「ぶえーっくしょいー!!!」



錬金術と手品。
あなたは謎の手品師です。




…あのトレイン・ジャックから3日目。
水をかぶったまま宿屋を捜しまわった結果

なにせ晴れた日なのにずぶ濡れのガキなんて
怪しさ大爆発でどこも泊めてくれ無かった。

幸い女将さんとその娘で細々と開いている

(ちなみに娘さんはメルと言う名で中々の美人さんだ!)

なんともアットホームな民宿をゲッツし、
俺は今そこで………休養中。

ちくしょう、そろそろ動き出さねえと俺、列車の
切符けっこーな金額つかったから宿代がやばい。

女将…つーかアレはもう近所のオバちゃんだな。

オバちゃんは「いつでもいいよ」と言ってくれているが、
俺としてはずぶ濡れの俺を受け入れてくれただけでなく
あったけえ飲みもんやら毛布やらをあわてて出してくれた
オバちゃん達にいちはやく恩返し&宿泊費を払いたい。


「あー…ちくしょう…せめて咽が治りゃ後は何とかなんのに…」


ちょこっとでも動こうとするとオバちゃんとメルさんが
すっとんできて、俺の額に手を当て、寝ていろ!と部屋へ
バック・トゥー・ザ・宿部屋。

優しいにもほどがあるぜオバちゃん…
もし俺が詐欺師とかだったらどうすんのよ…。

とか、考えてる内に食堂兼出入り口の方が騒がしくなった。
俺はこっそり起き上がって、扉を少し開け、耳をすませる。


「シケた店なんざたたんじまえつってんだろがボケ!」

「やめとくれ!今はお客がいるんだ!」

「へぇ、じゃあ今すぐ払えるだろうが!?」

「そ…それは…!」

「払えねえのか?ザケンナよババァが!!」

「やめて!お母さんを殴らないでよ!」

「元気がイイねえおじょーさん?何ならアンタ貰って帰っても良いんだぜぇ?」

「やめとくれ!メルに手をださないでおくれ!!」

「とにかく金が払えねえなら出てけや!期日はとっくにキレてんだよ!」


………。

なんかもうガシャーンとかバキーンとかバシーとか、嫌な音
満開なんスけどねえ…お前等がそうやって物壊して修理費に
まわすとますますその「金」とやらが払えなくなるのを
わかってるんだろうか。サンピン。

つーかムカツク。つーかムカツク。つーかムカツク。

咽なんざこの際後回しだ。待ってろよオバちゃん…メルさん!
この俺様の素敵イリュージョンで追い返してやるから…!!

と、俺はつい最近に開発した手品のネタを手のひらに仕込み、
服は…まあしょうがねえや。パジャマのままで、食堂を目指す。




-- -- --




「はーいお兄さん達ストップー。」

「あんだぁ!?ガキはすっこんでろ!」

くん!まだ動いちゃ…!」

「あー、大丈夫、すぐ引っ込むよ。」


俺も、コイツらも、な。


くんだぁ?ああ、テメェがココに泊まってるって客か。」

「宿泊費払ってねえんだって?悪い子でちゅねー。」

「お兄さん達今すぐお金がほちいの、代わりに払ってよー。」


下品。ゲスな笑い声が響く。
目の端でオバちゃんを確認。ああ…左頬が腫れてる…。
メルさんは…オバちゃんをささえて号泣、ね。


「俺ってさぁ。田舎では結構温厚で通ってたんだよねー。」

「あぁ!?何語ってんだガキ!金あんのか!?ねえのか!?」


ムシ。


「けど、アンタらやりすぎたネ。俺マジでキレちゃった。」


右手の親指と中指に仕込んである火打石をパキンと鳴らす。
小さな火花が散った。ゲスどもは気付いて無い。

火薬の量なんざ、こんな奴等に気づかってやる必要なんか、
ねえよなぁ…?

俺は腕を奴等にむかってビシ!とのばす。それで、手のひらに
しこんである火薬が飛ぶようになってる。そこへ。


「食らえやボケどもが!!!」


再び指をバキンと鳴らすと、粉じんとなって散らばっていた
火薬に火がつく。………あれぇ……量…多かったかシラ…。



ゴガァアアアァァン!!!



「あちゃー……大爆発しちゃった…。」


が、ゲスな兄ちゃんどもは全員店の外に、
店の壁ごとぶっとんでったワケでして。


「う…うわー!!オバちゃんごめん!これも弁償するから!」

くん…あなた…錬金術師だったの!?」

「違うよー俺はただの手品師。とにかくごめん!」

「か、かまわないよ、助けてくれたんだろう?ありがとう…。」


あぁん!オバちゃんってばやっぱ良い人!


「そだ、オバちゃん殴られたんだよな?メルさん、冷やして!」

「あ、うん!君、本当にありがとう!!」

「しかし火薬の量もちっと改良しねえと見せもんになんねえなー…。」

「まるで焔の錬金術師さんみたいだったねえ…くん、すごいねぇ。」


”焔の錬金術師”

それを聞いた瞬間俺の背筋は凍り付いた。オー…バッド・メモリー…。


「と…とにかくオバちゃんは休んで。」

「そうだね…本当にありがとうね…。」

「メルさんに手当てしてもらって、俺は…こんだけ
 大爆発させちまったから…警察に…連絡しないと…」


警察…軍か……あの人「大佐」とか呼ばれてたよな。
こんなちっせえ民宿のゴタゴタにあんな人が来るわけ
ないよネ!俺は外に出て、公衆電話から警察に電話をかけた。

事のあらましをだいたい話すと、警察側の受付のお姉さんが
黙った。話口を押さえて話をしているのか、俺には何を話して
るのか聞こえ無い。

数秒たったあと、再び声がする。


「分りました。ただちに軍を向かわせますのでそちらでお待ちを。」

「はい!?なんで警察じゃなくて軍が来るんスか!?」

「大爆発したのでしょう?それによそには引火していないと。
 普通ではあり得ません。軍が出て事の詳細を調べます。」


プツン!……ツー…ツー…ツー……。

い…一方的に切られた!そしてなんださっきから俺の背筋を
ゾクゾクさせるこの寒気は!なんだ!なんなんだ!!!

応答の無くなった受話器を見つめたまま固まっていると、
ふと背中が暖かくなった。見ると、毛布がかかっている。


「あ…メルさん…」

君、病気なのに寝て無くちゃダメ!」

「でも…俺のせいで店が…」

「上手に言っておくわ、とにかく休んで。」


あーそかー…このゾクゾクは俺ってば病気だったからなのネー。

……………………………………………そう信じたい。





-- -- --





あれから俺はメルさんに手を引かれて部屋まで戻された。
ベットに寝かされてはいるが、眠れそうに無い。
なにせここんとこ寝てばっかりだったからなぁ…。

そうこうしてるうちに、食堂の方がまた騒がしくなった。

「軍の御到着…か…。」

軍は苦手だ。理由なんざねえけどとにかく苦手だ。
得にあの列車事件からますます苦手になった。
まあ…エルリック・ブラザーズにはまた会ってみたい
気もするんだけどなぁ…。

なんて、ぼけーと考えて天井を見つめていると、
廊下をパタパタとかわいらしい足音が近付いてくる。
ああ、メルさんだ。


君、よかったわね!」

「…え?何が良かったんスか…?」

「今君の事軍に話したら、軍の医療施設に入れてくれるって!」

「はいー!?」


陰謀だ!絶対陰謀だ!!俺には見える…あの黒髪の大佐の素敵な笑顔!
逃げねば!!一刻も早くここから逃げ出して、田舎へ帰らねば!!!


「メルさんごめん!金は後日必ず送金するから…!」

「えっどうしたの突然!?」

「それも後でお手紙しますのでお願いだから今は見のがし…」

「あーさんみーつけたー♪」


「ギャ―――――――!!!!!!!!!!」


「ヒトの顔みるなりギャーなんて!さんでも酷いよ!」


ヨヨ…と両手を顔に当てて泣いたフリをしているのは…
3日前にとっても仲良くなった鎧君…。


「おおおおぉおぉオレはこれから田舎に帰る予定だから…!」

「ダメだよ、兄さんの放水のせいで病気なんでしょう?
 だったらちゃんと僕らが責任取らなきゃ!!」

「責任うんぬん以外の”陰謀”を感じるのは俺だけデスカ…」

さんてば何処の宿屋に電話かけてもそんな人はいない
 って言うんだもん。心配しちゃったけど見つかって良かった!」


鎧のせいで表情はわからんが、鎧君のバックには確実に
ポヨポヨのお花が飛んでいる。…わかってるさ…鎧君のは
純粋に好意なんだ。……あとの2人が…問題なんだ…。


「とにかく酷くなる前に病院に行こうねさん!」


と、一瞬の考え事に気を取られている隙に俺は鎧君に
抱き上げられた。


「メ…メルさんっ!たぁすけてぇー!!!」

君、お見舞いに行くからね、早く治ると良いね!」


ヒィーっ!!メルさんの天然が今は憎らしいッツ!!
ちくしょう…こうなったら…これだけは使いたくなかった
けど…アレをやるしかないのか……やる時がきたのか…!?


「どうやって逃げるか算段してるんだろーケド、無駄だからな。」

「ヒィ!!エルリック兄!!!?」

「こないだは油断してたけど今度はそうはいかねえぜ?
 つれて帰らないとまた大佐に借り作っちまうからな。」

「俺はレンタル商品なんですか!?」

「はっはっは。細かい事気にすんなー。さ、セントラルまで行くぞ!」

「いやー!!!ひとさらいー!!!!!!」




-- -- --


…こうして結局俺はあの日逃げ出した甲斐も無く。
3日で見つかって、軍の医療施設に軟禁されているのでありました…。

田舎のとーちゃんとかーちゃんに
…無性に会いたくなりました……。












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