「思い出サイクル」

「自転車?・・・お前、乗れないの?」
「う・・・うん」
妹の香奈が真剣な顔で俺に告げた相談したいこと、というのは
自転車に乗れるようにしてほしい、というお願いだった。
そういえば、こいつはガキの頃から大人しかったし
親父も自転車とか香奈にはやらなかったから
乗る機会はなかっただろうが・・・中学生にもなって乗れないとは思ってなかった。
「まあ、自転車乗れなくても死なないから心配すんな」
「そりゃそうだけど・・・修学旅行でさ、アタシのグループ自由行動でサイクリングするんだよ」
「ああ、修学旅行ね・・・まあ、お前は走ってついていけ」
「そんなわけいかないでしょ!ねー、練習するから手伝ってよー」
「あのな・・・マジな話、練習するにも俺の自転車じゃ香奈にはサイズが合わないよ」
「その辺の手配も含めてお願いだよー、手伝ってよー」
中学生になっても、相変わらず俺に頼りっきりだな・・・
「しょうがねえな・・・とりあえず、お前に合いそうな自転車借りられるか、そこからだな」
「わーい♪よろしくねっ♪」

「おーい、自転車借りてきたぞー」
翌日。クラスの割と小柄で家の近い女子に頼んで自転車を調達。
玄関から香奈を呼ぶ。
「あ、ありがとー」
パタパタと香奈が玄関までやってくる・・・
「・・・あのさ」
「ん?なに?」
「これから、自転車に乗る練習をするわけだ」
「うん、頑張るよっ!」
香奈は両手をぐっと胸の前で握りしめ、熱意を表す。
熱意は認める。
「わかった。わかったから・・・ミニスカートはやめれ」
「・・・なんで?」
「なんで、って!・・・お前、ちょっとここでコレ跨いでみろ!」
「え・・・こう?・・・あ・・・お兄ちゃん・・・えっち」
・・・俺か?俺が悪いのか!?

ジーパンにはき変えた香奈を連れて近所の公園に行く。
「サドルの高さとかどうだ?ちゃんと足つく?」
「ん・・・しょ・・・大丈夫」
「うし・・・じゃ、俺がまず押してやるから」
「うん!頑張る!」
再び、ガッツポーズ。
「・・・だからハンドルから手を離すな」
「ういー」
香奈がハンドルを握ったのを確かめて、後ろに回って押そうとする・・・
荷台が、ない。泥除けもない。
押すために手をあてがうところが・・・
「ひゃ!?な、ちょ、お兄ちゃん!?」
・・・尻しかなかった。
「エッチ!どこ触ってんのよぅ!」
「うるさい黙れ。お前の尻触ったって別に嬉しくはないんだ」
・・・ホント、だぞ?

押す。ひたすら押す。自転車にまたがった香奈の尻を押す。
ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・ハァ・・ハァハァ・・・
「・・・お兄ちゃん」
振り向かずに香奈がつぶやく。
「なん・・・だっ・・・?」
「背中でハァハァされると、キモい」
押すの、やめ。
「あのなぁ!疲れるんだよ、これ!お前、重い!重すぎ!」
「ヒッドーイ!重くないもん!お兄ちゃんが体力なさ過ぎなんだよ!」
「お前は跨ってるだけだろうが!押してみろ!俺が跨るからお前押してみろ!」
「それじゃ練習にならないよ」
「んがー!!」
押す。再び押す。ムキになって押す。
「あ、やだ、押すだけにしてよ!?・・・掴まないでよぅ!?」
「うおぉぉぉぉっ!!」

だんだんとスピードが上がる。
「よしっ!・・・ちょっとこいでみろ!」
「え・・・こ、こう・・・うわわっ!?」
片足を上げたとたん、バランスを崩しかける。
「おっとぉ!」
慌てて支える。
「や、だからそんなにギュッって掴んじゃヤダァ!」
「いいからこげっ!」
「もうっ・・・よ、っと」
ふっ、と重さが軽くなる。
香奈の体が、支えていた俺の手を離れていく。
そのまま、ペダルを踏むごとにすい、すい、と俺から離れていく。
「やた!見て見て、乗れてる乗れてる!」
喜びの叫びを上げながら、香奈の自転車が遠ざかっていく。
長い髪をなびかせて、どこまでも、まっすぐに走っていく。
ずっと遠くに行ってしまったような気がした。

「お兄ちゃーん」
遠くで香奈が呼んでいる。俺も答える。
「おーい」
「どうやって止まるのー!」
・・・・・・追いかけないとダメかな。
こぎ続ける香奈の自転車を追いかけながら、叫ぶ。
「ハンドルを握れ!」
「握ってるー!」
・・・間違えた。
「ハンドルに付いてるレバーを握れっ!」
キーッ、と甲高い音を立てて自転車は急ブレーキをかけ・・・
「あわわわわわっ!?」
ドシャン!派手にこけた。
こけてうめいている香奈に追いつく。
「もっとゆっくり握れ」
「・・・遅いよ・・・」

片腕で自転車を押し
もう一方の腕で痛い痛いと文句を言う
香奈を抱きかかえるようにして家へと戻る。
「うー・・・まだ痛いー」
尾てい骨のあたりを盛んに気にしている。
「湿布でも貼っとくか・・・」
薬箱から湿布薬を探し出し、手渡す。
香奈は湿布を貼るために部屋に戻っていったが
すぐに戻ってきた。
「・・・お兄ちゃん」
「なんだ?もう貼れたのか?」
「貼れないよ・・・見えないとこなんだもん」
「ああそうか・・・じゃ母さんが帰るまで待ってろ」
「・・・待ってられないよ、痛いんだもん・・・だから」
香奈がもじもじしながら湿布を俺に返した。
「お兄ちゃん、貼って」

「は?・・・いや、その・・・」
「私は・・・気にしないから」
いや、俺が気にする。
中学に入った頃から、だんだんと丸みを帯びている妹の尻を
生で見たりするのは兄としてどうよ?
「・・・早く」
香奈が俺の手を取って部屋へ誘う。
「湿布貼るだけなんだから・・・いいよな」
自分で自分に言い聞かせる。
「そうだよ・・・別に、その・・・変なことしちゃ、ダメだけど・・・」
「バカ・・・へ、変なことなんか、するか・・・」
「ど、どもらないでよ」
顔が熱い。
香奈の顔も赤い。
お互い顔を赤くして、香奈の部屋に入る。
部屋に入ると・・・香奈が後ろ手に、ドアの鍵をかけた。

「な、なんで鍵かけるんだよ!」
「え・・・あ、だ、だって!・・・お母さんとか、み、見つかったら・・・恥ずかしいし」
そりゃまあ、確かに恥ずかしい。
「・・・ちゃっちゃと貼っちゃおう、な」
「うん・・・」
そう言って・・・香奈がジーンズを脱ぎ始める。
ドキドキ・・・
やがて香奈は、上は薄手のトレーナーで
下はソックスとパンティだけという、何ともHくさい格好になった。
「・・・あんまり、見ないでよ」
香奈がトレーナーの裾を引っ張ってパンティを隠す。
「あ・・・いやでも、見なきゃ湿布貼れないしさ」
「必要以上に見ちゃ、ダメ」
「はいはい・・・」
香奈がベッドにうつ伏せになる。
その太股をまたぐように、俺もベッドに上がった。

「痛いの、どの辺だ?」
「えっと・・・このあたり」
香奈が後ろ手に尻の辺りを指し示す。
「・・・あー・・・ちょっとパンツ下ろすぞ?」
「・・・うん」
ドキドキドキ・・・
パンティのゴムに指をかけるとき
指先がほんのちょっと、香奈の体に触れた。
ぴくん、と香奈の体が震えた。
が、特に抗議とかはしてこない。
そのまま、パンティを下ろしていく。
ドキドキドキドキ・・・!
いわゆる、半ケツ状態。
もうちょっと下ろしたら・・・全部、見えちゃうな・・・
「・・・お兄ちゃん?」
ああ、いかん。何考えてるんだ、俺・・・

湿布を貼って、パンツを上げてやってドキドキが収まってみると
何で妹の尻でこんなドキドキせにゃならんのかと
我ながら情けなかったり恥ずかしかったり。
ジーンズを履き終えた香奈がぼそっとつぶやく。
「あー、恥ずかしかった・・・」
「俺もだ・・・」
思わずそう答えた俺に、一瞬きょとんとしてから、香奈が嬉しそうな顔になる。
「・・・そう、なんだ・・・えへへっ♪」
「・・・なんだよ」
「だって、それって私のこと、女の子として意識しちゃったってことでしょ?」
「ばっ・・・・!バカ言えっ!!お前なんかまだガキだガキ!」
そう。俺も香奈もまだガキだ。
いつか、もっと大人になったら・・・
今日のことを、ちょっと恥ずかしい思い出として思い出すんだろうな・・・
「ガキじゃないもん!もう女の子だもん!」
・・・とりあえず、ちゃんと自転車に乗れるようになろうな、香奈。

(Seena◆Rion/soCysさん 作)

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