セイナル夜ニ


―――――夢だと、思いたかった。
あんな淫夢を見たのはクリスマス公演の準備で疲れている所為で。
現実にはあり得ないと。

大河と一緒に紅茶を飲んでいたはずが、どうしてこうなったのか。
「…んっ……!ん、ぁっ……あっ、あっ、んんっ…いやっ、やっ、やぁっ…!!」
目が覚めると、手首を自分のネクタイで縛られた状態で。
あとはほとんど夢と同じだった。
サニーに唆された大河の理性などあてになるはずもなく、僕の身体は彼によって開かされ。
それを優雅に眺めるサニーサイドの出来上がりだ。
そう、途中までは一緒だった。
僕の中に雄の精を吐き出した大河の代わりに、サニーサイドが近づいてくるまでは。


ぐったりした身体を起こされたかと思うと顎を上向かされ、開いた唇に口付けが落とされる。
僕の口を啄ばんだまま背後からすっと手に伸ばされたサニーの手は僕の膝を掴んで脚を大きく開かせ。
「……っ、何を…」
「しかし意外だよね」
嫌な予感に脚を閉じるより先にサニーサイドは無遠慮に秘裂に指を入れると鉤爪のように折り曲げ、中の液体を掻き出す。
白と透明の交じり合った僕と大河の体液の飛沫がベッドの上に飛び散った。
「…んっ、はぁ…っ…!」
「性別を人に知られるのが嫌なはずの昴が初めてじゃないとはさ、人は見かけによらないというか……」
「……っ!」
すっと顔が青ざめる。
行為に一杯一杯だった大河は気付かなかったようだが、冷静な観察者の眼は誤魔化せなかったらしい。
指にまとわりつく粘液をしげしげと眺め、赤がない事を確認したサニーは嘲るようにそれを僕の頬にべっとりと擦り付ける。
生臭い匂いが鼻腔をつき、眉を顰めるとサニーサイドが表情を窺うように覗き込んできて僕は顔を背けた。
「え、昴さん……そうなんですか!?」
「相手は誰だとか何時とか聞くのは無粋だよね、まぁボクは気にしないけど」
大河くんはそうじゃないんじゃない?と一瞬、思わせぶりな目線が僕に向けられ。
「―――――大河くん……昴のヴァージン、欲しくない?」
大河に向き直ったサニーはそんな事を言い出した。

「そ、それは……そうですけど。でも、今更……」
思いもかけない言葉に動揺した大河は僕とサニーを交互に見ながら必死に言葉を選ぶ。
僕が初めてではなかった事にショックは受けつつも自分にもやましい点がある分、強くは言い出せないようだった。
「……ヴァギナはね、でももう一つあるじゃない」
「え?」
「…なっ……なにを…」
サニーの指が、ゆるやかに尻を撫でたかと思うとその先にある蕾に触れた。
「サニーさん…そ、そこは……」
「…っ、サニーサイド、何処を、触って……!」
驚いたのは大河だけでなく僕も同じだ。
知識としてそこが性行為に使われる場合がある事は知っていたが、無論僕にそんな経験はない。
だが、サニーは暴れる僕を押さえつけながら事も無げに笑う。
「ハハ、この反応だとアナルは初めてかい?昴。良かったね大河くん。昴の『初めての男』になれるよ」
「昴さんの、初めて……。でも……そんな」
サニーの囁く甘い罠にぐらつきつつも流石に大河も即断する気にはなれないらしい。
思案するように眉が寄り、瞳が欲望と理性の狭間で忙しなく揺れた。
「何?抵抗あるの?……ていうか、昴が男だったらどうするつもりだったわけ?キミは」
「そっ、それは……その」
大河が何か言いたげな目でこちらを見たので、きつく睨み返すと彼は怒られた子供のように身体を縮こまらせた。
「どうせ昴が男だったらこっちに挿れるしかなかったんだし。まぁ、キミが嫌ならボクが貰うけど」
「…やっ……嫌だ…よせっ、変態……っ、あぁっ!」
指の腹で窄まりを軽くくすぐられ、全身が総毛立つ。
「ちょ……サニーさんのなんか挿れられたら昴さんが壊れちゃいますよ!」
「そこはちゃんと昴が痛くないように慣らしてからするに決まってるじゃない。ゆっくり、じっくりと時間をかけてさ……」
下卑た笑いを浮かべるサニーサイドはその行程を想像するだけで楽しげという風に口元を歪ませた。
……彼の目的は端からそうだったに違いない。
「プライドの高い人間ほど、背徳感から後ろで感じちゃったときの乱れ様はそりゃあもう凄いからねぇ〜」
「……勝手な…事を…っ!」
キッと睨みつけてもサニーサイドには微塵も動じた様子は見せない。
「ま、ボクの見たところ昴には結構才能あると思うんだよね」
鼻歌混じりに上半身を倒されると僕はおのずとサニーに向かって尻を掲げる体勢になる。
「……くっ…」
逃れようにも手首は縛められ、腰を押さえつけられてはそれも出来ない。
「……んっ……ひぁ…っ!…何……っ」
ひんやりとした液体が下半身に触れ、身が竦む。
「サ、サニーさん……それは?」
「ん?心配しなくてもこれはただのローションだよ」
キミに渡したのみたいにこっちもその気にさせるクスリでもあればいいのにねぇ、と悪びれもせず呟くと。
サニーはあえて中心を避け、円を描くような動きで肛の周りを丹念に撫でる。
「うっ……んんっ……んはぁっ……」
直接触れられずに済んだ事にほっとしたのも束の間。
代わりにくすぐったいような、こそばゆいような言い表しがたい感触に肌が粟立った。
「ん…んうっ……あ、うぅっ……」
特に会陰に近い部分に指が触れると秘所を触れられるかのように錯覚してしまう。
躰の奥が、熱くなる。
(なんだ…これ……こんな………こんな所を、触れられて…)
嫌悪感も羞恥心も無くなったわけではない。
だが、周りだけでなく時折指先が孔に触れるようになっても予想した苦痛ではなく甘い痺れが下半身に拡がって。
その事がまたショックで肉体的よりも精神的な屈辱に理性がじりじりと蝕まれた。
「…はぁ…っ……ダメ……ダメだ、そこは……」
サニーサイドの指が芯に触れる間隔がだんだん増え、そして閉じた場所を押し広げるような動きに変わっていく。
「ダメ、って……何が?」
「……っ…」
何、と言われても応えるのも憚られて唇を噛む。
「大丈夫だよ。これだけ解せば指の一本くらいなら痛くないはずだから」
言うなり、爪先が襞をかき分けるようにして潜り込んできた。
「あうっ……んんんっ!」
本来、排泄器官である場所への侵入に、反射的に拒もうとして入り口がきゅっと窄まる。
しかし、サニーの指は抜けるどころかその動きすら利用して内壁を擦り出した。
「…やっ……、そん…な……ところ、に…っ…!」
外側を撫でられていた時よりも強烈な刺激に背が弓のようにしなる。
「……はぁ…本当に入るんだ……」
感心したような声に振り向くと大河が目を瞬かせながらこっちを見ていた。
「―――――み、見るな……ッ!」
ちらと合った視線を反らし、シーツに顔を埋める。
顔から火が出そうなほど恥ずかしくて、そんな顔を大河に見られたくなかった。
…後ろの穴を弄られている姿を見られていることでもなく。
…大河の顔が嫌悪でなく好奇心と羨望のに満ちた眼差しだったからでもなく。
…彼の分身が、僕のこんな姿を見て立派にそそり立っていたことに心の何処かで悦びを感じている自分の顔など。

(大河の……あれが……僕の……中に…)
どう考えても入るとは思えない。
今だって指一本でも息苦しいというのに。
「…うっ……ん、ん、んっ……くぅ………」
指先でシーツを握りしめ、身体中に広がるぞわぞわとした感覚を必死にやり過ごす。
性感に限りなく近い何かが背筋を駆け上って、目の前がくらくらした。
「……いい感じに解れてきたかな。ほら、大河くん見てご覧。昴も感じてきたみたいだ」
そう言って、サニーは淫裂を左右にぐっと広げる。
触れられてもいない膣奥から零れた液が開かれた拍子に股の間を伝うのが分かり、それを見た大河が感嘆の声を漏らす。
「うわ……!昴さん、凄いどろどろ……」
「……んっ、ち…違っ!!…か、感じてなんか……ないっ」
どんなに否定しても、堰を切ったように溢れだす淫液は治まるどころか量を増すばかり。
「ま、後は大河くんでも何とかなるでしょ。じゃ……ボクはお先に、と」
すっと指が抜かれ、身体を反転させられる。
照明の眩しさに目を細めると、近づいてくるサニーが僕の上に影を作った。
「え、っ……あ……!?はああぁ……んんっ……!!」
息苦しさから解放されたのは一瞬で、直後に目も眩むような刺激が脳を衝いた。
痺れが全身に行き渡ると、全身がぐったりと弛緩する。
「…ぁ、はっ……はぁ……はぁ……っ……」
「……もしかして、軽くイっちゃった?挿れるだけでイっちゃうとかそんなに欲しかったの?コレ」
存在を示すように数度抜き差しされて初めて自分の膣口がサニーサイドを呑み込んだことを思い知らされる。
催淫剤の効果はもう抜けたと思っていたが、まだ残っていたのだろうか。
蕩けた場所が放つ卑猥な水音に耳を塞ぎたくなったが手首の縛めは未だ僕を拘束したままだった。
「……サニーサイド……っ……!」
「でも、もっと良くなるのはこれからだよ……そうでしょ?大河くん」
「っ、あっ……ん、……うっ……」
繋いだまま身を起こすとサニーは大河に結合部が見えるように僕を膝立ちにさせた。
「昴さん……」
「……!!」
大河の手が、おそるおそる僕の臀部に伸び。
「昴さん、こっちにも欲しいです?………ぼくの」
双丘をやわやわと揉みしだかれたかと思うと、爪先がもう一つの穴に触れた。
「や、嫌……っ!たい、が……そんな…とこっ………触れ……る…なっ!」
「でも、凄いヒクヒクしてますよ。物欲しそうに……」
「違う……違うっ!僕は……そんなこと……思ってな……やっ、ああぁっ!」
周りの潤みをすくい取り、大河の指が菊座の中に入ってくる。
前へ逃げようとしても、サニーの胸に頭を擦り付けるだけで逃れる場所など何処にもない。
僕は崩れそうな身体のバランスを支える為に目の前の腕を掴むのが精一杯だった。
大河の指が狭い場所を広げようと細かく揺れる度に、思考が欲望に押し流されそうになる。
一箇所だけを弄られていたさっきとは違う。
サニー自身は浅く沈めたままほとんど動こうともしないが、大河の動きは薄い粘膜を通して前にも伝わるのだ。
―――――快楽と、して。
「ふぁっ……、んう…っ……や、ひあっ……!」
「もうすぐ、挿れてあげますから…もう少し我慢してくださいね……昴さん」
大河のもう一方の手が汗ばんだ僕の背をさする。
その仕草がいつものように優しげだった分、台詞とのギャップにぞっとした。
最初は、大河のものを後ろに受け入れるだけでも無理だと思っていたのに。
このままでは……。
「昴」
僕の考えを見透かしたようにサニーサイドが声をかけてくる。
「怖がらなくても平気だよ。せっかくの機会だ……二人じゃ味わえない快楽を三人一緒に愉しもうじゃないか」
「んんっ!……はっ……うあっ……んぁっ……」
人生はエンターテイメントだからね、と呟いたサニーの指が腫れ上がった肉芽を捏ね潰すと。
喉の奥からせり上がる悲鳴にも似た矯声が口から漏れ、僕は四肢を震わせた。

「昴さん……力抜いて下さいね……」
「ふ……ぅ……、大河……?………っ、ぁ、あ、ああぁっ!!」
達した余韻で息を整えるのに一杯一杯で、最初は抜かれた指が再び入ってきたのだと思った。
だがすぐに違うことに気付く。
指よりも熱く太いモノが、蠢いて。
「はぁっ……これで……昴さんの…はじめては……ぼくのものですね……」
うっとりとした口調の大河が僕をぎゅっと抱きしめ。
……考えるまでもなかった。
背中に感じる重みが、彼の荒い息が、僕が排泄器官で大河自身を受け入れた何よりの証拠だった。
「―――――、や、嫌だっ……!!」
認識してしまうと途端に羞恥で身体が強張る。
散々慣らされたせいだろうか。
挿入された瞬間の痛みはなかったが、その事実もまた僕のプライドをずたずたに切り刻む。
無理だと思っていたからこそ瓦解しそうな理性をギリギリで保ってきたのに。
拒む拠り所がなくなってしまえば……流されて、しまう。
「…っ、……昴さん……力、抜いて……キツい……」
身を固くしたままそれ以上の侵入を拒む僕の緊張を解そうと背後の大河が首筋に吐息を吹きかけ、耳を甘噛みしてくる。
「んはぁっ……はうぅっ……っ」
僕が脱力したのを見計らって、大河がぐっと腰を突き出した。
今度は中をかき分け奥を目指して入ってくるのがはっきり分かったが。
突然、腰の奥に強烈な違和感と内臓を鷲掴みにされたような息苦しさに僕は身も世もなく悶えた。
「………くぅっ!く、苦しっ……たい、が……抜いて……く、はっ!」
「大河くん、最初からあんまり深く挿れちゃダメだよ。昴は初めてなんだからもっと優しくしてあげないと」
じたばたする僕をあやしながらそれまで傍観していたサニーサイドが苦笑に似た笑みをこぼす。
「あ、ごめんなさい…昴さん。……奥まで入れたら苦しいですか?じゃあちょっと抜きますね」
陰茎がずるずると抜けていくと息苦しさが抜け、代わりに排泄に似た背徳の快楽が背筋を突き抜けた。
「やっ……!あぁっ……い、嫌……抜くなっ…!」
「昴さん?……抜いてって言ったり抜くなって言ったりどっちなんですか?」
僕の言葉に大河が戸惑い首を傾げる。
後ろで感じてしまったことなど言えずに頭を振ると、サニーのせせら笑う声が僕を代弁した。
「……本来どういう器官だい、ソコは。それを考えればおのずとわかるだろう?どうすれば気持ちいいのかなんてさ」
「うーん……あ、もしかして。昴さん…こうされるのが気持ちイイ、とか?」
再びペニスが肛内に押し込まれ、焦らすようにゆっくりと引き抜かれた。
また、あの快感が襲ってくる。
「ん、あ……ふぁぁっ……!……ひぁっ……!」
「やっぱり。昴さんはお尻に入れられる時よりも抜かれる時に感じちゃうんですね。元々そういうトコですもんね、ここ」
妙に納得した大河は二度、三度とその動きを繰り返す。
彼としては事実を述べただけだろうが、僕の羞恥心を煽る十分な台詞だった。
「ち、違っ、……お尻で……なんて……感じてなっ…!」
「嘘ですよね」
恥辱に潤む目元を悟られないようにと言い縋る僕を大河はいつもの穏やかな口調で遮った。
「昴さん、口では嫌って言いながらここは全然嫌がってませんよ。ぼくのを、凄い締め付けてきて……」
小刻みに抽送しながら、大河は耳元で囁く。
「……っ!!」
「ほら、そう言われてまた締まった。昴さんの身体…すごく、いやらしい……でも、そんな所も大好きです、昴さん」
熱い舌と唇が耳の裏側を舐め、耳朶を噛み、中を舌先でくすぐられてむず痒さに身をくねらせると。
元々挿入の浅かったサニーのモノが僕の中から抜けそうになった瞬間、戒めごと手首を掴まれ逆に深々と埋め込まれた。
「…っ……はう、ぁっ……や…………っ!?……んっ、はぁぁっっ!!」
大河に意識がいっていた分、不意にサニーから与えられた衝撃に背が仰け反る。
「キミが後ろに慣れるまで待ってあげたんだから、そろそろいいだろう……?」
ネクタイが解かれ、掴まれた手首がひりひりと痛むのも快楽の前には些細な感覚にしか過ぎなかった。
「はっ……だめ……っ……動く、なっ……!……あ、あ、あぁっ……!!」
僕を抉るように腰を揺するサニーと対照的に、大河が何かを堪えるようにぴたりと動きを止める。
「……っ、サニーさん!……動くなら動くって言ってくださいよ。びっくりするじゃないですか」
「ああ、ゴメンゴメン。楽しそうなキミ達を見ていたらボクも混じりたくなってね」
全く申し訳なくなさそうにサニーは笑う。挿入の角度を変え、壁越しの大河を突くような動きながら。
「すごいでしょ、もう一人の動きが壁越しに伝わってきて……二人でするのとはまた気持ち良さが違うんだよねぇ」
「は、ぁ……確かに。ちょっとイきそうになって焦りましたよ、ぼく」
「これくらいでかい?これからが本番なのに。昴だって物足りないだろう、なぁ……昴?」
「は、あ、あっ……っ……そ、そんなこと……な……っ…!」
否定しても否定しても貫かれるたびに湧き上がる悦楽は波となって全身を火照らせる。
いつしかサニーに誘われるように大河も腰を打ちつけてきて、僕は二人に揺すられるがまま肩で息をするので精一杯だった。
ばらばらだった二人の動くリズムが僕の喘ぐ声に呼応して揃いだすと、快感が頭の中で何倍にも膨れ上がる。
膣壁と腸壁を擦られる度に互いがもたらす摩擦は僕の身体を震わせ、思考を快楽に塗りつぶしていった。
「ところで……昴、どっちが気持ちいい?ヴァギナ?アナル?」
「…っ、っ………そ、んな……はぁっ……!どっち……なんて、わから、なっ…んんっ…っ…」
もうどっちがどっちかなんて感覚は僕の中には無かった。
この高揚感をもっと与えてくれるならどっちでも良い。
理性のタガはとっくに外れ、自分と繋がった人間と欲望を貪りあうしか頭にないのは誰しも一緒だ。
「…っ…っ………ぼく、ですよね?昴さん……」
わずかに嫉妬の混じったかすれ声で、大河が呟く。
彼の恥骨が僕の尻肉と擦れ合うほど深く抜き差しされても、もう苦しさは感じなくなっていた。
「……そうなの?じゃあボクも頑張らないとね。昴の為にさ」
サニーは唇をぺろりと舐めながら僕の腰を掴むと、ずんと奥まで突き入れ媚肉の一番深いところを刺激してくる。
「はぁうぅっ!……奥っ……当たっ、てっ……気持ち…いぃ……!」
刺激された部分で感じる快感が蜜なってどっと溢れ、滴りは会陰部を伝って後ろの大河にも感じられたらしい。
「昴さん……こっちにまで垂らすほど濡れてる……そんなに、サニーさんのがいいんですか?ぼくのより?」
拗ねた声の大河は僕にのしかかると腸腔の奥を男根でぐりぐりとこすり立てた。
「……んぁあっ……!大河、たい、がっ……そんなっ……激し……したら……壊れ……るっ……!」
今までなら大河が激しく動くと余裕を見せていたサニーも今度ばかりは譲る気がないらしい。
前後から激しく突き上げられ、揺すぶられ、僕は壊れた人形のようにガクガク震えながら必死に息を紡ぐ。
絶え間なく押し寄せる恍惚感に一瞬気をやっては意識を揺り戻され、もうどれだけ軽く達したかもわからない。
終わりの見えない苦痛のような快楽の端が見えそうになって、僕は喉から声を絞り出す。
「っ!!…はぁっ……も……ダメっ……たいがっ……サニー……っ」
「……イきそう?昴」
サニーの問いに、僕は髪を揺らしながら頷く。
「も……イ……きそう……だからっ……!ふたり、も……一緒に……っ……イっ……て……欲し…―――――っ!」
何でそんな事を言ったのか自分でもよくわからないが。
この溶け合うような奇妙な一体感が途切れてしまうのが淋しいとでも感じたのか。
僕はあらん限りの力で大河とサニーを締め付ける。
「……!昴さん、出る……っ!」
「―――――、っ……あ……熱っ……い、っ………!!」
ほどなく二人のペニスが痙攣して、胎の最奥に熱い白濁を注ぎ込まれるのを感じながら……僕は、果てた。
「……今度は、ボクがアナルを犯してあげるから……二人きりで、ね……」
脱力しサニーの上にくずおれた僕の耳元で囁かれるのを聞きながら重い瞼を閉じると。
僕は絶頂の余韻に身を任せながら、意識を遠のかせていった。


「………う…」
「あ、昴さん。目が覚めました?」
朝陽に目を射され、瞳を開けると僕の顔を覗き込む大河の顔が頭上にあった。
「……たい、が……何で、君がここに……」
咄嗟に起き上がり、周りを見回す。
どう見ても僕の寝室で、僕のベッドだった。
「昴さん……忘れちゃったんですか?昨日のこと」
びっくりしたように大河が眼を丸くする。
「昨日、って……」
「ぼくとセントラルパークでデートして、その後昴さんの部屋で一緒に活動写真を見て、湯豆腐を食べて……」
律儀な大河が順序立てて話してくれたおかげで、おぼろげながら僕も思い出せた。
でも、その先は……?大河は何故、ここに居る?
疑問を目で訴えかけると、大河はにっこりと微笑んだ。
「ぼくと、昴さんと、サニーさんの三人で……愉しんだじゃないですか」
「!!」
瞬時に昨夜の淫靡な宴を思い出して頬が紅潮した。
あれは夢じゃ……なかったのか。
「身体は平気ですか?サニーさんは今日が早いからって帰りましたけど……ぼく、心配で」
「大河……」
「今日の公演の事忘れて、昴さんに無理させちゃいましたから。えへへ……でも大丈夫みたいですね」
「―――――……っ」
呆然として言葉の出てこない僕を無視して大河はしゃべり続ける。
「今日の公演、絶対に成功させましょうね、昴さん。それじゃあぼくは帰りますけど……」
そっと触れるだけの口付けが、落とされ。
「……今夜は、二人きりでしましょうね。ぼくが、昴さんの恋人なんですから」
あどけない顔に悪戯っぽい瞳を浮かべ、大河は秘密事のように囁いた。

微笑む大河の顔を見ながら。
僕は二人きりで満足出来るかと考える自分に気付いて身を震わせた―――――。


END


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