「お、みっけた。」

その声は、3つのファントム・クリスタルが
消えて無くなって、ほどなくしてから現れた。





Phantom Crystal 2
あなたは悪魔の実の能力者です。






〜!」


嬉しそうに近付いてくる足音。
にとって、聞いた事ある声。

…別の意味で、はため息をついた。


「何だよ人が好意的に声かけたってのに。」

「僕はアンタが嫌いだからどんな声でも嫌。」


間髪入れず帰って来た言葉に一瞬怯むが、
それもまた特に気にした様子も無く、さらに近付いてくる。


「それが幼馴染みに対する態度かよ。」

「僕はアンタと幼馴染みになった覚えは無い。」

「…なんだよ…弟には優しかった癖に…。」

「ルフィは大好きだから。」

「何それ。」


に近付いて来た人物、それは、現在『麦わらのルフィ』
としてこの世界の何処かで海賊をやっている彼の、兄。


「用が無いなら帰ってよ、エース。」


ポートガス・D・エース、その人だった。


「嫌だね、やっとお前を見つけたのに。」

「僕は仲間にならない。」

「そう言うなよ、海賊楽しいぞ?」

「確かに楽しそうだ。脳が常に春な人がおおいし。」

「そーそー!たのし………って違う!!」


エースがわめくがは惚けた表情のまま空を仰いでいた。


「…どうせなるなら…ルフィと行く…。」


無意識に呟いた言葉に、エースは眉を釣り上げた。


「…どうしても、一緒に来ねぇ…?」


それを”嫉妬”だと理解しているからこそ、溢れる感情が止まらない。



  故郷に居た頃から、はルフィばかり構って、エースには
  冷たい態度を取り続けた。……だがそれは、幼くもしっかりと
  心に住み着いてしまった恋愛という感情の赴くまま、エースが
  にセクハラをしまくったからなのだが…エースに自覚は無い。
  なにせ、に惚れた理由、時期すらも覚えて居無いのだから。




「今日こそ、決着つけてみるか…?」

「嫌だ。アンタしつこいもん。」


だが、エースの体から立ち上りはじめた炎を消す事はもはや不可能になっていた。


「メラメラの実とキラキラの実、どっちが強ぇか勝負だ!」

「……うるさい。」


…そう、未だかつて誰も目にした事も無く、誰の手にも渡った事のない、
ダイヤよりも堅く、光り輝く幻の鉱石、ファントム・クリスタル。
その正体は、の意志によりのみ出現する氷の固まり。

そして、はキラキラの実という、悪魔の実シリーズの能力者だった。

エースの全身から火柱があがる。
それは天をつく勢いで、燃え上がった。


「…あつくるしい。」


は鬱陶しそうに其れを見上げて、両手を、かかげた。










同時に、その頃。


「もー!食料バカ食いするなんてほんっとバカ!」

「隠しといた肉まで全部食いやがって!!」

「だぁってハラ減ったんだもん。なーチョッパー?」

「オ、俺は食べて無い!」

「俺も食って無い。」


『ウソつけそこのマリモヘッドと獣がぁー!』

「だぁーっはっはっは!俺は正直に言うぜ!モリモリ食っ…」

『死んどけ長っ鼻ぁー!』


港に着くなり騒がしい一行。とりあえず一人ボテくりまわされて
ズタボロになった長っ鼻、ウソップを船において、

マリモヘッドこと、ロロノア・ゾロ。
獣こと、トニートニー・チョッパー。
呆れと怒りが最高潮の、ナミ。
隠した肉まで食われた、サンジ。

そして散々バカバカ言われた、船長のモンキー・D・ルフィ。

”麦わらのルフィ”海賊団である。


「無くなっちまったもんはしゃーねーじゃねーか!」

「こうして街にも無事辿り着いたしよ。」

「お、俺は食って…」

「シャラーップ!」


取りあえず1人ずつ頭をボコって、ナミ。


「今回は良かったけど、次やったら殺して海軍に突き出してやる!」

「ナミすゎ〜ん!俺も混ぜて下さい〜!」

「全員賞金首なんだからお前も捕まるんじゃねーの?」

「そりゃそうだ。アホか、ナミ。」


黙っていればいいものを、またも余計な事を言ってしまい、
再び渾身の力を込めた棍が2人の頭に叩き付けられようとした、

その時。

まるで大地が震えるような音が遠くから聞こえる。
見れば、大噴火さながらの炎柱があがっていた。


「なっ何、あれ!?」


炎があがっている地点からは遠く離れているはずなのに、
その熱気を肌に感じる。余りの火力にチョッパーが取り乱し、
ギャー!丸焼きになるー!等と叫ぶ、が。

キィン!と、耳を劈くような高音が聞こえたかと思うと、
なんと、炎が凍り付いた。


「うっひょぉ!何だアレー!」

「炎が凍り付くですって…!?」

「俺ちょっと見てくるー!!」

「あっちょっとルフィ!!!」


と、止める間も無くルフィは炎の形そのままに凍る
氷柱目指してとんでもない早さで駆けていった。


「もーっ!考え無しなんだから…っ!」

「……放っときますか…?」

「そうできたらいいんだけどね!」


ナミの声を合図に、(ウソップ除く)全員がルフィを追って、
街外れにある、森へと足を踏み入れた。









森の中の、だだっぴろい草原、バカデカい氷柱。

そして。



「…やだ…誰か倒れてる…。」

「ん〜…?……んん〜??」

「ンだようっせえなルフィ。」

「いや、あいつなーんか見た事…」

「そんなワケないぞルフィ、あれきっと化け物だ!」

「…お前がソレ言うの…?」


あの火力に奇跡的にも燃え上がらなかった木々に隠れて
様子を見る麦わら海賊団。だが、ルフィは皆の言葉を無視して
スタスタと氷柱近くに倒れている人物の側まで行ってしまった。


「あンのバカ…!」

「ナミさん危険です!ここは俺と愛の逃避行…!」

「テメーの脳みそが危険だな。」

「ていうか皆やっぱり呑気だよな。」


チョッパーの、やはり呑気な突っ込みが終わると同時に、
ルフィの至極嬉しそうな声が響き渡った。


「あーっやっぱり!!ー!」


その声に、倒れていた…正確には、エースを追っ払って
お気に入りの場所に寝転んでいたが目を開く。


「………ルフィ…?」

「おう!久しぶりだな、元気かー?」


ニシシ!と笑うルフィをみて、が 微笑んだ。


「ああ、僕はやっぱり、ルフィの方が好きだな…。」

「あ?」


そう言って、再び目を閉じる


「……オイ。……オーイ?ー?!」


ルフィが無遠慮に肩を掴んでガクガク揺すっても、
が目を開く事は無かった。

かわりに、唇が何かを呟く。


「…最近…寝て無い・から…寝させて…。」

「は?何だそれ、お前こんな所で寝てたらカゼ引くぞ?」

「………ファントム……クリスタル……。」

「???おーい、??」


そして、完全に意識を手放した。
ぐったりしたにさすがに驚いたルフィは、
を抱え猛ダッシュでチョッパーの元へ。

珍しく慌てた風のルフィに驚きつつも、チョッパーは
の体を調べはじめ、只の寝不足。と結果を出す。


「なんだよー…脅かすなよ…。」

「そりゃこっちの台詞だ。ルフィ、知り合いか?」

「ああ、俺の幼馴染みだ。」

「…………男?」

「見りゃわかんだろ?」


見るからにガッカリしたサンジを放って、ルフィは
久しぶりに再会した幼馴染みを船へとつれて帰る。

その後ろ姿を見守っていたナミが、
真剣な眼差しをに向けている事にも、気付かず。



「……ファントム・クリスタル…確かに、そう言ったわ…。」












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