罠         



「ひゅうらカンパニー…?聞いた事ありませんね。」
「俺も初めて聞く会社なんだが…以前剛三郎と取引があったらしいんだ。俺は知らないが。」

リビングのソファで経済新聞に眼を通しながら眼の前に座るアメリカ人に話しかける。
銀髪の髪をさらりと揺らしながら、コーヒーを飲む恋人に眼を向けた。
出勤前の朝のひと時。
ペガサスが居候してから三ヶ月が経ち、この光景は朝の習慣となっていた。

「その会社がどうかしたんですか?」
「ん、新たに俺と取引したいと言ってきてな。」
コーヒーをテーブルに置き、新聞を畳む。
どさっとソファに寄りかかり、小さくため息をつく。

「どうかしたんですか?」
「…俺に是非一席設けたいって。」
「?新規に取引する会社にわざわざあなたが行く必要あるんですか?」
「本来ならそうなんだが…」
少し困ったような表情をしながら、ペガサスと目線を外した。

「セト…?」
「取引内容がちょっと気になってな。最新のプログラムの一部を送ってきた。
今度のデュエルディスクのプログラムに使えそうでな。だから会ってみようと思うんだが。」
静かに眼を閉じ、ソファにもたれ掛かる。
ペガサスは読んでいた本を閉じて、セトをじっと見つめていた。

「賛成は出来ませんね。セト。そんな誰かも判らない人に会うなんて。」
「お前はそう言うと思ったよ。俺が他の人間に会うといつもそうだ。」
少し不機嫌な顔をしながら、瀬人は持っていた新聞をテーブルにポン、と置く。

「私に相談したんじゃなかったんですか?」
「違う!誰がお前なんかに!」
「落ち着いてください。私が言ってるのは、初めて取引しようとする会社が、あなたを誘うなんて、と…」
あの世界に名だたる海馬コーポレーション。
その社長である海馬瀬人にいきなり会いたいだなど身の程知らずというか…

「まずは営業マン、そして取締役、副社長、そしてあなたではないのですか?」
「だがあのプログラムは将来性がある。そう睨んだ。話を聞くには専門家が行ったほうがいいじゃないか。」
確かに、セトはあのデュエルシステムを開発した人間。
会社の誰よりもコンピュータープログラムに関しては専門家でしょう。

しかし…不安が頭をよぎる。


「行くなら私も一緒に…」
「はぁ!?馬鹿かお前は!業務提携しているとはいえ、お前と俺の会社はライバル会社だろうが!」
そんなお前にあれを見せられるか!

「もういい!お前に話しても時間の無駄だ。」
バンとテーブルを叩き、瀬人は立ち上がってリブングから出て行こうとした。

いつもの癇癪。ペガサスは小さくため息をつきながらその後ろ姿を見送った。

「セト、じゃぁ今夜は遅いのですか?」
「多分な。先に寝てていいぞ。」
一瞬振り返り、瀬人はそのままドアを閉める。

一人残されたペガサスは、読みかけていた本をまた開き始めた。


「ひゅうらカンパニー…か…」
何事もなければいいが…

瀬人が出て行ったドアを見つめながら、ペガサスは再び本へと気持ちを移していった。





ここは…どこだ…

俺は確か…料亭に…居て…

頭が朦朧としている…どうして…足が動かない…体が…声が…

「気分はどうかな?海馬社長。」
気分…?最悪だぞ…
「おお?中々気持ち良さそうだね。ほら、もうここが濡れているよ。」
何の…事だ…?
「可哀想に。我慢しているのかね?遠慮はいらんよ、自分でするがいい。」

呆然とする頭の中で男の声がこだまする…
何を…しろと…?

「ほら…自分で掴んで擦りあげろ!」
両脇から手が伸び、瀬人の腕を掴むと、下腹部へと道びいていく。
熱い塊に触れると、瀬人の身体がびくんと震えだした。

「あっ…」
自分の意思とは関係なく、触れた瞬間から両手が動き出す。
すでに濡れているそれはジュッジュッと音を立て擦りあげられた。
「いっあああっ」
「ああ、いい声だね、やっぱり。ちゃんと録画できてるかな?」
顎を上げてあえぐ瀬人の頭をくいっと捻り、ある方向に視線を向けさせた。

レンズに自分の姿が映し出されている。
赤いランプが転倒しているのはそれが録画中だという事を示す。

頭の中で何が行われているのか瞬間で理解した。
だが身体は快楽を求め、両手の動きは止まらなかった。
「あっあっ」
「そろそろイきたい筈だ。その瞬間をちゃんと撮れよ。」
男の声が耳を突く。
カメラが目の前に迫り、自分が喘いでいる姿がレンズに映っているのがはっきり見える。
そのレンズが身体を舐めるようにパーンし、今まさに絶頂を迎えようとしている肉棒に辿り着いた。

その瞬間、瀬人はぐぐっと身体を反らし、甲高い声を上げた。

「ああああ!」
びゅるっと白い液が飛び散り、カメラのレンズを汚していく。
そのまま前に倒れるようにぐったりしている瀬人を、カメラは万遍なく写していった。

「素敵なシーンが取れたよ、社長。これは今度の取引にも使わせて貰おうかね。」
「ハァハァ…」
「おや、言葉も話せないくらい気持ちよかったのか?」
「いや、まだまだ足りないと見える。では、可愛がってあげなさい。」

パチンと指が鳴る音がすると、瀬人の周りをチンピラ達がすっと取り囲んだ。
朦朧とする瀬人の肩を抱き寄せ、その身体に腕を回す。
白い胸を弄くり、突起を摘み、首筋に噛み付く。
もう一人も同じ様に胸を弄り、舌を這わし、半開きの唇に吸い付いた。

求められるままに舌を受け入れ、咥内から犯される。
掻き回されて舌を絡ませ、唾液を注がれ飲みきれずに口端から流れ出す。
その姿があまりにも淫猥で、男達の嗜虐心を更に高めていった。

瀬人は一切の抵抗をしない。いや、出来なかった。

指定された料亭に着き、和やかな雰囲気で始まった筈の会食。
未成年だから、と酒は断ったが、挨拶代わりに一杯だけと無理やりお猪口に注がれた。
一杯だけなら…そう思い、瀬人はその酒に口をつける。


それが悪夢の始まりだった。

身体が痺れ、呂律が回らなくなり、意識が朦朧としてくる。
身体の芯が熱く悶え、瀬人は荒く息を切らし始めた。
「中々よく効く薬だろう?したくてしたくて堪らなくなる。そして快楽に従順になる薬だ。」
あの酒に…そう思った時はすでに手遅れだった。

瀬人の全身に薬が行き渡り、瀬人の理性は完全に失われ、眼の前にいる男の言葉通りに行動する奴隷に成り下がる。

「熱いなら脱げばいい…海馬社長…」
そう囁かれ、何も考える事も出来ずに瀬人は上着を脱ぎだした。
何故…?俺はこの男の言いなりに動く…?
ネクタイを外し、シャツのボタンを外していく。
ズボンのベルトに手をかけた時、瀬人は一瞬躊躇する。

「脱ぎなさい…海馬社長…」
その言葉に瀬人は動きを再開した。

すべての服を脱ぎ捨てると、男達は瀬人の裸体に眼を奪われていた。

「ほぉ…これは美しい。なるほど、剛三郎氏が絶賛する訳だ。」
「では瀬人君。楽しい撮影会を始めようではないか…」


男の合図に、カメラを持った部下が瀬人を映し始める。
虚ろな眼でそれを認めても、瀬人にはもうどうする事も出来なかった。


ペガサス…!!


男達の陵辱が始まったその時…
瀬人は心の中でその名前を叫び続けていた…



to be continues.  




’05年冬コミ新刊本の一部小説です〜
この後の続きは新刊にて。(ぺこり)
瀬人はこの後3日間夜中帰りをしてペガサスやモクバと顔を会わせない様にします。
身体中に残された跡が消えるまでは会えないと思ったのでしょうか…

そんな瀬人をペガサスが見逃すはずはなく。

遅く帰ってきた瀬人の部屋でペガサスが待ち構え…

こんな感じの本です〜
興味がありましたら是非お手に取ってみてやって下さいませ。(ぺこり)


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