幸福の条件X 〜想いは砂の様に〜 後編  序章



想いは砂の様に… 後編


明かりも無い闇の中で一人、瀬人はぼんやりとたたずんでいた。
周りに人の気配は無い。

ここは…どこだ? 俺は何をしていたんだ…?

周りを見渡すが、ただ真っ暗な闇が広がっていくだけ。

俺は…誰かを待っていたような…

「セト…」

ふと名を呼ばれ振り向くと、そこに誰かが立っている。

誰だ…?

「セト。おいで。お仕置きの時間だ。」

いきなり肩を掴まれ、瀬人は床に押し倒される。
ふわりと浮く感じがし、そこがベッドの上だという事を
思い出した。
首筋に生ぬるい感覚。下腹部に鈍い痛みが走る。
全身を弄る手が瀬人の感覚を麻痺させていく。

「あっ…」
瀬人自身を掴まれそのまま上下に擦り上げられる。
胸の突起に吸い付かれ、舌で転がされながらも、自身への
愛撫は止まる事は無い。

「あっああ…」
「セトは感度がいいね。攻め甲斐がある。」

くすっと笑いながらセトの内股をぐっと開き、秘部にその指を
ツン、と押し付けた。

「んッ…」
「まだ硬いね。緊張してるのか?それとも期待の方かな。」
「ちが…」
「違う?嘘つきだな。私が触れてすぐにもうここはこんなに
大きく濡れているのに。」

硬く大きく反り返り、先端からひっきりなしに先走りを吐き出してる瀬人自身を、人差し指でそっとなぞる。
時折爪を立てると、瀬人はその度にピクンと身体を震わせる。
顔をしかめながら迫り来る絶頂間に耐えるその表情が、カシムの嗜虐心をさらに高めていく。

「いい表情だ、セト。君は本当に最高の玩具だよ。」
「……」

カシムの笑いももう聞こえないのか、セトはぎゅっと眼を閉じ、体を反らしてその精を吐き出した。

その精を円滑剤にしてカシムはセトを貫いていく。
カシムの背に腕を回しながら、その突き上げに必死で耐える。
俺は…誰かを待っていたんじゃなかったか…

全身を駆け巡る快楽に、セトの思考は失われていく。
「セト、お前は悪い子だ。罪を償わなくてはいけない。」
「ああっああ…」
「私の声だけを聞くがよい。私だけを感じればよい。」
「それが罪滅ぼしの最良の策だよ。セト…」

耳元で囁かれるカシムの声に、瀬人は何度も頷いてしがみつく。
俺は悪い子なんだ…ここで罪を償わなくてはいけないんだ…

最奥を突き上げられ、瀬人は悲鳴に近い喘ぎ声を上げて全身で快楽を感じている。
カシムの動きが激しくなり、瀬人の中で更に多く脈打つ様が瀬人にも感じられていた。
「セト、出すよ。君の中を私でいっぱいにしてあげよう。」
私だけを思う様に。君の中に居る者全てを、私で埋め尽くしてあげるよ。

あの男を忘れるように…
そして私が全てを手に入れ、必ずや勝利する。
セトも…何もかも…すべてを。
私が望み、手に入れられなかったものは何一つ無いのだから。


ドクンと中に吐き出されるが、瀬人はもう何も感じていなかった。

ただ、この闇の中で過ぎて行く時間だけを感じていた。
誰かが呼んでる…?判らない…
俺は誰かを待っているのか…?誰を…?




「ペガサス・J・クロフォード氏がお見えです。殿下。」
「謁見の間に通せ」

広大な敷地。白亜の城内にペガサスと磯野は通された。
磯野が何度も門前払いされたのに、ペガサスの攻略によりカシムの方からペガサスを呼んだのだ。
この城のどこかに瀬人様がいる…
そう考えると磯野は居ても立ってもいられなくなっていた。

「落ち着け、イソノ。今は事を急いては駄目だ.」
「あ、はい、ペガサス様…」
そうたしなめられ、磯野ははやる気持ちを落ち着かせた。

通された部屋に、カシム王子が待っていた。表情は硬く、怒っているようだ。

以前会った時はもっと余裕のある目をしていた。私の攻略によほど頭に来たのか…

ペガサスがカシムの側に近づくと、カシムは不適に笑いながら右手を差し出した。

「ようこそ、我が国へ。旅の疲れはいかがかな?」
「セトはどこだ。」
「随分と直球で攻めるのだな。」

余計な話をする気は無いというペガサスの態度に、カシムは少し苦笑いをしていた。
いいだろう。こちらも直球で話を進めていくぞ。

「書類は?」
「イソノが持っているかばんの中だ。セトは?」
「私の部屋にいるよ。書類を渡せ。そうしたらセトを帰そう。」
「まずセトに会わせろ。手続きはそれからだ。」
「Mrペガサスの攻略には恐れ入ったよ。よくまぁ我が国の弱点を突き止め、また手に入れられたものだ。」

「この国の…ダムの運営管理の権利を。」

平静を保っているように見えるが、カシムは拳を握り締め、怒りを必死で
抑えていた。

「砂漠の国では石油や金よりも水が遥かに大事。水を制する者は国をも制すると言われるように。」
ラタン王国の水がめとも言われる巨大ダムはアメリカ主導で建設されていた。
アメリカが資金と技術を提供し表向きは友好関係の証としての一大事業だった。

だが、その管理運営権をアメリカはラタン王国には渡さなかった。

「土地は我が王家の代々の地であったが、その管理運営権を頑として渡そうとしなかった。父王が何度となくアメリカに交渉しても。」
よくある事だ。ダムを作り、その管理運営を手中に握っておけば、その国はアメリカに逆らう事は出来ない。

一度ダムの水門を閉じられたり、または全ての水を放出されてしまえば、たちまち国内の水事情が悪くなっていく。
国内が安定し環境事業が成功しているのも、全ては水が容易に手に入る体制が整っているからだ。
事実、ダムが出来る前は内乱が多く、国内は貧困とテロでボロボロだった。

「アメリカ政府のやりそうな事だ。切札を握るのは自分達。そして思い通りにこの国を支配していく…」
「何十年も手放す事をしなかった権利を、何故ペガサスにはたった二日で渡したのだ?」
「私はアメリカ経済を握っている。私を怒らせる政治家など、アメリカには存在しないよ。」
「いや、こう言った方がいいかな。この国を手放す事より、私を怒らせる事のほうがリスクが高いと政治は判断したのだと。」

真っ直ぐな瞳でカシムを刺すように見つめている。
この国よりも、アメリカはペガサスの顔色を取ったというのか!アメリカにとって我が国はこの男よりも価値が低いというのか!

「セトを渡せ。そうすれば権利はこの国のものだ。」
「…よかろう。では私の部屋に案内しよう.着いて来るがいい.」

部屋を出て、カシムとペガサス、その後からイソノが着いていく。
暫く歩いた時、ペガサスがふと声をあげた。

「何だ、どうした。」
「ああ、悪い。携帯をあの部屋に忘れてきた。」
「携帯?」
「仕事柄いつ何時重要なメールが入るかもしれない。」
「取りに戻るか?」
「いや、イソノに取りに行かせる。」
.
ペガサスは振り向いて、磯野に近づいていった

「イソノ…頼みがあります。」
発したその言葉に、イソノはおや?と小さく驚いた。

今までずっと母国語である英語で話していたのだ。
カシムもイソノも英語は堪能なので、共通語として使っていた。その方が
ペガサスも言葉を正確に伝えられていたからだ。

だが、今磯野に語りかけているのは英語ではなく、日本語だ。

「はい…何でしょう。」
ペガサス様が日本語で話しかけられている以上、自分もその言葉に合わせた方がいい。
イソノはとっさにそう判断し、同じ日本語で答えた。

「あの部屋に戻って私の携帯を取ってきて下さい。」
「はい。判りました。」
「その携帯を持ってこの城の制御室に行ってください。ここに来る前に渡しておいたCDは持っていますね?」
「ペガサス様!?」
「大丈夫。王子は日本語が判りません。セトを取り返しても王子は私達を城から出さないかもしれません。」
「その時、携帯に連絡を入れます。合図があったらCDを使ってこの城の全てのコンピューターを制御不能にさせて下さい。」
「制御室の場所は把握してますね。」

「…はい。判りました。」

小さく頷くと磯野は持っていた鞄をペガサスに渡した。

「くれぐれも王子に悟られないように。頼みましたよ。」
「はい。お任せ下さい。瀬人様を必ず取り戻してください。」

「何を話しているのだ?」

背後からカシムが近づいてくる。
日本語がやはり判らないようで、何を話しているのかは理解していなかった。

「別に何も。携帯の形や色を説明していただけだ。」
すぐに英語に切り替え、ペガサスはカシムの方に振り向いた。

「行け。イソノ。」

磯野の方を振り向く事無く、ペガサスはカシムと共に城の奥へと消えていく。
その後姿をも見届け、磯野は先ほどの部屋へと戻っていった。







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