薄い唇を包み込むように舌を絡め、何度も角度を変え唇をむさぼる。
耳朶を歯でそっと噛みながら、息を吹きかけ、手は、膝に背中に胸をまさぐった。
首、肩、胸の上と次々と、透き通るような白い素肌に唇を落とし、胸の突起をなぶると、腕の中の身体がびくりとはずみ、クラヴィス様の指が俺の腕をつかむ。
「あっ!……ん…」
クラヴィス様の素直な反応が、嬉しい。もっとあなたの声を聞かせて欲しい。
股間に伸ばした手が掴んだものを自在に嬲り、ゆっくりと扱き上げ、巧みに強弱をつけて握りしめた。
「あっ…う…ん……」
俺の髪に、手を差し込みながら、クラヴィス様の腰がはねる。喘ぎ声にまぎれて、クラヴィス様の瞳から、熱くなった涙の筋が流れ落ちる。
「…やっ…ん……うっ…」
普段のクラヴィス様からは、想像できない甘えを含んだ切ない声。導かれるように、そこを口に含み、強く吸い上げると、クラヴィス様の身体が反り返った。
膝を押し開き、内股の奥まで指で広げる。
「はぁ……あっ……」
クラヴィス様の息が乱れる…濡れたものが流れてゆく。
ゆるゆると繰り返す、指の抜き差しに、感じているのがわかった。
俺の指が潜っている場所は、溶けるように熱い。
この中に自分を埋め込みたい。
だが、慣らしたとはいえ、こんなにきつくて狭い場所に、俺を受け入れられるのか?かなりの負担だろうな…
「クラヴィス様…」
「…かまわぬから……」
俺の躊躇を見透かしたように、甘く囁き、俺の背を抱きしめる。クラヴィス様の瞳が微妙な揺らめきを見せて、魅惑の双眸が俺を誘い込む。
たまらず、クラヴィス様に己を打ち込んだ。
「ああ!ヴィクトール!」
クラヴィス様が激痛に耐え切れず、全身を緊張させ、痙攣を起こす。
落ち着くまで、クラヴィス様を抱きしめた。手を握りしめると、爪が食い込むほどの力で握り返す。
「大丈夫ですか?」
「やめろと言えば…やめるのか?」
「あなたがどうしてもと言うなら…」
これは、本心だ。ここでやめる事は、かなりの苦痛だが嫌がる行為を続けたくはない。
「……おまえは…」
クラヴィス様は、ため息を吐き言葉を続ける代わりに、自分から俺にくちづけ耳元に囁いた。
「やめるな…あっ………あ…」
昴めようと、下腹部に執拗な愛撫を繰り返す度、クラヴィス様の唇から細く漏れる吐息。激しく上下する胸、締めつけ絞り込むようにきつく咥え込む内壁。
「はぁ…ん……あぁ…」
絞り出されるか細い声に、逆に煽られたようになおさら激しく動く。
「ヴィ…クトール……もう…」
クラヴィス様が喘ぎながら限界を訴える。自分の限界も近い。
「俺も一緒に…」
クラヴィス様の中で、大きく膨れ上がり、一気に最奥まで突き、精を迸らせた。
俺の腕の中に愛する恋人がいる。決して手に入る事はないと諦めようとして、諦め切れなかった最愛の人。だが、この戦いが終われば…再び会えないだろう。
この戦いが終わるまでの一時の恋人でしかいられない。やっと手に入れたのに…どうせならこのまま……
「ヴィクトール…何を考えている?」
眠っていると思っていたクラヴィス様が俺を見上げ、問い掛けた。先刻までの情交で声が掠れている。
「不埒な事です。こうして想いが叶って、嬉しいはずなんですが」
「このまま戦いが終わらねば…よいとでも?」
「軍人失格です。陛下や民達の事を思えば…こんな考えを軽蔑しますか?」
「いや。私もそう思わないでもない」
クラヴィス様が身体を起こそうとされたが、すぐに顔が苦痛に歪む。呼吸は荒く、肩で大きく息をする。
「すみません。痛みますよね?」
「心配するな…」
クラヴィス様は、ゆっくりと上半身を起き上がらせると、俺を真上から見つめた。
「ヴィクトール…おまえは、今回の再会を奇跡だと言ったな。こうは、考えられぬか?」
「なんです?」
「奇跡は二度起こらぬから、奇跡と言うが…人の想いが奇跡を呼ぶとも、言うであろう?」
人の想い…俺のクラヴィス様への想いが?
「人の想いが奇跡を呼ぶなら、必ずその日が来る」
俺は、起き上がると真正面に、クラヴィス様を見据えた。この方は、強く変わられた。
「あなたからそんな前向きな言葉が、聞けるとは思いませんでした」
「おまえの影響であろう?」
「あなたへの想いが奇跡を呼ぶと言うなら俺も、待つことにしましょう」
クラヴィス様が微笑む。あなたを想う心なら、誰にも負けない自信がある。あなたが同じ想いで待つと言うなら…きっと、願いは叶うだろう。
俺は、クラヴィス様を抱きしめると、口づけながら、もう一度その身体を求めた。
END