ここはご近所でも有名な名探偵、
犬神アンダーグラウンドサーチ。

依頼された事は100%成し遂げ、
金さえ積まれればそれを最優先させる、
プロフェッショナル。

目の前で強盗が起きようが、
人身売買が行われていようが、
依頼と関係なければさらりとスルーする
まさにプロフェッショナル。

犬神ゲルはメガネの所為で頭脳派に見られがちだが、
超武闘派でかなりバイオレンスな13才の少年である。

そしてそんな彼に従う前歴(というか得体)の
知れないこちらも最強な執事、クラレンス。

そこへ突っ込み係り…もとい、
新人の助手、安川マリーが加わり、

この3人でアンダーグランドサーチは成り立っている。





助手と執事と探偵と
あなたは某国のマフィアのBOSSです。






彼らの日常は、おもに浮気調査である。

別にどこぞの眼鏡の名探偵少年のように
突発的に殺人事件にまきこまれたりとか、
謎に包まれた事件を推理して解決していくわけでは無い。

むしろ、現実的にそんな探偵はあり得ないわけだが‥。


「けどたまに凄い事件の依頼くるんよね。」

「凄い…というのは、コレのことか?」


今彼らは、ある犯人を追い掛けて路地…ではなく、
屋根の上を爆走中につき、

まあ、彼らもとっても非現実である。


「一応、怪盗vs名探偵ってすごんちゃうん?」

「まあ…そう言えば聞こえはいいかもしらんが…。」


先ほどから話題にあがっている「怪盗」とは、
巷を騒がす「スパルタンVI(シックス)」のことである。
一度犬神に挑み、ボッコボコにされてから妙にライバル
意識を持ち、盗みを働く前には必ず彼にも挑戦状を送りつける。

矢文で。


「今日はやけに足取りが軽快だな。」

「なんか嬉しいんやろか…。」


盗んだものが小さくかつ高級品ということもあるかもしれない。
いつぞやなどは欲張って盗み過ぎてバカをみたことがあった。
そして、足取りが軽い理由は、もう一つ。


「犬神くん〜!今日の俺はひと味ちゃうでぇー!」

「?」


それまで飛ぶように逃げ回っていたスパルタンVIが突如振り返る。
ビッ!と指をさして月を背に輝かせ、怪盗っぽい演出をしてみせた。
多分、逃げ回っていたのはここまで来る為の経路だったのだろう。


「僕にはいつものヘタレな怪盗にしか見えんが…。」

「チッチッチ。犬神君もまだまだやな。今日はなぁ相棒がおるんや!」

「あ、相棒!?」

「さあ登場したまえ!俺様の相棒、〜!!!」


どこからともなくファンファーレが流れ出し、ご近所迷惑も甚だしい。
が、そんなことも無視して、ファンファーレだけが空しく響いた。


「……何なんいまのファンファーレ。」

「相棒と言うのは今の音楽か?」

「ち、ちゃうわ!ちょぉ待ってえや!!」


真っ赤になって泣きながら屋根を降りていく。
そこで追い掛けずに律儀にまっているのは、
スパルタンVIがこういうこそくな手で逃げるとは
過去の事例から見てもあり得ないからである。
というか、泣いていたので可哀想になったのも少しある。

少しして、再びスパルタンVIが現れた。
何故か少しだけ、ボロボロになっている。


「フッ…待たせたな犬神君にマリーちゃん!」

「いや、その怪我なんですのん!?」

「これは…その…アレや、うん!まあええやん!」

「答えられんのか?」

「じゃまかしゃぁ!それよりもこちらが俺の相棒様の…」

「少し位置関係が変わったようだな。」

君でーす!!!」


と、今度はファンファーレはならなかったにしても、
スパルタンVIがクラッカーをならした。

と、同時に激しく後頭部を殴られたように見える。
見事に月を背景にした”怪盗ポジション”を奪われた。


「そういう煩いのは嫌いだって言ったよね?」

「ハ…ハイスンマセン…。」


スパルタンVIのかわりに現れたのは、一見何の変哲も無い
少年にみえる。だが、彼を見た瞬間に犬神の目の色が変わった。


「お前は…。」

「やあゲル。久しぶり。」


黒いシンプルな衣装に身を包み、腰から垂れるチェーンが
月光に照らされキラキラと輝く。スパルタンVIのような
珍妙な格好はしていないが、よっぽどと呼ばれた
少年の方が怪盗っぽい。


「名前に覚えはあったがまさか本人とはな。」

「うんなんか出合い頭にスカウトされたので。」

「い、犬神君、知り合いなん!?」

「知り合いも何も…」

「昔に犬神君の助手やっとった君です!」


と、ここでやっと復活したスパルタンVIが声高に叫んだ。
マリーはいっぱいい突っ込みたい事があったが、まずは
一番の疑問を口にした。


「犬神君の助手!?」

「ある日突然姿をくらましたのだが。」

「ちゃんとメモ置いていったろ?」

「メモ…とは、これの事か?」


と、犬神が見せた小さなメモ。それをマリーが奪い取り、
読み上げる。


「ちょっと…マフィアの…BOSSになってきますぅ!?」


何なんですかこの非常識極まりないメモは!っていうか
ホンマにマフィアにならはったんですか!?等、それこそ
声を出して突っ込みまくったが、帰って来た答えはとてもシンプル。


「うん。某国のマフィアまとめあげちゃった。」

「まとめあげちゃったんスかー!?」


マリーには理解しがたい範疇ではあるが、犬神にしろ
スパルタンVIにしろ、クラレンスにしろ、得体の知れない
登場人物ばかりの現実からは目を逸らしようが無い。


「で、いつ日本に?」

「今朝かなぁ…。で、ゲルんとこ遊びに行こうとしたら…」

「俺様がこのお人はタダモンではないと判断してスカウトしました!」

「いや…なんかゲルの事務所一生懸命矢で狙ってたからとりあえず…」

「いや、とりあえずやのうて警察通報しよ?な?」

「足に向かって1発撃ったら降って来たから。」

「とりあえずで発砲したらあかんよー!」


マリーの叫びを無視して、スパルタン、ゲル、そして


「いやー…撃たれたんで思わず反撃してもーて。」

「いきなり殴り掛かって来たから…」


いきなり発砲もドウナンスカ!?という叫びはやはり無視された。


「成る程。返り打ちにあったわけか。」

「返り打ちなんてあってません!互角の勝負です!」

「うん、半殺し程度に…。」

君それは秘密にしてよなって男の約束…!」

「そんなもんした覚えない。」

「お前は黙ってろ。」


ゲルとに同時に殴られ、さすがのスパルタンも
魂が半分でかかっているようだ。

あんまりの仕打ちに、マリーが手当てに回ってみた。


「僕の所へ来ようとして、なぜコイツの所へ?」

「ああ、そっちの方が面白そうだったから。」

「この僕の許しも無く出ていき、そして戻ってまず挨拶もなしに?」

「だからこうやって挨拶しにきたろ?ただいま。ゲル。」

「…ふむ。」


妙に納得したように頷いた犬神にマリーが目を丸くする。
常日頃から犬神を取り巻く人々の会話その他諸々にはついて
いけないとは思っていたが、あの犬神が素直に頷いたのを
出会ってこの方初めて見たのだから。


「なあスパルタンVI、君てどう言う人なん?」

「さっきのん聞いてへんかった?マフィアのBOSS…」

「やのうてさ、犬神君との関係?元助手とかやなくて。」

「あー…。さあ、俺もよう知らんけど…」

「けど?」

「犬神君のあの様子やと…もと恋人とか☆」

「そんなワケないやん!」


バシーン!と、犬神特製のハリセンで思わず突っ込んでしまい、
スパルタンはますます帰らぬ人への階段をのぼりつつあった。


「で、結論としては?」

「ん、今日は俺はゲルの敵。スパルタンの味方。」

「そうか、では…」

「ああ、そうやって腕づくなとこ、変わって無いな。」


ス…と、身構えた犬神を無視して、はただ突っ立っている。
だが、彼が右手がゆっくり動くと、そこには見なれたものがあった。


「なん…っ!」

「コレなしで、狙い定まるのか?ゲル。」


動いた気配は無い。だが、の手の中には、
犬神が常に装着しているメガネが握られていた。
それにはマリーどころか、スパルタンまでもが驚いていた。


「…あいかわらずだな…。」

「眼鏡ない方がカッコイイっていってんのに。」

「余計なお世話だ。」


ドン!と音をさせ、人様の屋根を抉って犬神が強く踏み込む。
眼鏡など関係ないと、常人には見えない早さでに近付く、が。


「狙い、定まりにくいよな。」


その声と同時に、ゴガァン!とまた壮大な音がする。
スパルタンとマリーの近くに文字どおり たたき落とされた のは、
犬神の方だった。


「ウ…ウソん!?」

「さ、さすが俺の相棒さまや…!」

「受け身もとり損ねた?鈍ったんじゃ無いか?」

「人の眼鏡をとっておいて良く言う。」

「眼鏡の所為にするなんて、ゲルらしくない。」


クスクスと笑って、突如の姿が消えた。
同時に犬神の体が再び屋根に深く沈む。

しつこいようだが、人様のお家に大きな穴が開いた。


「犬神くーん!?」

「何してんのスパルタンVI。立て、逃げるんだろ?」

「はっはいただいま!」


すっかり主従関係がひっくりかえったスパルタンと


「ミス・マリー。」

「はへっ!?」


突然呼び掛けられて、思わず臨戦体勢を取るが…


「女性を殴るなんて事はしないよ、安心して。」

「ふおっ!?お…おおきに…?」

「犬神に、お見舞いに行くよって言っておいて。」


にっこり微笑まれて、思わず赤面するマリー。
だがやはり、今度はスパルタン共々姿をかき消す。


「な…なんか凄いお人…きたなぁ…。」


ポツンと屋根の上に残されたマリーが、
のんびりとかけつけたクラレンスに発見され、
また犬神が破損した建築材を足掛かりにして
屋根の上にあがってきたのは、ほぼ同時だった。












+アトガキ+

ジャンクその1。少年探偵犬神ゲルドリー夢
スパルタンとマリーを同時に出してはいけない。


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