「ご利用は計画的に」

机の上。並んでいる数枚の硬貨と千円札が3枚。
3860円。
角度を変えて、ちょっと斜めから見てみる。
・・・やっぱり3860円。
これが今の俺の全財産。
目的にはちょっと足りない。
具体的に金額で言うと1万6千円ほど足りない。
全然足りないとも言う、見方によっては。
近所のゲーム屋のチラシにのっていた
プレステ2・19800円がどんどん遠ざかっていく。
所詮俺には届かぬ夢だったのか。
どんなに望んでもかなわぬ願いだったのか。
だが、その時。
絶望しかけた俺の頭にある記憶が蘇る。
・・・まだ諦めるには早いようだ。
一縷の望みを胸に、俺は部屋を出た。

部屋のドアをノックする。
「香奈ー?入るぞー?」
妹の部屋に入るのは久しぶりな気がする。相変わらず少女趣味な部屋だ。
「なに?」
机に向かっていた香奈がどこか嬉しそうに俺に振り向いて・・・
「あのさ・・・貸してたよな、2万円」
・・・そして、笑顔のまま凍りついた。
「そ・・・そうだっけ?」
「新年早々貸しただろうが・・・あれ、今返せないか?」
「えー・・・もう使っちゃったよぅ」
「2万全部かよ」
「使うから借りたんだもん・・・今は無理だよ」
・・・まあ・・・それもそうだよなぁ・・・
「ごめん・・・あの・・・お金返せないから・・・」
申し訳なさそうな顔でモジモジしながら、香奈が上目遣いに俺を見た。
「・・・体で返すって・・・どうかな・・・」

今度は俺が凍り付いた。
体で返す・・・借金が返せないから・・・女の子が体で返す・・・
頭の中、それがどういうことなのかと考えがグルグルと回っていく。
「・・・ダメ?」
いや待て体で返すってそれはアレだパシリするとか肩揉んでくれるとか宿題かわってやっていやそれは無理・・・
「ねえ・・・ダメ?・・・私の体じゃ、2万円の価値もない?」
香奈が椅子から立ち上がる。
「けっこう・・・自信、あるんだけど、な・・・」
着ていたカーディガンが脱ぎ捨てられる。ブラウスのボタンが一つ一つ外される。
スカートが足下に落とされたところで我に返った。
「待てっ!ちょっと待てっ!!」
もう下着しか身につけていない香奈が俺を見つめる。
「返済、受け取ってくれる?」
「いやだから・・・たかが2万円のためにそんなっ・・・!」
「私は・・・かまわないよ・・・」
・・・プレステ2がとんでもないものに変わろうとしていた。

どうする!?どうすればいい!?
正直香奈のことは好きだけどそれは妹としてイヤ女の子としてもでも妹だしマズイマズイマズイ!
何がマズイって俺の下半身がマズイっていうか落ち着け俺!
深呼吸!そうだ深呼吸だ!
目をつぶって大きく息を吸っては吐いて・・・
「・・・お兄ちゃん」
「!?」
目をつぶった俺のすぐそばで。吐息を感じられるほどすぐそばで。
香奈が囁く。甘い声で。
胸に何かが触れる。
指。香奈の、指だ。俺の胸の上を、這い回る。
ボタンが・・・シャツのボタンが外されていく。一つ、また一つ。
上着が脱がされる。シャツの前がはだけられる。
首筋に・・・熱い吐息を漏らす唇が触れたとき
俺はたまらずに目を開けた。
下着すら脱ぎ捨てた、香奈の白い裸身が目の前に立っていた。

もう誤魔化せない。もう逃げられない。
そう悟ると、不思議と冷静さが戻ってきた。
香奈は俺と結ばれることを望んでいる。
俺はどうだろう。
結ばれたいのは、香奈となのか。
ただ目の前の裸体に性欲を感じているだけじゃないのか。
違う。
俺だって、香奈が好きだ。
香奈を見つめながら自問自答しているうちに気づく。
震えている。
香奈が震えている。
恥ずかしさからか、それとも未知の体験への恐れからか
震えて
それでも、その体を隠すことなく
真っ直ぐに俺を見つめて、香奈が待っていた。
じっと、待っていた。

はだけさせられたシャツを脱ぐ。
それで、香奈にも俺の決心は伝わった。
少し潤んだ眼で抱きついてくる香奈に俺は耳打ちする。
「言っとくけど・・・2万円の代わりに、ってわけじゃないからな」
こくり、と香奈はうなずく。
「お前のことが・・・その・・・好きだから、こう・・・」
うまく言えない。
うまく言えないのでその顔に触れ、唇を重ねる。
「ん・・・」
抱きしめ合い、長く、息苦しくなるほどに口づけをかわしながら
ゆっくりと、ベッドの方へ歩いていく。
唇が離れ、背中に回されていた香奈の腕がほどけ
とさ、とベッドの縁に香奈が腰掛ける。
「・・・来て」
手を差し伸べて招く香奈に
俺は覆い被さっていった・・・

翌日。香奈と腕を組んで街を歩く。もう腕を組むことにも抵抗はなかった。
途中、ファンシーショップの店先で香奈が足を止める。
「あ・・・コレ、いいなあ」
「・・・金ならないぞ」
「フーンだ。いいもん、自分のお金で買うもん」
「お前だって金ないだろう・・・」
だが。取り出した香奈の財布にはパッと見たところ数枚の万札が・・・
「・・・香奈?」
「なに?」
「なんで・・・そんなにお金持ってるのカナ?持ってるのカナ?」
「へ?・・・あ・・・」
「俺に借りた2万円は使っちゃってもうないんじゃなかったカナ?なかったカナ?」
「えっとー・・・ほら、きっかけになったんだからいいじゃん、ね?」
「・・・狙ってたのか。最初から・・・体で返すとか言うために?」
あきれる俺に、香奈がクスリと笑いかけた。
「お金を借りるときは、返す計画をキチンとしないと・・・ね♪」

(Seena◆Rion/soCysさん 作)

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