藍区にある豪邸、そこは藍家直系の四男が住まう。
今宵は友であり、恋人と久しぶりの甘い夜を過ごそうとしていた。
「絳攸、汗でも流しておいで。」
楸瑛は甘い声で恋人をただす。
「そうだな。湯浴みをさせて貰おう。」
絳攸は楸瑛の家人に、広く煌びやかな浴場に案内された。
泳げるくらいの広さに、絳攸は一人で湯浴みをする。
「相変わらずの懲りようだな。」
湯船に浮かぶ花びらをすくい、絳攸は笑みをうかべる。
しばらく花の香りを楽しみながら湯船に浸かるが
楸瑛をあまり待たせるのも忍びないと立ち上がる。
その時、入り口に人影が現れた。
湯気でよく見えないが、長い黒髪を確認すると
絳攸は手近の桶を投げつける。
「常春が!!」
だが桶はあっさりかわされた。
そして顔が判別できる距離にきた相手に、絳攸は絶句した。
「愚兄其の四の友、李絳攸。
相変わらず独特な挨拶をする。」
龍蓮は何事も無かったように湯を体にかける。
「な、な、何故貴様が此処にいる!?」
絳攸はあまりの事に前に乗り出す。
「ここは藍家だ。愚兄其の四の私邸ではない。」
当然な返答に絳攸は二の句がつげなくなる。
「ん?この傷はなんだ?」
龍蓮はおもむろに絳攸の左の胸に触れる。
「っあ!…」
悲鳴のような甘やかな声が絳攸の口からもれる。
慌てて口を抑え、身を引くが龍蓮に腕を掴まれ阻まれる。
「愚兄其の四の仕業か。」
龍蓮は絳攸の全身をじっと見つめる。
龍蓮は湯を通して絳攸の力をもった下腹部を見ていた。
「見るな!しっ、失礼だぞっ!
…俺はもう出る…。」
絳攸は龍蓮を振り切ろうとしたが、かなわなかった。
「手折るつもりのない花だが、中途半端もよくなかろう。」
言うや否や、龍蓮は絳攸の左胸の突起をつねるように
つまみあげる。
「…ひぁ!!」
痛みと甘いしびれが同時に絳攸を襲う。
常日頃、楸瑛は絳攸が達する時その左の突起を甘噛みするか
強くつねるようにしていた。
結果何度もそうされているうちに、絳攸はそこが異様に感じるようになっていた。
そして、そこを強く刺激されないと達せなくもなっていた。
「つみ取りたくなる果実だ。」
龍蓮は絳攸の両手首を背中で一つに抑えると、突き出た胸に
ゆっくりと舌を這わせた。
「ふっ…あ、やめろ…あぁ!」
絳攸は弱々しい抵抗をみせるが、赤く硬さをもったそれを甘噛みされて
のけぞる。
「下はもう蜜をしたたらせているぞ。」
龍蓮は絳攸の下腹部を下から先端にむけて指でなぞりあげる。
「ああっ!…も、や…ぁ…」
絳攸は身をふるわせた。
その時、ひと筋の涙が絳攸の目尻からこぼれ落ちた。
「…美しいな。」
龍蓮の顔にはうっとりするような笑みが浮かんでいた。
だが目を閉じていた絳攸が見ることはなかった。
龍蓮は左胸の突起を執拗になぶり、攻め立てた。
絳攸は声をあげながらガクガクと震え乱れる。
龍蓮は段々と赤みの増すそこに歯をたてた。
「はぁ、あっ…や…も……ああぁっ!!」
絳攸は白く染まる頭で楸瑛の名をよんだ。
その声が届いたのか、激しい足音と共に楸瑛が姿を現した。
服が濡れるのもかまわず、歩みを進める。
「絳攸!!…龍蓮もいるのか!?」
楸瑛はいつもの余裕も無く、人影に近づく。
やがてその目に映る光景に剣を置いてきた事を後悔した。
「龍蓮!絳攸をはなすんだ。」
艶やかな声音が地を這うように低く響く。
龍蓮はぐったりともたれかかる絳攸から身を離す。
途端に絳攸は頭から湯の中に沈みこんだ。
「絳攸!!」
楸瑛は慌てて絳攸を救いだす。
「言われた通りにしたが、愚兄其の四は
友を溺死させたいようだな。」
龍蓮は奥に歩みを進めると湯に体を落ち着けた。
「莫迦をいうんじゃない!
龍蓮、事と次第によっては無事にこの邸から出られないと
覚悟しておきなさい。」
楸瑛は殺気をにじませ言うと、絳攸を抱き上げ浴場を後にした。
「愚兄には勿体ない花だったが、花自身が望のだから仕方がない。
ふむ、自分の花を探すのも悪くない。」
龍蓮はそう呟くと、足取り軽く浴場を後にした。
楸瑛は客間の一室に絳攸を運び入れていた。
「絳攸、大丈夫かい?」
大きな布で絳攸を包み、寝台に寝かしながら呼びかける。
冷たい水に浸した布で顔の汗を拭っていくうちに
絳攸の瞼がゆっくり開く。
「よかった…。気がついたんだね。」
楸瑛は絳攸の前髪を後ろに撫でつける。
「ん?…確か…湯浴みを…」
言いかけた絳攸は突然がばっと起き上がる。
「絳攸!?急に起きるとあぶないよ?」
楸瑛は薄着を羽織らせながら肩を抱く。
「おい、常春。
お前の弟も大層な常春だったぞ!!」
ギロリと絳攸は楸瑛を睨みつける。
「私にそんな事を言われてもね…。
って、龍蓮に何をされたんだい?」
楸瑛はなるべく、なんでもない事のように尋ねた。
だが絳攸の頬が朱に染まるのを見て楸瑛は絳攸から見えない方の手を
きつく握りしめる。
爪が食い込み、血が滲むほどに。
「…言えないような事をされたのかい?」
楸瑛の声は自然に低くなる。
少なからず罪悪感を感じている絳攸は楸瑛を上目づかいに伺う。
「また君はそんな顔をして…。
そうやって龍蓮も誘ったのかい?」
楸瑛はつい嫉妬心から口を滑らせてしまったが
絳攸を傷つける言い方に後悔した。
「貴様!!俺をそんな風に思っていたのか!?」
絳攸はただ悔しかった。
その目には涙が浮かんでいた。
「…すまない。今のは失言だったよ。
絳攸、私は…できる事なら君を誰の目にも触れさせたくは
ないんだよ。」
楸瑛は絳攸を優しく抱きしめる。
「なっ…何をいっている。
明らかに無理だろうが!?」
絳攸は独占欲を滲ませた言葉に嬉しく感じたが
素直には反応できなかった。
「わかってる。
でも私の気持ちもわかって欲しいんだ。
絳攸、君が大事なんだよ。」
楸瑛は真剣に言いつのる。
「…悪かった。
ただ龍蓮に…胸をいじられて気をやっただけだ…。」
絳攸はボソボソと呟いた。
楸瑛は刀を持って龍蓮のもとに走りだそうとする自分を、必死に抑えた。
一方、絳攸は無言の楸瑛に不安になる。
「…楸瑛?」
呼びかけた瞬間、絳攸は寝台に押し倒されていた。
「君には一度、お仕置きが必要みたいだね。」
楸瑛は腰ひもをつかって素早く絳攸の手を縛る。
背後で拘束され、無防備にされた絳攸は暴れはじめた。
「おい!やめろ!
…楸瑛!?」
楸瑛は絳攸の胸に指を這わす。
そこは左側だけ赤みが濃くなっており、少し血が滲んでいた。
楸瑛は心の中に黒い炎が荒れ狂うのを感じた。
「朝までにたっぷりと分からせてあげるよ?
絳攸。」
妖艶に笑う楸瑛の目に、黒い炎が見えた気がした。
絳攸は血の気が引く思いだったが、体は楸瑛によって
快楽に支配されていった。
この夜、楸瑛の巧みな仕置きに、絳攸は泣き叫んで許しをもとめた。
その声は朝まで邸に響きわたったという。
END
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ついに龍蓮登場(笑)
タラシの楸瑛に嫉妬してもらおうと書いてみました!
龍蓮の言葉づかいが合ってるか心配ですが…。