風見舞



 クラヴィス様の体を覆う衣装を一枚一枚剥がして、白い肌を露にして行く。
 久しぶりに見る滑らかな肌。奴の付けた無残な痕は、とうに消えていた。
 吸い寄せられるように、口づけを落とし俺の所有の痕を残す。
 クラヴィス様の背中を撫でていた手を腰、大腿へと落とした。

「あっ…ん」

 俺の手の下で、冷たい肌がどんどんと熱が高まっていくのを感じる。

 クラヴィス様の下腹部に顔を伏せ、勃ち上がり掛けていた中心を、最後まで口に含み、腰ごと吸い込むようにひたすら強く含み続ける。

「アッ…もういい」

 クラヴィス様が背中を浮かせ、我慢できないと訴える。その表情が見たくて、一度口を離した。
 喘ぐような息遣い、紅潮していく頬、肢体。

 素直な反応に満足すると、ふたたび、口に含む。指で根本を締め付けながら。

「もう…あっ!」

 クラヴィス様の願いを聞き入れず、きつくすぼまった後ろの門に、指を浅く入れた。
 細い腰がはねる。まだだ、もう少し我慢して下さい。

「はっ…ふっ……ああ!」

 クラヴィス様が解放を求め、俺の頭を両手で押しのけようと、全身を突っぱらせもがく。
 だが、もっと声が聞きたくて、その瞬間を引き延ばす。

 差し入れた指をもう少し深くもぐらせ、一箇所だけを集中して突く。
 俺の前後からの濃い愛撫に、紫水晶の瞳からとめどなく涙がこぼれていた。
 細部をじっくりと攻めるやり方に、耐えられないのか、クラヴィス様が逃げるようにずり上がる。

「欲しいですか?」

 分かりきった答えを承知で問い掛けると、クラヴィス様が俺を睨み付けた。
 壮絶な色気をたっぷり含んだ潤んだ瞳で。

「おまえはっ!」

 クラヴィス様の非難の声を遮るように、先端だけを強く吸い上げると、腰が大きく震える。同時に、ふたたび根本まで埋め込んだ指の動く速度を速めた。
 クラヴィス様の口から、吼えるような声があがる。

「うあ…あっ…あーー」

 逃げるように動くクラヴィス様の腰を指をくねらせながら追いかけ、場所を変えて、突きまくる。

 クラヴィス様は、すでにずり上がる気力もない。俺の成すがまま。

「もっと、深く欲しいですか?」
「もう…いかせ…て」

 限界を超え、声すらままならない哀願。
 俺は、指を含ませたまま吐精させた。

 クラヴィス様を胸に抱きしめると、クラヴィス様の手が俺の背中に回された。

「クラヴィス様、愛しています」
「おまえは、加減を知らぬのか!」

 甘い答えを期待したが、クラヴィス様の恨みがましい返答に、思わず苦笑してしまう。

「申し訳ありません。あなたの声が聞きたかったもので、つい調子に乗りました」
「オスカー、まったく…おまえは」

 クラヴィス様が呆れたように俺の名を呼ぶと、俺を魅了して止まない微笑を浮かべた。

「それでも愛してる」

 クラヴィス様は、俺の前髪をかきあげると、額に唇を押し当てた。

「あなたの中に入りたい。いいですね?」

 クラヴィス様は、答えの変わりに瞳を閉じる。瞼が微かに震えている。
 奴に貫かれた瞬間を思い出されたのか。

「クラヴィス様…あなたは、俺だけのものです。もう、誰にも触れさせない!」

 俺は、クラヴィス様に腰を打ちつけた。
 反射的に逃げる腰を抑え、奥へと進める。

「クラヴィス様!目を開けて俺を見てください。あなたを抱いているのは、誰かを見てください!」

 何度目かの呼びかけに、クラヴィス様がようやく瞳を開けられた。

「クラヴィス様、あなたの中にいるのは、誰です?」
「オスカー、おまえだ」
「あなたは、俺だけを見ていればいい。あなたが思い出すのは、俺だけだ」

 奴の記憶を消す事は、出来ないだろう。しかし、薄れさせる事は出来る。
 クラヴィス様が頷き俺の首に腕を回し、自分から唇を合わす。

「ずっと、おまえが欲しかった」
「俺もです。あなたが欲しくて気が狂いそうだった」

 深い場所をえぐるように突くと、クラヴィス様が髪を振り乱し、口を大きく開け、喘ぐ。時折、悲鳴のような喘ぎ声が洩れる。

「あっ…ひっ!」

 後ろを刺激することによって、前も感じ始めたのが分かる。熱くなりかけた前に指を絡め強く握り締めた。
 クラヴィス様のものから、雫が締める俺の手首へと伝い落ちる。

「痛ッ!ああっ…やっ」

 俺が体の奥を突くたびに、涙が溢れるのを唇で拭い去る。

「ああーー!オスカー!オスカー!」

 俺は、クラヴィス様の手を握りしめ手の平に口づけた。

「オ…スカー」
「ここにいます。あなたの中に」
「早く…溶ける」

 クラヴィス様がもどかしさを訴え、意味のなさない言葉を喚き、俺の分身を嬲るように、腰を激しく揺らす。その度に、寝椅子が大きな悲鳴を上げた。
 俺は、一度解放していたが、クラヴィス様に煽られ、ふたたび強く脈打ち始める。
 体の向きを変え、背後から抱きしめ、頬やこめかみに口づけた。

「いけますか?一緒にいきますか?」

 頷いた唇が次の瞬間、突然に放出したものに耐えられず、首を仰け反らせる。
 クラヴィス様が全身を震わせ、俺にもたれかかるように倒れた。




 ぐったりと疲れきった様子で、クラヴィス様が衣装を整えるのを手伝いながら、声を掛けた。

「大丈夫ですか?」
「気にするな」
「歩けません…よね?」

 クラヴィス様は、体を起こそうとされたが、すぐに寝椅子に体を預けられる。

「無理、だな」
「本当に申し訳ありません」
「気にするなというのに」

 クラヴィス様が苦笑される。これほど無茶をする気は、なかったんだが。
 やはり一ヶ月の禁欲生活の反動は、大きいぜ。体は、正直だ。

「はあ。では、遅くなりましたが帰りましょう」
「ああ」

 俺は、クラヴィスを抱き上げると執務室の扉を開けた。

「オリヴィエ!?」

 そこにオリヴィエの姿を認め驚く。何故ここに? いつからいた?
 オリヴィエは、不機嫌な表情で俺を見ると、いきなり、怒鳴りつけた。

「この下半身男! やるのは、いいけど…館まで待てないわけ!? せめて部屋の鍵くらい掛けなさいよ!」
「すまん!」

 何故、こいつに謝まる必要があるのかと思ったが、その剣幕につい、謝罪の言葉が出てしまう。 それにしても、鍵か。俺とした事が忘れてたぜ。迎えだけのつもりだったからな。

「しかし、何故おまえがいるんだ?」
「あんたに言い忘れた事があったから、来てみれば…とっとと、やっちゃってるし」
「見たのか!?」

 思わず声がでかくなる。俺だけが知るクラヴィス様のあの表情を他人には、絶対に見せたくないぞ!
 俺の非難の目に、さすがのオリヴィエもバツの悪そうな表情を見せる。

「ちらっとね。言っとくけど私だって、見るつもりなんかなかったわよ! 本能に突っ走ったあんたに、文句言われる筋合いは、ないからね!」
「その言い忘れた事の為に、今までいたのか?」
「そんなに暇じゃないわよ。帰ろうと思ったら、研究員の人が来たり、他にもね。いないって言ったけど、万が一扉でも開けられたらと、思ったら気が気じゃなかったのよ!」
「てことは…見張って?」
「そうよ!なんでこの私が他人の情事の為に!情けないったらありゃしない!」

「オリヴィエ」
「なあに?クラヴィス」

 今まで俺達の会話を黙って、聞いていたクラヴィス様が、声を掛けるとオリヴィエは、笑顔と優しい口調で答える。俺の時とは全く態度が違う。

「気を使わせて済まなかった」
「いいのよ、気にしないで。オスカーにあんたを壊すなって、言っておいたのに大丈夫?」
「平気とは、言えぬな」
「可哀想に。こんな下半身馬鹿なんて、振っちゃえばいいのに」
「…おい」

 オリヴィエの勝手な言い草に、声を掛けるが無視される。オリヴィエは、俺の腕の中のクラヴィス様の顔を覗き込むと、満足そうに頷いた。

「でも、いい表情になったね。よかった!この借りは、今度一緒に飲んでくれたら、帳消しにしてあげる」
「いつでも」

 二人だけで話が進められていく。ちょっと待ってくださいよ、クラヴィス様・・こんな要注意人物と飲むなんて、危険すぎます!

「オリヴィエ!その時は、俺も一緒だ!」
「やあよ!私は、クラヴィスと二人で飲みたいの!あんたなんて邪魔よ、邪魔!クラヴィス、約束ね!」

 クラヴィス様が頷く。俺の了解なしの約束は、無効だ! まったく油断ならん奴だ。
 まあ、こいつは、あいつの二の舞には、なることはないだろう。その点だけは、信用できる。ん? 言い忘れた事ってなんだ? 帰ろうとするオリヴィエを慌てて、呼び止めた。

「おい! いい忘れた事って何だ?」
「いまさら、言っても仕方ないけどやるなら館まで待てって事! じゃあね! おやすみ!」
「ああ、世話になったな」

 オリヴィエが軽やかな足取りで、去って行く。しばらくは、あいつに頭が上がらないだろうな。つくづく世話好きな気の利く奴だ。尤も、クラヴィス様が絡んでいるからかもしれないが。

「クラヴィス様?」

 クラヴィス様に目をやると、俺の腕の中で、いつの間にか眠ってしまわれていた。疲れさせてしまったから、無理もない。
 静かな寝息、穏やかな表情に安堵する。
 馬で帰ろうかと思ったが、起こしてしまうのも、忍びない。このまま館まで歩いて帰るか。この時間なら、誰とも会う事もないだろうし…
 月光の下、眠る愛しい人を腕に抱いて、歩くのもいいだろう。

END

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