愛しい者へ… 6
「今、なんて…?」
「聞こえなかったか…?俺は貞治の初めての男だよ」
俺の両手を押さえ込み、覆いかぶさるような格好で俺の顔を覗き込み笑う…
おかしな気分だ…
こいつが乾先輩に見えてくる…
「同じキスの仕方だったか?」
「なっ!」
「図星か…」
クスッと笑いながらやつの顔がまた近づいてきた…
「んっ…」
再び唇を塞がれる。
抵抗しようにも、手首をがっしり掴まれて、身動きが全く取れない。
細い体のどこにこんな力が!?
口から首筋へと柳の唇が移動していく。
なんてこった…
愛撫までそっくりじゃないか…
乾先輩もこんな風に抱かれていたのか…?
俺の知らない乾先輩の過去…
それに対する興味が、俺の柳への抵抗を弱めていた…
「…俺と貞治の過去に興味がありそうだな…」
どうしてこいつは俺が思っている事をそう意図も簡単に当ててしまうんだ??
「いいよ、教えてあげるさ。貞治が俺の腕の中でどんな風に啼いていたかを…」
やばい!奴は本気だ!
俺だって乾先輩以外とは死んでもやりたくねぇ!
必死で抵抗を試みるが、本気になった柳は片手で俺の両腕を押さえ込み、空いた方の手で俺の胸を弄ってくる。
胸の突起を掌で転がすように愛撫する。
乾先輩がよくやる癖だ…
「やっ、ん…」
「いい声で鳴くね…感度がよさそうだ。貞治が気に入るわけだ」
体の線をなぞるように指をはわし、その手は俺の股間へと伸びていく。
その動きがまるで乾先輩が触っているようで、俺は思わず抵抗するのを忘れてしまっていた…
「はっんん!あぁぁっ」
ズボンの中にするりと手を入れ、俺自身を掴み出し愛撫する。
「ふぅん…しっかり準備は出来てるじゃないか…結構淫乱なんだな」
「ちがっ、はぁっんん」
「どこが違う?恋人以外の男に触られて、もうこんなにしている…」
俺だって驚いてるさ!
乾先輩以外の男なんて死んでも嫌だ!
なのに、分からない…
この人にならこのまましてもいいと感じているもう一人の俺がいる…
乾先輩を抱いた男…
どんな風に?どんな表情をしてたの?どんな声を上げてたの…?
柳が俺の両手の拘束を解き、代わりに俺自身を口に含んだ。
…俺は…抵抗しなかった…
「んああぁぁっ」
裏筋をなぞるように下から上へと舌を這わしていく。
先頭に着くと、その割れ目に舌先で突く様に刺激を与える。
あまりの舌捌きに俺は身を反り返して感じてしまった。
我を忘れて柳の頭を両手で押さえつけ、更なる快感を求めていた。
なんてこった…
俺が乾先輩にしてる事を、こいつにやってしまうなんて…
はっっと気がついたときにはもう遅くて、柳はにやっと笑いながら、俺自身を更に深く咥え込んだ。
「やぁっ、あああああ」
ビクビクッと痙攣して、俺はあっさり達してしまった…
柳は俺が出したものを残らず飲み干した。
そして上目遣いで俺を見る。
その表情…まるで乾先輩だ…
「早いな。これでは貞治も不満だろう。もう少し堪え性のあるやつに仕込まなくてはな…」
「ハァ、ハァ…何を言って…?」
「お前を調教するんだよ…SEXなしではいられない体に…」
俺の顎を掴み、鋭い視線で俺を睨みつける…
「ふざけんなっ!」
パシッとその手を払いのけ、俺も負けじと睨み返す。
「くすっ、お前をすんなりと帰すとでも思ったか?随分甘ちゃんだな」
いきなり俺の両足を掴んで広げ、秘所に指を突っ込んできた。
「んぁっ、うあああ…」
「こういうプライドが高くて気の強い子を調教するのはとても楽しいよ」
俺の中をかき乱しながら、耳元で甘く囁く。
「足元に膝まづいて、『入れてください』と懇願する姿はゾクゾクするね…」
指が一本、二本と増やされていく…
「誇り高き戦士から娼婦に成り下がったお前を見て、貞治はどう思うかな…?」
俺の感じる所を巧みに探し出し、執拗にそこを攻めてくる。
乾先輩も俺を愛撫しながら、こんな風に言葉で攻めてくる。
その度に俺は気持ちが高まって、どんどん乱れていく。(って先輩が言ってた。)
でもその内容は愛情がこもっていた。
こんな殺気を含めた言葉でなんかじゃない!
「やぁっ、はな…せ!!」
俺に覆いかぶさっている柳の肩を必死で押すが、びくともしない。
「俺と貞治は同じだったろ?なら、貞治に抱かれていると思えばいい」
俺は眼をかっと開いて、柳を睨みつけた。
「あんたは、乾先輩とは違う!」
[乾先輩はこんな風には俺を抱かない!」
柳の顔がたちまち厳しい表情になる。
「そう…だったら、俺のほうが数段いい事を教えてあげるよ」
「貞治も俺の腕の中で散々よがり狂ったからね…」
そう言うと、俺の腰を掴み、そのまま前進する。
「んあああああ!!」
体を反らし、その痛みと快感に耐える…
足を押さえ、腰を引き、前後に激しく突いてくる。
出すまいと思っていた喘ぎ声が俺の中からあふれ出してくる。
確かに上手い…我を忘れそうだ…
しっかりしろ!海堂薫!
今はとにかく耐える事…
ここに連れてこられた時から、ある程度の覚悟は出来ていた。
柳が俺を無傷で帰すはずがないと…
遅かれ早かれ、俺はこいつにこうされる事を予測していた。
いや…
心のどこかでは望んでいたのかもしれない…
乾先輩の過去を知る男…
俺はこの人の事をもっと理解したいと願っていた。
そうする事で、少しでも乾先輩の本心に近づけるような気がしたから…
相手を理解する手っ取り早い方法は、こうして体を重ねる事…
突き上げてくる度に柳の乾先輩への想いが俺に伝わってくる。
そして俺への憎悪も…
「はああああっ」
「4年ぶりにあったあいつの中に、俺は完全に消し去られていた」
「あいつは俺よりお前を選んだ…」
そういいながら、俺の髪を乱暴に掴む。
「いっ、んん、あぁぁ…」
「分からない…俺のどこがお前に劣っている…?」
柳の動きが早くなって、荒い息をつき始めていた。
同時に俺自身を掴み擦りあげていく。
「はぁ、あああ、イ…く…」
柳は黙って、動きを続ける。
乾先輩は必ず『いいよ…』と言ってくれた。
「ああああああ!!」
高い喘ぎ声を上げて、俺は柳の手の中でイってしまった。
直後に俺の中で熱いものを感じた。柳も達したんだ。
柳は俺の顔も見ずに自身を引き抜く。
ここも違う。
乾先輩は必ず俺の顔を見て、優しくキスをしてくれるんだ。
そして、二人でその余韻に浸る…
衣服を整え、何事もなかったかのように表情を作る。
静かな…穏やかで大人しそうに見えるこの表情の中に、誰がこんな激情を知るだろうか…
恐らく、立海大王国の主だった将校はこの人の本性を知らないだろう。
いや、あの赤也って奴は知っているのかもしれない。
柳の一喝で引き下がっていたもんな…
「なぁ…シャワー浴びたいんだけど…」
静かに俺に振り返り、馬鹿にしたように笑う。
「随分とさらっとしているな…他の男に犯られたっていうのに…」
「貞治への想いはそんな程度だったって言うわけか。裏切っても平気な程度…」
「その逆。俺、乾先輩を信じているから…」
「きっと乾先輩も俺の事信じてくれるから…だから何をされても俺は平気」
軍人である以上、危険は伴う。
だが、お互いが信じあっていれば、どんな危険にも立ち向かっていける…
乾先輩が教えてくれた…
だから、好きにすればいい。抵抗はしない。
今は生き残る事が先決だから…
「鎖、外してくれよ。俺絶対逃げないから…」
「そういって外すほどおれは愚か者ではないぞ」
「俺は逃げないよ。乾先輩が迎えに来るから…」
「何だと…?」
「『必ず迎えに行くから、そこを動かないで…』乾先輩ならきっとこう言った筈だから」
だから俺はその言葉を信じてここで待つ。
柳はふっと笑い、俺の足に付けられてた鎖を外す。
「逃げられるものなら、逃げてみろよ…赤也の餌食にされるのがおちだ…」
静かに…だが内なる炎を俺に叩きつけるように言い放つ。
「トイレも風呂もこの部屋にある。好きに使え。ドアに鍵はかけさせて貰う」
「貞治が本当に迎えに来るか、お手並み拝見だな…」
「来るさ!必ず…」
柳はまた笑った…でも今度は悲しそうな笑顔…
「その時こそ、決着をつける…」
そう呟き、柳は部屋を出て行った。
俺は早くこの感触を洗い流したくて、バスルームへ向った。
シャワーを浴び、体中を洗い流す。
それから俺の中に放って置かれた異物を取り出そうと自ら指を入れて掻き出した。
「うっ…」
大きく息を吐き、何度も出し入れしてあいつの精液を残らず俺の中から取り出す。
「うぅっ…」
知らず知らずに涙が溢れてきた…
本当は怖かった…
乾先輩以外の男に抱かれるなんて、考えても見なかった…
強がってみたけど、柳に抱かれてた時、俺は泣きだしたくて堪らなかったんだ…
乾先輩に助けを求めて、大声で叫びたかったんだ…
俺は壁に寄りかかって、座り込み、泣き崩れた…
シャワーの水の音が、その声を消し去ってくれる…
乾先輩…俺、あんたを裏切った…
それでもあんたは俺の事好きでいてくれるんですか…?
To be continues
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