体育祭とか「ねえ先生、これ見て」 「うん? 何だい、ベル?」 久方ぶりに二人で部屋の掃除をしている最中にベルフラウがそっとレックスを呼ぶ。 彼女と背中合わせで作業をしていたレックスはそれにゆっくりと後を振り向いた。 その視線の先には少し懐かしい写真が収まったアルバムが。 その中のベルフラウが指差す一枚は彼女がまだ幼く、軍学校にいた頃の物で身に着けているのは普段の赤いワンピースではなく俗に言う体操服であった。しかも赤いブルマの。 白い肌にほっそりとした体型のその写真に写る彼女はそっちの趣味の人が見たら思わず襲いたくなるような可愛らしさである。 「懐かしいわね。ねえ、この時のこと覚えてる?」 「え、あ、うーん、何となくだけど…。結構強烈な思い出だったからね、それ…」 ははは、と苦笑いを浮かべレックスはゆっくりと少し前の事を思い出す。 今でも色鮮やかに蘇るその日の記憶はまだ暖かい色をしている。 目を閉じればまだ鮮明に思い出すことが出来た。 「何で貴様がここにいるんだ」 「いや、それ言いたいのは俺なんだけどな…」 きゃあきゃあという擬音が似つかわしい若い子特有の騒がしい空気の中、一組の男女が微妙な面持ちで再会を果たしていた。 その二人は今日の主役とも言える少年少女の年齢より幾分上で、かといって彼らの親となる年齢には若すぎる。 その場に不似合いな二人は片方は苦笑い、片方は少し眉を顰めたような表情をしており見事に対照的だ。 「君は聖王国国境警備に回されたって聞いてたんだけどな…」 「中央に人手が足りないから辺境から適当に人材回せ、だとさ。こんな学校行事の警備など辺境警備の下っ端に任せればいいという考えなんだろうな、上は」 はあ、と重い息を吐き出すと彼女の綺麗な漆黒の髪が少し揺れる。 少し前に別れた時より伸びたそれはあの頃より艶を帯びている。 そこから女性らしさは感じられるが彼女が身に着けているのは紛れもなく軍服であり、体操服の学生と一般人しかいないここでは非常に目立つ。 「はは…何時まで経っても変わらないねぇ、軍の強引で適当なやり方は。でもこうして警備がいるって事は未だにこういう祭り事に乗じていたいけな子供に手を出すいけない大人がいるって事なのかな…?何だか嘆かわしいね。幾ら「将来軍人となる若者にせめて少しでもいいから普通の学生らしい事を」なんていう理由があるにせよそんなに危険なら止めればいいのに」 そう言って目の前の女性と向き合っていた赤毛の男も溜息を吐く。 彼は彼女と違い何時もと同じ朱の衣と漆黒のマフラーという出で立ちである。 その手にカメラが握られているのが何時もと違った所だったりするのだが。 「そういうお前は自分の生徒の見学か? どの競技に出るんだ?」 「あ、うん…何かね、さっきあった騎馬戦とこれからある借り物競争だって。さっきの見た?何か凄かったよね。女同士の修羅場っていうか…あんまりにも勇ましくて自分の生徒ながらに惚れ惚れしちゃったよ」 微笑みながら言われるレックスの言葉にアズリアは先程の騎馬戦を思い出す。 彼の教え子は馬の上に乗っていたのだがそれはもう凄かった。 恐ろしいまでに敵チームから帽子を奪っていくその姿はまるで鬼神のようで、戦の女神ってのはああいうのを言うのかもしれないなと少し思ったりもした。 どんな相手でも物怖じしなく男相手でも容赦はしない。そして度胸もある。 そんな彼の教え子をアズリアは少し気に入っていたりする。どこか自分に似ているようで。 彼女は紛れもなく、少し前まで恋敵だったりしたのだが。 「何か俺たちの時の君みたいだよね、今の彼女の勇ましさは。格好良くて羨ましいなぁ」 「…それでも結局お前には勝てなかったがな」 アズリアはそう言って少し恨めしそうにレックスを見た。 自分たちがこうしてこの行事の主役を担っていた時、彼と自分は敵チームであった。 最初は自分のチームが勝っていたのに結局最後のリレーで逆転されて負けてしまった。 しかもそのリレーのアンカーを務めたのは自分と彼だ。 最後の直線コースで一気に追い抜かれた時の悔しさは今でも忘れていない。 それ以来尚更彼に突っかかる事になってしまったのだが、それでも前を突っ走る彼の赤毛が風に靡いて、それが燃え盛る焔をようだと一瞬でも見惚れてしまったことは永遠に言えそうもない。 もう何年も前の事なのに未だにその時の事を鮮明に覚えている自分を憎々しく思いながらアズリアはその顔をちらりと見てやる。そうすればやっぱり苦笑いが返ってきた。 「あ、はは…あれは運が良かったんだよ。そもそも男と女じゃ基礎体力が違うしさ。それに俺、短距離は得意だけど長距離はからきしだし。持久力がないんだね。もう少し距離が長かったら確実に追い抜かれてた。マラソンとかもいっつもビリの方だったし」 「でも、お前の勝ちは勝ちだ。結局負かせなかったのが今でも悔しいな」 今でも覚えている、あの時感じていたのは悔しさだけではなかったのだと。 最後の最後で追い抜いてヒーローインタビューを受ける彼の周りに群がる女達。 その人込みに混じることの出来ない自分。 プライドが邪魔してそんな事すら出来ない自分はなんて可愛げがないんだろうと思った。 けれど、その後その人込みを掻き分けて彼が握手を求めてきたのは凄く嬉しくて、もうこのままライバルでいるのも悪くはないなと少しだけ思った。 今ではもうお互いに心も体も成長してしまって立場も変わってしまったけれど、こうしてその時の事が話せるのが嬉しかった。 「はは…でも俺正直さ、当時の俺でも今の俺でもベルにだけは勝てないんじゃないかなーってさっきの見てて思った」 「かも、な…」 苦笑いと共に出た言葉にアズリアは小さく同意した。あの娘はきっと将来大物になるだろう。 そう確信させるだけの精力が今の彼女には満ち溢れている。 自分のできなかった事を彼女はやってのけてその結果がこれならば納得せざるを得ない。 彼女になら安心して任せられる。 そう思える相手とくっついてくれた事が少しだけ悔しくもあり嬉しくもあった。 「しかしお前まさか子供に手を出してるんじゃないだろうな?幾ら両想いとはいえそれは犯罪だぞ。分かっているのか?」 「わ、分かってるよ、その辺はちゃんと…。…って噂をすれば何とやらってやつかな」 レックスのその言葉にアズリアは後を振り向く。その先にいたのはこちらに走り寄ってくる金色の髪に白い肌、そして赤いブルマを身に着けた噂の人物であった。 「先生! ねえちゃんと見ててくれた、私の活躍?もうこれなら大会終了後のヒーローインタビューは間違いなしよね。貴方も鼻が高いでしょ?」 常に人目を気にする彼女にしては珍しく飛びつくようにその体に抱きついて、ベルフラウはとびっきりの笑顔でそう言った。 こういう風に子供のようにはしゃぐ彼女は珍しいがそれは年相応の様で酷く可愛らしい。 そのベルフラウをまるで父親のように受け止めるレックスをアズリアは微笑ましく見つめていたが父親と呼ぶには無理がありすぎるこの二人を周りがどういう風に見ていたのかまでは分からない。 ヤンパパヤンママによる家族での観戦やら下手したら援助交際のように見えたのかもしれないが当の本人たちはそんな事は全く考えていない。人目を気にせず強く抱きしめ返してやっていた。 「うん、ちゃんと見てたよ。凄かったね、吃驚した。これも島での生活の賜物かな? アズリアも吃驚してたみたいだよ」 「アズリア?」 その言葉にベルフラウはようやく側にアズリアがいる事に気が付いた。 レックスの体から離れ、彼女の方に向き直るとにっこりと笑顔を向ける。 「お久しぶりね、アズリア。新しい生活にはもう慣れたかしら?今この場で再会できたことを嬉しく思っていますわ」 そう言う彼女は身に着けている物が体操服といった簡素なものであっても何処か気品が伴う。 大人びたその態度は先程の無邪気な子供とは思えないほどしっかりとしている。 それにアズリアは少し面食らうがそんな所も好感が持てた。 言葉遣いなどに気品を漂わせてもそれを嫌味なように感じさせないのは彼女が筋の通った人間だからだろう。素直な気持ちで顔に笑みを浮かべ、アズリアもまた言葉を返す。 「ああ、久しぶりだ。少し見ない間に女を上げたようだな。先程の活躍も見事だった。あれならどこに嫁に出しても恥ずかしくないな」 「やあね、本当の事言っても何も出ませんわよ? 貴女の方こそ前より凛々しくなったんじゃないかしら?私、貴女の様に自分の愚かさに溺れない女って好きだわ。敵、だったら容赦はしませんけど」 不敵な発言でもそれすらも自分の魅力としてしまう。そんな大胆さもアズリアには心地良かった。 「それは同感だな。私も物怖じしない女が好きだ。敵なら情けはかけんがな。…と、こんな場所で長々と立ち話をしている暇もあまりないんだ。後は二人で楽しんでくれ。私は仕事に戻る。…どんな事でも与えられた任務は任務だ、やり通してみせるさ。それが、私の選んだ道だ」 そう言ってアズリアは二人に背を向ける。 元は恋敵で年が一回り違うとはいえ彼女と話すのは嫌ではないと、素直に思いながらその場から去る。 それをその場に残された二人はじっと見つめていた。 「立派な人ね、アズリアも。お姉さまも素敵だけど、私ああいう人も好きだわ。そんな人フるなんて貴方もつくづく罪作りよねぇ」 「え?フる?罪作り?」 きょとんとした顔で自分を見つめてくる赤毛の男にベルフラウは思わず大きな溜息を吐いた。 何だろう。鈍感って言うのは時として本当に罪になるんじゃないかと心底思った。 この鈍感さに救われ、泣かされた人はきっと本人が知らないだけで過去に何人もいそうだ。 これじゃあ「俺なんて全然モテないよ」の言葉の真偽も分かったもんじゃない。何だか凄く報われない。 ベルフラウはもう一度大きく息を吐いた後大声で言った。 「この鈍感!朴念仁!もう貴方って人はどうしてこう手が掛かるのよ…。そんな乙女の敵な先生にちょっとお話があるから大人なしくこっち来なさい」 「え?ちょ…ベルっ!?」 グイっとマフラーが引っ張られ、それに強引に引かれる様にレックスはズルズルとその場から強制退場させられていく。 小さな女の子に無理矢理引きずられて行くというのは何とも奇妙な光景で自分を見つめてくる視線が痛い。 何だか無性に情けない気分になりながらも大人しく彼女に連行されていった。 「さて、ここなら誰も来ないわね?」 カチャリと軽い音が鳴って錠が降りる。ここは誰もいない体育倉庫ですぐ後には昔使った跳び箱があったりする。 軍人志望の学生が多いだけに皆運動能力も通常より高めだ。 それ故にこういった体育用具も普通の学生が使う物より高度な物が置いてあったりして、昔はよく夢中になって彼女と張り合ったりしたものだ。 そんな懐かしい思いに浸りながらも内心の焦りは消せない。じりじりと近寄ってくる彼女に思わず後ずされば後ろにあった低い段の跳び箱の上に尻餅をついてしまう。 逃げ場を失ったその体に覆い被さるようにベルフラウがにじり寄る。 何だか物凄く嫌な予感がするが、それはたぶん予感じゃすまないだろう。 苦笑いをしながら自分をじっと見つめてくる彼女の瞳から目を逸らした。 「ベル…次の競技始まっちゃうよ?」 「借り物競争ならまだ先だから大丈夫よ」 「…こんな所で何をするつもりなのかな?」 にっこり、というよりそのにっこりという全ての文字に濁点が付きそうな笑顔でレックスはベルフラウに問うた。 それに返ってきたのは今度こそ正真正銘にっこりという表現がぴったりとくるような彼女の笑顔だ。 「口に出して言ってもらいたいの?そんないやらしい事」 「…君、大人になるまで待ってて欲しいってこの前言ったよね?」 「ごめんなさい…私やっぱりそんなに気が長くないみたい。それに精神的な話なら貴方よりよっぽど大人だと思いますけど?」 どこか噛み合わない会話をしながらレックスは逃げ道を探すが何処にも見つからない。 理性で完全に拒絶してしまえるような意志の強さを持たない自分を情けなく思いながらこの状況の打開策を練る。もしかしたらそれは無駄な事かもしれないけれど。 そう思っていたらベルフラウが目の前でいきなり服をたくし上げ、脚を大きく広げた。 惜しげもなく露となった薄い胸に白い肌。 下着が見えそうな程ぎりぎりの位置まで食い込んでいるブルマに細い生脚。 それらは酷く扇情的で理性が飛びそうになるが幼女に欲情しちゃいかんと強い意志でそれを何とか食い止めた。 その姿を見れば自制がきかなくなりそうなのが怖くて無理矢理顔を逸らせばベルフラウが甘い声で囁いてくる。 「ねえ、先生? 今の私の姿ちょっとムラっときたりしない?男の人ってこういうの好きなんでしょ?」 ええきます。物凄くムラっと。 なんて言える筈がない。己の中の欲望と格闘しながらレックスは頬を染めつつ声を荒げた。 「そんなわけないだろう! 馬鹿な事してないですぐにグラウンドに戻りなさい!大体君はそういう事をどこで覚えてくるんだ…。まだ君には早すぎる!」 「子供扱いしないで!」 ベルフラウの声が大きくなる。 それに驚いて思わずそっちの方を見れば泣きそうな、けれど真剣な表情が目に入る。 「貴方にだけは…そういう風に扱われたくないの…。ちゃんと私を一人の女の子として見て欲しい…。今はまだ子供かもしれないけど、でも貴方にだけはそう言う風に言われたくない…」 それはお願いであって強制ではない。 切なげな表情で紡がれるその言葉はとても真摯な色が滲んでいる。 彼女の心を傷付けてしまったのだと、他人の好意には鈍感であれ感情の機敏に敏感な彼がそれに気付かないはずがない。今度は彼女の目を見て言った。 「ごめん…君の事子供扱いしてるって責められても俺はそれを否定できない…。 けど、真剣だからこそそういう風に簡単に自分を安売りするような真似はして欲しくないんだ。 君の…気持ちが分からないわけじゃないし、嬉しいとも思うんだけど…でもやっぱりもっと自分を大切にして欲しいって思う。俺はちゃんと待ってるから。ね?」 言葉を選んで、ゆっくりと諭す様に言った。それでも彼女は俯く一方でその事が悲しい。 少しだけ沈黙が流れた後ベルフラウがそれを破る。 「ねえ?」 「うん?」 「私って…そんなに魅力がないかしら?」 「え…?」 予想外の言葉にレックスの声が止まる。それに構わずベルフラウは続けた。 「だって…そんなにおかしな事なの? 好きな人と一つになりたいって…身も心も繋がり合いたいって思うのは…。そういう事を子供が思っちゃいけないの?大人なら許されるのに…子供だからって、それだけでその権利すら与えて貰えないの?」 「ベル……」 何だか酷く難しい問題に直面している気がする。 大人は分かっちゃくれないと子供は言うけれど、子供だって大人に対して十分に無理解だ。 親の心子知らず、とは言ったもので。 いやらしい本を隠れて読んで罪悪感に打ちのめされつつも興奮も感じていた青い時代をもう過ぎてしまった大人は子供に夢を見て、綺麗なままでいて欲しいと自分の美化希望を含めた理想を押し付けるし、理解されたい子供はただひたすらに己のエゴをぶつけるしかない。 そんなすれ違いが生まれる狭間はどこだろうと考える。 大人と子供の境界線がちゃんと引かれていれば誰もがこんな思いをしなくてすんだのだろうか。 明確な基準のない線は今自分と彼女の間で酷く不安定に揺れている。 誰か定めて欲しい。この中途半端な距離を。曖昧な想いを。 でもそんな事思ったって結局それを決めるのは自分しかいないのだけれど。 「本当にね…たまに思うのよ…。どうして貴方みたいな人好きになっちゃったんだろうって。そうすればこんなに悩んだり不安になることもなかったのかなって。でもね、どうしてかしら…貴方じゃないとダメって思ってしまうのは。いっそ心と体…別々だったら良かったのに…。そうすればこんな気持ちにもならなかったのにね」 その言葉には寂しさが滲む。 心と体を切り離せないからこんなにも切なくなるんだろうか。 手を繋いだら結婚できるほど世の中簡単にはできていないし、体を繋げたら永遠の愛が約束されるわけでもない。 人間てのは酷く難儀で不器用だ。今こうして悩んだ所で答えが見つかるなんて事あり得ないし。 だから言葉を信じるしかないけど、どこまで信じられるかって言ったらそれすらもよく分からない。 そう考えると大人と子供の違いなんてないんじゃないかと思う。 結局、大人になってもこの答えは見つかっていないんだから。 「ねえ、先生?ならキスしてもいい?」 「キスだけなら、ね…」 何を言ってるんだと思いつつも承諾する。 触れるそれは温かい。 一回目は突然すぎて目を閉じるのも忘れたけど、今回はちゃんと閉じれた。 少しだけくっ付けた後離そうとしたらグっと頭を押さえつけられ、逃げ道を塞がれた。 自由を奪われた後はただ犯されるだけで、それでもそれは酷く官能的で。 もう此処が何処だとか相手が誰だとか分らなくなるほどに溺れてしまった。 絡まる舌が、混ざる唾液が、鎔ける吐息が、熱い。 体の中で踊るのは、欲情。 「ん…ふあ…んんぅ……」 「……ふ…ん…んあ…」 どれだけそうしていたか分らない位にお互いを貪り合った後、ゆっくりと口を離す。 恍惚とした表情は酷く卑猥で更なる興奮を煽る。 それでも顔を逸らして素っ気無く言った。 「…ベルの嘘吐き」 「何が?」 「キスだけって言ったじゃないか」 「キスじゃない、正真正銘」 「俺は一番最初にしたようなやつだと思った」 「でも嬉しかったんでしょ?」 ああ何でだろう。何でこういう言い方するんだろう。 そんな風に言われたら認めざるを得ないじゃないか。 「…うん」 君の事が好きで、欲情してますって。 駄目な大人どころかもう大人になれない大人になってしまいそうで嫌だ。 それでも笑う彼女はこういうのは変かもしれないがとても、綺麗だった。 「続き、してもいい?私、先生の事もっと知りたいの。頭から爪先まで、全部。貴方の事が、好きだから」 「―…そういうの、聞くなよ」 何で流されるかなぁこういう時に。とか思ってしまうがこれは不可抗力だと思いたい。 だって、頑張ったんだよ凄く。ブルマとチラリズムの誘惑にも耐え、挑発にも乗らずに頑張ったんだ。 もう楽になってもいいじゃないか。だって男だもん。仕方ないよ。 なんて必死に自己弁護をしているレックスに構わずベルフラウはジーっと口でファスナーを降ろす。 そしてそっとレックスの性器をそこから覗かせ、手で触れた。 「これが…先生の……」 男性器を直に見るのは初めてなのか、彼女はたどたどしい様子でそれに触れてきた。 そんな所だけは年相応の娘が見せる反応でレックスの心が痛んだ。 ああ何でこんないたいけな少女にこんな破廉恥な事をやらせているんだろうと。 しかしそんなレックスの心の葛藤を知ってか知らずかベルフラウは今度は無遠慮にそれに触れてきた。 「…ッ」 「ねえ、先生? 触られると気持ちいいの?」 純真な顔でそんな事を問うてくる。それに素直に答えられるほどの余裕は彼にはない。 実際触られるだけではそんなに気持ちいいわけではないが彼女のたどたどしい手つきや汚れなき表情は妙な背徳感を湧き上がらせ、それは全て興奮へと変換されていっている。 少しでも気を抜けば完全に箍が外れそうな己と闘うのに必死であった。 「ん…ッ」 そんなレックスの様子をさして気にする事もなく、ベルフラウは今度はそれを口に咥え先端をちぅと吸ってみた。 「ぅ…ッ!」 小さく声が漏れる。眉が顰められて快感に表情が歪む。 ベルフラウはそれを見逃さずに熱い吐息をそれに吹き掛けた後、レックスの唇にそっと指を当てた。 「声、出したら駄目。外に聞こえちゃう」 「…っ、なら、止めよう、ここで」 もう反応をし始めているのにそう言うのはどこか矛盾しているが一応言ってみる。 しかし彼女は止める気配を全く見せない。 「嫌よ。だって今日止めたら…これからまた暫く会えなくなるじゃない…。だから今のうちに貴方を沢山感じておくの。貴方の匂いを、温もりを、忘れてしまわないように」 そう言ってベルフラウは今度はその体の上に乗り、勃ち始めているそれをお尻に挟むような体勢を取った。 ブルマと下着越しに股間が触れ合う。擦るように動かせば甘い快感がじんわり背筋を駆け上がった。 ベルフラウはそのまま上着をたくし上げ、それを口に咥える。 捲り上げられた上着の下の白い肌が露となり、まだ発達していない胸と綺麗な桜色の小さな乳首がその存在を主張する。 「先生…私も気持ち良くして?」 服を手に握り、ベルフラウはそれだけ言うとまたそれを咥えた。そしてお尻を動かす。 「…く!」 布越しにベルフラウの股で性器が扱かれる。まだ幼い未成熟な器官が情欲の切なさに焦がれ、快感を得ようとそれに擦り付けられているのだと考えると予想以上の快感が込み上げる。 しかし自分だけ気持ちいいのも申し訳ない気がしてレックスはそっとベルフラウの胸に手を這わせた。 起伏のないそれは揉めるほどの大きさをもっていないのでそっと撫で上げる。 「んんッ!」 指先が乳首を擦るとベルフラウの口からくぐもった声が漏れ、咥えられた上着に吸い込まれた。 幼い体が快感に跳ねるのはどうしようもなく背徳的で、その犯罪臭さが逆に興奮となってしまう。 与えられる快感をそのまま返そうと小さな乳首を何度か捏ねればそれはすぐにコリコリと硬くなる。 それに応える様にベルフラウもまた腰を動きを速めた。 「ん…んんぅ…ッ!」 「ベ、ベル…も、いいから……」 段々と限界が近くなってレックスはベルフラウのその体を手で押さえ、止める。 彼女は不思議そうな顔をして見つめてくるがそれに微笑みを返している余裕もなかった。 「その…このままだと服汚しちゃうから……」 気まずそうにそう言えばベルフラウはそれでようやく理解したのか今度はまた口を使って奉仕を始めた。 「ん…せんせ、口の中に出してもいいから……んむ……」 小さな口でそれを咥え、舌で舐め上げながらベルフラウは言う。 奉仕など今日初めてであろうに、彼女の舌使いは段々と巧くなっていってる事に気付きレックスは彼女は勉強だけでなくこっち方向でも飲み込みが早く、応用が効くタイプなのかなぁとぼんやりと思ったりした。 努力家だし、将来的には色んなプレイや体位を試せるかもしれない。 その時主導権を握っているのが自分である保障はどこにもないのだが。 そんな事を悠長に思っていたらいきなり強い刺激が背筋を駆け上がる。 手で袋を撫でながら舌で根元から先端までをゆっくりと丁寧になぞられると先走りが滲む。 それを舐め取られて先端を強く吸われるとどうしようもない快感が込み上げた。 軽く歯を立てられて、それでもう堪えていたものが一気に溢れてしまった。 「…ぅ、ぁ…ッ!」 「んぅ…!?」 レックスの腰が震え、張り詰めていたものから熱い迸りが放たれる。 それは口でそれを咥え込んでいたベルフラウの咽喉に注がれ、彼女はそれを音を立てて咀嚼した。 「ご、ごめん…大丈夫? 服とか汚れてない?」 何だか気まずい様子で問い掛けてくるレックスにベルフラウは優雅に微笑んだ。 「大丈夫よ。少し驚いたけど…こういう風になるって知ってたから」 だからそういう知識はどこで仕入れてくるんだ。とは聞かないでおいた。 世の中きっと知らない方がいいこともあるだろう。 レックスがそう言い聞かせているとベルフラウがまたそっと体を押し倒してきた。 「ねえ、今度は私を気持ち良くしてくれる?」 そう言って徐に服を脱ぎだした。白く細い体は幼いながらにとても綺麗だ。 木目細かな肌はきっと普段の手入れの賜物だろう。 それに見惚れているレックスの服をベルフラウは脱がしに掛かる。 何だか後戻りのできない位にヤバイ状況だがこのまま流されてしまえ。もう不可抗力だ。 そんな事を思って諦めかけたその時、ぼんやりとしていた視界に倉庫の奥で眠るバーベルが目に入った。 ああそういえば軍人は体が資本だとか言われて学生時代によくやらされたなぁ。放課後まで頑張ったりして。 その時の教官っていうか先生はいい先生だったなぁほんと。 なんて思ってしまってそこでふと我に返ってしまった。 いい先生。 自分が目指していたのはそれのはずだ。なのに今やっている事は何だ。 いい先生どころか人として最低な事をしてるじゃないか。 それに気付いた途端頭の中に今まで考えまいとしていた単語が一気に押し寄せてくる。 駄目教師。人間失格。最低男。ロリコン。ペドフィリア。変質者。幼児趣味。鬼畜。やりチン。 そんな言葉が頭を埋めた瞬間叫んでいた。 「ちょ、ちょっと待とう、ベル!君は間違っている!今すぐ止めるんだ!」 「は?」 今まで乗り気だったのにいきなり抵抗されてベルフラウはあからさまに顔を顰めた。 突然の態度の急変に彼女は戸惑うより先に怒りを感じた。 「ちょっと、裸になっておいて今更何を言ってるんですの?」 「裸って…あ!」 気が付けば二人とも全裸だ。 ヤバイ。この状況はヤバすぎる。もう言い逃れが出来ない。 何としてでも自分が犯罪者になるのを回避すべくレックスは今更のように抵抗を始めた。 「ベル! 止めるんだ! いや、止めて下さいお願いします」 「もう、今更何言ってるのよ。ここまできたんだから最後までやりますわよ。大人しくしてて。暴れると私が落ちそうになるんだから」 「う……」 落ちそうになる、の一言でレックスは暴れるのを止めるがそれでも口での抵抗は止めない。 「ベル、強姦は犯罪だ。俺は自分が犯罪者になるのは嫌だけど君が犯罪者になるのも嫌なんだ。 だから止めよう。今すぐに。まだ更生の余地はある。さあ!」 「ああもう五月蠅いわね。大人しく私に犯されなさい!」 ベルフラウの方も完全に頭に血が上っていた。問答無用といった態度にレックスは青ざめて叫んだ。 「ギャー! 誰か助けて! 犯されるッ! 強姦魔がここにいますッ!」 何で男に生まれたのにこんなに情けない台詞を吐かにゃあならんのか。 しかも自分よりも一回りくらい小さい女の子相手に。 半ば諦めの気持ちで叫んだが奇跡は起きた。 「何事だ!?」 ズガッシャーン、という重々しい音共に鍵の掛かっていた倉庫の戸が蹴破られた。 一人の女性の手によって。彼女の見事な脚力がどれ程かなんて正直考えたくない。 「変質者はどこだ!?」 「ここです、ここですよ、お巡りさん!」 漆黒の髪を振り乱し、白い軍服を身に着けた白馬の王子アズリアにレックスは条件反射で声を上げた。 彼女はお巡りさんでもなんでもないのだがそれはもう弾みだろう。 しかし顔を見合わせた途端に二人とも凍ってしまった。 「あ」 「あ」 「…もういい所だったのに」 短く声を出し、固まる二人を他所にベルフラウは華麗な動きでレックスから離れると自分の身に着けていた服を手に取り、そそくさと着替え始めた。 それが目に入らないアズリアは体をわなわなと震わせて素早い動きでスラリとその腰の剣を抜いた。 「レックス、貴様…! この犯罪者が…ッ!」 「わー、誤解だよ、誤解!俺はむしろ被害者って言うか強姦されかけたんだ、ほんとに!」 「素っ裸で幼女襲っておいて何を言い訳する!?」 最早問答無用と言った様子で振り下ろされた彼女の白刃をレックスは半泣きになりながら両手で挟みこんで止めた。見事な白刃取りだがそれを褒める人間はここにいない。 がちがちと目の前で揺れる刃が恐ろしい。 「お、落ち着いて…俺の話をよく聞いて……」 「問答無用!今すぐに貴様を監獄に押し込んでやる!」 「アズリア、落ち着いて。悪いのは先生じゃないの」 剣を振り下ろしたままの体勢で固まっているアズリアの服をベルフラウが引っ張ってその動きを止めた。彼女はそれに降ろしていた刃を収める。 「どういう事だ?」 「ごめんなさい…若気の至りって言うか…私、自分の中の激情を抑え切れなくって…。 だから先生は悪くないのよ?そんな格好してるけど」 「本当か?」 「君は彼女の言う事なら素直に聞くんだね…」 ベルフラウの言う事を真剣に聞くアズリアにレックスは溜息を吐きながら言った。 彼女と自分が築き上げた学生時代の信頼は簡単に崩れるくせに同じ女の言う事なら素直に聞くのか。 何だか理不尽な気持ちでいっぱいだ。 「だから今回の事は見逃して頂けないかしら?どうせだったら何時か三人で楽しみましょ?ね?」 「は?」 「な…ッ!」 ベルフラウの衝撃的発言にレックスは顔面蒼白となり、アズリアは顔を真っ赤に染めた。 それぞれ全く違った反応が見れて面白い。 と、口には出さなかったが、ベルフラウはこっそりとそんな事を思った。 「ベ、ベル!何て事を言うんだ、君は!俺は君をそんな破廉恥な子に育てた覚えはない!」 「あら?私、アズリアとだったら別に構わないと思ったから言ったんですけど。私は貴方もアズリアも両方好きだもの。ねえ、アズリア、考えておいてね?貴女も先生の事は嫌いじゃないんでしょ?」 「―……」 にっこりと微笑むベルフラウは可愛いがアズリアはちょっと気が遠くなった。 自分がこのくらいの年の頃は手を繋ぐ事すら気恥ずかしかったのに今の子は随分と進んでいるようだ。 多人数プレイなんて考えもしなかったのにそんな事すら彼女は当然の事のように言うのだ。 やっぱり将来大物になる器かもしれない。 「うふふ…そろそろ行かなくちゃ。借り物競争が始まっちゃう。先生も服着たらちゃんと私の勇姿をその目に焼きついておいてね?どんなにいい女かちゃんと見せてあげるから」 そう言って小悪魔のように可愛く微笑んでベルフラウは体育倉庫を後にした。 そこには狸か狐に化かされたような表情で佇むアズリアとレックスが取り残されただけであった。 おわり 目次 |
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