等価交換の名の下に  〜番外編〜





        イーストシティ中央駅。


        東方司令部がある街の入り口に当たる大きな駅だ。

        

        「ふぁ〜〜やっと着いたぜ!!」
        俺は駅のホームに降り立つと、大きく伸びをしてアルの方を見た。

        「今回の調査は随分速く終わったね。」
        「ったりめーだぜ!さっさと帰ってあいつの顔をぶん殴ってやりたい一心でさ!」

        南部の方で起きた事件を俺に押し付け、その手柄を横取りしようというあいつ!!



        …それ以上に大佐に早く会いたいんだ。
        なんたって俺たちは新婚なんだからな!



        この前の事を思い出すと、未だ自然に顔がにやけてくる。

        「くくく、待ってろよ大佐〜足腰立たなくしてやるから…」
        「兄さん…僕まだ…」
        「何だよ!まだこだわってるのか!?いい加減に…」


        いいかけて俺は眼を見張る。
        あれ…?あそこにいる人…






        「やぁ、エドワード君、アルフォンス君。奇遇だね、こんな所で会えるとは。」




        隻眼の最高権力者がニコニコ笑いながら俺の傍に近づいてきた。
        
        大総統…キング・ブラッドレイだ…
        なんだってこんな田舎町に?


        「こんにちわ、大総統。どうしてここに?」
        きちんと挨拶をするアル。お前は昔っからそういう所はちゃんとしてたっけな。
        俺はあんまりこの人を信用してないし、好きでもないから適当にその場を濁す。


        「ん?東方司令部の視察だよ。ここは色々あるから楽しくてね。終わって中央に帰る所だったのだが…」
        「君達が帰ってきたのなら、もう少し滞在しようかな。」


        さも楽しそうに笑いながら傍に控えていた秘書官にその旨を伝える。 


        一緒に東方司令部に行こうと誘ってきた。
        俺は断るつもりだったんだが…アルのやつが俺が返事をする前に「はい!」と答えてしまった。


        仕方なく俺達は大総統の黒塗りの車に乗り込む。
        

        大総統は車の中でも終始ご機嫌だった。
        何がそんなに楽しいのかね?
        俺は二人っきりで会うはずだった大佐との再会に水を注されたようで終始むっとしていた。



        「ここに来た時、面白い話を聞いてね。マスタング大佐が結婚したと…」        
        ニヤニヤ笑いながら意味ありげに俺に話しかけてきた。


        あぁ、したさ。だから…?
        俺は何も答えずに大総統を見上げる。アルも黙って窓の外を見つめていた。

        「マスタングに聞いても『単なる噂』と一笑に付されたが。」



        な…んで??否定したのか??


        「君は何か聞いているかね?その事について…」
        大総統は終始笑みを浮かべ、俺に向って話し続ける。


        「…いいえ。俺達ずっと旅してましたから…」


        ほぉ…といいながらでも笑みは絶やさない。
        本当はきっと色々知っているくせに!わざと何も知らないフリをして俺に聞いて来るんだ。

        大佐が何も語らなかったのをいい事に、俺に揺さぶりをかけてくる。
        



        この人には余計な事を話さないほうがいい…



        大佐が俺との事を否定したのもむかつくが、こっちの本能の方が俺に強く働きかける。


        東方司令部に着く短い間、大総統は俺に色々鎌をかけてきたが、俺はありきたりの返事で誤魔化していた。





        「なっ…」


        俺と大総統が仲良く並んで東方司令部に到着した時、大佐は言葉を失い、ただ呆然と立ちすくんでいた。


        「駅で偶然会ってね。南部の事件の報告も聞きたいからまた戻ってきた。」
        「エド…」
        「俺は疲れてるから少し仮眠室で休ませてよ。あとで報告するから。」

        そう告げると、大佐は少しほっとしたような顔をして「構わんよ」とホークアイ中尉に案内をさせようと
        彼女を呼び止める。



        「いや、それは駄目だ。私とてそう時間があるわけではない。エドワード君には悪いがすぐにでも
         報告を聞かせて貰おう。」
        「よいな、マスタング大佐。君の執務室で。」


        そう独裁者に言い切られては、軍属の俺達は拒否する事など出来はしない。
        アルには先にホテルに行って貰って、俺達は大佐の執務室へと通された。

 
        大佐の表情は硬いままだ。
        とてもこの前の初夜の時に見せたあの穏やかな雰囲気は見えない。


        …大総統とも関係があるって…聞いた事もあったっけ…


        「大佐…」
        沈黙に耐えられなくなって声をかける。


        「…調査の報告をしろ、エド。」
        ソファに深々と座っている大総統に眼をやりながら、静かに俺に指示を出す。

        「あ、うん…」
        鞄から書類を取り出そうとすると、大総統がすっと椅子から立ち上がる。

        その仕草だけで大佐がビクッと反応してる。
        何だ…

        立ち上がっただけなのに、この威圧感…


        体が動かない…


        腰につけてたサーベルをいつの間にか外して、そのサーベルの鞘で俺の鞄を押さえつけた。


        「何すんだよ!?報告を聞きに来たんじゃないのかよ?」
        あまりの理不尽さにキッと睨みつける。何なんだ。ふざけるのもいい加減にしてくれ!


        「ふふっ…私が聞きたいのはそんな報告なんかではないよ。」


        「閣下!?」
        思わず声をかけた大佐に今度はサーベルそのものを突きつける。
        喉元に光るサーベルを大佐は冷静に見つめていた。


        「マスタング…君は結婚したそうじゃないか。」
        「…単なる噂と申し上げたはずです。」
        「偽りの言葉しか言えないのなら、この喉を掻っ切るか…」


        俺はゾクリと背筋が凍るのを感じていた。。
        この男は本気だ…このまま大佐が言わなければ、何の躊躇もなく喉を切り裂くだろう。
        
        守らなきゃ…
        俺は大佐の夫なんだし…

        
        でもどういうわけか俺の両足の力が入らない。
        『止めろ』と言う声も出ない。


        まるで蛇に睨まれた蛙の様に、俺はただ何も出来ずに大佐を見ているしかなかった。




        「もう一度聞くぞ、マスタング。君は結婚したそうじゃないか。」



        「…はい…しました。」
        眼を閉じ、静かに大佐はそう答えた。

        複雑な気分だぜ…
        俺との事を認めてくれた嬉しさと、この場の雰囲気の恐怖とが入り乱れて俺の感覚をなくしていく。


        「やはり噂は本当だったか。ククッ…相手は誰かね?いや、まずこう聞こうか。」
        「妻は君かね?」


        話す言葉の端はしに権力者特有の下の者を蔑む意識が含まれている。


        「そうです。閣下…」 
        それでもその屈辱に大佐は黙って耐えている。

        そうやって…あんたは大勢の上官からの理不尽な屈辱に耐えてきたのか…
        出世の為…?

        違う…



        大佐の上へ上がる為のその頑なな決意を、邪な輩が利用しているだけだ。
        上へ目指すその思いが強いだけに大佐は決して逆らわない。


        そして今も…
        最高権力者に弄ばれている。大佐はただそれに耐えるだけ。




        決して逆らわない。





        「やはり『妻』はお前か。そうだろう。お前は私を始め多くの上官たちの『妻』だからな。」
        クスクス笑いながら侮蔑の言葉を叩きつける。
        大佐は顔色一つ変えずにただじっと大総統を見つめていた。


        スパッ


        「大佐っ!!」

        いきなりサーベルが下方に下ろされ、俺は大佐が切られたかと思わず叫んでしまった。


        切れ味抜群のサーベルは、大佐の軍服を一文字に切り裂く。
        
        「っつ…」
        切られた部分を大佐が右手でとっさに押さえた。
        切れ目から見える白い肌に、うっすらと血が滲んでる…

        「マスタング、両手を君の机に付きなさい。」
        「閣下!?」
        「人妻となった君がどんな風に変わったか試したくなった。」

        大佐の表情がみるみる青ざめ、俺のほうをちらりと見る。
        今まで強い決意でこの独裁者の屈辱に耐えていたあの人が…

        動揺している…俺の為に…?


        「どうした…私の命令に従わんのか?マスタング大佐。」
        逆らえない事を示す様に大佐を階級で呼び…すべてを見透かしているような口調で、
        なおも大佐を追い詰めていく。

        「…閣下…」
        小さく俯いて、大総統から目線を反らす。
        

        逆らえば…大総統に忠誠の意思なしと見なされれば反逆罪で逮捕され、下手をすれば銃殺だ。


        何より上へ這い上がる道を閉ざされる。



        大佐の足を引っ張っちゃいけない…
        あの人の役に立ちたい…

        何よりあの人を守りたい…





        「大佐…」
        金縛りにあっている様な俺の体。必死で声を振り絞って大佐に話しかけた。


        優しく微笑みながら…


        そんな俺を見るなり、大佐は目を細め、そして…小さく笑ってくれた。


        大丈夫…俺がついているから…
        何があっても俺がついているから…


        大佐は静かに眼を閉じ、そして大総統に背を向ける形で自分の机に手を突いた。




        部屋中に甘い声がこだまする…
        それは俺も聞いた事がある甘い…官能的な喘ぎ声…



        俺は耳を塞ぐ事も目線を反らす事も出来ず、ただ拳を握り締めながらその光景を眼に焼きつけるしかなかった…







        「はぁっああああ」
        最後の声を放ち、大総統が大佐の中からずるっと抜き出すと、大佐はそのまま床に崩れ落ちてしまった。


        荒く肩で息をして、それがひどく苦しそうで…
        動けなかった俺の足が嘘みたいに飛び跳ね、大佐の傍へと駆け寄った。


        「大佐、大佐しっかり…」
        「エド…まだいたのか…馬鹿だなお前は。さっさと出て行けばいいものを…」

        私の事など放っておいて…


        分かっている…この言葉の意味が…
        俺に飛び火がかからない為の偽りの言葉。

        俺たちの背後で整然と服を調える大総統。
        上から見下ろすその片目の眼光が俺に鋭く突き刺さる。

 

        負けねぇぞ!!あんた何かに!!
        大佐は俺の物だ!俺だけの物なんだ!



        「ふっ…マスタングを見初めた物好きが誰だか、おおよその見当はついてはおるがね。」
        「出来れば大佐の口から聞きたいものだ。君を組み敷く夫は誰か。」

        黒い笑みを浮かべながらサーベルの鞘を大佐の顎にあて、その顔をくいっとあげる。
        苦悩の表情を浮かべ、唇を噛み締める。俺の名を出す事にかなり躊躇しているんだ。


        そんなにも…この人は恐ろしい人なのか…?
        そうまでしても俺を守りたいのか…

        それ程まで…愛してくれてるのかな…




        「夫は俺です。気が済んだでしょう?さっさとセントラルに帰ったらどうです!」



        大佐の顎にあった鞘を左手で払いのけ、キッと睨みつけた。
        大佐が慌ててる。そりゃそうだろうな…独裁者に向ってする事でも言う事でもないモンな。

        でも俺だってかなり抑えてんだぜ?
        本当だったら右手を剣に錬成してそのまま切り裂いてやりたい。

        
        「はっはっは!本当に君達は面白い。私を心から満足させてくれる。」
        高らかに笑う大総統に俺はマジで食って掛かろうとしたんだが…

        大佐がさりげなく左手で俺を掴んでたから、止めた…

        その手は、俺を止めようとしたのか、それともすがろうとしたのか…


        「エドワード君、結婚おめでとう。だが妻となった者はかなりの数の愛人がいるからのう。」
        「君達の未来に幸あらん事を願うよ。クク…」


        そう言い放つと、くるりを身を翻してドアの方へ向っていった。

        「そうそう、人妻となって少しは変わったかと思ったが…」
        「君の中は相変わらず貪欲だった。ほっとしたよ、マスタング。」


        
        「くっ!!きっ…」
        貴様と言いかけて大佐に背後から抱きしめられた。

        私は大丈夫だから…だから…
        背中に頭をこすり付け、必死で俺をなだめようとしている。


        その姿をさも満足そうに見つめ、隻眼の悪魔は部屋を後にした。        
        




        机に寄りかかる様に床に座り込み、少し放心状態の大佐…
        俺はそっと上に跨り、愛しい人を抱きしめた。


        「…エド…よく耐えてくれた。ありがとう…」
        「悔しいよ…俺、あんたを守ってやれなかった…」
        「私は大丈夫だ。こんな事は慣れている。お前が逆上してしまわないかの方がひやひやしたぞ?」

        くすっと笑いながらエドを抱き寄せ、俺の胸に顔を埋める。
       

        「私は上を目指す。その為なら手段を選ばない。」
        「これからもこういう事があるかもしれない。閣下は私達を困らせるのが一番楽しい事だから。」


        

        「だが信じてくれ…私の夫はお前だけだ…エド…」



        俺は大佐を強く、強く抱きしめる。
        分かったよ…俺だってあんたの役に立ちたい…

        「俺は大丈夫だから…信じてるから…安心して上を目指してくれよ。」
        そして最上まで上り詰めて、俺を安心させてくれよ。

        TOPに立てば誰もあんたに触れられる者はいなくなる。


        そう…夫たる俺以外は…




        「今夜…部屋に行ってもいい?」
        「何を遠慮する必要がある?私達は夫婦だろう?」


        自然に…顔を寄せあい唇を合わせる。
        お互いの想いを確かめ合うように深く…深く…





        その日の夜…アルをホテルに置いて、俺は大佐の部屋に一泊した。
        勿論散々嫌味は言われたさ!「兄さんばっかりずるい!」って。
        俺は両手を合わせて頭を下げながら「ゴメン!」と言って出て行った。

        アルを一人にして俺だけ楽しむのは確かに悪いと思うよ。
        今度はちゃんとお前も連れて行くから。でも今夜だけ…

        今夜だけは俺たちを二人だけにしてくれ…


        二人で夕飯食べて…(大佐が作った。喰えたモンじゃなかったけど…我慢…)
        シャワーを浴びて…(一緒に入るのは拒否された。恥ずかしいんだと…何で?)
        南部の事件の事を話したり、司令部での事を話したり…

        雰囲気が盛り上がった頃…大佐はすっと立ち上がった。


        そのまま寝室へと向う。何だ??えらい積極的だな。
        ま、そのつもりだったから別に…

        俺の後に続いて寝室へと入ると、大佐がなにやらごそごそ取り出してた。

        「大佐…?」
        「お前が戻ったら渡そうと思ってた。」

        差し出されたのは銀色に光る指輪。
        

        「これ…」
        「はめる必要はない。ただ持っていて欲しかったから。」

        俺が送った指輪はちゃんと左手にはめてあった。手袋の上からでも俺には見えた。
        勿論、今も…ちゃんとはめてある。
        

        「意外とロマンチストなんだな。あんた。」
        「そうでないと女性にもてないからな。」
        「女なんて興味ないくせに。」

        くすくす笑いながら俺はそれを受け取り、左手にはめる。

        その左手を大佐がそっと手に取り、はめたばかりの指輪にキスをした。
        俺はしなやかな黒髪をかき上げ、その髪に唇を落とす。

        額へ…鼻筋へキスを移動させ唇に到達した時、待ちきれなかった様に舌を絡ませ深いキスを交わす。


        羽織っていたがウンを手に取りそっと脱がせると…

        白い肌に所々赤い痣が残っている…


        今日だけじゃ無かったんだ…
        俺が南部に行っている間に、あの悪魔に散々弄ばれていたんだ…


        「ゴメン…大佐…」
        「エド…?」

        「…何でもない…」
        何か言いたそうな大佐の首に唇を落とし、体中に残る痣の跡を辿っていく。

        それらにすべて吸い付いて、あの男の痕跡を消してやりたい。
        

        「あっ……」
        小さく喘ぐ声を聞きながら中心で自己主張している大佐自身に口付けた。

        「んっああっ、エド…」
        口いっぱいに含んで、中で舌を動かすと途端に淫らに乱れていく…
        やっぱり経験が物を言うのかな…


        この姿を見るだけで、俺の分身は熱く疼いてくる。


        勿論、今まで大佐を抱いてきた輩に嫉妬はするし、誰にも触らせたくないさ。
        でも、この姿は数多くの男達によって開発されたかと思うと…

        少しだけ感謝…

        「あぁっ、ああっ、もう…」
        まだまだ!イくには早いよ。

        口から離すと根元をギュッと掴む。大佐がビクンと身体を痙攣させている。

        「はっああ…」
        「俺も大佐の口でイキたい。いい?」

        涙目で俺を見つめ返すと、ゆっくりと体を起こし、俺自身に顔を寄せていく。
        すっと大佐の唇が俺自身に吸い付いてきた。


        「っ、んんっ!」
        やばい!上手すぎる…
        俺は身を屈ませ大佐の頭を押さえ込み、更に奥へと咥えさせた。

        全身が痙攣しているのがはっきりと分かる…凄い…こんなの初めてだ…


        大佐は眼を閉じ、とても幸せそうな表情で俺に奉仕してくれている。
        昼間のあいつとの情事では見せなかった穏やかな雰囲気…

        「くっ、ゴメンもう駄目、出すよ…」

        情けない事に俺はすぐに限界を迎え、大佐の口の中に出してしまった。         

     
        大佐は残らず飲み干してくれた。

        くすくす笑いながら…


        「何だよ!何で笑ってんだよ!」
        「早漏は男女共にもてんぞ?」

        口元を拭いながら勝ち誇った様に俺を見返す。
        カチンときたが、言い返せない…

        ふてくされて俯いてると、優しく俺の頬に触れてそのままキスをしてくれた。

        自分からは、めったにキスをしてくれない大佐…
        こんなささやかな事なのに、嬉しい…

        大佐にしがみついて舌を絡ませあい、頭が痺れるようなキスを交わす。
        たちまち俺の分身は垂れていた頭をぐぐっと持ち上げる。



        そっとシーツに横たわすと、秘所に指をはわし丁寧に解していく。
        少し苦しそうに顔を歪めたが…俺がおかしいんだろうか…それすらも淫靡に見えてくる。

        昼間の事もあったのかもしれない。大佐のそこは簡単に湿り、俺を受け入れたくてヒクヒクしていた。


 
        「大佐…挿れるよ…」
        足を抱えて先端を少しだけ入れる。
        ピクッと身体を震わせている。でも顔は穏やかだった。そう、こんな顔は俺にしか見せない…



        大総統を始め、多くの卑屈な上官たちは絶対見る事はないだろう…
        この美しい最高の笑顔を…
        

        「はぁあああっ!」
        グイッと中まで押し込むと大佐は堪らず官能的な喘ぎ声を上げる。
        昼間聞いた声と同じって言うのがちょっと気に入らないけどね。

        ゆさゆさと腰を揺らし、大佐の良い所を捜しながら出し入れを繰り返す。
        ポイントに当たる度にビクッと身体を震わせた。
        その場所をしっかり覚えておく。

        次の時へのステップ。妻を悦ばせるのも夫の役目。
        今は大佐の方が経験が深いからリードされっぱなしだけど…


        「はぁんん、あっ、エド…」
        「気持ちいい?俺として気持ちいい?」

       
        頷きながら俺の首に腕を回してくる。
        俺の耳元であの甘い声がこだまする。

        あ〜〜たまんねぇ…


        大佐自身から流れ出ている蜜と、俺から流れでる精とが絡み合って、気持ちよさを倍増させる。
        腰を打ち付けるように突き上げると、中がぐちゃぐちゃと音を立てて俺をギュッと咥え込む。

        大佐自身に手を添え、上下に擦りあげた。

        「はっんん、あああああ…」

        大きく身を反らし、大佐はあっけなく果ててしまった。
        
        「何だよ、どっちが早漏だ?」
        にやりと笑いながらググッと奥を突き上げ、大佐を体と言葉で攻めて行く。

        「やっあああ、もう…」
        「まだまだ、こんなんじゃ足りねーだろ?」
        シーツを掴み必死で耐える大佐を尻目に俺は更に抽挿を繰り返す。

        額に流れる汗が綺麗で…
        苦しそうに歪む顔が綺麗で…
        何より俺を感じてくれている事が嬉しくて…



        俺は想いのすべてを大佐の中に注ぎ込んだ…





        

        朝日が部屋の中に差し込み、俺は眼を覚ますとやっぱり隣に大佐はいなかった。
        またさっさと司令部に行っちゃったのかな…

         ガウンを羽織ってリビングに行くと、大佐がそこでコーヒーを飲んで新聞を読んでいた。

        「あ…れ?司令部に行ったんじゃ…」
        「今日は午後出勤。コーヒー飲むか?」

        柔らかい笑顔を見せると新聞を畳みキッチンへと向っていった。

        「あ、俺コーヒーよりオレンジジュースの方がいい…」
        慌ててキッチンへ向うと、テーブルにパンの用意がされてある。

        「何?これ…」
        「何はないだろう。折角朝食を作ってやったのに。」
        少し顔を赤らめながら、グラスにオレンジジュースを注いでいる。

        「ほら。目玉焼きぐらいしか作れんがな。」
        カタンと卵の乗ったお皿を置き、パンにジャムを塗ってくれた。


        何かいいね〜新婚夫婦の雰囲気だ。


        「じゃ、遠慮なく!頂きま〜す!」
        とりあえず無難な味付けの目玉焼きを、よく噛み締めながら味わう。
        あの大佐が俺の為だけに作ってくれたんだ…

        そう考えただけで顔がにやけてくる。


        「何、にやついている?」
        テーブルの反対側に座り、ひじをつき顎を掌に乗せ俺を見ている大佐がこう話しかけた。 
               
        「いや、何でも…」
        まずい。笑いが止まらない…
      
        「変な奴だな。…と、そうだ、気味に渡したい物があるんだ。」
        「え?何?昨日も俺、貰ったけど…」
        まだ左手にはめてる銀色の指輪。俺と大佐を繋ぐ大切な証。


        「ほら、資料だ。早速だが西部の街に行って貰いたい。」






        はぁ????


        「な、何でまた?俺昨日帰ってきたばかりなのに!?」
        「ついて早々すぐ出かけるのはいつもの事じゃないか。」
        「それは以前の事で、今は…」

        新婚だろ!?俺たち!もっと一緒にいたっていいじゃないか!?



        「西部のとある町の有力者がどうも裏で色々やっているらしくてね。」
        「軍としても放って置くわけには行かなくなってきた。」

        ニコニコ笑いながら自分のパンにジャムをつけて口に放り込んでいる。

        「そ、そんなの俺じゃなくたって他の部下にやらせればいいじゃないか!」
        「一番信頼の置ける部下に行って貰いたいんだ。」


        ちょ…ちょっと待て!!!
        「俺は何時からあんたの部下になったんだ!?」


        「ヒューズが言ってたぞ?結婚とは夫が妻の忠実な部下になる事だと。」


        大佐が勝ち誇ったようにコーヒーを飲んでいる。
        俺は何にも言い返せなくなり、ただ拳を握り締めて愛しいはずの大佐を睨みつけていた。




        「しっかり働いて来い。これが丸く解決できれば、また私の出世に役立つよ。」








        西部へ向う列車の中。
        俺は怒りが収まらず、窓の外を見ながらずっとアルに文句を言い続けていた。

        「ったく!!信じられねーよ!!人使いの荒いのもいい加減にしやがれ!」
        はいはいと言いながらアルは西部のその実力者についての資料を読んでいる。
        そんなモン読んでどうすんだ!さっさと行って適当にあしらえばいいじゃないか!

        『別に怪しい素振りはありませんでしたよ〜』とかさ…

        「…兄さん…この資料ちゃんと読んだ…?」
        「いや?怒って出て来たから全然読んでない。」

        何だ?何か特別な事でも書いてあるのか??

        「ほら…この実力者の説明の所…」



        『なお、この家の宝物所の書庫の中に賢者の石について書かれた書物があるといわれている』




        な…賢者の石!?
        アルから資料を奪って、その箇所をもう一度よく読み返す。
        本当だ…確かに賢者の石について書かれた書物ってある…

        「やりぃ!!こいつは一石二鳥だ!アル!こいつをしっかり絞り上げて書物を手に入れようぜ!」
        「大佐の奴!ざまぁみろだ!こんな情報があったのを見逃してたなんてさ!」


        見てろよ〜〜今度こそ賢者の石を手に入れ、元の身体に戻ってやる!
        そうしたら背だってどんどん伸びて、大佐なんかすぐに追い越して、俺の下でヒィヒィ言わせてやる!!




        たちまち上機嫌になって「早くつかないかなぁ」なんて言い出したエドを見て、アルは深いため息をつく。
        

        兄さん…何にもわかってないんだね…
        上手く大佐に利用されてるって事…

        賢者の石の情報を先に教えてしまえば、それしか頭に入らなくなる。
        だが、その前に理不尽な命令を与えれば、賢者の石を手に入れようとその命令を
        早く解決させる為躍起になる。


        兄さんの性格ならなお更だ。
        大佐にしてやったり!と言う気持ちになって、見返してやろうと本気で頑張るだろう。


        新婚早々、早くも尻に敷かれているんだよ…兄さん…



        でも悔しい…兄さんはそれだけあの人に愛されてるんだ…
        賢者の石の情報を見つけた時点で、あの人は兄さんの事を考えていたに違いない。

        だって、この資料…物凄く詳しく書かれている。
        すべて大佐の文字だって事、兄さんは気がつくかな…

        この前だってそうだ。
        あの時大佐が「南部へ行け」といった時は大総統から僕達を遠ざける為。

        兄さんがあの人の毒牙にかからないよう配慮したんだ。

        アームストロング少佐や上層部の人が東方部にいたって事は、近いうちに大総統が来るって事。
        少佐は大総統の護衛だからね。きっと先に来て警護の状況を確認していたんだろう。

        駅で鉢合わせになったのは悪魔の悪戯か…


        だったらあの時一緒の車で行かなければよかった…?
        だってあれはワザと一緒にさせたんだ。

        兄さんと大佐と大総統を一緒にさせたかったからさ。



        僕は大佐に兄さんを取られたのに怒っているんじゃない。
        兄さんに大佐を取られたのを怒っていたんだ。


        今はこんな鎧の身体だけど…
        いつか元の身体に戻ったら兄さんと僕とどちらがいいかはっきりさせるんだ。







        だから絶対認めない。兄さんと大佐の事…






        楽しそうに窓の外を見ているエドには、アルの深く、そして隻眼の男と同じ香りのする眼に全く気がつかない。





        楽しいはずの新婚生活…
        エドとロイだけはこれからもトラブルが付きまとうだろう。




        幸せを手に入れたのなら、苦労をも背負わなければならない。





        すべては等価交換の名の下に…



        END
 






感謝企画で配布したエドロイSSでした!

エドロイでラブラブ鬼畜、だったんですが…
鬼畜はやっぱり閣下じゃないと…ね…

と言うわけで、ブラロイもプラスしてしまいました。(笑)
一応エドロイメインなので詳しくは表現しませんでしたが…

表小説、等価交換の名の下にの続編という形でした。
この後、絆編に繋がっていきます!


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