「…っ…昴さんの中、すごい、狭い……狭くて、あつい…イっちゃいそ…」
大河が、ある程度まで僕の中に入り込んだところでぴたりと止まる。
そしてやや遠慮がちな挿入がしばし繰り返されたが、僕の身体の燻りは消えない。
彼なりに色々とどうすれば僕が気持ちよくなるか試行錯誤しているようだが、僕の身体を気遣ってか奥まで挿れようとはしない。
まだ、一番あつくてたまらない奥に辿り着いていないのに。
そこを、突いて欲しいのに。
ああ、もどかしい。
「たいがぁ……」
だんだんじれったくなってねだるような声が、口から漏れた。
「昴さん…?」
「あつい……あつい……奥が、あつくて……ダメ…もぅ……」
「奥?奥を突いて欲しいんですか?」
ぐぐっと引き寄せるようにして奥深くまで貫かれて、僕は悲鳴をあげた。
かすかに痛みも混じるような、それよりも強い快楽。
「やぁぁぁっ!…あ…ぁ……はぁ……はぁっ……ん…たいが…」
「昴さん…あんまり、締めると…ぼくが……出ちゃいますよ…」
大河はそのまま身体を密着させ、深く挿入したままかすかに身体を上下させてくる。
彼なりに必死に耐える方法だったのだろうが、僕のほうはその度に芽を彼の恥骨で圧迫されて身も世もなく悶えた。
「凄いねぇ、まぁそういうクスリなんだけど昴がここまで変わるとは思わなかったよ」
耳元で、サニーのクスクス笑う声が聞こえる。
「でもこんなに喚かれると部屋の外まで聞こえちゃいそうだな。昴、さっきの約束は覚えてるかい?」
「…んっ……んぁっ……はっ…あ、ぅっ……」
約束?と荒い息を吐きながらサニーを見ると、サニーは唇の端だけで笑った。
「お手本を見せてあげただろう?あの通りに出来たらご褒美をあげるよ……」
お手本…。訝しげな顔をする僕に、サニーは苦笑しながら指を噛み、口に含むと舐めあげる。
それで思い出した。さっきの彼の唇と舌の動きを。
はっとしてサニーを見ると、サニーも僕が思い出したのが分かったらしく嬉しそうに口元をほころばせた。
「思い出した?出来そう?」
あつい吐息の漏れる唇に指がまるで予行練習とばかりに入ってくる。
舌先に触れたそれを彼の真似をして舐めると、すっと指が引き抜かれた。
「じゃあ、よろしく頼むよ…昴」
そう言って差し出されたサニーのモノを見て、一瞬息を呑む。大きい。
こ、こんなのが僕の口に入るとも思えない…サニーは僕の指を全部含んでいたけれど。
思わず怯えたような目でサニーを見ると、彼も僕の視線の意味を察したのか僕の髪を撫でた。
「無理はしないでいいよ。昴の出来る範囲でいいさ」
サニーとそんなやり取りを交わしている間にも大河の動きは続いていて。
彼は僕にぴったりくっつくのを止め、浅くたまに深く結合を繰り返しては達しそうになったら止まる、の繰り返しのようだ。
「あぶないあぶない…」とか「…っ。ふ〜出るかと思った」とか独り言をぶつぶつ呟いている。
僕はもう理性とか恥じらいとかを何処かに忘れてきたらしい。
普段だったら絶対そんなモノに触れようなんて考えるわけがない。
だが、僕は荒い息遣いのままそれに舌を這わせた。
「……!昴さん…!」
「そうそう。思ったとおり飲み込みが早いじゃないか」
自分の行為に夢中になっていた彼も今頃気付いたらしい。大河がびくっとした拍子に僕の中の彼のモノも驚いたように跳ねた。
それはまた違う熱さとなって僕自身の身体を震わせたけれど。
「はぁ…んむ……んっ…」
目の前でぴくぴく蠢く物体へ興味をそそられて、僕はサニーの動きを頭の隅で思い出しつつ舌を絡める。
僕が舌を這わす度に、反応するように動くのが面白かった。
「サニーさん!昴さんに何をさせてるんですか…!」
歯を噛み鳴らさんばかりに大河が唸る。
だが、サニーはさらりとかわす。
「いや〜…キミのだけじゃ満足できそうにないし。それに、これくらいの特権はいいだろう?」
「昴さん、苦しそうじゃないですか!」
「じゃあキミがイかせてあげればいい。そっちに熱中するほどにね」
「う……」
……うるさい。
人の身体の上で言い争わないで欲しい。
おちおち集中できやしないじゃないか。
もうどっちがどっちだなんてことは僕の頭には無く。
僕を気持ちよくさせてくれるならどっちでも良かった。
身体の火照りはまだおさまらない。
あつい、あつい、あつい…!!
「わ…わかりましたよ!昴さん、ぼく頑張りますから!」
大河の一際うるさい声が聞こえたと思ったら。
僕の腰をぐっと掴むと、今までとは別の角度で僕の中を突き上げてきた。
「やぁっ…!あぁぁん…!!」
いきなり激しく抽挿を繰り返されて僕は暴れるようにじたばたともがく。
膣口付近を擦ったかと思えば、引き抜かれては別の角度で出し入れをされる。
時折、頭のなかでずん、と音が響きそうなほど深くまで貫かれると僕はもう限界だった。
「はぁんっ……ああっ……あっ…いやっ……んぅっっ…」
「昴…お口がお留守だよ。と、言っても無理か。大河くんも頑張るじゃないか」
サニーのに舌を這わせようとしても大河に貫かれる振動でロクに舐める事もできない。
「仕方ないな。これは後でどうにかして貰うか。昴、いいよもう」
舌を出したまま荒い息を繰り返す僕を見かねたのか、サニーは腰を引く。
まさかすんなり引くとは思っていなかったので少々後ろ髪を引かれつつも素直に下半身へのみ意識を集中させる。
頭がぼぅっとしてても、快楽への神経は人一倍貪欲になっていて。すぐに僕は下半身に与えられる快楽に飲み込まれた。
大河のが…奥まで当たって僕の一番奥のあつい部分を叩きつけるように突く。
彼の限界も近いのか、僕の中の彼のモノもこれ以上ないほどに張り詰めて僕を急かす。
それを受けて僕の秘所も彼を搾り取らんばかりに淫らにあつくひくつくのが自分でもわかる。
「ああっ…!や…はぁぁん!…たいが……たいがぁ…あつい…あついぃぃぃ……!」
自由にならない手の分とばかりに僕は腰を彼にすりつけ、足をきゅっと彼の後ろで交差させる。
あつい、あつい、あつい…身体が震えて、止まらない……!
身体の熱さは最高潮になっていて、もう顔から火でも出そうだった。
「だめっ……いやっ………んっ…いやっ!あ、ああ、うぅんんん!!!」
ぎゅうっと、下半身に目一杯力を入れると目を閉じて、息を止める。
直後、火花が散るような衝撃が、瞼の裏に広がった。
「…っ、昴さん…もう、出る…!」
僕の身体が達したのに促されるようにして、彼も僕の中へと打ち付けるようにして熱い精を吐き出す。
「あっ……ああ………」
思わず、それすらも感じようと自分の中がなおも収縮を繰り返すのを感じて驚く。
自分の身体がこんなに貪欲に男を欲すとは思いもしなかった。
…これも、クスリの影響なのだろうか。
それとも、僕の本能なのか。
頭がもやもやしてよくわからない。
「お疲れ、二人とも。いやぁ、若いっていいねぇ。見てるこっちが熱くなりそうだよ」
「サニーさん…」
「サニーサイド……」
僕も、どうやら大河も存在を忘れ切っていたらしい。
見学者の涼やかな声にそちらを見る。
サニーが足を組んで椅子に座ったまま僕たちを見ていた。
「とりあえず大河くんは昴を解放してあげたらどうだい?昴もぐったりしてるし」
「へ…あ、昴さん、ごめんなさい…」
慌てて大河が僕の中から自分自身を引き抜くと、あつくてどろりとしたものが一緒に抜け出るのを感じてびくっとする。
そしてまだ足りないと言いたげな花びらが、去った雄を名残惜しむかのようにひくひくと悩ましげに震えた。
あつい…。
イけばこの火照りもとれると思ったのに。
なんで、とれないんだ……。
「昴」
サニーは椅子から立ち上がり、僕に近づくと耳元でこう呟いた。
「満足したかい?…してないと思うけど。ほら、まだこんなだ」
「やっ……!はぅん、やぁ……ぁっ…ぁうん!」
長い指が遠慮なしに僕を掻き回す。僕の素足に、自分の昂りを押し付けながら。
「…昴がどうにかしてくれるんだろう?ボクをこんなにさせたのはキミだしね」
僕に理性が残っていたら。
それはこっちの台詞だ!と叫んだところだろう。
だが、僕には叫ぶ気力もなければサニーを拒むだけの理性も残ってはいなかった。
「まぁ、キミにはちょっと大きいかもしんないけど今なら入るかな。……こんなにどろどろだし」
いつの間に服を脱いだのか、サニーは僕の足を自分の肩にかけるとずぶずぶ僕の中へと侵入してくる。
顔には嬉しそうな笑みを浮かべたまま。
「…っぁああ!くぅぅ……っ……あああっ…!!」
あつい。
大河よりも大きくて太いものが僕を圧迫するように左右をこれでもかと押し広げながら内壁をこする。
「あっ!サニーさん、ちょっと目を離した隙に昴さんに何してるんですか…!」
欲望の残滓を処理していたらしい大河が慌てて僕の枕元にやってくる。
「何、って…見ればわかると思うけど。昴がまだ熱そうだったから鎮めようとしてあげるだけだよ?」
「昴さん、サニーさんのなんか挿れられたら嫌ですよね!痛いですか?嫌がる昴さんに無理やりこんな事するなんて…」
僕を心配そうに覗き込みながら大河はそんな事を言う。
…僕に理性があったらどっちもどっちだ!とどちらも張り倒すところだが。
当然の如く僕にそんな理性も余裕もなかった。
「……ボクだけを悪者にしないでくれないか。別にキミもボクもやってることに違いはないだろう。なぁ、昴」
ぴたりと足を閉じられて、膣壁の上側に近い部分をすりあげられる。
こすられた部分が、おさまった熱を再び点火させて僕の身体は昂っていく。
「やぁっ…!あん……あぁん………あつい…ああ……!」
一度達したせいだろうか。
僕の身体はより敏感になっていて、軽く抜き差しされるだけでも僕は首を振って快楽に声をあげてむせび泣いた。
足を閉じられている分、当然の事ながら入り口も狭くて、抜かれる瞬間に擦られる快感はさっきよりも強い。
「いやっ……いやぁっ!…あぁ…いぃ……気持ちいい…もっと………」
「昴さん!」
大河が目を見開いて僕を見る。
僕だって自分がそんな事を言うとは思わなかった。
「ははっ、そんなにイイ?昴、何処が気持ちいいんだい、言ってご覧。そこを可愛がってあげるから」
サニーはそう言いながら戯れに奥を突き、あとちょっとで抜けそうなほど腰を引くと、入り口をくすぐるようにかすかに動く。
大河よりも慣れているその動きは僕を翻弄し、焦らす。
タガが外れて、どんな事も言ってしまいそうだった。
「それは……」
「昴さん、ダメです!」
口を開きかけた僕を遮るようにして大河が塞ぐ。
「んっ…!んんっ」
片手が未だ戒められた僕の手首の先の指をぎゅっと握りしめ、片手が触れられなくても立ちっぱなしの胸の先端に触れる。
ちょっと怒っているのだろうか。先端をつねるようにつままれて、僕はびくっと身体を震わせた。
「おや、恋人が他の男に喘がされるのに我慢できなくなった?まぁいいや。あんまり騒がれても困るし」
キスするなり咥えさせるなり好きにしてていいよ、とサニーはさらりと言った。
「……ちょっと息苦しいくらいの方が気持ちいいかもしれないしね。昴を窒息させない程度で頼むよ」
「んー…んぅっ……っ…っは…っ」
サニーが動くたびに湧き上がる声も出させまいと大河は唇全体で僕の口を塞ぐ。
顔をぴったり密着させてるせいで彼の長い前髪やサイドの部分が頬を撫でてくすぐったい。
息苦しさに口をこじ開けようと舌を差し出すと彼はそれを自分の舌で絡め取って更に僕の口内奥深くまでキスをしてきた。
…ぼんやりした頭でもなんとなくわかるが、大河はどうやらサニーに嫉妬しているらしい。
自分のものだと主張したげに僕に触れ、唇を貪る。
サニーはサニーでそれを見て楽しんでいる様子で、陰核をつまんだと思えば靴下に包まれたままの爪先を優しく噛む。
わざと僕に声をあげさせようとして、それを防ごうとする大河と競い合うかのように。
もちろん僕の内部を蠢く楔はその間も中を味わいつくすように律動を繰り返し、僕の内壁はそれを扱きあげる。
「……んぅぅ…っ…ひぅ……ぅぅ……ん…ぁ………」
どちらも手加減なしに僕を責めたてるから、僕はもう必死に呼吸をするのが精一杯。
身体の火照りが鎮まるのかどうとかではなく、繰り返される快楽と責め苦に声なき声で喘ぐだけ。
軽くを含めればもう何度イったかわからない。
でもサニーは大河のようにはっきりとイかせてはくれない。
それが僕を焦らして、その反応を自分が楽しむ為と大河への当てつけなのは瞳を見れば分かる。
彼はにやにや笑ったままイきそうな素振りなど微塵も見せないのだから。
ああもう…どうにかして欲しい。
同じ刺激を繰り返されれば次第に身体はそれに慣れて物足りなくなっていく。
さきほどまでの火の出そうな熱さはないが、それゆえに身体より心がより快楽を求める。
さっきみたいに。
思い切り声をあげてイきたい。
大河の黒髪越しに僕を見下ろすサニーにちらりと視線を送る。
目線が合うと、サニーは微笑んだ。
「大河くん、同じ体位じゃ昴も飽きてきたみたいだよ。それに、昴はキミの唇じゃなくてその復活したペニスが欲しいってさ」
…飽きてきたのは事実だが誇張された気がする。
まぁいい。
「……昴さんを離してくれる気になりましたか。昴さんは、ぼくのです」
そう声をかけられてやっと僕から唇を離した大河はじろりとサニーを睨む。
僕がサニーにいいようにされていたのが相当気に食わなかったらしい。
「やだよ。もう少し楽しみたいじゃないか、こんな機会滅多にないんだからさ。さて、体位を変えようか」
そう呟き、サニーはぐるりと僕の身体を反転させる。
「ああ…手を縛ったままだと辛そうだねぇ。解いてあげるよ、昴。……そうだね、もっと感じるようにしてあげよう」
笑いながら手首を解放されるのも僕はぼんやりと眺めていた。長いこと束縛されていたせいで、手首がひりひり痛む。
やっと手首の戒めが解けたと思う暇もなく、視界が闇に包まれた。
「サニーさん!何やってるんですか」
「何って、目隠し。いいよねぇ、目隠しプレイ。ビジュアルにも興奮するし、好き勝手やっても見えないからやりたい放題だし」
「す、昴さんにそんなこと…!」
「手首は縛ったくせに」
「う…」
相変わらずうるさい。
「じゃあほら、昴にしてもらいなよ。やり方はさっき教えたから」
「い、いつの間にそんなこと…!」
腰の下に手を入れられ、膝立ちをさせられると自然を手をつき前に顔を突き出す状態になった。
見えなくても息遣いや動く音で自分の目の前に大河がいるのはわかる。
「大河…?」
「昴さん」
呼びかけて、手を伸ばすと握り返された。
それで彼の身体の大体の位置を把握すると、自分から彼に近づく。
頬に、あきらかに身体の他の部分とは違う熱い棒のようなものが触れた。
「昴さん!」
それに唇を近づけ、舌を這わす。
「いいよ……大河」
舌を絡みつかせながら、頭上にいるであろう大河に向かって囁く。
「してあげる………んっ…!」
背後に、僕の中を分け入ってくる衝撃を感じ、息を呑む。
「だそうだよ。頑張って、昴。彼をイかせてあげたらボクがこっちでもイかせてあげるから。キミが泣き叫ぶくらい激しくね」
言葉と同時にかすかに抜き差しされる。
…サニーは僕の邪魔をする気はないらしい。
さきほどの大河みたいに激しく動かれたら困るな、と思っていたらそれ以後は緩やかな動きしかしなかった。
あくまで僕が動きやすいように、そして口の動きを示すかのように。
僕は緩やかな律動に身を任せながら大河の陰茎の筋を舌で挟み込み、傘のような部分を舌でなぞり、全体を舐めあげる。
舐めるたびに反射的にかぴくぴく動いて僕の唇や舌から逃げようとするのを片手で支えながら。
「…っ……すばるさん…」
時折、びくっと反応しながらも大河が僕の髪を優しく撫でる。
「どう?昴の舌使いは」
サニーが嬉しそうに大河に尋ねる声がして、大河はくぐもった声で答えた。
「あ…すごい、絡み付いてきて……気持ちいいです…昴さん、凄い格好だし」
「はは、キミも素直だねぇ。さっきまではボクに昴をとられまいと必死だったのにさ」
「そ、それとこれとは別です!昴さんはぼくのですから!サニーさんにはあげません…ぅっ…」
……どうしてこの二人はこうもうるさいのだ。…気が散る。
僕は手近な大河を黙らせるべく幹への愛撫を止め、先端を口に含む。
舌をすぼめて全体を軽くつついたり、舌先を尿道に押し込むようにして丹念に全体を口の中で舐め回す。
中でもストローを吸うように口全体をすぼめて吸い込み、円を描くように先端をぐるぐる舐めまわされるのに弱いらしい。
「すば…昴さん……そ、それ…んっ………」
何だか喘ぎだしたが、まぁいい。
「ああ、昴さんそれダメっ」とかぶつぶつ呟く大河を無視して僕は行為に没頭する。
大河の幹をぐっと掴んで扱きながら、口内で先端を刺激すればするほど彼のはむくむくと大きさを増していく。
ついでに口内に苦い味が広がるのは彼の先から滲み出る我慢の証なのだろうか。
室内に響く淫らな水音。それは僕の、大河の、そしてサニーの網膜をも刺激するらしい。
「う〜ん…面白いなぁ。大河くんはああされるのが弱いのか……へぇ〜」
サニーは真正面からそれを見物してご満悦な様子で、声が弾んでいる。
何処まで大きくなるのかわからず膨張する一方の大河を舐めあげていたら。
「あぁ…昴さん……」
欲求に耐え切れなくなったのか、彼が僕の頭を押さえいきなりぐっと腰を突き出してきて驚いた。
喉の奥に当たって、息が詰まる。
「わひゃあ!?す、すいません…」
肩を震わせ、むせた僕に気付いて、大河が慌てて腰を引こうとする。
僕はその腰を両手でぐっと掴むと、自分の苦しくない程度に引き寄せた。
「昴さん!」
「いいじゃないか、昴の好きにさせてあげればいい。昴だって楽しんでるみたいだし」
「昴さん…」
大河は申し訳なさそうな声をしつつも、汗で僕の額に張り付く髪を丁寧にどけて耳にかける。行為の邪魔にならないように。
僕は僕で大河を追い詰めるべくすきまなく口をすぼめ、激しく出し入れしては彼を口内で扱く。
楽しんでいるか、と言われたら楽しんでいるのだろうか。
よくわからない。頭の靄は未だにとれず、身体の熱は燻っているのだから。
ただ、新しい玩具を手に入れた子供のように未知の経験に興味を惹かれていないといったら嘘になる。
さっきは僕を一方的に責め立てていた大河の一部を思うがままに操るのを、楽しんでいるといえば楽しんでいるのかもしれない。
僕を貫いていた熱い凶器が、僕の口の中では怯える子供のように僕の動きに支配されているのだから。
「…す、昴さん……もう、出る……」
大河の降参の言葉を聞いて、僕は満足だった。
口元に微笑みを浮かべ、彼をのぼりつめさせるべく動きを早める。
大河は我慢するように荒い息を吐いては身体を小刻みに震わせて、意識を集中させているらしい。
「……ごめんなさい…!出します…っ」
予告どおりに、どくんと彼のペニスが脈打ったと思ったら口の中に苦いものがぶわっと広がる。
一度、二度、と射精が繰り返され僕の口内一杯に溢れさせても彼の動きは止まない。
「…っ…んっ!」
その量の予想以上の多さに今度は僕が耐え切れなかった。
思わず苦しさに口を離し、ベッドの上に倒れこむ。
「昴さん!」
ずるりとサニーのが僕の中から抜け出たがそれもどうでも良かった。
「…はっ……はぁっ………はぁ」
口から漏れた精液が辺りに散らばっているのだろうか。
鼻孔を生臭い匂いがついた。
「昴さん!すいません、大丈夫ですか…」
ようやく全部出し終えたらしい彼が慌てて僕の様子を窺う。
「平気……」
肩で息をしながらべたべたする唇を舐め、口元を拭い、口の中に残っていた彼の欲望の後味も何度かに分けて飲み込む。
思ったとおりというか、苦かったがどんな味だかちょっと興味があった。
…二度と飲みたい味ではなかったが。
「昴さん、そんなの飲まなくていいですから…!」
これには大河の方が驚いたらしく、声がうわずっている。
「ハハハ…昴は大河くんが好きなんだねぇ。好きな男のでも飲めない女性のが多いっていうのにさ」
背後からサニーの笑い声が聞こえた。
「じゃあ、今度はボクの番だね。…ってあ〜あ、昴の髪にキミの精液がついてる。アレ、髪につくと落ちにくいんだよねぇ」
「え……ああっ!昴さん、昴さん、すいません。…あとで綺麗に洗ってあげますから……」
目隠しをされているので自分では見えないが、どうやら口を離したときに飛び散ったのがついたのだろうか。
手を伸ばして髪に触れると確かにところどころべたべたしていた。
それどころか。
「ネクタイも…これは使い物にならないねぇ。大河くん、弁償してあげなよ?キミの給料で買えるかわからないけど」
「うう…昴さん……ごめんなさい。今、とりますから」
「ダメだよ。言っただろう?ボクの番だと。キミはそこら辺で見てればいい」
「サニーさん!昴さんをあんまり虐めないで下さい!」
「うるさい…何でもいいから、早く、しろ」
がたがた喚く二人にいい加減いらつきが限界に達していた。
「だ、そうだよ。キミは今後の参考にでもそこで見てるといい」
「ううう…昴さん、助けて欲しかったら呼んで下さいね。サニーさんを殴り倒してでも助けますから」
大河はそう言ったきり黙ってしまう。拗ねたのだろうか。
だが、ネクタイまでダメにされたのには少しだけ怒っていたので言葉をかけるのはやめにした。
……お気に入りだったのに。
「じゃあ昴。キミに精液をぶっかけるような大河くんは放っておいて二人で楽しもうか」
「うぅ…ぶっかけてはいませんよ……」
「はいはい、キミはベッドの上に散らばったキミのを始末しといてね。キレイにしとかないと後で昴に殺されるよ」
「うう……」
サニーは大河に向かって冷ややかにそう言うと、僕を抱き起こして自分に寄りかからせる。
「あ〜あ、昴の黒い髪にもキレイな顔にもべたべたにしちゃって。…まぁ、そんなキミもそそるけどね」
首筋、鎖骨、胸、腹と撫でるようにして降りていった手が、さきほどまで彼を受け入れていた秘部で止まった。
「流石に大分乾いちゃったねぇ。…ま、すぐに熱くなるけど」
「…っ!!」
大河が一番最初に触れたときと同じ、ぬるりとしてひんやりとした感触と共に指が入ってくる。
入り口から奥まで、サニーは指の届く範囲を丁寧に塗りたくっていく。
「…はぁ……あぁ……サニーサイド…ん、ふぅっ………」
今度は、身体があつくなるのに5分もかからなかった。
芯が疼く感覚が再び襲ってきて、呼吸が荒くなっていく。
「なんだい、昴」
「シャツが…張り付いてべたべたする……脱がせてくれ…」
一度引いた汗が、再度背筋を伝わる不快感に眉を顰めながら顔を上向かせて彼に呟く。
「…お願いはそれだけ?……他にないの?」
遠まわしに言っても、意味が分からないよとばかりにはぐらかされる。
…仕方ない。
「身体があつい…鎮めてくれ……」
「……もっと直接的に言ってくれても構わないのに。これを挿れてください、ってさ」
「んんっ!…んぁっ……あぁ、ぁ………」
すでに浅ましく収縮を繰り返していた場所を満たすべく、サニーは僕を持ち上げて自分の上に落とす。
男根にこすられた内部が歓喜を訴えて淫らに絡みつき、もっととねだるように根元まで受け入れていく。
あつい、あつい、あつい、あつい…。
あついのは自分の中だろうか、それとも自分の奥を目指して進むサニーの分身なのだろうか。
「はっ……は、ぁっ…ぅん……うぅん…あぁ……」
「あぁ…いいなぁ、キミは。他人のモノなのが残念だよ。ボクのだったら隅々までキミを開発してあげるのに」
「ちょっと!どさくさにまぎれて何言ってるんですかサニーさん!……昴さんはぼくのです」
「はいはい、言ってみただけだよ。じゃあ、大河くんがうるさいから早めに終わらせるか」
ぐっ、と上半身が引き倒される。
…サニーはこの姿勢が好きなのだろうか。どうでもいいけど。
さきほどのようにうつ伏せで膝だけ立たされると、一層激しくサニーが腰を打ち付けてくる。
擦れ合う部分がこれでもかというほど熱くなり、僕はシーツにしがみついたまま髪を乱して叫ぶ。
「あああっ!…あっ、あっ、んんっ…いやっ、やっ、やぁっ…!!」
「さ、サニーさん…あんまり乱暴にしたら昴さんが壊れちゃうじゃないですか!」
「いちいちうるさいなぁ…キミは。それくらいは心得てるよ。そんなに昴が心配なら手でも握ってあげればいいだろう」
シーツを握りしめていた手を近づいてきた大河が重ねてきて、僕はそれを逆にぎゅっと握りしめた。
「…ぁつい……あつい、あつい、あついぃーーー…!」
あとはもう、ただ叫んで自分がイけるのを、待つだけ。
押し寄せる快楽の波がうねりとなって僕を襲い、全てを押し流してしまう瞬間を待つだけ。
視界が閉ざされている分、さっきよりも意識を集中させるのは簡単で一回はあっという間だった。
だが、サニーはそれでは許してくれずに更に僕を責めたてる。
「おや、イっちゃった?じゃあ、ボクもそろそろ終わりにするか」
「…ぅっ……あっ…は、はっ……んっ、だめ、また……っ、っーーーーーーーーーーー!!」
そこで、僕の意識は途切れ、闇に沈んだ。
「……っ!!」
びくん、と大きく肩を震わせて僕の意識が一気に覚醒する。
咄嗟に、周囲を警戒して気を張り詰める、が。
「あ、昴さん。目が覚めましたか」
その声に弾かれたように隣を見ると、大河が優しく僕を見て微笑んでいる。
「大河……」
「…?どうしたんですか、汗だくですよ」
きょとん、とした顔をして大河が首をかしげた。
額や首筋に触れると、確かに汗で濡れている。
「……僕は……」
「湯豆腐を食べた後に、昴さんがちょっとだけこうさせてくれ、ってもたれてきて。そのまま眠っちゃったみたいですね」
テーブルに目をやると確かに食べ終わった食事の残骸が置いてあった。
どうやら食後の満腹感で寝入ってしまったのだろうか。
しかし、何て夢だ……。
「えへへ、昴さんの寝顔を今度こそ見れましたよ。可愛かったなぁ」
「馬鹿…何を言ってるんだ」
大河はいつもと変わらない。
全く、僕もどうにかしている…あんな夢を見るなどと。
まさか欲求不満でもあるまい。
「じゃあ、昴さんも起きましたし食事を片付けてもらいますね。あ、食後に紅茶が飲みたいです。前は飲めなかったですし」
彼にそう言われて、ウォルターに連絡すると片付けと紅茶を二つ頼む。
すぐにやってきたウォルターに出ようとすると
「あ、ぼくが出ますよ」
大河がしゃきしゃきと立ち上がり、食後の食器類をウォルターに渡し、紅茶を手に戻ってくる。
その仕草も、表情もいつものように穏やかで優しげだった。
「いい香りですね。じゃあ、昴さん。一緒に飲みましょう」
だから僕は知らない。
彼が僕に見えないように唇の端だけで笑った事も
サニーサイドがホテルの一階で優雅にティータイムを楽しんでいる事も。
夜の時間は長い。
そこにどんなエンターテイメントの華が咲くかは愛と欲望のバランス次第。
これから始まるかもしれない淫らなショー・タイムを
僕はまだ知らない―――。
END