共の血 11



「とにかくから離れろ!馬鹿犬!」

「つーかは俺のモンだっつーの!」

「ふーんだ!俺なんかもうキスしちゃったもんね!」

「俺だってチュー2回もしちゃったっつの!」

入れてないんだろ、俺の勝ちー!」

舌だぁ!?フざけんなガキ!ぶっ殺す!」

「チビちゃんよぉ、俺のテクも味わってみるかよ?」

「「黙れそこのジジィ!先にぶっ殺すぞ!」」

「やれるもんならやってみなぁ…」


ホテルの前で盛大に始まった争奪戦。だが、その当人は未だに


その話題の中心人物が自分
だという事を理解していない。



「皆誰とチューしたがってんの?あ、アキラか。」

「断じて違う。」

「俺も違うと思う…。」

「え?じゃあ誰?」


ここまできてもまだはここが夢だとは疑ってもいないし、
ゲームの世界の夢をみているのだから争奪されているのは
アキラなのだと思い込んでいる。


いい加減、本当に、
気付いてください。


と、ナレーションがどれだけいっても無駄であるのでもはや
淡々と彼らの行動をナレーションする事に徹します…。

とりあえず我に返ったリンがカウを引き剥がすが、意外に
力持ちさんだったカウはアキラの背中からごと離れ、
未だに抱きついたまま放そうともしない。

それに負けじとグンジが抱きつき、リンまでもが抱きつき
そのまま先ほどの口論が繰り広げられているにも関わらず、
は…以下省略。


「なー。それより、なんで全員集合してるんだ?」

「は?」


ようやく話題が逸れ、の言葉に全員が振り返る。

はというと、カウ、グンジ、リンの壮絶なサンドイッチ
からもぞもぞと右腕だけを出して、ホテルから続く大通りへの
道を指差していた。それを視線で辿ると、全員が見たことの
ない男を発見する。

この雨の中、やはりこれもゲームのご都合主義なのだろうか。

を捜し求めて彷徨っていたナノが、そこに立っていた。


「…見つけた。」

「ナノ、なんでここにいるんだ?」

を、探していた。」

「俺?あそっか、ナノと一緒に居るって約束したもんな。」

「!!あれがからチューしたっつー野郎か!!」

「え?そんなことしたの!?」


一人納得しているを置いて、グンジとリンが思わず
見詰め合う。お互いが聴いた言葉を信じられないのだ。


 から キスをした


が一緒に居ると約束した


その2つだけがこの場に居合わせる全員の驚愕の
真実であり、更なるバトルへの引き金へとなってしまう。


…本当にそんな約束…した、のか?」

「うんした。だってケイスケにはアキラが…」

「何の事かわからないが、俺はケイスケよりも…」

「ア、アキラの事も好きだけど俺はの事も好きなんだ!」

「あれ?ゲームと違う。」


ケイスケ、そしてアキラの一世一代の告白だというのに、
が疑問を感じたのはそこだった。そしてようやく、


そもそもこの物語の根本的問題に気付いてくれた。



「ケイスケEDだったらこのまま2人が日興連に逃げて
 ハッピーエンドであのこっ恥ずかしい台詞を言うはず?」

「ケイスケEDって何の事だ…。」

「っていうかここから脱出できるのか!?」


だがしかし、ようやくが自分のおかれている状況に
気付いてくれそうだったのを、ケイスケが打ち消してしまった。


「ああ。うんナノが知ってるよな、北の黒い扉。」

「…ああ。」

「そこからマンホールをくぐって出ると、日興連なんだって。」


一同がそれこそマンホールのように目をまん丸にして
を見守っていた。ナノの存在も気になるが

何よりもこのトシマからの脱出経路を知っていてかつ、
その出口がどこへ通じているかまでも知っているとは。


「まじで不思議っ子だよなー…。」


グンジのそんな一言に全員が頷いた。


「俺ってやっぱ変なのか?ああ、でもこんな夢見てる
 くらいだから変なのかもしれないなー。…俺って変?」


と、誰かまともな人物に聞いてくれればよかったものを、
流石の天然は振り返りざまにそんな疑問を


カウにぶつけた。


カウは考えるようなそぶりを見せ、首を横に振る。


  変っていうか、かわいい。


「…俺今ポチが何考えてっかなんとなくわかっちまった。

「奇遇だなぁピヨォ、俺もだ。」

「何をおいてもそれが優先しちゃうんだよねー。」


処刑人にパワフルケイスケ、リン、アキラ、そしてカウに
人間兵器のナノ。そんな面子がそろっている事自体が
すでにおかしいというのに、はそこには疑問を持たない。

唯一気付きかけていた「ゲームと違う?」という部分も、
先ほどのケイスケからの疑問で吹っ飛んだようだ。


帰ってこいと願っても、もはや無駄であろう。


そしてそこに更なる混乱因子が登場すれば、
の疑問などはもはや風の前の塵に同じ。

そう…CFCと日興連の内戦の噂をヴィスキオで聞きつけた
シキが、宣言通りにを迎えに、ホテルまでお越しに
なったのでございます。


こつこつと硬質な足音。自信に満ち溢れた歩幅。

闇を切り取ったような、
漆黒の存在。血の様に赤い、瞳。


「シキティー!?」

「…!?シキ!?」


その音にまず気付いたのがナノだったが、彼はシキに
興味がないため口にする事もなく。次いで気付いた
グンジが声を上げると、リンが目の色を変えてさらに反応する。

その連鎖に気付いた訳ではないが、から
離れてシキに攻撃しようと動きかけたリンを、慌てて

抱きしめ、引き止めた。


「リン駄目だ!」

「うわぁっ!?」


突然から抱きしめられ、殺意も消えてしまう。


「兄弟喧嘩で左足無くすとかそれはやりすぎ!」

「左足を無くすって意味分かんない!っていうか
 なんで俺がアイツと兄弟だって知ってんだよ!?」

「何でもいいからケンカは駄目だって!今ケンカしたら
 アキラと再会できるの5年後だよ!左足義足だぞ?
 俺の夢でそんな痛々しいことは絶対に許さん!
 っていうかリン俺の側から離れないって言ったじゃん!」

「あーっ!なんかわかんないけど最後のが1番きたー!


間近で色々と喚かれた挙句に、半分泣きながらリンを
強く抱きしめるに叶うものなどいるだろうか。


いや無い。(反語。)


そうこうしている間にもシキが完全に姿を現し、
そこに集結するメンバーに一瞬目を見開いた。

ナノの姿も確認しとっさに身構えるが、同時に
姿も認めて殺気を収める。否、収めざるを得なかった。

なぜなら、自分のものにすると決めたあのが、
こともあろうか自分の弟を抱きしめて泣いているのだから。

シキの切っ先はナノではなく、リンに向けられた。


「貴様、そいつから離れろ。それは俺の所有物だ。」

「…っクソ兄貴が!寝ぼけた事いってんじゃねえよ!」

「リン、シキ!!」


だがやはり少々涙声のの声に、
シキとリンが身動きが取れなくなってしまう。

その場に異様な緊張が流れ出すが、リンとシキが
兄弟なのも初めて知ったアキラ達。そしてグンジ達。


「あー…とりあえずー…泣かせたら両方
 ぶっ殺すって事でオッケー…だよなあ、ジジー?」

「あー。チビちゃん泣かせんのはベッドの上だけで十分だなぁ。」

「つーわけでぇ、ケンカおしまーい。」


何が「というわけ」なのかは分からないが、

それで収まってしまうその場の緊張感。

流石のシキも仕方なく日本刀を鞘に収め、リンも体に
めぐらせていた力を抜いて、改めてを抱きなおす。


「わ…かったよ、が言うんなら、もうその…
 ケンカ?とかしないからさ。…泣かないでよ…?」

「まじで…?」


ぐずぐずと未だ信じられず涙を必至に堪えようとする様子に、
その場にいる全員が胸のハートを愛の天使に射抜かれた。


「あーもー!!かーわいー!!!!」


グンジがもういっそリンごとを抱きしめて
2人まとめて頭をワシワシと撫でてやった。

リンは居心地が悪そうだが、はそれで
ようやく泣き止みかけた……のだが。


「…ッ貴様!!!」


どこからともなく聞こえてきた声、そして、銃を構える音。

シキとは違う理由でナノを追いかけていた源泉が、
CFCと日興連の内戦が秒読み段階なのを情報屋仲間
から聞き出してアキラ達を逃がしてやろうとホテルへと
行き着いた矢先だった。

そこへ勢ぞろいしているメンバーにも驚いたが、何よりも
自分が捜し求めていたナノがそこに混ざっている。

本能的に銃を構え、シリンダーに手をかけたところで…


「やっと源泉のオイチャンでてきたけどケイスケが死ぬー!」


と、この面子には訳のわからないことを言いながら
がとうとう本格的に泣き出してしまった。

で立て続けにいろんなことが起こった挙句に
ゲームとは違う事を本能のどこかで覚えているのかもしれない。

だが、源泉が出てきてナノがいる=軍隊がお出ましになって
ケイスケが死ぬというナノルートのEDがごちゃまぜになったのか、
ついて出てきた言葉が「ケイスケが死ぬ」であった。

しかしそこにいる面々の問題はの発言ではない。

が源泉を見た途端に


本 格 的 に
泣 き 出 し た
こ と で あ る 。


全員が一斉に武器を構え、

源泉に殺気を放った。


さすがの源泉も壮絶な殺気に当てられて思わず銃を下げる。

訳が分からない事だらけだった。

見覚えの無い少年が突然自分の名前と、
ケイスケの名を呼びながら泣き叫んだと思ったら、

そこにいた処刑人に王にアキラ達までもが
自分に向かって武器を構えたのだから。


「オッサン、に何したんだ…」

「テメェ見たら泣いちゃったぞ、あぁ!?」

「よもや、コイツに何かした訳ではあるまいな…」


シキの「何かした」発言に、一同

殺気がますます盛り上がる。


「まままま待て!俺はそんなボウヤ知らん!」

「だったらなんでアンタの顔見ただけで泣くのさ!」

「いくら源泉さんでもやっていいことと悪い事が…!」

「待ってくれって!本気でそんな奴しらんから!!」


さしもの源泉も余裕をなくし、持っていた銃を
投げ出すほどに両手を振って否定した。

その必死っぷりに、一番常識人に近いアキラがまず
ナイフを収める。それを見たケイスケが続き、続々と
構えていた各々の獲物と殺気が引き下がっていった。

源泉は心底安心のため息を吐く。


「ったく…なんだよ、どーやったらそんなにモテるってんだ?」

「源泉、ナノはもう源泉が追いかけてる殺戮兵器とは違う。
 殺さないって約束してくれよ…あ。そだ、ゴメン俺
 ハジメマシテ。ナノの事約束してください。お願いします。」

「またも初対面!っつか今更はじめまして!?」

「ああその子と俺は今がハジメマシテだよ!
 だから俺は何もしてないっつったろーが!」

「オッサン日ごろの行いが悪いから。」

「酷!オイチャンは今からお前らを逃がしてやろうと…!」

「脱出経路ならもうから聞いてしってるもんね!」

「んなっ!?」


そこで、ナノを見て理性を失っていた源泉がようやく
このトシマの都市伝説的な噂話を思い出した。


『イグラに参加してないチビに手を出すと…』


「ああ…お前さんがそのイグラに参加してないって奴か…。」


その噂はあまりに広くもはや公然となっていたので、誰かが
面白半分に流した、ただの冗談だと思っていた。

ただし、それなりに自分でもその『チビ』について情報を
集めてはみた。イグラに参加していないものの所在を
知るのは難しかった上、イグラ参加者達にはその系統の
話題はタブーらしく、誰一人として詳細を知らなかったからだ。

それによって信憑性はさらに薄れ、証拠が無ければ
ただのガセと判断し、情報屋らしく綺麗さっぱり
そのことを忘れていたのだった。


「実在するとはなぁ…しかも…お前さんも情報屋か?」

「違うよ俺は…」

「俺の所有物だ。」

「シキティーしつけーぞ!は俺のだってぇ!」

「グンジもしつこい!は俺のだもんね!」

「あー…あれ。俺って何だっけ?

「…俺に聞かれても…。」


周りで騒がれて、言おうとした言葉をなくしてしまった
はアキラに助けを求めたが、勿論の事アキラに
分かるわけも無い。グンジのいう「不思議ッ子」としか…
プラス、妙に愛しくなる存在だという事しか分からない。


「とりあえず…その坊やの事はおいといてだな…
 さっきも言ったがCFCと日興連がもう秒読み
 段階だからな、とにかくここから脱出をしないと…」

「あっそうだ!軍隊来る前に逃げないと面倒臭い!」

「そーそー…って、お前さん本当に何者だ?」


情報屋ではない、かといって誰だと聞いても横槍が入って
結局誰か分からない。堂々巡りの水掛け論をしていても
しょうがないので、源泉はのことはまあ横においてだな。

と横に物を置くジェスチャーで本当に置いてしまい。


「この人数…逃げ切れんのか…?」


と至極当然な疑問を口にするが…。


「人数よか戦闘能力で勝てる奴なんざいるかぁ?」


と、キリヲの言葉に思わず詰まってしまった。

何せ天下の処刑人にトシマの王、人間兵器様ご一行である。

かつて伝説のチーム、ペスカ・コシカをまとめていた雄猫までいる。

ここでの実力はどうだったかは分からないが、Bl@ster個人戦の
無敗チャンピオンもいることだ。どうやってその魔力から抜け出した
のかは分からないが、ケイスケまでもがピンピンしている。


「…オイチャンがちょーっと目を離してる間に何があったんだか…。」


源泉のオイチャンはさながら浦島太郎状態だった。






続。



+後記+
どうしましょうね、コレ。(はっはっは。)
とりあえずドタバタのまんまで終わりますよと
曖昧な完結予告。

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