あぁ…。

自分はまた、大切な人を失ってしまった。

大事なものほど、どうしていつも指の隙間をすり抜けていってしまうのか…。

どうか、これ以上奪わないでください。

三代目火影の眠る墓石の前で、イルカは静かに祈った。

空にはあの日と同じように、小さな鳥が飛び交っている。

どこかの国では、人が死ぬと蝶になるという。

国が違えば、鳥にもなるのではないだろうか?

イルカはそんな事を考えながら、ただ空を見ていた。


「カカシさん。……また泣いてる、なんて思ってますか?」


呼ばれたカカシは、イルカの横に音もなく姿を現した。

イルカはゆっくりと、視線を空からカカシに合わせた。


「あなたはいつも……私が独りだと感じる時に、居てくれるのですね」


イルカは温かい笑みを浮かべた。


「俺は、貴方を独りにはしません」


カカシはそう言うと、イルカを抱き締めた。


「!……今は、信じます」


この人は、本当に強い人だから。

今までも、いくつもの死線を乗り越えてきた人だから……。

さすがに、いい年をした男二人が抱き合っているのもどうかと

イルカはやんわりカカシの身体を押した。


「そろそろ受付の当番なので、失礼します。
……ああいう慰め方は、女性だけにした方がいいと思います」


イルカのうっすら赤い頬を、カカシは見ていた。

走り去るイルカが見えなくなるまで、カカシは見つめ続けた。



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