某茶会で書くよ！と勢いとノリで宣言しましたジェレルルの長編となります。
基本設定は
・ルルーシュ皇子設定
・ジェレミア騎士
とかそんな感じです。
捏造甚だしくなる予定です。
当り前の日常で
ブリタニア宮殿の片隅に、アリエスの離宮と呼ばれる場所がある。嘗ての女主人は七年も前にテロの凶弾に倒れ、今はその子供らが住んでいる。
妹の方は大した人間ではない。それがブリタニア皇族並びにそれに関係する者たちの評価だ。盲目で車椅子生活を送る少女。皇位継承権第八十七位、ナナリー・ヴィ・ブリタニアという名の彼女は公の場にも出ないために姿を見たこともない者が多い。
そして、彼女の兄は。
そもそも取るに足らないとされる彼女の存在が、それでも尚認知されているのには理由がある。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。皇位継承権は十七位と高くもないが低くもなく、実力さえあればブリタニアの中枢にまで登り詰めることが可能であろうという、微妙な立場。そして彼にはその実力があった。彼は一体何者なのか。その柳眉と冷酷無慈悲な手腕を持つルルーシュに興味を持つものは絶えない。
「殿下、こちらの書類は」
「それはまだ構わないだろう。向こうに置いておけ」
「はい。ではこちらは如何いたしましょう」
美しい庭園が臨める離宮の一室でに、カリカリとペンを走らせる音が響く。彼こそが第十一皇子、ルルーシュである。知略を得意とする彼は専ら机に向かうことの多い日々を過ごしていた。
この離宮に足を踏み入れる資格のあるものは少ない。警備兵を除けば件の妹姫と少数の皇族、そして一人の騎士。
「……それは俺の管轄じゃないだろうが」
「ええ、そのはずですが……。殿下でなければ処理できない、と」
「揃いも揃って無能ばかりか。そっちのは何だ？」
「例の伯爵令嬢からの手紙です」
「捨てろ」
肩をすくめて騎士――ジェレミア・ゴットバルトという名の名門出である――が手紙を、しかしそれでも一応は大切にケースに仕舞い込んだ。
勿論皇族たるルルーシュの方が身分は上であるが、社会的な立場はというとそうであるとは一概には言えない。母を失い後ろ盾のアッシュフォード家は辛うじて体裁を保っているというマイナスの状態から、その頭脳を以て今の地位を手に入れた。だがそれは敵を多く作ることをも意味していた。皇位を狙う者たちからは危険視されるが、彼を守るものは少ない。伯爵家のご令嬢を無碍にするのはどう考えても危険であろう。
そのジェレミアの行動を、ルルーシュがペンを止めて見咎める。
「どうせ下らないラブレターの類だ」
「下らないなどと。美しいご令嬢じゃないですか」
「興味がない」
もう十七歳になるというのに彼には浮ついた噂の一つもない。それは彼自身の鈍感さ故でもあったし、また心を許していない人間に対する警戒心の強さ故でもあった。
上記の理由により、せめてもう一人くらい騎士を、と進言したこともあった。しかし。
「それにアレの父親は俺を利用しようとしてる。政治の道具など、真っ平だ」
「しかしそう無碍に扱うこともないのでは。その、あの家は強力ですし」
「別に大丈夫だろう、お前一人いればな。守ってくれるんだろう？」
何度でも言う。他の人間に興味はない。
そうあっさりと言ってのけ再びペンを走らせた主君に、ジェレミアは目元を緩ませ決済済みの書類の整理を始めた。エリア11の平定。当然本来ならば彼の仕事ではなかったが、異母兄であるクロヴィスから泣き付かれ不承不承協力をしている。これ以上ルルーシュの仕事が増えることは好ましくはないが、上手くいけばサクラダイトに関する利権にも関われるかもしれないのだという。
彼の母、マリアンヌ妃を助けられなかった後悔から始まった関係だったが、今では本当の信頼関係を築けていると思っている。七年だ。マイナスからのスタートで、ここまで二人で登り詰めた。その誇りがジェレミアの胸を震わせる。そしてまた、それ以上の。
ふとした拍子に擡げる感情に頭を振る。自分は騎士であり、彼は皇族だ。そもそも二人とも男であるわけで。だからこの感情は間違っているのだと、気のせいに違いないのだと、そう思考に気を取られていると書類を取り落してしまった。
「何をやってるんだ」
「も、申し訳ありませんっ！」
苦笑するルルーシュを直視できない。気の強さのあらわれた容貌に浮かぶ、柔らかな眼差し。気の置けない相手にしか見せない表情を惜しげもなく晒してくれる。
更に挙動不審になったジェレミアに、ルルーシュが今度は声をあげて笑う。丁度いいタイミングで、お兄様、と声がかかる。三つの白いカップにダージリンの紅茶。
いつも通りの日常だった。
（終わる日など来ないと信じていた）
情報詰め込んだぜ！
20080722