悲鳴一つ上げる暇なく、クラヴィスの身体は、机の上に寝かされ押し倒されていた。両腕は、しかっりと机に押さえ込まれびくともしない。ジュリアスは、欲望に顔を輝やかせ、捕らえた獲物の料理を、まるで舌なめずりしながら、見下ろしているようであった。
「ジュリアス! 離せ! 人が来たらどうするのだ!?」
「追い返すに決まっているではないか? うるさい口だ」
ジュリアスの唇がクラヴィスを捕らえる。深く舌を差し入れ、舐めまわし、音をたてて吸う。
「ん…」
微かに喘ぐクラヴィスの反応を確かめながら、ジュリアスは、唇を嘗め、舌を絡ませる。淫らな音が、荒い息の中に混じる。乱れ始めた息と一緒に、クラヴィスの身体がビクビクとわななく。
「まだ、その気にならぬか?」
ジュリアスは、唇を離すと、反応を示し始めたクラヴィスのモノを、服の上からやんわりと握り締めて、意地悪く問い掛けた。
クラヴィスは、怒りと羞恥に紅潮し、潤んだ瞳でジュリアスを睨みつけた。
「分かっていて、聞くな!」
「一応、そなたの意見も聞いてやろうかと思ってな」
ジュリアスは、にこやかに答えたが、すぐにクラヴィスには、それが表面だけである事がわかった。
機嫌が悪い。私が逃げていたせいだろうが…こんな時のジュリアスにさんざん焦らされて、幾度泣かされた事か。
「ジュリアス…焦らされるのは、好きではない」
「私もだ。だが、始めにそうしたのは、そなただ。覚悟するのだな」
「まだ、執務が残っている」
「私は、終わらせた。終われば、手伝ってやる。だから、そなたも協力しろ」
仕方ない。どうせされるのなら、出来るだけ負担のかからぬ方がましだ。クラヴィスは、大きくため息をついた。
「……わかった」
クラヴィスは、ジュリアスの首に腕を回し、自ら、口づけた。ジュリアスは、差し込まれた舌を優しく絡めとって、満足そうに応えながら、黒いロープをはだけさせていく。
ジュリアスは、瞼へ、頬へ、首筋へと舌を這わせ、その艶やかな肌を味わい、胸の感じやすい突起を口に含み、舌で転がし、強く吸い、歯で噛んで引っ張る。
「ああ…」
クラヴィスの息が大きく乱れる。どうにもならない身体の反応に、小さく身震いをした。ジュリアスの指が、感じやすい秘孔を弄び、くすぐるようにうごめき、ゆっくりとかき回す。
「ジュリアス」
クラヴィスの腰が淫らにうねり、ジュリアスを欲する。
「う…ん。もう……」
「まだ、達かせてやらぬ」
ジュリアスは、耳元に囁き、知り尽くしたクラヴィスの身体を、巧みな愛撫で、弄び、ギリギリまで燃え立たせ、突き放していく。高めるだけ高められ、絶頂を迎えさせてもらえないうずきに、クラヴィスは、身悶え、喘ぎ、懇願した。
「もう許して……くれ」
「逃げたそなたが悪い」
ジュリアスの指が、動きを速めた。クラヴィスが訴えるほど、ジュリアスの愛撫は、執拗になる。クラヴィスは、喘ぎ、乱れ、泣き叫び続けた。
喘いでいるクラヴィスにジュリアスがのしかかり、待ちわびた激しい衝撃がもたらされた。
「ああ!!」
ジュリアスの腰がゆっくりと動く。その動きに合わせてクラヴィスの口から、間断なく吐息が洩れる。
「あっ、ジュリアス…ジュリアス」
恋人の背中を強く抱きしめながら、クラヴィスは、何度も大きく頭を振る。
ジュリアスの動きが徐々に激しさを増し、クラヴィスを強く、熱く、何度も突き上げて貫く。
「ああっーー」
クラヴィスが歓喜の悲鳴を上げるのを、ジュリアスは、恍惚の笑みを浮かべ見つめた。
ジュリアスに協力したにも関わらず、クラヴィスは、あっさり開放される事なく、焦らされ、三度達かされ、二度受け入れる事になる。
こうして、クラヴィスの午後は、暮れて行った。
ジュリアスは、クラヴィスの書類をテキパキと片付けながら、寝椅子に横たわる姿を見た。クラヴィスは、クッションに顔を埋め、苦しげに肩で息を吐いている。
「そなたの体力の無さには、呆れる」
「自分を…基準に……するな」
その声は、悲鳴の上げ過ぎて掠れ、泣かされた瞳も充血していた。ジュリアスは、終わった書類を机の隅に押しやると、クラヴィスの元へ歩み寄る。
「あの程度の書類など、すぐにに済ませられるだろう?職務怠慢過ぎる」
午後からするつもりだったのをおまえが邪魔したのだろう! と、怒鳴る気力もなく、クラヴィスは、恨めしげにジュリアスを睨んだ。
ジュリアスは、その視線を気にした様子もなく、クラヴィスの前髪をかきあげ、愛し気に額に口づけた。
「送っていこう。今夜は、そなたの所へ泊まる事にする」
押し付けられる唇のしっとりと優しい感触にクラヴィスは、うっとりと目を閉じ、頷いた。
ただ泊まるだけで済むはずもなく、その夜もジュリアスがクラヴィスを欲し、挑みかかった事は、言うまでもない。
END