木の葉が色づきはじめ、秋の到来を告げていく。

涼しい風が通り抜ける窓からは、やわらかい光が射していた。



「ん…もう朝か…。」


絳攸はゆっくりと身を起こす。

隣を見ると珍しい事にまだ楸瑛が眠っていた。

いつもなら同じ寝台に眠ってしまっても、朝には先に目を覚ましているのだ。

昨夜は藍邸で二人だけの気安い酒宴をもうけていた。

お互い忙しい中のたまにある酒宴。

睡眠不足気味の絳攸が先に眠ってしまうのはいつもの事だった。

そして気がつくと寝台に運ばれている。

部屋は客間であったり、楸瑛の部屋であったりとまちまちだったが。

今いるのは楸瑛の部屋だ。

いつもは先に身支度を整えた楸瑛に髪をいじられる感触で目が覚める。

そういう時は気恥ずかしくなり、朝からつい怒鳴ってしまうのだが…。

絳攸は静かな寝息をたてる楸瑛に視線をむけた。

出会った頃はたいした体格差は無いと思っていた。

だが楸瑛は武官になった事もあり、厚みのある体つきになっている。

着痩せするせいか、絳攸は今まで気がつかないでいた。

武術といえば絳攸は護身術しか習っていない。

しかも黎深に拾われるまで食うに困る生活をしていたこともあり

男にしては細身の部類に入る。

絳攸は無意識のうちに楸瑛の夜着の乱れた胸元に指を這わせていた。

そこには必要な筋肉がしっかりと体を包んでいた。

絳攸は触り心地のいい楸瑛の筋肉をたどり腹筋の方まで指をすべらせる。

だが突然、楸瑛の手に阻まれた。


「朝から随分と情熱的だねぇ。絳攸。」


楸瑛は髪をかきあげながら絳攸に微笑む。

途端に絳攸は自分が無意識にやっていた行動が恥ずかしくなり怒鳴り返した。


「うるさい!起きたのなら身支度しろ!!」


絳攸はさっさと寝台をおりて着替えはじめる。


「せっかちだね、君は。」


言葉とは裏腹に自分の焦りを感じさせないように

楸瑛は隣の衣装部屋に逃げ込む。



―あぶなかった…

絳攸に触れられた瞬間、体が熱くなった。

あれ以上に触れられたらきっと、自分は絳攸を押し倒していただろう。

自分はどうかしている。

同性にこんな…。

だが絳攸だから、ほかの誰でもない彼だからこんな気持ちになってしまう。

楸瑛は目を閉じると絳攸に触れられた場所を自分でたどる。

その表情は誰も見たことがないほどに切ない。

だがすぐに着替えを済まし、髪を結い上げる。

そこにはいつもの楸瑛がいた。



衣装部屋をでると、絳攸に遅いと怒られる。

そんな言葉にも楸瑛は幸福感を味わう。


「女性同様で色男も支度には時間がかかるんだよ。
知らなかったのかい?」


しれっとそう言う楸瑛に、絳攸は呆れ顔で言う。


「莫迦が…。」


楸瑛はこんな絳攸の表情を見られるのは自分ぐらいだろうと

つい、にやけてしまう。

こんな関係も悪くない。

絳攸そばにずっといられるのなら…。



END

彩雲国TOP

あれ?こんな終わりでいいのかな?
とりあえず許してやって下さい;