誘い
-いざない-


 ジュリアスは、普段の彼らしかぬ乱暴さで執務室の扉を閉めると、椅子に座り目を閉じる。まだ、顔が熱く息も荒い、体の震えも止まらなかった。

「あの二人があのような間柄であったとは…信じられぬ」

 脳裏に浮かぶのは、先程、垣間見たオスカーとクラヴィスの情交。
 あの日以来、クラヴィスと顔を合わせづらく、オスカーに行かせたものの、なかなか帰らない事に豪を煮やし、渋々執務室に出向くと机の上で繰り広げられていた禁断の行為。
 まさかと自分の目を疑った。すぐにその場を離れられなかったのは、二人の関係に対する驚愕でも神聖な執務室を汚す怒りでもなく…

 クラヴィスの恍惚とした表情。
 オスカーを呼ぶ切ない声。
 甘く掠れた吐息。

 初めて見る表情、声。クラヴィスの淫靡さに目を奪われ、胸が締め付けられるような痛みに襲われた。
 クラヴィス…そなたは、オスカーを愛しているのか?
 そなたが誰かを愛する事が、何故私をこれほど苦しめるのだ。




 自分の思考に取り込まれていたジュリアスは、何度も扉を叩く音でようやく我に返った。入室の許可を与えると、オスカーが先程までの情交の名残を一切感じさせる事のない颯爽とした姿で現れる。

 この者がクラヴィスを抱き、あの表情を、声を上げさせ…あの妖艶さを出させた。オスカーだけが知っていたもう一つの顔を…

『許せぬ!』

 不意に怒りがこみ上げる。これが何ゆえの怒りなのかわからず、更に苦々しい思いに支配される。冷静に対処しようと心掛けるが、目の険しさだけは、隠しようもなかった。
 書類を渡しながらオスカーは、ジュリアスの態度が自分が大幅に遅れた為と誤解し、内心の焦りを抑え余計な言い訳もせず謝罪のみ口にする。

「遅くなって申し訳ありませんでした」
「いやよい。ご苦労であったな」
「では、失礼致します」

 オスカーは、ジュリアスに書類を渡すと早々に立ち去ろうと背を向けた。

「待て!」

 即座に引き止められ、オスカーは振り返った。やはり理由を問われるのかと、頭の中で言い訳を模索する。が、躊躇いがちに、ジュリアスが問い掛けたのは、思いがけない事であった。

「その…そなたには、想い合っている者がいるのか?」
「突然どうされたのですか?」
「すまぬ。私生活にまで口を挟む気はなかったのだ。答えずともよい」

 オスカーの怪訝さは、当然なものである。今まで、私生活、特に恋愛問題を聞かれた事などなかった。
 ジュリアス自身も問い掛けてから後悔した。答えを聞いたところでどうなるものでなく、何故に自分が知りたいのかもわからなかった。ただ、あの行為の意味を確認したかったのかも知れない。




 オスカーは、怒りのオーラが影を潜め、自問自答をしているかのように考え込むジュリアスをつぶさに観察した。

 このご様子は…やはり、見られたか?
 と言う事は、あの怒りは俺への嫉妬ってところだな。 かなり動揺されてはいるが、もう少し掻き回してみるか。
 ニヤリ笑うと、真剣な口調で話し出した。

「もちろん…俺には、愛する人がいます。いつも気になって傍にいたくて、いつでも触れていたいと思っています。その人の全てが欲しいと願ってやみません」

 オスカーは、ジュリアスの反応を見ながら、煽るような言葉を選ぶ。もし、この場にクラヴィスがいたならば、『嘘を吐くな!』と怒りの形相で睨まれた事だろう。

「愛とは、そういうものか?」
「そうです。何かと用を見つけては、側に行こうとしてしまいます。その人が他の誰かに目を向けようものなら、怒りのあまり何をしてしまうか」

 オスカーの話す内容は、そのままジュリアスの行動だったが当人は気付く様子もなく、頷きながら聞いていた。

「そなたでも、そのように想うものなのか?」
「俺だけでなく恋をしている者は、皆そうなります」
「なるほど。そう言うものなのか…」

 含みを持たせてみても感心するだけのジュリアスに、オスカーは、呆れたようにこっそりとため息を吐く。
 こんなに言っても、お分かりにならないのか? 鈍い…鈍すぎる。

 ジュリアスは、虚偽を見抜く事が出来ず、偽りの想いに胸を打たれていた。
 オスカーほどの男がこうまで言うとは、互いに真剣な想いを抱いている証か。そうであれば、言うべき言葉はない。
 ただ…この者を見た瞬間の怒りの源や胸の苦しさの正体は?
 彼女に伝言を託された時のように身を切られるようだ…
 しかし、昔の過ちを繰り返してはならぬ。

 ジュリアスは、感情を押し殺し優しさを込めて話す。

「その者を大切にしてやるがよい」




 オスカーは、ジュリアスがクラヴィスへの恋心を、いつまでも気付かない事に苛立っていた。

 これでは、おもしろくないぞ。もっと楽しい展開を期待していたのに…
 とっておきの切り札を出してみるか。

「そう言えば、その人が近くで眠ろうものなら、その唇を奪いたくなりますね」

 ジュリアスの表情が瞬時に硬ばる。オスカーは、予想通りの反応に満足すると、とどめを刺すように言い放った。

「さっきの俺達を見て、俺に怒りを感じませんでしたか?」

 絶句するジュリアスに一礼をすると、オスカーは、悠然と部屋を後にする。

 さて、これから、どうなるか?
 いくらジュリアス様と言えど、当然自分の気持ちに気付かれた事だろう。
 俺に遠慮して諦められるか。それとも、クラヴィス様に行動を起こすか? 後者なら、見物だがな。

 後は、クラヴィス様次第か。人の気持ちには、敏感なこの方も自分の気持ちに疎いところがおありだ。ジュリアス様の小言を煩わしいと言いながら、どこか楽し気に待っている。

 俺から見れば、似たもの同士。二人がうまくいけば、極上の情人を失う事になるわけか。もったいないが…いづれ失う事なんてわかっていたさ。
 だから、俺が引導を渡すのも悪くないだろう。


 ジュリアスは、自室のソファーにくつろぎながら、オスカーが語った恋と挑戦的な言葉を思い出していた。

『そう言えば、その人が近くで眠ろうものなら、その唇を奪いたくなりますね』

『さっきの俺達を見て、俺に怒りを感じませんでしたか?』

 あの時、眠るクラヴィスの表情があまりに無防備だったゆえ、唇に触れてみたくなった。口づけた瞬間、支配していたのは…自分に対する驚愕よりも触れ合えた歓喜。

 軽率な行動を思い出したくもなく、考える事から逃避していた。だが、実際考える必要などないことだった。何も想わぬ者に、まして同性相手にあのような行動が取れる筈がないのだから。
 彼女の事にしろそう考えれば納得できる。嫉妬ゆえに伝言を伝えたくなかったのだ。

 私は、クラヴィスを愛していたのか?
 今までそのような自分を認めたくなくて、心の奥を見ようとしなかったのかもしれぬ。

 オスカーは、私が垣間見てしまった事、私のクラヴィスへの気持ちを知った上で言ったのであろう。牽制のつもりか?
 それにしても…真実に気が付いたというのに…あれは、すでにオスカーのものになっているのだな。

 しかし、私にクラヴィスを想う資格などない。愚かな嫉妬で恋を失わせ、深い闇に沈ませてしまった罪は、消えぬ。
 そう言えば、謝罪の言葉すら言った事がないような?

「謝らねば!」

 ジュリアスは、闇の守護聖の館を訪問する為、立ち上がった。




「すまぬ。このような時間に」
「用件は?」

 クラヴィスは、昼間の疲れで早々に眠っていたのを起こされ、不機嫌だった。

「その…私は、今までそなたに謝罪をしていなかった事を思い出して、謝らねばと」
「何をだ?」
「そなたを傷つけるような事ばかりしてきた。遅すぎる事は、承知している。私を罵倒するなり殴るなり、そなたの気の済むようにしてくれ」

 クラヴィスは、すぐに謝罪が何に対してかを察し、項垂れるジュリアスを呆然と見つめた。

 いまさら思い立ったものだ。私にとっては、とうに清算済みな事を…
 私もおまえの苦悩を知りながら、見てみぬ振りをしていたのだからお互い様だ。
 それにしても、こんな夜更けに言いに来る必要もあるまいに。
 思い立てば即、行動に移すとは本当に気真面目な事だ。
 クラヴィスは、ジュリアスの実直さを好ましく感じ、自然と笑を浮かべる。

「時間は、戻せぬ。とうに終わった事だ。もう、気に病むな」

 ジュリアスは、殆ど見る事の叶わなかった目の前の微笑を、別の意味に受け取った。
 今のそなたには、オスカーがいる。だから、過去の事として受け止められるのであろうか?

「そなたは、オスカーと幸せなのであろうな」

 ため息と共に吐き出された呟きに、クラヴィスの笑みが凍りつく。



 私とオスカーの関係を知らぬはず…嫌な予感がする。

「何故、オスカーなのだ?」
「本人に聞いた。隠さずともよい」

 やはり! ジュリアスに何を吹き込んだ?

「あれが何を言ったのか知らぬが、本気にするな」
「私は、そなたらを責める気はないのだ。そなたらが真剣に」
「違うと言っている!」

 クラヴィスは、ジュリアスの言葉を遮るように、言い放った。

 あれに何を言われたか知らぬが、何故寛容な態度を取っていられる!?
 オスカーとの関係を認めるというのか?
 彼女の時とは、大違いではないか!
 無性に腹立たしい気分に、瞳が険しくなる。

 ジュリアスは、強い視線と否定に戸惑った。
 本人から聞いたと言っても否定するとは…
 それほどまでに、オスカーを守りたいのか?それとも、私が信用できないのか?

 二人の視線が複雑に絡み合う。




「そなたは、オスカーを愛しているのであろう?」
「何故、私の言葉が信じられない?」

 クラヴィスは、ジュリアスの確信が疑問だった。
 巧妙に騙されているにしても、この思い込みは何なのだ?

 ジュリアスにしてみれば、二人の情事を見た後にオスカーから聞かされたのだから、その言葉の方が真実に思える。

「その…私は、見てしまったのだ。昼間そなたらの…」

 口篭もりながら告げたジュリアスの台詞で、クラヴィスは、ようやく納得できた。

 なるほど…まさか見られたとはな。
 オスカーの奴、それに気付き適当な事を吐いてジュリアスを挑発したのであろう。あの男のやりそうな事だ!
 おまえも騙されているとは言え、私を諦めるのか?

 クラヴィスは、言い知れぬ寂しさのような、怒りのようなものが湧きあがるのを感じた。そして、感情を制御できないままジュリアスにぶつける。

「おまえには、関係ない!」
「関係はある!私はそなたを愛している!」

 クラヴィスの感情の波に巻き込まれたように、ジュリアスは、怒鳴り返すとハッとしたように慌てて口元を抑え、赤面した顔を背けた。

「いや…その…」

 言いよどむジュリアスをクラヴィスは、先程までの寂寥感や怒りを忘れ、楽しげに眺める。ジュリアスは、クラヴィスから不快を表す言葉が出ない事に安堵すると、真正面から見据えた。

「この想いを伝えるつもりは、なかったのだ。愚かな嫉妬のせいで、彼女を失なわせ苦しい想いをさせた私に資格などない。同じ過ちを繰り返したくない。それゆえ、オスカーとの関係も認めようと。だが、そなたが他の誰かを愛する事が苦しいのだ。迷惑である事など承知しているが……」

 穏やかな表情でクラヴィスは、ジュリアスの真摯で一途な想いを神聖な気持ちで聴いていた。

「オスカーとは、誤解だ。確かに関係はあるが、お互いに割り切ったもの。おまえは、からかわれただけだ」

 ジュリアスは、クラヴィスの言葉に眉をひそめる。

「それでは、不道徳ではないか!」
「想い合っていなくともできる。試してみるか?」

 真面目すぎる反応にクラヴィスは、からかうつもりで言ってしまったが、左腕を痛い程に掴まれ睨みつけられた。

「そなたは…」
「すまぬ。冗談だ」

 真剣な告白の後に言うべき言葉ではなかったと、すぐに謝罪した。だが、ジュリアスは、クラヴィスを見つめたまま、腕を放そうとしない。

「ジュリアス?」

 クラヴィスは、本気で怒らせたのかと不安な気持ちでその名を呼んだ。返事もなくジュリアスは、腕を掴んだまま無言で歩き出す。その先には…

「本気か?」
「試させてくれるのであろう?」

 ジュリアスは、寝室の扉を開けながらクラヴィスを振り返った。


 クラヴィスは、自ら寝衣を脱ぎ寝台に横たわり、ジュリアスを待つ。

 まさかその気になるとは…真面目な者をからかうのでなかったな。
 しかし、ジュリアスと寝る事に嫌悪感も緊張もない。むしろ不思議なくらい落ち着いている。

 ジュリアスは、衣装を脱ぎ捨てると寝台に腰を降ろし、白い裸体を惜しげもなく曝すクラヴィスを見た。身体のあちらこちらに情事の名残。それさえも、美しさを際立たせている。

『想い合っていなくともできる。試してみるか?』

 からかっている台詞だとわかっていた。だが、一瞬…あの妖艶さが脳裏に浮かび、クラヴィスがたまらなく欲しくなった。
 もう、この者に不道徳と言えぬな。
 それにしても困った…同性相手にどうすればよいのか?

 いつまでも触れてこないジュリアスにクラヴィスは、怪訝さを隠せなかった。

「どうした?試すのであろう?」
「どうすればよいのか…」

 思わずクラヴィスは、ジュリアスを凝視する。
 こんな事で、よくも試す気になったものだ。 途方にくれたように、情けない顔を見せられたら怒る気にもならぬな…世話の焼ける。
 ため息を吐きクラヴィスは、体を起こすと、ジュリアスを押し倒し覆い被さった。

「クッ…クラヴィス!?」
「わからぬなら、黙っていろ!」

 クラヴィスは、ジュリアスに唇を合わせると、深く口づけた。 ジュリアスは、驚きながらも、すぐにクラヴィスの舌を受け入れ、ぎこちなくその舌を吸い返す。 ぎこちない動きで答えようとするジュリアスに、クラヴィスは苦笑しながらも、暖かい何かを感じた。

「口づけとは、こうするものだ。人の寝込みを襲うなら、鍛錬する事だな」

 唇を離すと、クラヴィスは、意地悪く言い放つ。ジュリアスが羞恥に赤面する。

「そなた!起きていたのか!?」
「耳元で説教を吐かれては、鬱陶しくておちおち、寝ておられぬ」
「鬱陶しいとは、何事だ!そなたの職務怠慢が」

 クラヴィスは、ジュリアスの小言を、軽く触れるだけの口づけで黙らせた。

「ジュリアス…説教をするなら、せめて、終わってからにしろ。それとも、やめるか?」
「最初に言い出したのは、そなたであろう?」
「すまぬな」

 いつものようなジュリアスとの会話が楽しい。 私に惹かれていても、公私混同せぬ潔癖さで、小言を言いに来るのを私は、待っていたのかもしれぬ。
 クラヴィスは、ジュリアスの睨み付けるような視線に、クスクスと笑い返し、ジュリアスの胸に顔を埋めた。 ジュリアスが戸惑いながら、クラヴィスを抱きしめる。

「クラヴィス、そなたを愛してる」

 クラヴィスは、小さく頷き、目を閉じた。
 ただ、抱きしめられるだけが、こんなに気持ちのよいものだと、知らなかった。
 オスカーの戯言の『愛してる』と違う真摯な響きが心地いい。

「眠くなってきた…」
「クラヴィス!いまさら…それはなかろう……」
「情けない声をだすな」

 クラヴィスは、密着している為、ジュリアスの昴ぶりを肌で感じていた。 仕方なさそうに、起き上がるとそのまま、体をずらし、ジュリアスの下腹部に額づくように、顔を落としていった。

「クラヴィス!やめぬか!」
「おまえがやり方を知らぬのだからしかたなかろう?」

 オスカーならば十分に慣らして、負担がかからないようにしてくれるが、ジュリアスにそれは望めない。 クラヴィスは、ジュリアスの雄を口に含むと舌を絡ませ、吸い上げ、高みへと導いていく。湿った音と、 ジュリアスの荒い息遣いが部屋中に響き渡った。
クラヴィスは、それが十分に濡れ勃ち上がると、体を立ち上げ、自ら腰を降ろす。ほぐされていない為、 自分に負担がかからないように、ゆっくりと慎重に体重をかけて、ジュリアスを迎え入れた。

「う…ん……」

 クラヴィスは、全身に汗を流しながら、ジュリアスの全てを咥えこむと、大きく息を吐いた。 ジュリアスがクラヴィスの腰を支えるように手を回す。

「私は、どうすればいい?」
「そのままでいい」

 クラヴィスは、ジュリアスの胸に両手を着くと、上下にゆっくりと動き始めた。 自分の性感帯を感じるように、深く浅く、円を描くように回す。

「あっ…う……ん」

 クラヴィスが喘ぎ、徐々に腰の動きが激しくなる。ジュリアスは、髪を振り乱し、妖艶さが増してくるクラヴィスを 見上げながら、クラヴィスのキリキリと締め付けてくる肉壁の熱さに酔いしれた。


「クラ…ヴィス。もう達く」

 ジュリアスの迸りを最奥で受け止めながら、クラヴィスも己の精を放った。
 クラヴィスが後ろに倒れそうになるのを、咄嗟にジュリアスが支えながら、上半身を起こす。

「大丈夫か?」

 クラヴィスは、無言でジュリアスに倒れ込む。

「クラヴィス?」

 ジュリアスがいたわるように、クラヴィスの髪を撫で、髪に、額に、頬にと口づけた。 クラヴィスは、気持ちよさに浸りながら、ジュリアスを抱きしめた。

「…ジュリアス。こんな感じは、初めてだ」
「何がだ?」
「オスカーと」

 オスカーの名を出した途端、ジュリアスが不機嫌に眉をひそめる。

「怒るな…最後まで聞け。オスカーは、身体を満足させてくれるが」
「どうせ、私は、何も知らぬ」
「怒るなと言ったろう?オスカーとは、心まで、充足感を得る事がなかった」
「あたりまえだ!愛のない行為をするからだ!」

 クラヴィスは、呆れたようにため息を吐き、ジュリアスを見た。

「おまえは、黙って聞けぬのか?」
「済まぬ。続けてくれ」
「おまえと寝るのは、いいものだな。初めて心までが満たされた。おまえは、暖かい。私も、おまえが好きなのかもしれないな」
「クラヴィス!」

 ジュリアスは、思わずクラヴィスを強く抱きしめた。その拍子に、繋がったままであった位置がずれ、クラヴィスに小さく悲鳴を上げさせた。

「すまぬ!つい、嬉しくて」
 クラヴィスの身体の緊張が、ジュリアス自身を締めつけ、硬度が増す。
 ジュリアスは、苦しげに息を整えるクラヴィスに躊躇いながら、問い掛けた。

「クラヴィス…もう一度よいか?今度は、私が動くゆえ」
「一々…聞くな」
「しかし、そなたの意見も聞かねば」

 寝台の中まで、真面目すぎるのも考え物だ。そこがジュリアスなのだが…
 クラヴィスは、答える代わりに、ジュリアスの頭を抱き寄せた。
 ジュリアスは、承諾と受けると、片手でクラヴィスを支えながら、やさしくシーツに押し倒した。 上手くできるだろうかと弱冠の不安を抱きながら。

〜後日談〜
 翌日の朝の会議にクラヴィスの姿がなかった。 それは、いつもの事なのだが、訳知り顔でにやつくオスカーを除く、他の守護聖が 訝しんだのは、それに対し、ジュリアスが一言も言わなかった事であった。
 あの後、ジュリアスは、クラヴィスが泣きながら 「もう、嫌だ」と哀願するまで、幾度も求め、失神させたうえ、起き上がれなくしてしまったのだった。

END

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