いつか本当を手に入れたい





イチャパラを読むカカシは、いつかこの本の主人公達のように

熱々な関係になれる相手に出会うのが夢だった。


だが周りの女たちは百戦錬磨のくのいちばかりで、男を喜ばす方法を熟知しており

当然恋や、純愛などには程遠い。

だからカカシ自身、身体だけの関係に徹していた。

だが上忍師の任を受け、初めて受け持つ下忍なりたての子供達を通し

イルカと出会ってからは違った。

この人なら、一緒にいるだけで幸せな気持ちになれる。

むしろ、腕の中で大事にしていたい。


なにしろナルトのお色気の術で、鼻血を噴くくらいの人なのだ。

忍の世界は汚い事も、任務ならばこなさねばならない。

それなのにイルカは、どうしてあんなに穢れる事もなく、いられるのだろうか?

カカシの目に写るイルカは、高潔で芯が一本通った百合の花の様に見えた。

地味な顔立ちではあるが、中からにじみ出る人柄や知性が

イルカを輝かせて見せている。


気がつけば、カカシはいつもイルカの事を考えていた。

挨拶を交わせば、その日はずっと上機嫌でいられる。

会えない日は一目でも会いたくて、何度も写輪眼で写し取った顔をおもいうかべた。

我慢できなくてアカデミーに行き、こっそり授業を覗くこともある。

任務で里をあける時は不安で、心配で、忍犬に護衛させている。

もちろんイルカには内緒であるが。

別に中忍としてのイルカの実力を、疑っている訳ではないのだ。

中忍であれだけの数のAランク任務をこなせる者はそう居ない。

三代目の膝元で補佐役兼アカデミー教師になっていなければ、きっと上忍として

任務に就いていただろう。


そうなれば自分は、イルカと出会えていただろうか?

真面目な性格のイルカは、きっと里のために戦忍として外回りの忍になるだろう。

そうしたら出会う事は無かったかもしれない。

そう考えると、思わず安慮のため息が漏れるのだった。




日々はあっという間に過ぎて行き、子供たちは再不斬や白との戦いから

忍として多くのことを学んでいった。


なぜなら、あの任務から子供たちの顔つきが変わったのだ。

カカシは、中忍試験を受けさせてみようと考えた。

あの子達は苦境の中から己を磨き上げ、強くなっていく。

その根底には、イルカのアカデミーでの基礎があるからこそだと思うのだった。

イルカの教師としての腕を信じればこそ、カカシは子供たちを中忍試験に推した。


なのに、考えの相違でイルカから反対されてしまったのだ。

子供たちを大事にするイルカは、カカシにくってかかってきた。

上忍の自分に。

忍社会は上下関係が厳しい。上忍に意見するなどもっての他なのだ。

なのにイルカは、子供たちの為に身をていして意見してきた。

なんだか無性に腹がたって、カカシはイルカに酷い物言いをしていた。

冷静さを失って言い過ぎるなど、今までなかったのに。

大事なイルカを傷つけてしまった。

カカシは心底後悔していた。

あの苛立ちはきっと、子供たちに嫉妬したのだ。

イルカは子供たちばかりを気にかけ、カカシの事など単なる上忍師の一人としか

見ていないのだから。


自分はこんなにも、イルカを想っているのに。

恋とはこんなにも苦しいものだったのだと、カカシは身をもって知るのだった。






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