摩天楼の聖母
原始より繰り返されし人の営み。
人は性行為により子を生し、そして死んでいく。
だが聖母マリアは処女でイエスを懐妊したという。
処女のまま子を孕み、生むというのはどのようなものだったのだろう。
常人ならば、到底理解の出来ない感覚。
やはり彼女は聖女のような人間であったのだろうか。
ドッチモのジャズバー「マーキュリー」を訪れるのはもう何度目だろう。
水星の名を持つハーレムにあるジャズバーを僕は足しげく訪れていた。
信長による災厄で倒壊したときには援助までして復興を手伝ったほどだ。
…僕はこの場所を気に入っていた。
最初は音の流れとして解析していたジャズという音楽。
大河とドッチモがそれは間違っていたと教えてくれた。
そして足繁く通ううちにドッチモは僕の気持ちにも気付いていた。
…大河へのほのかな想い。
だが、それは叶うことはなかった。
彼が選んだのは欧州星組時代の仲間でもあるラチェット。
…感慨は沸かなかった。
てっきり、ジェミニ辺りかと思っていたが。
紐育に平和が訪れ、ドッチモの「マーキュリー」も僕が援助したからだろうか。
ほぼ元通りになっていた。
今日はその祝いを兼ねて…というのは建前に過ぎない。
大河とラチェットが二人で旅行に行ったのを知って、一人で居たくなかっただけだ。
空に冴え冴えと輝く満月も、二人が寄り添って見上げているのかと思うと今日ばかりは鬱陶しかった。
「よぅ、スバル。今日は面白い客がいるぜ」
入るなりいつものように話しかけてきたドッチモの顎の示す方に顔を向ける。
「……」
「ふらりと一人でやってきたと思ったら、何杯もかっくらって寝ちまった」
そこにはシアターとしても華撃団としても上司であるサニーサイドが居た。
珍しい、ここで見かけたことなど一度も無かったのに。
「サジータに連絡して連れ帰って貰おうと思っていたが、お前が来たなら丁度いい。どうにかしてくれるか?」
「……わかったよ」
そう頼まれれば断るわけにもいかない。
サニーサイドの肩を揺すって起こす。
「起きろ、サニーサイド」
「…う〜ん……ラチェット、もう少し……」
どうやら、自分をラチェットと勘違いしているらしい。
「……仕方ない。ドッチモ、僕はサニーサイドを送ってくる。その後に来れそうなら来るよ」
「悪いな、スバル」
電話を借りて、リムジンを呼ぶ。
「ほら、しっかりしろ、サニーサイド…」
「うー…もう飲めないよ……」
本気で酔っているらしい。
微妙に羅列がまわっていない。
ドッチモにも手伝ってもらい、サニーをリムジンに押し込める。
ほどなく、セントラルパークにあるサニーの屋敷へと辿り着いた。
「着いたぞ、寝室は何処だ」
「……ああ。奥だよ〜」
自分より遥かにがっしりとした体躯を支えながらサニーの屋敷に入っていく。
「全く…世話の焼ける」
サニーをベッドに寝かせて自分は部屋を出て行こうとした瞬間だった。
「…行かないでくれ」
力強い腕が、僕の腕を握りしめる。
「…!!サニーサイド…」
「ボクを置いて、行かないでくれ…」
懇願するような声と共に、広々としたベッドに押し倒された。
「や…!やめろっ……」
もつれるようにしてベッドへ横たわる。
スプリングが盛大な音を立てて跳ねた。
「ラチェット……」
僕の胸に顔を摺り寄せて、そう呟くのは普段の人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべる男ではない。
この男でもこんな顔をするのか…とやや驚きながらまじまじと見つめると、目尻の端にかすかに光るものが見えた。
「……」
「ラチェット…少し痩せたのかい?胸が小さくなったようだけど」
そんな台詞を呟くサニーを殴ってやろうかと思ったが、代わりにその髪を撫でる。
どうしてそんな気になったのだろう。
同類を哀れんででもいるのだろうか。
同類。
ああそうだ。
目の前のサニーは自分の姿なのだ。
泣く事なんて出来ない、誰かに言う事なんて出来ない。
それは自分のプライドが許さない。
だから、目の前の彼が少しだけ羨ましかった。
「……サニーサイド」
問いかけても返事は無い。
規則正しく上下する背中を見ると、どうやら寝てしまったらしい。
「しょうがないな…」
必死に手を伸ばして、ベッドの脇の受話器を取る。
「…ああ、僕だよ。今日は帰っていい…ご苦労だったね」
リムジンの運転手に電話をかけてそう言うと、受話器を置く。
サニーはまるで母親に縋りつく子供みたいに僕にしがみついたままだ。
「……大きな子供だな」
仕方ない、このまま朝まで過ごすか、と自分より遥かに大きい身体を抱きしめる。
壊れると困るので、サングラスだけは取ってベッドの脇に置いて。
素顔のサニーを見るのは初めてだった。
さらさらした髪に手を入れると、引き寄せる。
『昴さん…何だか母さんみたいだ』
大河の台詞が甦る。
どうやら自分はよくよく母親みたいな行動を取るらしい。
だが。
大河も、サニーも、こんな大きな子供などいらない…と思いながら僕は静かに目を閉じた。
翌日。
「昴」
自分を呼ぶ声を感じて目を覚ます。
「……ん…」
「眠かったら寝ていてもいいけど、起きてくれないとボクが好き勝手に悪戯しちゃうよ?」
「!!」
なんとも誰からしい含み笑いをする声を耳元に感じて、はっと目を開ける。
「おはよう、昴」
「…起きたのか、サニーサイド」
「ああ、おかげでぐっすり寝れたよ。昴の腕の中は寝心地が良かったからね」
「それは何よりだ、僕は腕が疲れたけどね」
それは嘘じゃない。かすかに腕が痺れていた。
横になっていたのでさほどの負担はかからなかったが。
「…ところで、この状況はやっぱりアレかい?ヤっちゃった?」
悪びれもなくサニーは言う。
いきなりそんな事を言われて面食らった。
確かに状況的にはそう見えないことも無いが、もう少し言い方というものがあるだろうに。
「何でそうなるんだ…!!」
「いやだって、どう考えてもそういう状況じゃないか」
「よく見ろ!僕も君も服を着ているだろう」
「ヤった後に着たのかもしれないし」
「そんな事はしていない!」
「なんだ残念」
何処まで本気で嘘か分からない発言をすると、サニーは身体を起こす。
「昴の性別がわかったかと思ったのにさ。キミは相変わらず教えてくれないからねぇ」
「……殴られたいのか」
ようやく解放されたことに喜びつつ、乱れた髪をかきあげながら僕も上体を起こした。
「いや、それは勘弁。ところで、本当になんでキミがここに?ボクはマーキュリーに居たはずなんだけど」
「それは……」
思わず口ごもる。
何処まで話すべきか。
とりあえず、差しさわりの無い程度で昨夜の事を話す。
「ふーん…ところで、ボクは何か言ってた?」
「い、いや…よく聞き取れない寝言みたいなことくらいしか」
「へぇ……」
ぐっと腕を掴まれ、何をすると聞く暇もなく瞳を覗き込まれる。
「キミは言ってたよ。寝言で『大河…』ってね」
「っ!!」
そ知らぬフリをすれば良かったのに。
かすかな動揺を悟られてしまったらしい。
「…というのは冗談だったんだけど、心当たりあるんだ?じゃあ、キミも心穏やかじゃないだろうねぇ」
「……何の事だ」
「ボクに気遣いは無用だよ、昴。どうせボクもキミに向かって色々言ったんだろうし」
あっさりとサニーは言う。
「ラチェットが迎えに来た気がしてねぇ。来る訳ないのに。キミをラチェットと勘違いするなんてボクも相当酔ってたんだな」
「………」
仕方が無いので事実を全て話す。自分の気持ちは隠して。
サニーはそれを聞いても動揺もしなければ驚きもしなかった。
ただ、
「それは悪かったね」
とだけ呟いた。
「…気にしなくていい。他言するつもりもない」
「それは助かるよ。ほら、ボクにもイメージってものがあるじゃない?」
おどけるように言うサニーを複雑な気分で見つめる。
ふと垣間見た上司の本音。
それだけで気持ちが治まらないのは、やはり同類だと思ってしまったからだろうか。
「昴」
「なんだ……、っ」
少々、酒臭い息のする唇を重ねられても身体はびくりと震えたが反射的に拒もうとはしなかった。
…何故だろう。
「まぁ、これは口止めとお礼を兼ねて。何なら、これ以上もする?」
「寝言は寝ている時だけにしてくれ!僕は帰る」
きっとサニーを睨みつけ、振り返りもせずに屋敷を後にする。
それだけで、終わるはずだった。
それから一ヶ月が経った。
毎日は何事もなく過ぎていく。
大河とラチェットは旅行に行ってから更に親密になっていた。
…何があったかは想像に難くない。
そしてまた舞台が一段落し、二人が旅行に出かけた。
「……」
前ほどのショックはなかった。
カーテンを開けると満月が輝いている。
そこへ、部屋のベルを鳴らす音が聞こえてきた。
「やぁ、昴。綺麗な月でも眺めながら乾杯でもしないかい」
ワイン片手に陽気に微笑むのは思ったとおりの声。
なんとなく、来るような予感はしていた。
…本当に来るとは思わなかったが。
「乾杯」
当たり障りのない会話を交わし、ワインを傾けあう。
だが、どうせ本題はそんなことじゃないのはわかっている。
向かい合わせに座っていたのが、いつの間にか隣に移動されて肩に手を回された。
ちらりと自分の肩を馴れ馴れしく抱く手を見つめる。
捻りあげるのは簡単だ。
「…ちょっと強引だったかい?」
僕の視線を感じてサニーが笑う。
「別に……僕の気にそぐわない事をするのなら、容赦なく躾ければいいだけのことだ」
「へぇ、じゃあこれくらいならイヤじゃないんだ。じゃあ、これは?」
胸に、顔をうずめられる。
「……っ!!」
「そういえば、リカが昴はママの匂いがすると言っていたね。…そう考えるとキミはやっぱり女性なのかな」
脱がされるのかと身構えた僕とは対照的に、サニーはそう囁くだけでそれ以上の行為はしてこない。
それは10分経っても30分経っても変わらなかった。
「ボクを撫でて、抱きしめてくれないか……昴。母親のように、優しく…」
やがてサニーが言い出したのはそんな事だった。
「……」
少し躊躇ったが、ぎこちなく頭を撫で、抱きしめる。
奇妙な気分。
自分に母性本能なんてあるとも思わないのに。
僕はサニーが緩やかな寝息を立てるまで、その頭をずっと撫でていた。
3度目はそれからさほど間を空けることなくやってきた。4度目も同じ。
適当な理由をつけてはやってきて、僕に抱きしめてくれとせがむ。
それ以上を要求することもなければ、僕に必要以上に触れようともしない。
ただ、5度目の時には…少しだけ驚いた。
「…っ。サニーサイド……」
シャツの隙間から指が入れられて、平らな胸をさすられる。
節くれだった手が、胸の突起を探り当てたらしい。指の腹でこすられた。
痺れるような感覚が、背筋を伝う。
しかし、流されるわけにはいかない。
「…んっ……」
その手を遮ろうと掴むと、動きが止まる。
「おや、これはルール違反だったか」
「当たり前だ……」
「じゃあ服の上からのがいい?」
「何、が……っ!」
自室内ということで、ジャケットは脱いでいるからだろうか。
服の上から突起に吸い付くような素振りをされて驚いた。
「ば、ばか…やめろ!」
既に刺激を受けて立ち上がっていたから、場所を見つけられるのは容易だった。
サニーは唇でつまむような仕草を繰り返してしている。
「……心配しなくても、このままキミを襲うような真似はしないよ」
「そんな言葉、信じられるか…っ」
「…これでも?」
手をつかまれ、よりにもよって股間へと導かれる。
スラックス越しに触れた感触に手がびくりと震えたが、確かに手の平で触れたそれは僕へ欲情を示してはいなかった。
「……」
安堵と同時に苦い気分になる。
こんな貧弱な身体では欲情する気すら起きないとでも言いたいのか。
睨みつける視線に、幾分かそんな感情が現れてしまったらしい。
サニーは僕を見て笑った。
「別に昴だから勃たないわけじゃない。…誰にでもこうなのさ、心配しなくていい」
「!!」
弾かれたように見上げると、サニーの表情は変わらなかった。
「まぁ、心理的要因らしいんだけど。だから、ボクがキミを襲う事はないよ」
「何故、僕にそれを話す……」
普通だったら話したくないことなのではないか。
それくらいは想像がつく。
「だってこんな事をしてれば行きつく先はそれだろう?下手な期待も余計な不安もさせるのも悪いと思ってさ」
下手な期待、余計な不安。
…サニーにとってのこの行為がどういうものなのか、よくわかる言葉だった。
「キミが迷惑ならやめるよ。抱きしめる人間を見つけるだけなら、金さえ積めば誰だって抱きしめてくれる」
「……」
「まぁでも、どうせなら昴がいいな。キミは内心呆れているのかもしれないけど、それでもこうしていてくれるからね」
「サニーサイド……」
思いがけず知ってしまった秘密。
人は、秘密を共有することで親しみを増していく生き物だけれど。
僕はサニーを哀れんでいるのだろうか。
愛情とも母性本能とも違う不思議な感情が沸き起こってきて、サニーの頭を引き寄せるとそっと抱きしめた。
やがて彼が服越しだけでなく僕の素肌に直に触れるようになって、僕には今までとは違う感覚が生まれていた。
「……っ…」
漏れそうになる声を、唇を噛んで耐える。
声を出しては、ダメだ。
きっとその声はいつもの自分とは違う声だから。
そう、自分に言い聞かせる。
「昴……」
膨らみなど無い僕の胸に、吸い付くように舌を這わす目の前の男を見ながら理性を保つ。
早まる鼓動を必死におさえる。
サニーに、自分の動悸など悟られたくない。
端から見たら、これはさぞ淫靡で背徳的な行為に見えるのだろう。
30を過ぎた男が、10代前半にしか見えない少年のような容姿をした人間に母親を求めているのだから。
そう、母親。
うすうすは気付いていたが、彼が僕に求めているのは母親。
ゆえに、彼がいくら僕の胸に頬ずりをしてその突起に吸い付いても、それは『性的行為』ではないのだ。
幼子が母親に触れて安心しようとするのとなんら変わらない。
…外見が、どうであろうと。
「人生がエンターテイメント」が口癖でいつもお調子者をきどっている男の、隠された脆い心。
…それを曝け出すのが何故自分なのかはいまいち理解しがたいが。
彼にとって、これは『性的行為』ではない。
だが、僕は彼の母親ではない。
見た目は母親のように微笑んでいても、身体は刺激されればそれなりの反応を示す。
まるで熱心な愛撫を繰り返されるかのごとく触れられれば、頭では分かっていても身体は言う事を聞かない。
これは『性的行為』ではない。
一心不乱に僕の胸の突起を弄び、口内で転がす彼を見つめる。
いっそ、身体ごと欲しいとでも言われた方が楽だっただろうか。
与えられる中途半端な気持ちよさは身体の中心を疼かせ、されどそれは鎮められることはない。
サニーは僕に母親を求めている。
なら僕は彼に何を求めるというのだろう。
自分だけが彼の裏の顔を知っているという優越感?
彼が外で同じような事を他人にしてそれがばれた時の事を考え、自らを供物に制御でもしている気でいるのだろうか。
こんなことが世間にばれればシアターの存亡、ひいては華撃団の存亡にも関わる。
司令ともあろう立場の人間がこんな常軌を逸脱した性癖を持っているなどと知れれば。
これは、公なのか、私なのか。
それすらも定かではない。
そんな関係が半年も続いただろうか。
表ではこれといって関係が代わることも無い。
そして、裏でも変わらない。
こんな爛れた関係がいつまでも続こうはずもないとは思っていたが、終わりがいつなのか検討もつかなかった。
大河とラチェットは日に日に親密さを増していくが、それもどうでも良かった。
このままゆるやかに日々が過ぎ去れば、全ては思い出。
そうなるはずだった。
「昴、ボクだよ。開けてくれないか」
もう寝ようと思って、シャワーを浴びて髪を乾かしていた僕の部屋に例によって彼は訪れた。
…いつもより大分遅い。
「……こんな時間に来るなど、君は非常識だと思わないのか」
非常識が服を着て歩いているようなサニーに向かって言うのも効き目は無いかもしれないが、すぐに開ける気にはなれない。
「あー…それは悪いと思ってるよ。ただ、ちょっと話があるんだ」
「話?」
「うん、まぁ…すぐ終わるからさ」
渋々ドアを開ける。
やや暗い表情をしたサニーがそこには立っていた。
「…どうぞ」
「おや、風呂あがりだったのかい。それは悪い事をしたね」
「話があるならとっととしてくれ。僕はもう眠い」
いつものようにサニーを招き入れる。
「で、話って?」
「どうせ明日にはばれるだろうから単刀直入に。大河くんがラチェットを伴っての一時的な帰国許可を求めてきた」
「……」
髪を乾かす手が止まった。
…それがどういう意味なのか、同じ日本人である僕にはよくわかる。
彼らの仲は、そこまで進展していたのか。
「…それで、君はなんと?」
「今の紐育は平和だからね。二人に抜けられるのは痛いけど、キミたち星組がOKをするならとの条件で許可したよ」
サニーは曖昧な笑みを浮かべる。
つまり、明日はその発表をされるというわけか。
「日本人は律儀だね。挨拶、というものが大事らしい」
「まぁね……」
俯くと、乾ききっていない髪が顔にかかって、一房が額に張り付いた。
「昴」
いつの間にかサニーが隣に居て、僕の髪を払いながら覗き込むように呟く。
「大丈夫かい?」
「何故、そんなことを?」
「君は大河くんが好きだったんだろう」
「…確かに大河は 僕を変えた存在だ。でも、それは恋愛感情じゃなかったよ」
「はは、それもそうか。もしそうだとしたら、ボクとこうしているはずもないからね…」
サニーは僕の身体を横たえると、バスローブの襟を開いて胸元へと唇で触れた。
いつものように、彼が僕に母親を求めてくる。
「……」
これは『性的行為』ではない。
なのに、どうして身体が疼くのだろう。
……僕は、彼に愛されなかったこの身体を蔑んでいるというのに。
いつもなら適度に僕を解放するサニーも、今日ばかりはなかなか解放してくれなかった。
抑えようとしても抑えきれない息が、漏れる。
火照って熱くなっているのは顔だけではない。
身体の中心部も熱を帯びて蜜を蓄えているのが、閉じた内股が汗ばんでいるのでわかる。
「……っ…ん」
僕がかすかに身動ぎをするたびにバスローブはあられもなく広がり、僕の身体を曝け出す。
いつの間にか、閉じていたはずの足もまるで誘うようにしどけなく開かれていた。
「昴?」
僕がいつもと違うのにサニーも気付いたらしい。
「どうしたんだい?顔が赤い」
頬に触れられると、ひんやりとして気持ちよかった。
思わずうっとりとして目を閉じる。
「…ひぁっ!!」
バスローブからはみ出た素足を撫でられて、喉からくぐもった声が上がった。
サニーが足に触れるのは、初めてだったから。
「昴……」
そのままするするとふくらはぎからふとももへとのぼっていった彼の手が、ある部分で止まる。
なぞるようにすーっと撫でた。
「…やっ!」
びくん、と身体が跳ねる。
触れられた僕の中心部は、下着越しでもわかるほど濡れていた。
「どうして、こんなになっているんだい?昴」
「そ、それは…」
「もしかして、感じちゃってた?」
羞恥に顔を背けると、耳元でそう囁かれる。
「ち、違う……あっ」
下着の横から彼の指が侵入してきて、蜜を湛えた花びらに触れた。
「まぁ、別に男だとはもう思ってなかったけど、やっぱりキミも女なんだね」
愉快そうに、サニーは喉の奥で笑う。
「どれくらい前からこうなってたの?…やっぱり、こうして欲しかったのかな」
指が浅く沈められて、再び全身が弾かれたように反応する。
…自分で触れたことなど無い。
身体の構造は知っていたが、自分の中に異物が侵入する感覚は初めてだった。
「凄い熱いね。驚いたな、普段は静かな昴が、こんなに興奮しているなんて」
「違う…!そうじゃない」
ようやく我に帰り、サニーを引き剥がそうと肩を掴んで力を込めたがもう遅かった。
「まぁ、そのギャップがそそるんだけど。聖母のような表情をして、いつもこんなだったの?昴」
くちゅくちゅと音を立てて入り口をかきまわされる。
与えられる未知の快楽に、空を蹴る足先が震えた。
「あっ……や…やだ……っ」
「本当にイヤ?こんなに期待しておきながら?」
もう一本、下着の隙間から忍び込んだ指が、陰核に触れて悲鳴が上がる。
電気ショックのような痺れが、身体中を伝わった。
「やぁっ!…はぁっ……は、なせっ」
引き剥がそうとしていた手は、跳ねる身体を支える為にいつしかサニーのシャツをぎゅっと握りしめている。
…自分に何が起こっているのか、恥ずかしさでよく理解出来ない。
わかっているのは、自分のはしたない姿をサニーに見られているということだけ。
「まぁ、ボクも悪かったよ。キミに求めるばかりでキミの気持ちを考えていなかったからね」
気持ち。
僕の気持ち…。
それは何だ?
「今日は昴の望むままに振舞ってあげよう。…ねぇ、どうされたいんだい?」
「……」
そんな事を言われても何といえばいいのか分からない。
身体が熱い。
鎮めて欲しい。
でも、そんなことは口に出来ない。
「あぁっ!…ん、あっ……」
いつもとは明らかに違う胸への愛撫も、首筋を伝う舌も。
僕の身体を火照らせて、おかしくする。
思考が乱れて、正常な考えがままならない。
「サニー…サイド…っ」
「なんだい、昴」
「い……やっ……おかしく、なるっ…!」
拒否の意味を込めて言ったつもりだった。
自分の理性を全て手放してしまう前に。
だが、サニーは別の意味で受け取ったようだ。
「くっ…くっくっく……昴。キミは面白いね」
ひょいと抱えあげられて、そのままベッドルームへ連れて行かれる。
ベッドの上に優しく横たえられると、バスローブの紐を解かれ、既にぐしょぐしょになっていた下着も脱がされた。
再び僕の中に沈められた指は二本に増えて、入り口だけでなく時折奥まで侵入してくる。
陰核もこねるように潰されて、僕は泣き叫ぶような声をあげた。
サニーはそんな僕を見て笑う。
「こんなときくらいは理性を手放して感情のままに委ねてみたらどうだい?気持ちいいんだろう?」
「あっ……ああっ…ん…や……はっ…」
理性を手放す?
少し前までそんな事は想像も出来なかった。
いかなるときにも自分を律し、感情を理性で押さえ込んで生きていた。
人が自分に何を求めるのかを理解し、その通りに振舞うのが…九条昴という存在。
ああ、でも。
それを変えたのが、大河。
感情が理性を飲み込んでしまう事があるというのを、教えてくれたのが彼だったのに。
彼はもう自分の傍にはいない。
だからもう一度理性で感情を飲み込んで。
人が望む自分を演じていたのに。
「いやだ……いや……ああっ!」
涙のうっすら滲む視界でサニーを見上げる。
僕に自分の望む姿を演じろと言っておいて、それを手放せなんて、卑怯じゃないか。
怖い。
理性を手放してしまえば、それは自分なのか、『九条昴』なのか。
「だ、めっ……!!」
全身を突き抜けるような感覚と共に理性は吹き飛んで、本能的な快楽が僕を包む。
抗う事など、出来はしなかった。
「ふふっ、昴…もしかしてイったのは初めてかい?彼はイかせてくれなかった?」
「……?」
弛緩した身体をベッドに預け、絶頂の余韻で乱れた呼吸を必死に整える僕に向かってサニーはそんなことを言う。
意味が分からない。
「本当だったら、これで終わりだったんだけどね……」
ぼんやりとした頭に、カチャリと何かを外す音と、ジッパーの下げられる音が聞こえて、僕ははっとした。
「!!」
「昴を見ていたら、久しぶりに興奮しちゃったよ」
指とは違う何かが膣口に宛がわれる感触に、全身が総毛だった。
「昴」
「やめ…!やめろ!!」
「ひどいな、自分だけ気持ちよくなって終わる気かい?」
「……っ…」
ゆっくりと、先端が押し込められる。
「なんだかちょっと罪悪感を感じるな。さっきまでは、キミを母親のように感じていたのにさ」
でも、とサニーは言う。
「キミの声はボクの母親にちょっと似ているかもしれない。昴、ボクの初恋の人に、ね」
「!!」
『母親とは初めての異性であり、初恋の人とも言われている。僕が君のそういう存在になれたのなら、嬉しい』
咄嗟に突き飛ばそうとした腕は押さえつけられ、ずぶずぶとかきわけるようにしてサニーが僕の中に入ってくる。
さきほどまでの快楽とは程遠い。
焼けた鉄串でも刺されているかのような痛みが身体の芯を貫く。
「んぁぁっ!!…はぁっ…ぅ…くぅっ!」
指とは比べ物にならない圧迫感と迫力を持って僕の中を蹂躙する別の生き物に、必死に僕の内部が侵入を拒む。
ぎちぎちと頭の中で音を立てるその部分だけが熱くて、痛くて、身体に鉛の塊でも押し込められているかのようだった。
「…やっぱり、思ったとおりに狭いな。そう簡単には入らないか」
サニーは苦笑しながら呟く。
「でも、キミの中は温かくて気持ちいいよ…昴。まるで、キミに抱きしめられているかのようにね」
「あっ…あぁっ……うっ…」
かすかな抜き差しでも、衝撃は全身に伝わる。
身体が引き起こす痛みと、脳髄に感じる痛みで全身がどくんどくん脈打つのがやけにはっきり感じられた。
痛い、と泣き叫べばいい。
しかし、それは一度理性を飛ばしたがゆえにプライドが許さなかった。
痛いと泣き叫ぶ自分。
そんなのは見たくない。
「…んんっ……」
声を抑えようと顔を背け、押さえつけられていた手を伸ばし指を噛む。
だが、すぐにサニーに手を取り払われた。
「何で我慢するんだい?キミの声が聞きたいのに」
「サニーサイド…よせ……僕は」
「もしかして、彼が恋しくなった?彼以外の男に抱かれるのが怖くなったのかい?」
「…!?」
そう言われて、ようやく先ほどから彼が何を言っているのか気付いた。
サニーは、僕と大河が性的関係にあったと思い込んでいるのだ。
そんなもの、ありはしないのに。
「だけど、もう遅いよ。彼はもうラチェットのものだ。キミを抱く事は二度とない」
「はぁぁっ!や、やっ……ぁあっ!」
「だからキミはキミで楽しめばいいじゃないか。どうせ彼らも楽しんでいるんだし、キミだって身体が疼いていたんだろう?」
「……」
唇を噛みしめる。
こんなにも悔しいのは、自分が誰にでも簡単に身体を投げ出す人間だと思われたことなのか、自分の想いを侮辱された事への怒りか。
確かに歪んだ関係ではあったけれど、そこにだって心はあったはずなのに。
純潔以上のものを失った気分だった。
もうどうでも良い。
虚しさだけが胸を通り過ぎて、身体中にこもっていた力が抜ける。
目の前に居るのはさきほどまでの彼じゃない。ただ自分を欲望のままに犯す見知らぬ男だ。
早く終わればいい。
僕はサニーが果てるまでそんな事だけを考えて、目を閉じていた。
「……昴」
彼が果て、楔が引き抜かれたのを確認してほっと息を吐く。
下半身の痛みは、引き抜かれても消えない。
空気に晒されると、ひりひりとして違う痛みすら湧いてきた。
「まさか、キミは………」
呆然としたまま動けないでいる僕の、散らされた花から滴る純潔の証を見たらしい。
サニーが噛みしめるように言った。
「はじめて、だったのか?」
「!!」
今頃、出血に気付いたというのか。
思わず、毛布を掴んでくるまる。
「昴…」
「何も言うな!」
身体を縮めると涙が溢れる。
自分が惨めだった。
「帰ってくれ!もう…ここへは来るな!!」
震える身体を夢中で抱きしめながら叫ぶ。
消えてしまいたい。
「…わかった。もうここへは来ないよ。昴、すまなかった……」
謝ってなど欲しくない。
…謝ったところで、失ったものはもう戻りなどしないのだから。
毛布に包まったまま気の済むまで泣いて、泣きつかれて身体を清めようと起き上がる。
僕の下半身には、自分の血とサニーが放った白濁液の混じった桜の花びらのような跡が、残っていた。
それから、僕はサニーを無視し続けた。
無論、仕事上必要最低限は会話を交わす。
しかし彼がプライベートで何か話しかけてきてもことごとく跳ね除けた。
話すことなど何も無い。
あれは悪夢だったと、忘れる事にした。
だが、それから3ヵ月後。
悪夢の爪跡は、静かに、そして深く僕の中に残されていた。
「昴さん!」
舞台の稽古の最中だった。
軽い眩暈を覚え、一瞬意識を飛ばした僕を近くに居たジェミニが支えてくれた。
「大丈夫ですか…?」
「あ、ああ…ちょっと眩暈がしただけだよ。すまないね」
「顔色が真っ青ですよ…今日はもう、帰ったほうが……」
「いや、平気だ。もう治ったよ。さぁ、稽古を続けよう」
その時は多少気にかかったが、疲れているだけだと思った。
けれど、公演が終わり、いつものように屋上で野外パーティーを開いたときに疑心は確信に変わった。
「美味しそうだね、僕もいただいていいかい?」
「あ、昴。いいぜ、お前も食べろよ」
サジータからフライドチキンを受け取り、食べようとしたときだった。
「……ぅっ」
言い知れぬ吐き気がこみあげて、咄嗟に皿をテーブルに置くと人気を避けて暗がりへと走り出す。
「…っ……う…」
屋上の端までくると、口元を押さえたまま膝をついた。
本当に吐きたいわけではないらしい。
ただ食べ物の匂いを嗅いだら、無性に…。
「…まさ、か……」
「昴さん」
慌てて追いかけてきたらしい。
振り向くとダイアナが立っていた。
「昴さん、もしかして……?」
「……」
医者でもあり、女性でもあるダイアナは僕の様子を見て何事か概ね分かっているらしい。
「すまない、気分がすぐれないんだ。みんなには帰ると言っておいてくれないか…」
ダイアナの横を通り過ぎるようにして逃げるようにエレベーターに乗り込む。
混乱してみんなとまともに会話を出来る自信がなかった。
特に、ある人物の顔は見たくない。
「……」
自分の腹に触れても当然ながら膨らんでもいない。
元々、僕は不規則な方で数ヶ月来ないなどよくある話だった。
だから、大して気にも留めていなかった。
それが…たった一度の過ちで。
頭がくらりとした。
悪夢は終わらない。
これからどうすればいいのか検討もつかなかった。
翌日は、だるくてシアターに顔を出す気にもなれなかった。
一応その旨をキャメラトロンにてラチェットに伝える。
彼女も僕の昨日の様子からうすうすは気付いているのだろう。
「昴…平気?」
遠慮がちにそう聞いていた。
「平気だよ。一日休めば治る」
そう言い残して通信を切る。
ソファに横になってこれからのことを考える。
こんなことは今まで想像したこともなかった。
戦闘、舞台…それらの事も気がかりだし、何より僕は結婚すらしていないというのに。
一足飛びで本来ならその先にあるべき事実を突きつけられたのだ。
こんなことになっていると九条家が知ったらそれこそ勘当でもされるだろうか。
例えば――――これがラチェットだったら。
大河は驚くだろうが喜ぶだろうな、とぼんやり考える。
あんなにも近くに居た彼との距離は、もう手を伸ばしても届かないほど離れてしまった。
彼への慕情は消えたわけではないが、彼に向かって片思いこそ永遠の愛情と言った気持ちは嘘じゃない。
選んで欲しかったけど、選ばれなくても仕方がないと思っていた。
彼が最終的に選んだのがラチェットというのは少々意外ではあったが。
どうせなら、と思う。
大河の子供なら良かったのに。
まだそうすれば救いはあったのに。
…そんな事を考えても詮無き事だとわかっていても、現実を直視するのは辛かった。
いつの間にか眠っていたらしい。
ノックをする音で目を覚ますと、既に室内は暗くなっていた。
「…誰だ」
「ボクだよ、昴」
「……」
ため息をつく。
ここへは来るなと言った筈なのに。
「何の用だ、ここへは来るなと忠告したはずだ。たとえ君が僕の上司といえど、丁重にお帰り願うよ」
「…以前のような事はしない。ただ、話し合わせてくれないか。君と、君の子供の事を」
全身にさぁっと鳥肌が立った。
当然サニーにも知られているとは思っていたが、いざ口に出されると予想以上にショックだった。
「………」
「昴」
「5分だ。それ以上は、話を聞く気は無い」
部屋の明かりをつけて、ドアの鍵を開けるとそこにはサニーが立っていた。
「…昴。飲んでいたのかい」
テーブルにおかれたワインを見てサニーが眉を寄せる。
「僕の勝手だろう」
飲んでいる途中で寝てしまったので、ボトルもグラスに注がれたワインもそのままだった。
ソファに腰掛けると、サニーも向かい側に座る。
「こうやって話をするのは3ヶ月ぶりだね」
「…そうかい?シアターでは毎日のように会っているじゃないか」
視線を合わす気にもなれず、手でグラスを弄びながら呟く。
ゆらゆら揺れる赤ワインは、血の色を思い出させて白にするべきだったと今更ながらに後悔した。
「身体の調子はどうだい?」
「特に問題ないよ。…あと3分。用件があるなら早く言ってくれ」
「じゃあそうするよ」
サニーは姿勢を正して、こう言った。
「ボクと結婚しないか?」
「……」
呆れて、ものが言えなかった。
単刀直入に言えと言ったのは自分だが、そうくるとは思わなかった。
「…本気か?」
思わず聞き返す。
「もちろん」
「……くくっ……それはそれは」
笑いがこみ上げる。
サニーサイドが僕に求婚。
まさに青天の霹靂だ。
明日は雪でも降るかもしれない。
「何故、いきなりそんなことを?」
「それがボクの責任の取り方だからだよ。キミのお腹の子はボクの子だろう?」
真面目な顔をしてそういうのが気に食わなかった。
「断る」
それが嘘ではないことをわからせるために、躊躇いもせずに手の中のワインを彼に向かってかけた。
まるで安っぽいドラマのようだな、と心のどこかで思いながら。
「僕をみくびらないでくれないか。そんな理由で求婚されて、僕が応じるとでも思っていたのかい?」
「いや、思ってはいなかったよ。…この扱いは、まぁ予想外だったけど」
サニーは微塵も動じた様子もせずに、胸ポケットからハンカチを取り出すとワインまみれの身体を丁寧に拭いた。
「随分前から飲んでいたんだね。空気に触れて味が酸化している」
むしろそんな憎まれ口まで叩く始末だ。
「5分だ。帰ってくれ、もう話は無い」
「昴」
立ち上がり、背を向けようとしたら腕を掴まれる。
「一人でどうするつもりだ」
「君には関係ない!」
「あるさ」
ふわり、と包み込まれるように抱きしめられた。
「!!」
今まで、僕が彼を抱きしめる事はあっても彼に抱きしめられるの初めてだった。
驚きのあまり、抵抗する気が一瞬吹き飛ぶ。
「キミはボクのシアターのダンサーであり、華撃団の大事な隊員だ。本来なら、ボクはキミを大切に扱うべき立場の人間だ」
「……」
「こんな事が知れればキミの立場がどうなるのかボクにだってわからないわけじゃない。だから、ボクにはキミに償う義務がある」
「だったら…だったら、3ヶ月前の僕を返してくれ!」
理不尽だとはわかっていても願いはそれだけだった。
「昴……」
「僕はこんな事、何一つ望んでいない!僕を返せ!」
サニーの襟を掴み、詰め寄る。
だが、すぐに離し、俯く。そんな事をしても何にもならない。
「……嘘だ。そんな事が叶わないのはわかっている。だから、何でもいい。理由をつけて僕を紐育から離れさせてくれ。子供は、一人で生む」
堕胎、という選択肢も頭に浮かばないわけではない。
だが僕には選ぶ事ができなかった。
「構わないよ。そのように手はずを整えよう……けど、生んでどうするつもりだい?」
「日本の九条家に預けるさ。…夫は死んだことにでもすればいい」
「……ボクと一緒に育てるという選択肢はないと?」
「…そんなことは、ありえない。でも、そうだね…」
ふと、あることを思いつく。
「この子の性別を当てることが出来たら、考えてあげてもいいよ」
それは嫌味であり、皮肉であった。
わかるはずなどない。
まして、どちらであっても教えるつもりは無かった。
「決まっているだろう、女の子だ」
サニーは、まるで跪くかのように、僕を抱きしめる。
腹部に頬ずりをするかのようにして。
「キミに似た美しい女の子だよ。輝く星のように」
断言するかのように彼は言った。
「随分な自信だね?男の子かもしれないよ?君に似たら困るけどね」
「女の子さ、間違いない」
サニーを引き裂きたい気分をこらえて、その頭を優しく撫でる。
もし、本当に女の子だとしたら。
その子もこうして誰かに母親みたいだと言われるのだろうか。
そして男の子だったとしたら。
僕を初恋の人だと思うのだろうか。
そう考えると、ほんの少しだけ楽しみな気がした。
END