藍区の邸に着くと、楸瑛は絳攸を支えるように歩みを進めた。
寝所までが長い道のりのように二人は感じていた。
楸瑛は広い寝台に絳攸を座らせる。
「絳攸。私はね、正直に言うと君を汚してしまうことが怖いと思っていたんだ。」
楸瑛は絳攸の前に膝をつき、その手をとる。
「怖い…?それは俺の後ろにある紅家のことか?」
絳攸は自分に何があろうが紅家が動くことは無いと思っている。
だから心配は無用だと軽く言った。
「ああ、そういう事ではないんだよ。
私には君が無垢で清楚な花に見えてしまうんだ。」
楸瑛の脳裏には一瞬、黎深の冷たい顔が横切ったが
目の前の絳攸には覚悟をさせるだけのものがある。
「お前の目はおかしくなっているのか!?」
絳攸は訝しむ顔で楸瑛をじっと見つめた。
「おかしい所か、むしろ正常になったと思うけどね。」
笑い混じり言う楸瑛だが目は笑ってはいなかった。
絳攸はいつにない楸瑛に、彼はちゃかした言い方で真実を混ぜるやり方でしか
本心を伝えられないのだと感じた。
楸瑛は絳攸に出会って、どうでもいいと思う事でも違って見えるようになっていた。
以前は難攻不落な美女と一夜を楽しむまでの、遊戯のような付き合いがいいと思っていた。
藍家直系の四男である自分は結婚など政治的な意味しかないのだから
それまで様々な女性と一夜を楽しもうと考えていたからだ。
だが今は、絳攸さえ手に入るのなら藍家を捨ててもいいと思っている。
本当の恋とはなんと偉大なことか。
楸瑛は絳攸の手の甲にそっと口づける。
「わぁっ!な、貴様…」
驚いた絳攸が手を引こうとするが楸瑛によって逆に抱き込まれてしまう。
「愛してるよ、絳攸」
楸瑛は絳攸の耳元で囁く。
かすれた声音に絳攸の鼓動が跳ね上がった。
だが、頬が触れる楸瑛の力強い鼓動も、絳攸と同じようにすごい速さでうっていた。
絳攸はそんな楸瑛に微笑んで力をぬいた。
「本当に同じ想いで繋がっているんだな。」
絳攸の言葉に楸瑛はこたえる。
「奇跡ようだね。」
楸瑛は絳攸の服を丁寧に脱がせながら、羞恥に赤らむ絳攸を口づけで酔わせていった。
薄暗い闇には甲高い水音と、喘ぎ混じりの荒い息づかいが響いていた。
「…っん!あ…」
絳攸は我を忘れて甘い声をもらしていた。
楸瑛の長い指は絳攸の下腹部のさらに奥、小さな窄まりに根元まで収まっていた。
香油で光を帯びたそこは綺麗な紅色をみせていた。
楸瑛は注意深く中を探りながら、絳攸の首筋や胸に花びらを散らせていく。
「ふっ…あ……ぁあっ!!」
楸瑛の指がある部分に触れた瞬間、絳攸の体がびくりと跳ね上がった。
「ここだね。絳攸、もっと乱れて見せて…。」
楸瑛は指を増やし、見つけたばかりの絳攸のいい所を攻め立てた。
「やっ…やめ…しゅ、えい!」
絳攸はまとまらない思考の中、未知の快感に不安を感じ恋人の名を呼び、求めた。
楸瑛は絳攸の手が宙をさまよい自分を探しているの捉え、肩にまわさせる。
「ここにいるよ、絳攸。私にすがっていいから。」
楸瑛が甘く囁くと、絳攸は両方の手で楸瑛の肩にすがりついた。
向かい合わせで間近に見る絳攸は目尻に涙を浮かべ、快感に酔いしれていた。
薄く開いた唇は普段より紅く色づき濡れており、きつい目元はいっそう色香を増していた。
楸瑛はすでに何回か達して濡れそぼる絳攸の下腹部と自分のものを一緒に握り
絳攸ともども快感を深めていった。
「あ、…っあ、あ、…ひっぁ…あぁ!!…」
奥の窄まりと同時に攻め立てられ、絳攸は叫びをあげて意識を失った。
楸瑛も同時に絳攸の腹部に解き放っていた。
「絳攸…。今夜はこれで許してあげるよ。」
楸瑛は絳攸の汗ではりついた前髪を後ろに流すと、額に口づけをおとした。
近くにあった衣を引っ掛けると、楸瑛は絳攸の体を濡れた布で清める。
よほど疲れたのだろう絳攸は起きる気配が無く、されるがままの状態で楸瑛にとって
楽しいひと時になった。
「絳攸、楽しみはもう少し後までとっておくよ。」
楸瑛は絳攸の中に入ったら、きっと我を忘れてむさぼってしまうだろう自分を押さえ込む。
そして最愛の人をその手に抱きながら眠りにおちていった。
キリ番TOP / 前編
砂糖菓子のように甘い男・楸瑛…。
私の書く楸瑛はそんな奴になってしまう…;;
こんな話になってしまいましたが、お礼の気持ちをこめて
お贈りいたします。