ぬくもり





「イルカ先生、この後空いてますか?
飲みに行きましょう?」

「…はい?」


受付で、渡された報告書をチェックしていたイルカは

思わず顔を上げた。

だが、カカシの顔が意外と近くにあったために、思わずのけ反る。


「たまには、いいでしょ?」


カカシは笑顔で、半ば強引に誘う。


「私なんかと飲んでも、楽しくないと思いますよ?」


イルカの、ちょっと困ったような笑顔もいい。

カカシがそんな事を思っていたとは、イルカは考えもしないだろう。


「楽しいですよ。
じゃ、決まりね。そこで待ってますから」


言うが早いか、カカシは受け付け近くのベンチに腰かけ

あやしげな本を読み始めた。

一方イルカは、口を開けたままの態勢から

一気に脱力した。

報告書は不備もないので処理した。

そして、迷っていたイルカも覚悟を決める事にした。

相手は上忍。

失礼があってはいけないが、ナルトの様子も気にかかる。

いい機会だとしよう。

イルカはそう、自分にいいきかせた。

しばらくして人が途切れると、横に座る同僚がイルカの耳元に話しかけてきた。


「いつの間に……ひっ!!」


同僚とイルカの間、わずか2センチほどの隙間に

クナイが通過し壁に刺さる。

どこから!?

周囲を見回す。

そこになんとも、呑気な声がかかる。


「驚かせて、ごめ〜んね。
虫がいたので、つい」


ははは、と笑うカカシ。

だが、明らかに意図的にやったものだ。

自分たちは何か、気に障る事でもしたのだろうか?

再び受付が混んできた事から、イルカは深く考える事をやめた。




夕方の混雑ラッシュを乗り越え、現在イルカはカカシと飲み屋に来ていた。

座敷の個室に通され、向かい合わせに席に着いていた。


「こんな高そうな店、はじめてですよ。
本当にご馳走になってしまって、いいんですか?」


「もちろんです。
さぁ、食べましょ?」

カカシの唯一確認できる右目が、愛想良くほそめられた。

あの有名な、はたけカカシがこんなに気さくな人間とは…。

イルカは自然に、とびきり好意的な笑みを浮かべていた。

それを向けられた本人、カカシは。

額当てを取り、顔をさらけ出した状態で

イルカに見惚れていた。

だがそんなマヌケ面も、元の造作の良さでカバーされている。


「あっ!カカシ先生、すごく男前なんですね…」


イルカは意表をつかれて、思わず頬を赤らめた。

男くささのない、そんな印象をうける造作なのだ。

男相手にこんな表現もどうかと思うが、美人なのだ。

一方カカシは。

なんだか…凄く幸せな感じがする…。

えもいわれぬ幸福感を味わっていた。

知らず知らずのうちに、口元がゆるんでしまうほど。

カカシとしては、もともとイルカの事は知っていたのだ。

3代目の補佐として働くイルカ。

カカシは一方的に好意をよせていた。

イルカ視点で見るカカシの笑みは、子供のように無邪気な笑顔だった。


「イルカ先生、冷めないうちに食べよ?」

「はい」


子供みたいな笑顔をむけるカカシに、イルカはすっかり緊張が和らいでいた。

むしろ楽しいと思い始めていた。

穏やかな空気、気さくな人柄。

子供たちとの任務の様子を細かく、楽しそうに話してくれた。

ナルトの事も、サスケやサクラに対しても

実によく見ていると感じた。

この人はなんて、できた上忍なんだろう。

上忍の中には、嫌みな奴も多いのだ。

ふと、イルカはある事に気がついた。

カカシの皿の周りが、こぼれた食べ物だらけなのだ。


「はたけ上忍、今ズボンにこぼれましたよ?」

「あ、ほんとだ。
ありがと、イルカ先生。
…あの、カカシでいいです」

「は、はい。ではカカシさん。
さしでがましいようですが、…よかったら箸の持ち方教えましょうか?」

「はい、ぜひ!」


今まで、カカシにこんなことをいう人間は居なかった。

エリート忍だから、写輪眼のカカシだから。

たぶん、そんな理由で許されていたのだ。

それをイルカは、教えてくれるという。

この人はごく自然に『はたけカカシ』を見てくれるんだ。

カカシは感動に打ち震えた。


「分かりやすく説明すると、まず箸を一本鉛筆を持つようにします」


イルカは分かりやすい様に、カカシの隣に移動してから

教え始めた。

カカシはドキドキしながらも、懸命に指を動かす。


「こうですか?」

「はい、そうです。
そのままで、待っていてくださいね。」


イルカは残りの箸を、指の隙間に差し込んだ。


「これが基本の持ち方です。
何か掴んでみてください」

「はい。あ…!!」


簡単につかめた事に、カカシは驚いた。


「さすがカカシさん。
覚えが早いですね」

イルカは生徒を褒めるように、カカシを誉めた。

手早くカカシの周りの食べこぼしを、拭き取ることも忘れなかった。


「…イルカ先生って、モテるでしょ?」

「モテませんよ?
内勤で、しかも中忍ですからね」

「こんなにマメで、気がつく人なのに?」

「女性には鬱陶しいみたいです」

「見る目ないですね。
オレなら、絶対イルカ先生がいいなぁ」


カカシの言葉に、何故かイルカは嬉しくなった。


「お世辞でも、うれしいです」


カカシは、本心ですと微笑んだ。

おっとり微笑むその姿に、イルカの心が温かくなった。


「ねぇ、イルカ先生。
また、こんなふうに一緒に食事しましょうね」

「はい」


イルカとしても嬉しい事だ。

イルカの答えに、カカシは花が開いたような笑顔で喜んだ。

暗部にもいた事がある優秀な忍なのに、どうしてこんな子供みたいに笑うんだろう?

カカシさんは本当に、純粋で優しい人なんだなぁ。

イルカは知らぬ間に、カカシに惹かれ始めていた。


END


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ちょっと中途半端な話かも;
片思い系のカカイルも、なんだか好きなんです。
二人がくっつくまでって、他のサイトさんの小説読んでも
なんかドキドキします^^

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