08年12月08日発売の『少年ジャンプ』(09年01月08日号)掲載の
『第二百四十訓 友達がケガしたらすぐに病院へ』のネタバレのうえ、
次号以降のストーリー展開とは一致しません。予めご了承ください。 
以下の描写には、性的に非常に片寄った要素を含みます。
閲覧は、くれぐれも自己責任でお願い致します。 

いちしの花〜思うはあなた一人

奴を満足させてやれば……つまり、奴がこの世に生きた証を作り思い残すことが無いようにしてやれば、 成仏してくれるという。勝手なことを言うなと思った反面、そういえばあの憎たらしかった故・伊東鴨太郎だって、 似たようなことを常々言っていたなと思い出した。 僕が生きた証を残すのだ、僕という存在を世の人に知らしめるのだと…… 当時は単なる鼻持ちならない功名心や自己顕示欲の現われだろうと思い、反吐が出そうだったが。 だが、生きるということは案外、そういうものなのかもしれない。 自分だって「真選組」というものを護ることを生き甲斐としているのは、それを率いる近藤への思慕はもちろん、 この組織が自分の作品のようなものであり、それを支えることこそが己の存在価値だと思っているから、なのだろう。 もちろん、自分はそれを自覚したことなど殆ど無かったが。 『 だったら、美少女侍トモエちゃんと、でっ、デート……』 「二次元はよしてくれ。実現可能な方向で」 『じゃあ、ロリロリの美少女と……』 「俺に児ポ法および猥褻罪で捕まれとゆーのか? 犯罪も勘弁してくれ。真面目に実現させてやろうというんだからよ」 話し合った結果が、これだった。 テメェと同じ顔に抱かれるというのは、倒錯的というよりはどこか幼稚で滑稽なナルシシズムすら感じられたが、 自分に自分の身体を差し出すのだから、手軽なもんだ。 少なくとも幼女(あるいはロリ系の少女)を調達しようと犯罪に手を染めるよりは、よっぽどマシだし、 ヘタれたコイツなら大したこともできまいとたかをくくっていたのだが。少し考えが甘かったようだ。 自分自身なのだから、自分の弱いところも自分の感じるところも全て知り尽くしているのは当然なのだ。 そして、どう焦らされて、どうご褒美を与えられるのが好きか。あるいは他人に求めても得られなかったことすらも。 思うままに責め立てられ、奉仕を強いられるのも、それが自分の意思が奴の意思か、曖昧になって溶けあっていく。 いや、元は同じ存在だったのだから、還っていくとでもいうべきか。指を絡めあう感触ですら、甘美に感じられた。 何度目か分からない吐精に、一瞬、気を失っていたようだ。 『起きるでござるよ、土方氏』 ひたひたと頬を叩かれて目を覚ます。 『気がついたかい、土方氏?』 そう尋ねながら重ねてくる唇はほんのり甘く、そこだけは自分とは思えず、むしろ別の誰かを思い出させるような…… そうか、コイツは煙草を吸わねぇからな。 「トッシー、テメェもそろそろ満足したんじゃねぇのか? 美少女じゃなくて申し訳ねぇが、 並みの女よかよっぽどイイってのは、テメェだって俺自身なんだから、知ってるだろよ」 『そうだね、少し休憩しようか』 「休憩? まだヤる気か。おたく化して旺盛になったのは結構だが、テメェだって十九二十歳じゃあんめぇし、 身体がおっつかねぇぜ」 枕元の煙草盆を引き寄せ、紙巻煙草を1本抜き取る。愛用のマヨライターは盆の小さな抽斗の中だ。 火をつけて深々と吸い込むと、クラッと眩暈がした。時計は寅の刻を指している。 もちろん、真夜中の、だ。どれだけ長い時間番っていたのだろう。 「ああ、悪い、俺だけ吸ってて……オメェはコーヒーでも飲むか? 知ってると思うが、 そこの文机に小銭入れがあるから、食堂か屯所前の自販機で好きなの買って……」 振り向いた口がぽかんと開いた。 唇から煙草がぽろりと落ち、畳の上を転がって焦がす。また焼け焦げ作って…… とザキあたりに文句を言われるだろうが、とてもそれどころではなかった。 「おい、それ、何の真似だ? 飲むようには見えねぇんだが」 奴は牛乳パックを手にしていた。それだけなら「コイツ、コーヒーも飲めねぇのか。どこまでヘタれやがったんだ」 と思って終わりだったろうが、コップの代わりにあるのは、洗面器と注射器のようなアヤシゲな物体だ。 飲むのでなければ、どのような用途が……と想像すると、血の気が引いた。 『満足するまで、付き合ってくれるという約束じゃないか? もっと他に試したいプレイがたくさんあるんだ』 トッシーの唇の端が、妖しく吊り上がった。 「キツネ憑きとか、化け猫の類いでは無いと思いますよ」 拝み屋の女は、屯所に一歩足を踏み入れた途端に、そう断言してみせた。 いつからそのような症状に陥っていたのだろうか。朝になっても土方が起きてこないと山崎が部屋を訪れたところ、 苦しげにうなされ続けているうえに、いくら揺さぶっても目を覚まさないのだ。 当初は、沖田が呪いでもかけたのだろうと思われたが、当の本人に確認すると「昨日は何もしていない」とのこと。 「だったら、何かの病気とか?」 「アタマの病でしたら、幸いでさぁ。傷病により職務執務不能ということで、俺に副長の座を譲り渡してくだせえ」 「総悟っ! やっぱりオマエかっ!」 「違いまさぁ! それだったらいっそ、こんな中途半端に寝かせておくなんてことしねぇで、 さっぱり息の根止めておきまさぁ!」 「キツネ憑きか何か、ですかね?」 どんなに凶悪な攘夷志士だろうとテロリストだろうと、あるいは地球外の生物であろうと、 怯むことのない武装警察集団である真選組だが、刀で斬り捨てることのできない魑魅魍魎の類いはどうにも不得手だ。 そこで、山崎が腕がいいと評判の拝み屋を見つけてきたという次第。 「そんなすぐに分かるものなんですか?」 「ここを覆っている気が感じられます。確かに強い気ですが、これは動物霊ではありませんね。 しかし、少なくとも死霊ではない。生霊に近い感触ですが……それにしては妙です」 死霊ではない、という言葉にそれまで顔を引きつらせていた隊士らはホッと胸を撫で下ろす。 いくら職務上必要であったとはいえ、罪人や攘夷志士を切り捨ててしまうことが多々ある彼らにしてみれば、 身に覚えがあり過ぎるだけに死霊は薄気味悪いのだ。 「妙、と申されますと?」 「生霊ということは、どこかに魂魄が離れた肉体の気配のようなものが、セットで感じられる筈なのですが…… ここで感じられるものには、それが無いのです」 それまで自信満々だった拝み屋の表情が、ここまで説明して翳り始めた。 「おい、山崎。この女、大丈夫か?」 「はぁ、一応、江戸でも屈指の霊能力者というフレコミですから、この間の蚊の天人の時のように “実は万事屋の旦那でした”というオチにはならない筈ですが」 拝み屋は屯所の廊下を、まるで目的である副長室を予め知っているかのように、ずかずかと歩く。 近藤や山崎らの方がむしろ、案内されているかのように後からついて歩いていた。それが途中で立ち止まる。 「ここから先は、あまり大人数でない方がいい」 「あ、そうですね」 拝み屋の呟きに、山崎がなぜか慌てた口調で同調してみせた。 「なんでですかイ。俺も土方さんが得体の知れねぇモンに取り憑かれて悶絶している姿を、 是非とも見せて欲しいもんでさぁ。さぞや爆笑もんでやんしょ」 「そうだぞ。俺だってトシが心配だ」 「ダメなんです、ダメったらダメです! 局長も沖田隊長もここまで! あとは、俺が案内しますから!」 「んだと、ザキ、テメェ、地味の分際で」 沖田と山崎とで掴みあいになりかけるが、拝み屋は誰がリーダー格かを見分けたのだろう、 呆然と突っ立っている近藤の手を握ると「頼みます」と囁いてみせた。 女性の手などめったに握ったことがない近藤は、たとえお世辞にも美人とはいえない拝み屋相手といえども、 みるみる耳まで赤くする。果たして「わ、わっかりました!」と叫ぶと、なおも暴れていた沖田をやおら抱えあげ 「あとは、よろしく頼みますっ!」と一礼したのであった。 人払いを済ませると、拝み屋はおもむろに副長室のふすまを開ける。室内からは、汗と雄の匂いの入り混じった悪臭が、 熱気と共に流れ出してきた。その臭気に鼻を覆った拝み屋は「色霊?」と呟いたが、 少しく考えて「いや、違うな」と首をかしげた。 「色霊?」 「ああ、この世に未練を残したものが霊となるわけですが、その中でも色欲に未練を残したものを、そう呼んでいます」 「だったら、それなんじゃないですか? 実は副長は、その……ただうなされている訳じゃなくて、 誰かに犯されているかのような、そんな感じなんです」 山崎が他の人を寄せ付けまいとした理由は、そこであった。 今も、土方は布団の上でひとりのたうち、呻き、喘ぎ声を上げ続けている。 見様によれば、透明人間と交わっているかのようだ。 よく考えたら、いくら凄腕の拝み屋とはいえ、女性にそんな状態の男を見せるのは失礼だったかもしれない、 これは失態、山崎一生の不覚。 だが、拝み屋はそのような症例は見慣れているのか、眉根ひとつ動かさなかった。 「このようなケースは私も初めてですが……どのような霊であれ、除霊の仕方は似通っています。 その霊が望むことを叶えて、この世への未練を昇華してやること」 「はぁ」 「ただ、気をつけなければいけないのは、彼らが口に出す望みと、本当に望んでいることは必ずしも一致しない、 ということです。いや、生きた人間だって己の本当の望みに気付いているものは少ない。 その心の闇を解きほぐし、探り出すのが我々の腕の見せ所……といいたいところですが」 拝み屋が土方に歩み寄り、その汗だくの額に触れる。しかし、頬が紅潮している割には体温はゾッとするほど低く、 屍骸の感触を思わせた。その掌と土方の肌の間に、パチッと小さな火花が飛ぶ。 「この魂は、私の介入を拒んでいるらしい。むしろ、君の方がうまくやれるでしょう」 「え? 俺、霊感なんて無いっすよ?」 「霊感なんて必要ないですよ。必要なのは……そうですね。強いて言えば、思いやり、気遣い、やさしさ…… そんな学級目標みたいなものかしら」 そういうと、拝み屋は土方の側から離れて、部屋を出る。すれ違いざまに山崎の肩をポンと叩いた。 「除霊がセルフになった分、料金はまけておきますよ」 ****** 「試したいプレイ……だと?」 土方の引きつった声が響き渡った。洞窟? さっきまで自室に居たと思っていたのに。いや、ここはどこでもない。 意識の底にある仮想の世界の筈だが、いくら『これは夢だ』と分かっていても、目を覚まして逃げることができないのは、 どうしてだろう。 浣腸用の注射器など、土方も見たことはなかったが、アイツが手にしてるシロモノは多分そうなのだろう、 ということは見当がついた。自分が深層意識でそんなものに興味があったとは、到底思われない。 だが、トッシーはさも嬉しそうにビニール手袋を嵌めると、その巨大な注射器に牛乳を吸い込んで準備を始める。 全裸に手袋というそのマニアックなところに萌えがあるとか……いや、違うな。靴下は聞いたことあるが、 ビニール手袋は無い。というか『全裸に靴下姿』に萌えるような特性も自分には無かった筈だが……ぼんやりと布団…… いや、それは地下牢に敷き述べられていた筵だ……その上に寝そべって、そんなことを考えていた土方は、 膝を掴まれ押し広げられる感触に、我に返った。 「ちょっ、てめっ、マジでそんな悪趣味なことすんのかっ!」 ちょっと前までトッシー自身を受け入れて、熱く蕩けていた部分に、冷たく硬い感触を感じる。 ゾクッと肌が粟立ち、それだけで声が出そうになった。 「悪趣味? そう、非常に悪趣味でござるよ。土方氏。君はいつも愛され求められる存在で、 妖しくも美しくあり続けることを無意識に己に課している。菊座を抉られ、男根をねじ込まれ、乳首に吸い付かれて、 女のように善がり狂っている、そんな醜く無様な姿を晒して軽蔑されることを恐れ、 見捨てられることを怖がり、己の魅力を失うことに怯えている」 その間にも、トッシーは注射器のピストンをじわじわと押している。内側に冷たい液体が雪崩れ込む感触は、 熱い精液が粘膜を刺激する感触よりも鋭く、その質量は快楽よりもむしろ、別の苦痛を誘った。 注ぎ込まれたものが腹の中をぐるぐると駆け回り、たちまち脂汗が滲んだ。 「ダメだ、こんなん……で、出ちま……うっ!」 「出すでござるよ。そのためにしているのだから」 「そんなっ、無理だっ! そんな姿っ……!」 「大丈夫、僕はあなた自身だから、軽蔑されることも見捨てられることもない」 それを聞いた土方は、どこか頭の奥で吹っ切れたのを感じていた。 ああ、そうだ。コイツは俺自身だから、俺を捨てない……だが、自分はコイツを、 トッシーを消し去ろうとしていたのではないか?  だから同様に、コイツも俺を破壊して精神の主座から引きずり下ろし、 肉体を乗っ取ろうとしていないと、なぜ言い切れる?  ふと沸き上がった懐疑心を察したのか、トッシーの表情は陰りを帯びた。 「どこまでも人を信用しないのでござるね。その用心深さこそが君の野生動物のような勘を育み、 頼るものもない流浪時代や日々白刃の下をかいくぐる激務を支えてきたのでござろうが…… そのために何人に愛されても、心のどこかでは完全に受け入れることができず、常にそれを失うことばかり考えて」 腹の痛みに圧倒されて、ともすればトッシーのその呟きが意味をなさない呪文のようにすら聞こえ始める。 朦朧とし始めた意識の中で、粗い筵に爪を立てて必死に己を保ちながら 「し、知ったような口をきくじゃねぇか、テメェ」と罵った。 いや、罵ることで己を奮い立たせていた、というべきか。 「知っているさ、君自身だからね」 つぷりと、太い注射器が抜かれるが、解放されるはずだった穴はトッシーの細い指で塞がれた。 「もう少し待って。もう1パックは入ると思うし」 「ちょ、そんな大量に無理だっ!」 顎を引いて己の下腹を見下ろすと、ぷっくりと妊婦か何かのように膨れている。 まさかそこまで大量に注ぎ込まれているとは思わなかったので慌て、肩を揺すって背中でいざって逃げようとするが、 トッシーは長い脚を伸ばすと、土方の胸元を踏み付けるようにしてそれを拒んだ。 「付き合ってくれるんだろう?」 二本目を用意すると、指を抜く。プシッと中身が僅かに吹き出しかけたが、トッシーは躊躇せずにガラス管を押し込んだ。 「ねぇ、どうして自分の中に、オタクな人格が生まれたのか、考えてみたことがある?」 「んだよ、そりゃあ、あの妖刀が、オタクの呪いを……」 「そもそもオカシイと思わないかい? 僕が、君自身であるということが。 妖刀に宿っていたはずのオタク本人の人格がここには居ないということが。つまり、 君は本来そのような要素を持っていたんだ」 「んなわけがっ……!」 怒鳴り返そうとする声が、震えた。さすがに腹の痛みで意識が途切れそうになる。だが、気絶することもできなかった。 ピストンを押し込みながら、時折、トッシーが我が子を宿した女を愛撫するかのように、 変型していく腹を撫でる仕草もブッ飛ばしたいぐらいにムカついたが、それを実行する余力が無い。 二次元だったら、愛しても裏切られることがないと、そう思ったことは無かった?  仮想の世界で、疑似恋愛を楽しむ近藤さんが羨ましいと思ったことは無かった?  生ぐさく、時に醜い肉欲を絆に契る現実の恋愛に疲れて、どこかに逃げ場を探してなかった? そして、君……いや、僕は気付くでござるよ。 例え現実には結ばれないと分かっていても遠い世界の存在を愛さずには居られない彼らの熱意、 キモイウザイヘタレと罵られながらも立ち向かって行く彼らの強さ、そんな彼らの姿を目の当たりにして、 逃げの姿勢でオタクの道に踏み込んだ己を恥じ、ただでさえ社会的地位が認められぬオタクの中でも、 さらに下層を彷徨うことになるのか、と。 「でも、僕はこのままで終わりたくはなかったでござる。最後まで逃げた挙げ句に、 そのまま何も成さずに消えてしまうなんて真っ平だ、と。 僕も何かを掴み取りたいと、地べたを這いずり回り、血反吐を吐いて、この身が泥にまみれても、何かを……だからまず、 僕は心身共に穢れてみたいと思った。土方十四郎という男を汚してやりたいと思った」 だが、そのトッシーの呟きは、とうに土方の耳には届いていなかった。 苦痛に表情は歪み、汗はべっとりと全身を濡らし、限界が近いのか、びくびくと脚の先が痙攣している。 「頼む、もう勘弁してくれ、出させてくれ」 「出したい? 鬼の副長さんが、人前でウンコしてみたい?」 「なっ……んなことできるわけがっ!」 「まだそんなことを言う余裕があるんだねぇ」 ピストンを最後まで押し込むと、さらに奥へと流し込むように、注射器をぐりぐりと押し付ける。 だが、そこで勘弁してやる気にはなれなかったのか、お道具入れにしている洗面器から、 赤ん坊のおしゃぶりのような形の器具を取り出した。 「んだよ、それ」 「もうちょっと我慢した方が、後でたくさんキモチイイでござるよ」 土方の説明には直接答えず、トッシーはそれを菊座に押し当てた。注射器を抜き、 その感触に『これで終わりだ』と気がゆるんだところで、手早くそれに差し換える。 「やっ……めっ……外し、て……出さ、せ……てくれっ!」 「ダメ。まだ楽になんか、してあげない」 アナルプラグが抜けないか、リングに指をかけた状態で、ぐりぐりとそれを押し付けたりかき回したりしていたトッシーだが、 やがてしっかり嵌まっていることを確信できたのか、ゆっくりと手を離した。 「こんなオナカ恋人に見られたら、きっと嫌われちゃうねぇ」と揶揄するように呟きながら、 膨らんだ腹をぺたぺたと軽く叩くと、苦痛の呻きがあがる。 「ねぇ、こんなことされて、まだこんなに硬くなってるでござるよ。土方氏、もしかしてこのプレイに興奮してる?  そんな性癖があるって知れたら、皆に嫌われちゃうねぇ」 ふと、気付いたように屹立しているものを握り込む。土方は思わず悲鳴をあげたが、その部分への刺激を欲していたせいか、 その声にはうっすらと艶めいたものが混じっていた。トッシーは熱いその男根を少しく摩り上げていたが 「これでは、僕じゃなくて君を満足させてあげているみたいでござるね」と、つまらなそうに呟いた。 「ねぇ、次はこれ、イイ?」 トッシーが続いて取り出したのは、細いゴム管のようなものであった。先になにやら小さなポンプ状のものがついている。 「んだよ、それ……どこに何しよーってんだ?」 下腹部の感覚に半ば朦朧としていた土方だったが、その異様な器具に片頬を引きつらせた。 一瞬、そのゴム管で根元を縛るのかと想像したが、トッシーが小瓶を傾けてトロリとした透明の液体を垂らし、 その先端に塗り付けるのを見て、そうではないと気付いた。 「おい、テメェ、なんのつもりだ!」 「暴れると、痛いかもよ?」 片手に男根を握ると、露を吹き零している先端にゴム管を押し当てる。 「やっ、そんなとこっ……無理ッ!」 こうして間近で眺めると、そこは人体の一部というよりは別個の生き物のように見えた。怯えたように震えているのが、 余計に小動物のように思わせるのかもしれない。ビュクビュクと体液を吐き続けるその黒々した『口』に、 直径数ミリはある管が思ったよりもすんなりと飲み込まれていく。 「うぁっ、や……めっ……助けっ」 思いがけない部分が押し広げられて感じる異物感に、土方は腹の痛みも忘れそうになった。 射精感が掘り起こされるような、もどかしい感触。 「すっごい。こんなに深く入っちゃったでござるよ」 “こんなに”というのがどれだけの長さなのか、土方には自覚もできない。 ただ、その先端が最奥と思われる部分に達しコツコツと突く頃には、腰の奥から別の感覚も込み上げて来た。 さらにトッシーがそれを弄って、刺激を加えてくる。 「やっ、ちょ……で、出ちま……」 慌てて腰を引いて逃げようとするが、本人の意志とはまるで関係なく、湯のようなモノが吐き出された。 大腸が限界まで膨らんでいたのだから、必然的に膀胱も圧迫されていたのだろう。 排泄することで少しだけ腹が楽になった気がするが、それと同時に垂れ流してしまったことを自覚せざるを得ない。 「気持ち良かった? でも、こんなふうにお漏らししてる姿を沖田氏に見られたら、軽蔑されるでござるねぇ。 坂田氏はオトナだから、口先では『気にするな』って言ってくれるかもしれないけど、 目は嘲笑ってるに違いないでござるよ。次の日から何食わぬ顔をして会うなんて、絶対にできない」 「くっ、い、言わないでくれ」 「山崎氏なら平気かもしれないでござるね。でも、さすがの山崎氏も、これはどうかな?」 トッシーが、土方の脚を抱え、腰を高い位置に持ち上げた。腹が大きく揺さぶられ、慣れ始めていた痛みがぶり返す。 苦悶に歪む顔を見下ろしながら、トッシーは菊座に生えている輪に指をかけた。二、三度左右に揺さぶってから、 一気にズボリと引き抜く。 「あ、ああっ、あああ……や、だぁ……!」 ようやく出口を見つけたとばかりにそこに殺到するのを、意志の力で止めることができよう筈もなかった。 真っ白い液が噴水のように吹き上げて大きく弧を描き、地面だけでなく、 そこに倒れている土方自身の顔にまで飛沫が叩きつけられた。 「あ、あ、ああ……あ」 とめどなく排泄し続ける土方は、惚けたような表情だった。それはようやく苦痛から解放されるという安堵ばかりではない。 むしろ、意識を封じでもしないと、この屈辱的な状況に精神が耐えられないのだろう。 「ちぇ。案外、キレイなもんなんだな。これだったら無花果浣腸とかの方が、もっとドロッドロになって良かったかな」 勝手なことを言いながら、トッシーが手を離す。 土方は地面に倒れ込むと、丸太のように転がってうつぶせになる。飲み込まされたものはほとんど吐き出されたが、 まだ中身が残っているのか、それとも内臓を傷つけたのか、下腹が波を打つように痙攣している。 倒れた際、硬い地面に腰をしたたかに打ち付けた筈だが、打撲の痛みに構っている余裕もなかった。 両手でその腹を抱え込んで土方が唸っていると、やがてトロトロと残滓がひり出され、太股を伝って流れ落ちた。 土方がようやく落ち着いた頃には、周囲は牛乳と糞尿と精液の入り混じった悪臭で、吐き気がこみ上げるほどになっていた。 いよいよ耐え切れずに、土方は褥にしていた筵から這い出すと、地面に向けて口を大きく開いた。 たちまちくぐもった音が胃の底から押し出される。 「ちくしょう……テメェこれで満足か、コラァ」 吐瀉物混じりの唾液を、手の甲で拭いながら呟いた。 だが、いつもの土方ならそこで振り向いて相手をにらみつけるところだが、その気力は無く、代わりに涙がこみ上げていた。 立て続けに施された屈辱的な行為の連続に、自尊心はとうに砕け散っていたのだ。 これは自分自身だから、他人じゃないから、だからいくら恥ずかしい姿を見られてもいいのだから…… その一点だけが、心の支えであった。それが無かったら、とうに舌を噛んでいる。 「そうだね。満足なんだと思うでござるよ」 背中越しに聞いたトッシーの声は、なぜか嗚咽交じりであった。 「土方氏が僕のためにできることは、これが精一杯だと思うから」 なんでコイツが泣くのか分からない。泣きたいのはこんな目に遭わされた、こっちだ…… そう思うとついカッとして、土方は振り向きざま、トッシーの肩を掴んでいた。 「土方氏が、僕のために“現実に”何かしてくれることなんて、期待していないから…… だから、僕はこれで満足しなきゃいけないのでござる」 殴ろうと振り上げた拳が止まった。 いや、逃がすまいと掴んでいた肩の感触も、どこか頼りなく希薄になっていく。 あっと思う間もなく、指は肩を突き破り、その質感はみるみる失われて、トッシーの姿は半透明の、 まるでホログラムのようになってしまった。 「オイ、成仏しようってのか? ひとをさんざっぱら酷い目にあわせておいて、本当の望みは違いましただと?  ふざけんな、これがオマエの望みだっていうから、最後まで付き合ってやったんだ。なんの代償か知らねぇが、 そんな理由でこの仕打ちは割にあわねぇ!」 「忘れたのかい? 君は僕を外の世界に出すことを恥じ、僕の存在を消そうとしたんだ」 トッシーの姿が徐々に薄れていく。 「消えるな! 消えるんじゃねぇ! 戻って来い! 戻ってくるんだ!」 叫びながら、手を差し伸べる。その手が……握り返された。 「副長? 目を覚まされましたか?」 一瞬、土方は何がどうなっているのか理解できなかった。 目の前で自分の手を握っているのは、トッシーではなく山崎だった。そしてここは、あの暗い洞窟の底の牢などではなく、 自分の部屋で。それでもなお、夢の続きのような気がした理由は。 「うわっ、くせっ! なんだこの匂いっ! くせぇっ!」 反吐が出そうな、排泄物の匂いが立ちこめている。 「臭いって、アンタのじゃないですかっ! だから今、布団捨てに行くところだったんですよ!  なのに、戻って来いなんて、唐突に喚くから!」 「アンタのって……え、俺の?」 「お体拭って、寝巻きと布団、替えてありますから、ご心配なく」 山崎はしれっというと手を離して立ち上がり「匂い、やっぱり漏れてます?  なんか鼻が慣れてバカになってきちゃって」とぶつぶつ言いながら、部屋の隅においていたゴミ袋の口を縛り直した。 「まさかとは思うが……それ、俺が寝てる間に垂れたってことか?」 「えーと、そうですね。簡単に言えば」 「で、オマエは、それを見てた?」 「ええまぁ……思いやりとか言っても、具体的に何していいか分からなくて。とりあえず、傍についていたものだから」 自分自身だから、他人じゃないからと思っていたからこそ、耐えられたのに。 土方の頬がカッと紅潮した。起き上がるや床の間の刀掛けに駆け寄り、太刀を掴む。 「テメェを殺して、俺も死ぬっ!」 「ちょっ、落ち着いてくださいっ! そんな、排泄シーン見られたぐらいで」 「ぐらい、じゃねぇ! 万死に値するじゃねぇか! そんな姿見られるだなんて……っ!」 そこで、全身の力が抜けてしまった。自分自身だからこそ、軽蔑されることも見捨てられることもないと思っていたのに…… 最後に一本だけ残っていた命綱のようなものがふっつりと切れ、両手で顔を覆う。その体がふわりと温かいものに包まれた。 「別に、俺はなんとも思いませんよ? そりゃ確かに、ちょっとはビックリしましたけど…… 考えてみりゃ、アンタが酔ってゲロ吐いてるのを始末したことだってありますし、 将来、副長が寝たきり老人になったら、俺がオムツの介護してやりたいし、その……」 「だからって、だからってこれはねぇだろ。さすがに引くだろ」 喚く声が詰まったかと思うと、しゃくりあげていた。まさか鬼の副長が泣き出すとは思っていなかった山崎であったが、 ここまでくるとさすがに「毒食らわば皿まで」と居直った。 軽く背中を撫でてやりながら、耳元に甘い口調で囁く。 「引きませんよ。こんぐらいでドン引くような奴、副長を愛してないんです。 俺は副長のものだったら、ウンコでも平気です。むしろアナタのウンコだったら、九皿は食えます」 「は?」 パッと見上げた土方の長い睫毛には、大粒の雫が宿っていた。その宝石のような水滴が、 やがてぽろんと転げて頬を伝っていく。 「食えるって……いやいや、無茶するな」 「無茶じゃないです。愛してるっていうことは、醜いところも汚いところも、全てひっくるめて受け入れてこそ、 なんだと思うんです。だから、副長のウンコも俺にとっては愛しいものなんです」 「ちょ、この感覚はなんだろう……すっげぇ愛の告白をされてる筈なのに、殺してぇぐれぇにムカつくのは、 どうしてなんだろう」 ただ、その正視に耐えられない姿を目撃していながら、それでもなお、 彼が甲斐甲斐しく身支度を整えてやり、こうして抱きしめてくれているのは、現実なのだ。 「ムカつきますか? でも、副長への愛の深さは俺が一番だと思いますよ。 少なくとも、ウンコ食えるって断言できるの、俺ぐらいだと思いますもん」 「オマエ、スカトロ趣味があったのか」 「ありません。副長の、だからです。てゆーか、副長の以外は嫌です。ダメ、絶対」 「意気込みは認めるが、そんだけ熱烈に愛してくれても、俺ァ、オメェのウンコは食えそうにねぇぞ。 せいぜい……そうだなぁ、ケツの穴舐めてやるぐれぇが限界か?」 「舐めてくれるんですか!? え、それなんて前立腺プレイ!? ちょ、お願いしますよ!  副長があんあん啼きながら悶えてるのをずっとお預け状態で指くわえて眺めてた俺を、ねぎらってくださいよ!」 なにげなく土方が呟いた言葉に、異様に興奮した山崎が、勢いよく土方を押し倒す。 「ちょっ、てめっ、調子に乗るんじゃねぇっ!」 蹴り飛ばした股間は硬くなっていた。その手応え(足応え?)に、 蹴った土方自身が『相当痛かったろう』と申し訳なく思ったほどだ。 山崎は顔面蒼白になってブチ倒れ、土方はにじり寄って「オーイ、大丈夫か? タマぁ上がっちまったか?」と呼び掛ける。 脂汗を浮かべてそれに返事をすることもできないらしいのを見てとると、土方はその腰をぽんぽんと叩いてやった。 「そういえば、戻って来いって……俺を呼んだ訳じゃなかったんですよね。いったい、誰の霊だったんですか?」 痛みが治まって、ようやく落ち着いた山崎がまず尋ねたのは、そんなことであった。蹴り飛ばされて勃起が収まり、 冷静な判断力が戻ってきたらしい。 「霊というか……トッシーだよ。あの、ヘタレたオタクの。てゆーか、あの布団早く捨てて来い。くせぇ」 「だから、アナタのだってゆーのに」 文句を言いながらも、山崎はよいしょと立ち上がり、そのゴミ袋を抱え上げた。 「じゃ、戻ってきたら聞かせてください」 ひとり副長室に残された土方は、部屋の中央にあぐらをかいて「トッシー、聞いているか?」と声に出して呟いてみた。 「外の世界も、他の連中も存外、捨てたもんじゃねぇみてぇだぜ?」 少なくとも、俺が失うかも知れないと恐れていたよりは。 おもむろに、土方が煙草盆を引き寄せた。いつもの仕草で一本抜き出し、ライターで火をつける。 深く吸い込んで吐き出すと、たゆたうその紫煙の向こうに『彼』の気配が、確かに感じられた。 「副長が元に戻ったって?」 障子の向こうで喚く声が聞こえた。それと共に、ドタドタと大勢の足音。 「ちょ、テメェら!?」 「トシぃいいいいいい! 良かった、目ぇ覚ましてくれて! オメェが無事ならウンコでも構わねぇよ!」 「副長ぉおおお! よくぞ、ご無事で!」 「俺は構いますぜイ。ウンコたれなんて、真っ平ごめんでさぁ」 「そんなことを言うもんじゃありません、総悟! オメェはまだ若いから理解できねぇかもしれねぇがな、 人を愛するということは奥が深くてだな! 俺はお妙さんのものなら、ウンコでもダークマターでも食えるっ!」 わっと取り囲まれ、口々に勝手なことを口走っているのを聞いているうちに、土方の顔色がスゥッと蒼白になり、 やがて一気に耳まで紅潮する。 「やっ、やぁまぁざぁきぃいいいいいっ! テメ貴様、しゃべりやがったなぁああああ!」 「だっ、だぁって! あんなでっかいもん捨てようとしたら目立ちますもん! しかも匂いますもん!」 「うるせぇっ! そんなもんバレないように処分してこその監察筆頭だろうがぁ!」 「無茶言わないでくださいよぉ!」 人の群れを掻き分けて、山崎の小柄な身体を掴むと、八つ当たりがてらぶん殴ろうと拳を振り上げる。 その腕を、近藤がやんわりと掴んだ。 「まぁ、トシ。俺も我慢しきれずにワントラップかけたことぐらいある。生理現象なんだ、気にするな」 「アンタと一緒にすんなっ! つーか気にするわ!」 「でも、オメェだってウンコたれた俺を変わらずに慕って支えてくれているだろう。 ウンコぐらいで引くような浅い友情じゃねぇんだよ、俺たちは」 「ちょ、アンタ今、感動的なこと言ってるつもりかもしれないけど、内容ウンコだからな」 「ウンコのひとつも愛せずして、恋のハンターを名乗る資格などないのだよ」 「いや、ウンコだから。別にウンコ愛さなくても人を愛することはできるから」 「ウンコをしない人間など居ない。そうじゃないか!」 「いや、実際にそうだが、なんでそんなにウンコに固執してるんだよ。なにそのウンコへのこだわり!  いいから、分かったからウンコの話題から離れてくれ、近藤さん。頼むから。スコッティひと箱やるから」 なんだかもう、ばかばかしくなってしまって、土方は泣き笑いのような表情を浮かべるしかなかった。 あんなに、嫌われたらどうしようとか、軽蔑されるのではないかとか、そんな張り詰めた中で、痛みと恥辱に塗れて…… そんな触れれば壊れそうな精神世界とは違って、現実はかくもタフでしたたかなものなのか。 だったら、叶えてやれるかもしれない。 土方十四郎という、今まで自分が築き上げてきた己のイメージを破壊することになろうとも、 魂ある限り付き合ってくれる仲間たちと……恋人が居るのならば。 そしてそれは、俺が掴みたいものとどこかで繋がっているのだと、今ならば理解してやれる。 「トッシーはオタクの頂点に立ち、己の存在を世に知らしめたいと思っていたんだ」 土方は、ゆっくりと区切るようにしながら、そう説明し始めた。 「地に落ち、汚泥に塗れて、そこから這い上がって掴み取るそれは、修羅の道になるだろう。 今までの俺の存在、俺の姿、俺の在り方、それに一片の甘い幻想でも抱いていた奴には、理解してもらえないかもしれない。 それで俺に幻滅して立ち去るものが居れば、立ち去ってくれていい」 「大丈夫だ、トシ。ここに居る皆はおめぇのウンコだって……」 「ウンコの話題はやめてくれというんだ……ええと、なんだっけ、ともかく俺の覇道について来てくれるか?」 「へーい。この際、土方ウンコヤローでもついて行きまさぁ」 「だから、ウンコはもういいっ!」 それから『トッシーオタク道計画』を話し合って一同は解散したのだが、沖田と山崎は副長室に残っていた。 正確に言うと沖田が室内に、山崎は沖田が帰るのを待って、縁側の廊下に控えている形だ。 「なぁ、土方さん。トッシーがおとなしくなったんだったら、それでいいじゃねぇですかイ。 なんだって、そこまでして、そいつの願いを叶えてやんなきゃいけねぇんですか?」 不満そうにそうぶちまけ、甘えかかろうとする。 「別に今さら、どんな痴態晒そうと、俺がアンタを捨てるわきゃあねぇんだから。 スカトロプレイがしてみたかったんだったら、今度、注射器用意しておきまさぁ。 えーと、牛乳って1リットルで足りますかねイ?」 「いらねぇよ。もう二度としたくねぇ。こりごりだ」 「だって、そのオタク道計画がダメならって、そーいうプレイしたんでやんしょ。 そっちにも願望あったってことじゃねぇんですかイ。だったら、今度俺が付き合って……」 「んなわきゃねーだろ。つーか、もうアレは忘れてくれってんだ」 「なぁんだ。ホントに願望無いんですかイ? 俺ァ土方さんのウンコは食えねぇが、アイツに負けてるつもりはねぇのに」 「だから、ウンコを基準にするなっていうのに」 見下ろした沖田が心底悔しそうにしているのに苦笑して、頭を撫でてやる。 「俺ァ、ぜってぇ負けてねぇからな。なぁ、聞いてるか山崎」 「聞いてますよ。負け犬はせいぜい吼えていてください」 「うっ、ウンコで負けたからって、悔しくなんかねぇからなっ!」 「だぁああもう、いい加減にしろ、てめぇら! 今度ウンコウンコって連呼したら、斬るからな!」 土方が太刀を掴んだのを見て、沖田はひらりと身をかわした。廊下に転がり出ると、 子供のように「斬ってみなせぇ、この土方ウンコたれー!」と喚いて、己の尻ぺたを叩いてみせてから、駆け去った。 「てんめぇえええええ!」 脳の血管がブチ切れそうに逆上していた土方だったが、山崎が腕に触れてそれを押しとどめた。 「実は、俺も同意見ではあるんですけどね。トッシーのために、なにもそこまで、って」 そう囁いて、背中から抱きつく。殴られるかと覚悟しながらだったが、土方は胸元に這った山崎の手の甲を、 優しく撫でただけだった。 「いや、トッシーは俺自身でもあるんだ」 「それがアナタ達の、本当の望みなんですか?」 「えっ?」 「口に出して言う望みと、本当の望みは一致しないものだって、拝み屋が言ってました。 だから、本当はオタクの頂点に立つことそのものじゃなくて、もっと奥深い……そこに突き進む姿を見せ付けることで、 何か別の目的を果たそうと、あるいは何かを試そうとしてるのかもしれない、そんな気がするんです…… でも、それが何であろうと俺、最後まで付き合いますから」 「山崎……」 そのけなげな言葉にほだされて、土方は振り向いていた。抱きすくめて口付けようとする。 だが、唇が重なる前に聞こえた山崎の台詞がいけなかった。 「それにほら、副長にケツの穴舐めてもらう約束だし!」 熱い抱擁は、堅い拳骨にとって代わられたのであった。 了 -------------------------------------------------------------------------------- 【後書き】08年12月08日に発売された少年ジャンプ(09年01月08日号)掲載の 『第二百四十訓 友達がケガしたらすぐに病院へ』を読んで、ソッコーで翌朝未明に仕上げたSSが『序』に相当します。 明らかにスカトロネタ突入なのに周囲に妙に好評だったため、調子に乗って10日には大筋で仕上げたりして。 AKIさんが漫画を書いてくれたり、嫌悪感なく読めたとお褒めの言葉を頂いたりと、本当にありがたい限りです。 尚、タイトルの『いちしの花』は一説によると彼岸花の別称で、 花言葉は「悲しい思い出」「想うはあなた一人」「 また会う日を楽しみに」。 プラウザを閉じてお戻り下さい。

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