楸瑛は目の前の光景に息をのみ、思わず唖然と見入ってしまっていた。

目の前では硬直した絳攸の唇を静蘭が貪っている。

静蘭の視線は鋭く楸瑛を射抜いたままで。


「…ああ、静蘭。…もう、勘弁して貰えないかな?」


静蘭の怒りを感じながらも楸瑛は何とか言葉をつむぎだす。

静蘭はゆくっりと絳攸の唇を開放した。

絳攸は放心したまま、その場に座り込んでいた。

我が身に起こった出来事が信じられないのと、純粋に力が入らないようだ。


「昨夜はおかげ様で上司・同僚と親睦が深める事ができました。
酔った同僚の面倒をみたり、暴れる上司達の後始末をしたりと。
…ですが藍将軍は居らっしゃらなかったようですね?」


静蘭の怜悧な顔は笑みの形を作っているのだが、その目が

計り知れない怒りを放っていた。


「…それは…その…。」


今の静蘭には何を言っても逆手にとられ、言葉の剣で斬られてしまうだろう。


「絳攸様と藍将軍は帰り際に府庫でお嬢様に会われたそうですね。」


楸瑛はしまったとばかりに額に手をあてた。


「ご丁寧に私が帰れないだろうと伝言して下さったそうですね。」


静蘭は足元で座り込む絳攸の手をとると、立ち上がるようにうながす。

絳攸はビクリと身をすくませ、だが引かれるままに立ち上がった。


「絳攸様、昨夜はさぞ甘い一夜を過されたようですね。」

「せ、静、蘭!?…なっ、何の事だか、わからんぞ…。」


静蘭はフッと微笑むと、絳攸の腰を引き寄せその白い首筋をなぞりあげた。


「はぁっ、んっ…」

「誰かの残した痕がありますね
絳攸様はとても敏感な方だから虫除けといったとこですか?
藍将軍?」

「悪かったよ、静蘭。
昨夜は絳攸が泊まれる日だったので君を上司達に差し出すことで
私は難を逃れたんだ。
…で、どうしたら許してくれるんだい?」


その瞬間、静蘭の目が光を放ったように見えたのは目の錯覚だろうか。


「そうですね、私もそこまで鬼じゃありませんから。
ここで怒りをおさめましょう。
そういえば、この前頂いたお酒を旦那様はとても気に入っていたようです。
お嬢様は食材の物価が少々上がっていると嘆いていたので数日でも
誰かが分けてくださると助かりますね。」

「…わかったよ。しばらくお酒と食材を届けさせよう。
で、そろそろ絳攸を返して貰えないだろうか?」


静蘭の腕の中で絳攸は目を白黒させて二人のやり取りを聞いていた。


「ええ、お返しします。
さあ、絳攸様。手荒な真似をしてすいません。
ですが恨むなら薄情な藍将軍を恨んでくださいね。」


爽やかな笑顔で言うと静蘭は颯爽とその場を後にした。


「…敵に回すと心底怖いタイプだな…。」

「そうだね。私に対する効果的な攻撃も心得てる辺り
触らぬ静蘭に祟りなしってとこかな。」


恋人の腕に戻った絳攸は幾分青ざめた顔でとばっちりをくったのかと

頭をめぐらした。


「怒る元気もないほどダメージを受けてるね。
さすがに君のそんな姿には胸が痛いよ。昨日も無理をさせてしまったしね。」

「一言多い!」


楸瑛はさすがに反省して言ったのだが、無意識的に絳攸を怒らせてしまうのだった。



END

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ついに静蘭もからめてみました;
静蘭ファンの方怒らないで下さいネ^^;

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