ガリゴリガリガリ!!

船底に、嫌な音が聞こえてから、早3時間経過。


Phantom Crystal 4
あなたは悪魔の実の能力者です。





「変ね、こんなところに暗礁なんて無いはずなのに…。」


ナミは自分が作った海図を何度も何度も見比べている。

だが、暗礁に乗り上げてしまった事は事実であり、
身動きがとれないのも事実。ただ唯一の救いは、
船体の損傷がそれほど酷く無いと言う事だけだった。


「この辺は潮の満ち引きもあまり無いし…」

「おいナミ。」

「他の船も通りかかりそうに無いし…。」

「おい、ナミ!」

「何よ煩いわね!アタシは今忙しいのよ!」


振り返ると、ゾロが呆れた顔をして立っていた。


「こいつはただの暗礁じゃねえよ。今俺とサンジが見て来た。」

「ただの暗礁じゃ無い?」

「ああ、全部、船の破片だ。」

「何ですって!?」


言われて甲板から身を乗り出してみる。
すっかり”暗礁”だと思い込んでいたので気付かなかったが、
なるほど、確かによくよく見てみれば、船の残骸らしい事が
分った。


「多分デカい海賊同士がハデにやりあったんだろ。」

「木の腐り具合から見てもそんなに日も立ってませんよ。」

「やっぱり、アタシの海図に狂いは無いじゃない!」

「とはいえ、動けねえのはかわりねえけどな。」

「まあ…そうだけどさぁ…。」


この付近はそうそう船が立ち寄る所では無い。

が、運悪く船同士がかちあってしまったのだろう。
まさかこんな陸地の近くで戦いが行われたとは思えない。
だとすれば、波に流されて残骸がここへ集まって来たのだ。


「もっと遅かったら木も本格的に腐ってたのに…
 間が悪いとしか言い様が無いわね…。どうしよう。」


木なのだから、サンジやゾロが破壊すればすむ事かも知れない。

だが、破壊した残骸が沈む際には大きな渦ができる。
それに彼らが巻き込まれないと言う保証は無い。
ウソップ御自慢の火薬をつかって爆破するというのも一瞬浮かんだが、
下手をすればこの船体にも傷をつけてしまうかも知れない。


「打つ手、無し…?」


諦めかけたその時、あの音にもまけずに惰眠をむさぼっていた
ルフィとが船室から姿をあらわした。


「ふぁ〜。サンジー腹減ったー。」

「あ、おはよう。皆何してんの?」

「ハラ減ったどころの問題じゃねえんだよ!」

「暗礁に乗り上げた。身動きがとれねえ。」


言われて気にしないのがルフィ。


「んなことどーでもいいから、メシ!!」

「どーでもいいわけあるかこのクソザルが!」

「うるせー!メシったらメシー!!」


…以下は、果てしなく不毛なので割愛させて頂こう。

そして、はと言うと。


「暗礁に乗り上げたって、満ち潮とかでなんとかならないの?」

「それが、この辺りは満ち引きもそうないのよ…。」

「それにこの暗礁も、どっかのアホがブッ壊した船の残骸なんだよ。」

「ふうん…。つまりはそれをどければ良いんだ。」


は特に慌てた様子も無く、のんびりあくびをしながら
甲板から身を少しだけ乗り出した。


「どけるって…危ないわよ、崩しても沈む破片の渦で…!」

「ナミ。皆も。僕の能力、忘れた…?」

「………あっ!!」


の能力。それは「キラキラの実」という悪魔の実シリーズで、
の意志一つで物体を凍らせる。そして内にとりこんだ物体ごと、
全てを水へと変換させる力を身につけていた。

つまり。


「船の残骸を凍らせて、海に還す。水かさも増すし、残骸も消える。」

「そ、そうだったわ、たよりにしてるわよ!」


お安いご用。と、ウィンク一つ。
そして両手を、ゴーイング・メリー号をこの場に留める
船の残骸へとかざした。


「凍てつけ、絶対零度。」


キィン!!!と、いつか聞いたあの耳を劈くような高い音。
そして、見ればゴーイング・メリー号の周りは、
海の底までもクリアに見える、氷原となった。


「相変わらず凄いわねえ…。」

「あんまり凍らせておくとこの船も痛むから。溶かすよ。」


こんな質量を一気にとかした事は無いけど、多分凄く揺れると思う。
と、の言葉をうけて、各々船体にかじり付く。


「いくよ?」


海に向かって翳されていた掌を、今度はスゥっと握り。


「流れ出せ。」


その一言で、全てが水となって溢れ出す。

の言葉通り、固体から急激に液体となったそれらは
大嵐さながらの揺れを催した。船体にかじりつくクルーは無事として。

両手を使って能力を駆使していたは…


「あ。しまった自分のこと忘れてた。」


と、なんとも間延びした声が聞こえたのと同時に、
大きな流れの中へと吸い込まれていった。


「…あ…アホかー!!!!」


などと叫んでももはや手後れ。


「ちくしょう、あいつ泳げないんだろうが…!」

ー!!!」


まだ大きく揺れる船の上、ゾロが何とか体勢を整えて、
迷う事無く海へ飛び込む。それを見たサンジが冷静に


「あいつもアホか!命綱くれぇつけてけよ…!」


腰と、船の支柱に頑丈な縄をくくりつけてゾロに続く。

が海に落ちて、2人が続いて飛び込んだ海の中では、
なんとも不思議な光景が広がっていた。


『あ。また来た。』

『……………ヨウ…。』

『………焦った俺たちの方がアホだったのか?』


荒れ狂う水面のした。そこには空間が広がっていた。
ゾロがどこか気恥ずかしそうに、そこへ座り込んでいた。

は海に落ちたと同時に、自分の周りの水を
凍らせて自らの周りに氷のバリアーをはっていた。

つまり、溺れるもクソもあったものでは無いという事だ。

そこへ、ゾロが飛び込んで来たので、はゾロの
周りの水も凍らせ、バリアを作り拡大させ、自らの
領域とつなげた。サンジの場合も、以下、省略。


『お前こういうのができるんなら最初っから言っとけよ…』

『言う暇がなくて…。』

『心配して飛び込んだ俺たちは何なんだ?』

『仲間思いの良い海賊?』

『………。』


とことん間延びした返答にサンジもうなだれる。


『ああでも、サンジの命綱は助かった。』


に言われて、サンジ自身も思い出す。だが…


『これ…いらねえんじゃねえの…?』

『…たしかに。』


溺れたものを引き上げる為にと繋がれた命綱。だが、
溺れる予定だったものは溺れもせずに海底にのほほんと
座り込んでいた。


『ああでも、これって難点が一つ。』

『あ?』

『海底に固定されるのは僕達だけ。上の船は…』

『……流されてるってか。』


と、言う事は、この大きな流れの中、あの船に戻れる
可能性はゼロに等しい。


『でもほら、サンジが命綱つけてるから』

『俺は碇ってワケね…。』

『まさに命綱。』


とりあえず水上のクルーも、船が動かなくなった事によって
なんらかの情報を得て、この波がおさまるのをまってくれて
いるのであろう。


『ちょっと寒いけど、じきにおさまるから我慢してね。』

『確かに寒ィな…。』

『俺はそうは思わんが。』


心頭滅却すればなんたらかんたら。ゾロにとってこの空間の
冷気はさほど問題ではなさそうだ。だが、サンジ、そして
にとっては、冷凍庫の中にいるようなものだ。
多少、こたえる。


『カゼひいたらチョッパーにまた怒られるかなぁ…。』

『…………。』

『ルフィ大丈夫かなぁ…俺の事でパニクってないかなぁ…。』

『オイ、。』


氷のドームの天井を見つめてブツブツ一人ごちていたを、
突然サンジが後ろから抱き締めた。


『ふぉっ!?』

『アホか暴れんな!お前病気にさせたらナミさんに殺される』


(…気がする!)


……サンジのそのシックスセンスは当たっていた。

海上では。


「あのバカども…に何かあったらコ・ロ・ス!」


と、ナミさんがターミネー○ーもびっくりな迫力で
両手の指の関節をボッキボキならしていた。


『うーん…正直人に触られるのはあんまり好きじゃないんだけど…』


…なにせ昔に、ダレかさんにセクハラされまくったから。


『でも…いいや、あったかい。』


しかし素直にその好意に甘える事にしたは、
体の向きを変えて、自らサンジに抱き着いた。

それにキュンとなりかけて、慌てて我にかえるサンジ。


(阿呆か俺!こいつ男だぞ…!?)


が、しかし突き放す事も出来ない。オロオロと数秒彷徨った
挙げ句、結局サンジの腕はの背中にまわされた。

それを見ていたゾロが何を思ったか、突然サンジごと
を抱き締めた。今度こそ気持ち悪ィと思った
サンジだったが、今手を放すとを手放す…


(いやいや、違うだろ俺!?)


……温もり…が、無くなってしまう。


(そうだよ、クソッタレ…!)


『ンだよテメェ、寒く無かったんじゃねえのか。』

『お…俺はただが寒ィっていうから…!』

『俺だけで十分なんだよ暑苦しい離れやがれ!』

『ルセェ!こっちのほうが暖ったけェよな!?』

『う…うん?』


思わず勢いに負けて頷いた
それを満足げに見てほくそ笑むゾロ、
そして、なんだかモヤモヤするサンジ。

…この妙ちきりんなサンドイッチは、
渦が引いて、ナミたちが渾身の力を込めて
サンジの命綱をひっぱるまで、続いたそうな…。












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