ジュリアスの涙がクラヴィスの頬に落ちていく。
その瞬間、ジュリアスの身体から暖かい光のサクリアが発せられ、クラヴィスを包みはじめた。
「光のサクリアが…何が起こっているのだ?」
自分の身体から溢れ出したように流れ出すサクリアをジュリアスは、呆然と見つめた。
徐々にクラヴィスの身体から体温が、失っていた色が取り戻されていく。
「サクリアの奇跡…なのか?」
奇跡でも何でもかまわない。光のサクリアが必要ならば、全て奪えばよい。
私の全てを捧げるから…クラヴィスを……どうかクラヴィスを目覚めさせてくれ!
「クラヴィス! 戻って来い! 私の元へ!」
ジュリアスの全身全霊を賭けた祈りに似た叫び。
それに呼応するかのように、クラヴィスの瞳がゆっくりと開かれ、自分を見つめる恋人を不思議そうに見返した。
「…ジュリアス?」
「クラヴィス!」
ジュリアスは、歓喜に覆い被さるようにクラヴィスを強く抱きしめた。
「もう二度とこのような想いをさせることを許さぬ!」
「ジュリアス、すまぬ」
初めて見る涙。嗚咽を噛みしめる恋人…涙が夜着を濡らしている。
守りたい一心で庇った行動が…これほどおまえを悲しませてしまうとは…
「おまえを悲しませるつもりでは…すまない」
「何も言うな。こうしてそなたが帰ってきた…それだけで……」
「おまえの声が聞こえたのだ。だから、帰ってこれた…おまえのおかげだ」
おまえの暖かなサクリアが、おまえの光が、闇をさすらっていた私を導いてくれた。
クラヴィスは、ジュリアスの頬に両手を添えると自分に向けさせ、口づけた。謝罪と感謝を込めて。
唇を離すと、お互いの存在を確かめるように見つめ合う。
「何処へも行くな。愛している…クラヴィス」
「行かぬ。おまえの傍にいたい…ジュリアス、愛している…」
抱きしめあい、貪るように何度も口づけを交わしていく。
戦いは続く。これから先もまた同じことを、互いの立場を変え繰り返すかもしれない。
だが、おまえが死に瀕した時は、今度は私が必ず呼び戻そう。
そして、再び私に死が襲った時は、私を呼んでくれ。
おまえの声だけが私を現世に繋ぎとめるから。
END