信じられないことだが、なんと雪が降った!!
何が信じられないって、ジョンが来た日から四日後には秋を通り越して
雪なわけで。
本当に寒くて死ぬ!!
でも春にはジョンにお祝いをあげたいから頑張って働かなくちゃダメだよな。
俺は相変わらずジャブジャブやっている。
でも午前中は鉱石を運ぶ作業を手伝ったりして、だいぶ筋肉がついたと思う。
「あーアカギレできてる。痛い…。」
都会育ちで部活にも参加してなかった俺の皮膚は柔だった。
すぐ切れるし、荒れる。
カーンカンカンカン
今日はもう終わりか。
日が短くなったおかげで作業時間がずれている。
ここでは日の出と共に起きて、日の入りと共に寝るのが普通なのだ。
「ショウゴ。」
この声はレギウスだ。
いつのまにか俺の名前をちゃんと発音できるようになってて
正直嬉しかった。
今だって俺、満面の笑みだし。
そしたらレギウスも少しだけ目を細めて口の端が上がっている。
レギウスってば、笑うのヘタクソだな。
折角こんなに顔いいのに。
ジョンは甘い感じに整っているのに対して、レギウスは硬派な感じ。
ダークブラウンの長い前髪で顔が半分くらい隠れてるからレギウスの印象は地味な男
って感じになっていた。
ちなみにこの人、身長190センチくらいあると思う。
足なんて長い長い。
「手、見せて。」
俺は有無を言わさずレギウスの手をとった。
やっぱり元から手の皮が厚いみたいだ。
それに凄くあったかい。
レギウスの手をほっぺたにあてて暖をとることにした。
はたから見たらバカップルがイチャこいてるみたいな感じで
そのまま食堂に歩いた。
それくらい寒かったんだよ。
コタツに入りたい!
夜中、俺はあまりの寒さに起きてしまった。
寒くて体がガタガタいってる。
…なんで他の奴は大丈夫なんだ!?
「ショウゴ。」
レギウスが向かいの二段ベットの下から手招きしていた。
おっちゃん二人を起こさないように静かに移動すると、力強い腕に引っ張られた。
俺は狭いベットの中でレギウスに抱き込まれてしまった。
でもすっごく暖かい。なんか俺の氷のような足先とか、指先が申し訳なかった。
「おやすみ。」
「…おやすみ。」
絶対レギウスに子ども扱いされてるんだろうな。
なんだか複雑な思いもあったけど気がついたら意識がとんでいた。
翌朝、レギウスは先に起きて俺を起こしてくれた。
「おはよう。」
「おはよう。これからは寒いなら俺と寝ろ。」
レギウスの言葉に俺は思わず凝視してしまった。
「あ、ありがとう。そうする。」
背に腹はかえられない。
なんか、どんどん女の子から遠のいてる気がするのは気のせいだろうか?
オヤジ二人もニヤニヤ見るな!!
そんなこんなで、ここでの初めての冬がはじまった。
ここでの時間はゆったり流れている。
なんか癒されるんだよな…。
ここに来て、そろそろ半年くらいになっていた。
言葉もだいぶ覚えた俺に、レギウスは読み書きも教えてくれている。
休みの日の早朝は狩りにも連れて行ってくれるんだ。
レギウスは弓が上手い。
外したとこ見たこと無いもんな。
俺は修行中。
今はレギウスが親鳥みたいに世話してくれるけど、ずっと一緒は無理なんだし。
ならばレギウスから学べるもんは全て学んでおきたいと思う。
「すごいな!!鹿なんてさ。
久しぶりに乾燥肉以外の食事にありつけるね。」
「ああ。
…ショウゴ。」
「何?」
なんだかレギウスの様子が違う。
「俺は春にここを去る。」
雷に打たれたみたいな衝撃が体を貫いた。
なんだか言葉がうまくしゃべれない。
なんだかわからないうちに走り出していた。
レギウスが俺の名前を呼んでるけど、今は無理だ。
聞きたくない。
俺は走りまくって窪みに落ちた。
「…いたい…。」
涙が出たのは擦りむいたとこが痛いからだ。
そういう事にしといてほしい。
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