カイル×アティ・3自分に宛がわれた船室のベッドへと、ばったり倒れこむ。 うつ伏せになったその表情を窺い知る事は出来ない。 ――もう、最悪…… 後悔の念が後から後から浮かんでくる。 アティの“秘密”を聞いたソノラは、初めの内こそ神妙な面持ちだった。 肩を掴み、しっかりとこちらの顔を見据えて応えてくれたのだ。 「安心して先生。アニキなら先生の秘密もちゃんと受け止めてくれるから。先生には悪いけどアニキとの付き合いはあたしやスカーレルの 方がまだまだ長いんだからね。そのあたしが大丈夫って言ってるんだよ。だから……」 その言葉はアティにとってこの上なく力強く、心の迷いを晴らしてくれた――――ように思えた。 ソノラが吹き出すまでは。 「だ、だか……だから…………っく、ぷ。うっく……くく」 よく見れば肩を掴む手がぶるぶると震えている。やがてその震えは彼女の全身に達し、真面目だった顔つきは何とも言えない微妙なものへ と変わっていた。 次の瞬間、スイッチが入る。そんな予感を感じさせる表情だった。 「…………ぷははははは!! もーダメ、我慢の限界!! せっ、先生、まさかそんなコトで悩んでたの!? あははははははは!! 死 ぬっ、死ぬーっ! 笑い死んじゃうーっ!! あっははははははははは!!」 その後の事はよく覚えていない。 「お、おい先生! 何してんだよ!?」 気が付いた時には何故か船に戻っていて、黒い帽子が頭を覗かせている見張り台のついた帆柱を斬り倒そうとしていた。 慌てたカイルの声で我に返れば、手には抜剣状態の“果てしなき蒼”。 今朝からまともに顔を合わせる事が出来なかった彼をいきなり目の当たりにし、思考回路はオーバーヒートを起こして脱兎の如くその場から逃げ出した。 その足で自分の部屋へと駆け戻り、今はこうしてベッドの中で屍となっている真っ最中、である。 ばふばふ、と力なく腕が枕を叩く。 ――大失態です…… ある程度の驚きや、事によれば蔑まれるかと覚悟していたけれど、まさか笑われるとは思ってもいなかった。 それもあんなに。 ソノラは彼女とは違うタイプの女の子だし、何か助言してくれるかもしれない。それに約束を破るような子でも無いから、もう一度だけ。 そう思い心の古傷を曝け出してみようと決意したのに。 ――やっぱり、カイルさんには見せられないよ…… 零れ落ちる涙で枕を濡らしそうにそうになったその時。 コンコン、と部屋のドアがノックされた。 スカーレルの人差し指が、ソノラの額を軽く弾く。 「あいたっ!?」 「ダメじゃないソノラ。確かにセンセは斬った張ったは得意かもしれないけど、アタシ達と違ってデリケートに出来てるんだから」 「ぶ~。だってさぁ……」 甲板に積まれた樽の上に腰掛け、頬を膨らませて不満の意を表すソノラ。 だが彼女自身も自分の非を認めているのだろう。その声には力が無い。 「この世の終わりだーみたいな顔して打ち明ける悩みがアレじゃあ、アタシじゃなくたって笑っちゃうよぉ」 「ですから、そういった所も含めて彼女は繊細なんですよ。もっと気を使ってあげなくてはいけませんでしたねソノラ」 やんわりと諭すヤードは、アティが走り去っていった船室へと目を向けていた。 「それはそうとして……今の先生にアニキけしかけてホントに大丈夫だったの? なんか余計に引き篭もっちゃう気がするんだけど……」 「ええ、心配ないでしょう。カイルさんは同じ轍を踏むような方じゃありませんから」 「そうそう。あれで結構ちゃんと考えている人だし、大事な時に人の心を掴む事が出来ないようじゃこんな稼業の頭なんてやってられないしね」 問題無いと落ち着く二人に反し、ソノラはやはり不安が晴れない。 暫くの間はそわそわと足をばたつかせていたが、やがてひょいと樽から飛び降りた。 「やっぱ気になる! ちょっと見てくるねあたし!」 そのまま船室へと続く階段に向かおうとする。 すると何時の間に移動していたのだろうか。スカーレルがすっとソノラの前に立ち塞がり再び彼女の額に指を立てた。 「あぅ」 「こ~ら。心配無用って言ったでしょ。馬に蹴られて死んじゃうわよ?」 「ぶ~ぶ~。馬に何とかってどういう意味よー。あたしにも分かるように言ってよね」 「要するにアナタに足りてないモノよ、ソノラ」 思わず自分の胸元へと視線を向けるソノラに、ヤードとスカーレルは顔を見合わせる。 雲一つ無い青空に、男達の笑い声が吸い込まれていった。 「先生、オレだが。入ってもいいか」 何かが盛大に転倒し室内に激しい物音が響くのをドア越しに聞いた。 「おいどうした先生? 大丈夫か?」 音に驚きドアノブに手を掛ける。 ドアを開き部屋の中へ入ろうとした瞬間、部屋の内側からバタン、と思い切りドアが閉められ、カイルは鼻の頭を痛打した。 痛みに無言で顔を押さえる。 「な、何でもありません! 大丈夫ですから!」 ドアの向こうから取り乱した声。 「ですから……ちょっと今は…………ごめんなさい。一人にさせて、くれませんか」 一言一言間を置き、努めて平静であろうとするアティの声は、逆に彼女の今の心境を如実にカイルへと伝えてきた。 隠し切れない言葉の中の湿り気に、唇を噛む。 「そうか……ならこのままでいいから聞いてくれ。すぐ済むから」 ドアに向かってカイルが言う。 「昨日の夜はすまなかった。あの時は先生の全てが知りたくて、ついあんな無茶やらかしちまった。だけどもう二度とあんなマネはしねえ。またあんな馬鹿でかい拳も食らいたくねえしな」 返事は無い。 「って事でオレも腹を決めた。先生がちゃんと話してくれるまで待つってよ。だからまあ……信用できねえかもしれねえが、安心してくれ」 そこまで言うと、カイルは言葉を区切った。 本当に言いたかったのはここから先なのだ。 彼女にだけではなく、自分にも言い聞かせるように、静かにカイルは再び語りだす。 「……なあ先生。お前はよ、やっぱり背負い過ぎなんじゃねえのか? しかもこっちから手出してその荷物どかそうとしない限り絶対に手放しゃしねえ。さらに背負ってるモンの重さを気付かせないように笑ってる」 初めて出会った時から、常に彼女は微笑んでいた。 その裏に何が隠されているのか気付いた時、彼女の中にある暗い部分を知った。 「お前の笑顔を見る度、心の何処かで素直に喜べないオレがいるんだよ……今コイツは本当に笑えているのかって、また一人で抱え込んじまってるんじゃねえかって不安になってるオレが」 思い出すのはあの砕け散った刃。光を失った彼女の瞳は、今でも悪夢となってカイルを苛む。 あの時彼女にかけた言葉を、ここでもう一度繰り返す。 「島でオレはお前に言ったよな? 次に泣きたくなったらお前の方から言ってこいって。なのにお前ときたらあれから一度だってオレに愚痴の一つさえ寄越してこねえ。今だってこんな場所で独りで泣いてるじゃねえか」 びくり、とドアを挟んですぐ前にある気配が震えるのを感じた。 「惚れた女が独りで泣いてる所なんざ止めようとするに決まってるだろ? 頼むからもっとオレを信じてくれねえか……アティ」 いつも彼女を呼ぶときの“先生”ではなく、名前で彼女を呼ぶ。 この言葉は嘘偽りの無い彼の心だから。 彼女の一番奥まで届いて欲しいものだから。 「この広大な海に誓うぜ。オレはお前を信じる。何があろうともお前の仲間で、味方で、お前が許してくれるなら……恋人で在り続ける。お前がどんな秘密を持ってようと構わねえ。それがオレの誓いだ」 カイルが己の全てを捧げ、挑み続ける大海原に誓いを立てる。 それはつまり絶える事無き強き思い。 その意味はドアの向こうにいる彼女に、深く染み渡っていった。 「……ま、いきなりもっと信じろって言われても難しいわな。少しずつでもいいからよ、考え……」 ドアが開き、紅がカイルの胸へと飛び込んできた。 彼の胸に縋る様に、声を殺し肩を震わせ嗚咽を漏らす。 「カイルさんの、ばか。泣かせ……たくない、って言っておきながら、なんで……っ、そんな事言うん、ですか。いっしょう、けんめい、我慢してた、の、に、トドメ、さされちゃいました……」 涙交じりのアティの声は途切れ途切れで酷く聞き取り難かった。 「……悪い。んでありがとうな、先生」 カイルはアティの頭を腕に抱き、より深く自分の胸へと埋めた。 彼女の涙を全て受け止める為に。 そろりそろりと服の裾が持ち上げられる。 眩いばかりの白と羞恥に朱と染まった太股がカイルの前に晒された。 しかし震えっぱなしの手は、そこから先へ全く動いてはくれない。 アティの心臓は壊れたかの様に早鐘を鳴らし続ける。時間だけが無常に過ぎていく。 「……先生、きついなら止めても……」 こちらを気遣うカイルの声に決意が挫けそうになるのを、意志の力で思いっきり蹴りつけた。 「だっ……駄目です。この機会を逃したら、わたしまた……」 ――カイルさんに、ちゃんと応えないと。そのためには…… とは思うものの、自分の手はまるで言う事を聞かず、裾を腰上の捲り上げた場所に縫い付けられたまま。 己の不甲斐無さに情けなくなってくる。 「だああああ、だから泣くなって! もういいから、無理すんなよ先生。気持ちはちゃんと受け取ったから」 そういう彼には、言葉ではああ言っているものの無念の色がありありと見えた。 こうなったら、残された手段は一つしかない。 しかしそれを口にするのは、あまりにも恥ずかしい。 はしたない女だと思われないだろうか。そんな不安が形をとり暗雲となって立ち込める。 ――でも。カイルさんは言ってくれましたよね 自分を信じると。それがどんな秘密だろうと信じてくれると。 ふっと心が軽くなるのを感じ、その一瞬の呪縛からの解放を逃さずアティが叫んだ。 「かっ、カイルさんが最後の一枚、取って下さいっっ!!」 沈黙。 恥ずかしくて彼の顔を見ることが出来ない。 ぎゅっと目を瞑り、消えてしまいたくなる感情と必死になって戦う。 「……いいのか?」 「はい……は、早くして下さい。じゃないと」 次の瞬間、カイルの手がアティの下着をするりと膝の辺りまで落としていた。 「っっっっ! そ、そんないきなりですかっっっ!!?」 「いや先生が早くしろ……って…………あ……」 苦笑と共にカイルは抗議しようとしたが、それに目を奪われ何も言えなくなってしまった。 視線が一点に注がれる。 そこにはあるはずのものがなく、ただ只管に白く滑らかな肌と、初めて目にする彼女の秘所が姿を見せているだけであった。 「…………先生。一つ聞くがよ」 「…………はい」 「…………剃ったりしてねえよな?」 「……………………はぃ」 「これが、先生が隠したがってた理由か?」 「変ですよね? おかしいですよね? わたし、自分の他にこんなの見たことも聞いたこともありませんし……ひょっとしたら何かの病気とか、呪の類なんじゃないかって思ったりもしたんですけど、どんな医学書や」 アティの言葉を遮り、カイルの大爆笑が部屋中に響き渡った。 「おーい先生よー。いい加減に機嫌直しちゃくんねえかなあ」 「知りませんっ! カイルさんなんて大嫌い!」 ぷいと横を向き、視線を合わそうとしないアティ。 そんな仕種すらも愛しくて仕方が無いのだが、それを今ここで言うのは彼女の怒りをさらに買うだけだろう。 「本当に不安だったんですから……それなのに、ソノラと同じ反応するなんて酷いです」 既に下着は履き直され、アティは膝を抱えてベッドの隅に座り込んでいた。 「ちょっと待て。オレより先にソノラの奴に話してたのかよ!?」 「だ、だって男の人になんて相談できるわけないじゃないですか!」 顔を真っ赤にしながら、がーと反論するアティ。 思わずカイルの方へと向き直ってしまったのが運の尽きだった。 覆い被さるようにカイルの大きな体がアティの上にのしかかる。 両肩を掴まれながらベッドへと押し倒され、漸く自分とカイルがどういった位置関係にあるのか把握したアティが、遅すぎる抵抗を始める。 「ほう。先生はオレよりソノラの方が信頼出来ると、そう言いたいんだな」 「そうじゃなくて! や、ちょっとどこ触ってるんですかカイルさ……あっ、やぁっ……」 段々とアティの抵抗が形ばかりの弱々しいものになってきた頃を見計らい、カイルはアティに唇を重ねる。 たっぷりと時間をかけて彼女の唾液を堪能したカイルは、にやりとした笑みと共に告げた。 「今日は先生が全てを見せてくれた日だからな。忘れられないよう、しっかりとオレを刻み込んでやるよ」 「あああっ! んああぁぁんっ、あっ、はっ、ああぁぁ……」 広いとはいえない室内にアティの喘ぎ声と、それ以上に蟲惑的なくぐもった水音が木霊する。 初めて触れる彼女の秘所は、引っ切り無しにカイルの指を締め付け、愛液をしとどに漏らしながらも離したくないと絡み付いてくる。 遮るものが何も無いアティの秘所は彼女の悦び様をはっきりと伝えていた。 「おいおい……初めてだってのにこの食い付きようは何だよ先生。先生もよっぽど溜まってたんだな」 「あうっ! そんなっ……こ、とっ………はぁぁん! はぅぅ……っ!」 途端、ただでさえきつかったアティの秘所の締め付けが一層強さを増す。 茹った様な赤い顔をぶんぶんと振り、否定しようとした言葉は最後まで紡がれることなく消えていった。 自分の言葉に如実な変化を見せたアティを見て、カイルにある一つの仮説が閃く。 ――もしかすると…… その仮説を確かめる為、彼女の耳へと顔を寄せ、耳朶を撫でるように優しい声で囁く。 「素直に悦んでくれるのは嬉しいけどよ、そんな大声だしてるとスカーレル達の所まで聞こえちまうぜ?」 「!!」 アティの目が驚きに目一杯開かれ、電光の速さで彼女の両手が口を覆う。 耳に突き刺さった言葉は容易く快楽を司る神経にまで達し、アティを絶頂の彼方へと押しやった。 先ほどに倍する強さの締め付けがカイルの指にかかる。 「んっんんー! んっふっ、んむぅぅ! んんんぁぁぁぁ…………」 両手では抑えきれない嬌声がアティの口から零れていく。 きゅ、きゅと幾度かの強い締め付けの後、アティはぐったりとベッドに沈み込んだ。 自分の推測が正しい事を確信し、カイルはアティの秘部から指を抜きぐっしょりと濡れたそれを彼女の目の前へ持っていった。 「今気付いたんだが……先生、お前言葉で虐められると目茶苦茶感じるだろ?」 指を広げ、糸を引く愛液をアティへと見せ付ける。 アティには、当然そんな恥ずかしい自身の性癖など認める事は出来なかった。 ふらつく体をなんとか起こし、カイルの口を閉じようともがくが力の入らない状態ではそれも儘ならない。 「嘘、嘘ですそんな……! わた、わたし、いじめられて、快感なんて……」 頭がくらくらする。 言葉で快感を得てしまう。そんな事が、ある筈無い。 だって、そんな、それが本当なら。 「わたし、そんなに……いやらしい女じゃ、無いです……っ!」 何が何としても、それだけは拒否しなくてはならない。 だがアティの言葉を嘲笑う様なカイルの宣告。 「そんな事言われてもなあ。たったあれだけの言葉責めでイく所を見せ付けられちゃ説得力の欠片も無いぜ?」 すとん、と何かが心の中に落ちる。 「胸やキスだけでイっちまう事もあったから、敏感なのは知ってたが……これはもう決定的だよな。先生はこういう事に才能あったんだよ」 駄目だ。早くこの言葉を心から取り除かないと。 じゃないと、自分でも受け入れてしまう。 「う、ウソです……あぅっ」 「嘘なんかじゃねえって。ほらまたこっちの口から涎が出てきたぜ?」 ぞくぞくとした背筋の震えが魂にまで届きそうになり、アティは自分の芯が塗り替えられていく様な恐怖に襲われた。 怖い。 自分はどうなってしまうのか。 この身体は自分のものじゃないのか。どうして意思とは無関係に反応してしまうのか。 細い両腕で、自分を抱きしめるように掻き抱く。 そうすれば己を繋ぎとめる事が出来ると、そう信じて。 「怖い……! わたし、どんどんわたしの知らないわたしになっていっちゃう……!」 すると、大きな二本の腕がアティの身体を包み込んだ。 「心配すんな。変わろうが何しようがお前はお前だって。いいから素直に受け入れてみろよ、オレがちゃんと傍にいてやるから」 その一言と彼の胸の温かさは、魔法のように不安を溶かしていった。 ぴしり、と心の何処かに亀裂が入るのをアティは確かに聞きながら、恐る恐る尋ねる。 「……いいんです……か? もっといやらしくなっちゃっても……」 「おうよ。寧ろ大歓迎だぜ」 腰の下に篭る熱が、一段と上がった気がした。 俯きながら、抱留めてくれている彼の背中にそっと手を回す。 躊躇いながらも、はっきりと、彼を見上げながら告げる。 「…………わ……わたし、もっと気持ちよくなりたい…………」 両手で膝を開き、膝下から腕を差し込んで抱えあげるような体勢で固定する。 自分の下腹部に触れるカイルの男性を、アティの瞳は困惑と恐怖と――期待を込めて映していた。 「それ、入れちゃうんですよね……?」 「ああ。初めてだから痛いかもしれねえけどな、そればっかりはどうしようもねえ。悪いが少しだけ堪えてくれ」 位置を確かめ、入り口に押し当てられる。 それだけでアティの腰に痺れるような感覚が走る。 「ぅんっ……はい、カイルさんのを、わたしに……下さい」 繋がれた手をぎゅっと握り、彼が来てくれるのを待った。 ず、と入り口を押し広げカイルが侵入してくる。 初めて経験するそれの熱さが、アティの脳を焼く。 「あっ……ぐ……」 半ばまで埋め込まれたところで、アティは大きく息を吐いた。 「あんまり力入れるな。却って辛くなるぞ」 アティの様子が苦痛を堪えているものだと思ったのだろう。カイルが侵入を止め、心配そうにアティを見つめる。 だがアティの返事はカイルの想像するものではなかった。 「い……痛いのもあるんですけど、何だか、それ以上にカイルさんの……あっ、熱さが伝わってきて、ぼーっとなっちゃって……はぁっ」 アティの表情は、彼女の言うとおり苦痛よりも快楽に耐えている色の方が強いように思えた。 「……なら、一気に全部いっちまうぞ? そっちの方がどうやら良さそうだからな」 「はっ、はいっ……あっあああっ……」 そんなアティの態度に、カイルは意を決し奥まで突き入れた。 「はぁぁぁっ……カイルさんっ……」 カイルは暫くの間、アティの痛みを気遣い動かずにいた。 「どうだ先生……まだ痛むか?」 「こっ……こんなの……凄くてっ、よく、分からない……!」 我を忘れしがみついてくるアティ。 そこにカイルがいる事を確かめるように、爪を立て彼の背中に自分の証を刻む。 そんな痛みさえ目の前の彼女の与えるものであれば、たとえそれがどんなに深い傷だろうと喜んで受け入れるのだと、そう言う代わりにカイルはアティの髪を優しく梳いた。 「……破瓜の血は無えみたいだな。まああれだけ激しく動き回ってればそれも有り得ない話じゃねえし……」 何より、必要以上に彼女を傷つける事が無かったのが嬉しかった。 焦点の合わない目でカイルを覗くアティを掴み、腰を動かし始めていく。 最初はゆっくり少しずつ、次第に大きく速く。 「あっ、あっあっあっ、はっ、初めっ、て……なのにぃっ……っあんっ! あああんんっっ! カイルさぁんっ!」 全身に玉のような汗を浮かべ、アティが身も世も無く喜悦に啼く。 アティの身体が馴染んでいく早さに驚きながらも、カイルを怪しく、貪欲に捉え包み絡んでくる彼女の膣壁に益々腰の動きが速くなるのを止められない。 「アティ、このままだと、出ちまう……!」 「いいっ、いいですっ! 出して下さいっっ! あああっ!」 アティは夢中でカイルの唇を奪った。 唇から零れた涎を舐め、頬から瞳へと余す所無く舌を這わせる。 「溶けちゃう! わたしのっ、アソコがぁっ! 溶けちゃうよおぉっ!」 正気の彼女が聞けば舌を噛み切りかねない台詞。自分が何を口走っているのかすら分からなくなってきている。 「っ…………!」 カイルの腰が一際大きく震え、ありったけの精を放った。 それを己の中で受け、アティの意識は果てへ飛ぶ。 「いっ、くううううぅぅぅぅぅっっ…………!!」 嵐の様な交わりが終わり、カイルはアティの上へと倒れこんだ。 一日の役目を終えた太陽が、舞台を夜の主役へと明け渡すために海の向こうへと消えていく。 窓枠に四角く切り取られた夕陽がアティの髪を一際赤く染め上げる。 「……ねえ、カイルさん」 逞しい腕を枕にと差し出す彼を呼ぶ。 「わたし、あの島でカイルさんに言った事忘れていました。カイルさんが好きだから自分の足でついていくって、そう言ったのにいつの間にかカイルさんを恐れて、離れそうになってました」 「勘弁してくれ。今更先生に離れられたらこの先誰があの見張り台に立つってんだよ。オレはもう、先生以外の女をこの船に乗せるつもりはないんだぜ?」 枕にした腕でアティの頭を優しく撫で、自分の方へと抱き寄せる。 「はい。これからは、わたしどんどん酷い女になっちゃいますよ? ワガママも言うし、もっとカイルさんを困らせちゃいます。だって、カイルさんがそうしてくれって言ってくれたんですから」 言いながら微笑むアティの顔は、夕焼けの赤に彩られこの世のどんな紅玉よりも美しく輝いている様に見えた。 カイルが再びアティを抱き寄せる。今度は両腕で。 「あ、あの……カイルさん? ちょっと苦しい……」 「…………あのな。ここでそんな笑顔されて、黙っていられるほどオレは人間できちゃいねえぞ」 「って…………? え、ええウソ!? あ、いや今日はもう……!」 「イヤか?」 「そうじゃないけど……あ、あの……まだ、じんじんして何か入ってるような感じで……」 「そっか。じゃあ先生、こっちを使う方法ってのもあるんだが、モノのついでだ、試してみるか?」 本人に全くその気は無く、冗談のつもりでカイルはアティの尻を撫でながら手を回し、後ろに触れた。 「いっ、イヤああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」 大人の背丈の倍ほどもあろうかというナックルボルトの拳が、カイルを直撃しドアを巻き込んで轟音を立てながら廊下の壁へと突き刺さった。 因みにその後ソノラがうっかり口を滑らせ、アティの秘密がスカーレルとヤードにもバレた事が発覚し、アティが世を儚んで海へと身を投げしようとした騒動はまた別の話である。 終り 前へ | 目次 |
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