アレ?なんか寒い…。

手で周りを探ってみる、が…。


「わっ!!」


俺は飛び起きた。

急いで周りを見回すが誰もいない。

寝坊して置いていかれたか!?

…なんて一瞬考えたけど、荷物あるから大丈夫。

手早く身支度を整え、宿の主人にレギウスの事を聞いてみた。

どうやら裏の小川に向かったらしい。

たまには迎えに行こうと歩き出した。

すぐに何やら、かしましい声が聞こえてきた。

まばらに生えた木の陰に何人かの女の人が群がっていた。

おいおい、もしやレギウス水浴び覗かれてんじゃないのか?

俺がのんびり歩いて行くと川ぎしにレギウスがいた。

なんと上半身裸で剣を振っていた。

あんな重そうな剣を軽々と振ってるよ。

ボーっと見てたらレギウスが気づいてくれた。


「おはよう。昨日はすまなかった。」

「大丈夫だよ。レギウスこそ頭、痛くない?」


レギウスが頭下げて謝ってくるなんて驚いた。

ああ、二日酔いってどう言えばいいんだろう?


「剣を振って飛ばした。」

「なんだ、それ!?」


俺はそんなことを言うレギウスが面白くて笑ってしまった。

レギウスもつられて笑ってる。

だんだん笑顔が上手くなってるな。

今日もいい男だ。

背後のギャラリーもキャアキャア喜んでるぞ。

そんな女の人達の中を通り抜け、俺たちは朝食を食べに食堂に向かった。



「おっ、二人共おはよう。」

「おはよう。昨日の今日でもう働いてるの!?」

「当たり前だろ?
この食堂をもっと立派にしてエイナたちに楽させてやるんだ。」

「いい婿してるね。」

俺たちを席に案内すると、ジョンはもちろんというようにウインクして戻って行った。

背後に花畑が見えた気がしたぞ。

ジョンがすぐに朝食を運んできたから、黙々と食事に専念する。

食べ終わる頃、再びジョンが俺たちのところに来た。


「今日出発なんだろう?気をつけてな。
文字を覚えたら手紙を書くつもりだから、落ち着いたら住所を教えてくれよ。」

「うん。わかった。
俺も今、文字覚えてるとこ。」

あれ?

レギウスが紙に何か書いてる。


「ソワノ・デラに俺の家がある。」


言うなり、レギウスは紙をジョンに渡した。

住所を書いて渡してくれたようだ。本当に親切だな。

「ありがとう。ショウゴをよろしく。
旅の無事を祈ってるよ。」


レギウスは力強く頷いてこたえた。

ジョンの食堂を出て、村長たちに別れの挨拶をして俺たちは村を後にした。





ソワノ・デラに向かうには歩きだと20日くらいかかるらしい。

けどジョンのいる村から一日ほどのリゲータという町にレギウスの馬を預けてあるから

半分くらいの日数で行けるみたいだ。

よかった!

まだ三時間くらいしか歩いてないのに、俺の足はかなりヤバイ状態なんだ。

でも我慢だ。靴擦れがなんだ。歩かなきゃ着かないぞ!

歩く速度が遅くなってもレギウスは歩調を合わせてくれる。

俺は心の中で謝りながら歩いた。

口開いたら泣き言が出そうだから。

しばらくして草原の道から森の中へ入った。

さっきも小石があったりで歩きにくかったけど、森の中は木の根や倒れた木があって

さらに過酷だった。


「ショウゴ。そろそろ昼食にしよう。」

「うん!」


大きな木の根に座ってエイナからもらったお弁当を食べた。

サンドイッチみたいなやつ。

凄くうまかったし、元気が出た。

しばらく休憩するらしく、レギウスが近くを探索にいった。

俺は靴を脱いで足を揉んでみた。

ん?今なんか聞こえた気が…。

周りを見回すと、いた!!

すごい!

小さい人間!妖精ってやつ!!

なんか全体的にピーターパンみたいだ。

薄いグリーンの髪が帽子から見えてて、目は薄茶って言うか金色に近いな。


「お前、名前は?」


おお!しゃべった。


「ショウゴ。お前は?」

「フィル。これでショーゴ僕の友達。」

「友達?」


名前しか知らないのに気が早いとか思っていると、レギウスがきた。


「珍しいな。風の精霊か。」

「精霊?こっちの世界にはいるんだね。」

「ああ。だが見える者は少ない。」

「じゃあ俺、得したな。」


レギウスが笑って頷く。

風の精霊・フィルは何やら周りを飛び回ってる。

レギウスは草を揉んで俺の足にくっつけてきた。

薬草かな?

手際よく布まで巻いてくれた。


「ありがとう。スース―してきて気持ちいい。
もう歩けるよ。」

「行こうか。森を抜けたら門が見えてくる。」


よし、頑張るぞ!!

俺たちは再び歩き出した。



BACK / NEXT