのブリタニアへの憎しみは知っていた。ああ、きっと誰よりも近い場所で、彼の憎悪を実感していたのは自分のはずだった。学園で被られた薄っぺらい皮に騙されていた、なんて。
「何も殺さなくても! ユフィは君を信じていた。シャーリーは君のことが好きだった!」
「ああ、知っていたさ。けれどそんな優しさでは世界は変えられない」
「違う。君が変えようとしていないだけだ。近道しか見ていないからそう思うんだ」
「……その通りだな。だが俺はブリタニアを憎んでいる。なあスザク、許せというのか? 母を殺し、ナナリーの足と目を奪い、俺を捨て! この腐った国を、許せと!」
憎悪を晴らし、世界を変える。これが頭のいいルルーシュの考えた最適で最も効率のよい方法だったのだろう。
許せやしない。悲痛なまでの表情でそう叫ぶルルーシュに誰かの姿が重なって見えた。
「俺はブリタニアをぶっ壊す」
「君はっ……! 許せないんじゃない。許そうとしていないんだ」
「そうだ。許すつもりなんかない」
嗚呼――彼は自分だ。ルルーシュは己自身だ。
憎しみに心を囚われて他のことなど考えることすらできなくなっている。
その姿は、なんて。
ブリタニアを許さないルルーシュをスザクは許せなかったし、ルルーシュを許さないスザクを彼は許せない。この不幸な連鎖を断ち切れたかもしれないユフィとシャーリーを殺したルルーシュを、やはりスザクはどうしても許そうとは思えなくて。
なんて、滑稽なのだろうか。
(本当は、許したいのかもしれないのに?)
ルルーシュとの対話でシャーリーの言葉を実感するといいと思う。
まあルルーシュはブリタニアとか許しても退路がないっていうか最早ブリタニアぶっ壊す以外の道は断たれてるけども。
20070723