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汝、悩むことを禁ぜよ




流れゆく街灯もまたイリュージョン。
等間隔のうす青いライトが一直線に道路を飾る。
公園から一般道に出ても、バイクのスピードはそんなに上がらない。
風に吹かれると水分を含んだ服から体温が余計に奪われるので、なるべくゆっくり走らせているようだ。庵の体調を気づかってというより、京が寒いからなのだろう。
京から渡されたフルフェイスメットをかぶる庵は、彼ほど冷気を感じていなかった。
途中、コンビニへ寄るかと京がきいてきた。
「さすがに下着は予備がないし、買ってくか。ついでに酒のつまみとかも…」
「いらん」
「夜に間食すると太るわよってママに言われてんのね、はいはい」
京がからかったのへ庵は唇の端をつりあげて笑っただけで答えなかった。もしかすると答えたのかもしれなかったが、風とメットに隔てられて京には聞こえなかった。
それまで腹にまわされていた庵の腕がするりと抜かれた感覚に、ミラーで背後を探る。
メットの下から赤い髪が露になり、メットのほうは後方へ落ちて行った。
アスファルトをノックする音がドップラー効果をともなって聞こえる。
はっとして京はタンデム席に怒鳴った。
「こ、こら、人が貸してやったメットを捨てやがって!
なんのつもりだよ!」
「煩わしかった」
「5分くらい我慢しろよ」
「できないな」
もとどおりに庵の腕が京の腹に強くしがみつく。
さっきよりも密着しようと、胸も腰も押しつけられた。
匂いをかぐように鼻先を首筋にすりつけ、…耳朶に舌をのばす。
「おわっ」
バイクがぐらりと揺れたが危険はなく、すぐに立ち直った。
京の動揺が素直にハンドルに伝わったのである。
二人とも風にあたって身体中冷えているせいか、庵の舌から移された熱は耳にこもり、存在を主張する。
「なにしてるんだよ、オイ」
「欲情した」
「だったら一人でカイてろよ」
「そうしよう」
しかし、手が這い回るのは京の股の間。くすぐるような動きに内股が引きつる。
膨らみを確認するように形をなぞる動作に、容易く記憶が甦る。
「待て、こら、庵…」
口は首筋に吸いついていて返事はなく、冷ややかな手は、ジッパーを降ろして硬くなりだした部分へと差し入れられた。
指が描いた経路が熱をもつ。
寒さを気にするどころではない。
アクセルをふかして、静かな道路に騒音をたてた。
「人が運転してるときにするんじゃねー!」



...fin.




WRITTEN BY 姉崎桂馬

モドル






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