イスラ×アズリアイスラがまだ幼かった頃、生家で金魚を飼っていたことがある。 部屋にこもりきりになりがちな息子の慰めになればと、母親が持ってきたのだ。イスラ自身はそんなに好いてはいなかったが、私の方が気に入ってしまったので特に不平も言わずに置いていたようだ。 色とりどりの優雅な姿は、私達の目を楽しませた。 けれど。 何時からか、まだ小さなうちに死ぬものが増えてきて、そのうち歪な姿のモノが増えてきて、 「どうして」 よく晴れた秋の日に、庭の片隅で私の手を握りしめながらイスラは呟いた。 「どうして、死んじゃったの?」 朝に見つけた金魚の遺骸を埋めていた侍女が答える。 「仕方ありませんよ。長く飼っていると、こういうこともよく起こるんです」 「仕方ない……」 「ええ。特に同じ水槽で飼っておいでになったでしょう。そうすると血の近いもの同士でこういう子を作ってしまうのですよ」 「……」 ぎゅ、と強くなる手の力。 「かぞくで、結婚すると、こうなっちゃうんだ」 侍女は頷いた。 弟はずっと私の手を握っていた。 私は、白く濁った眼の紅い魚を見ていた。 「姉さん」 乾いた空気を震わす呼びかけに、私は我に返った。 汗ばんだうなじに髪が絡んで鬱陶しいことこの上ない。灯りを落とした暗闇の中気配に目を凝らす。 のしかかる華奢な身体は、私と同じく素裸だ。汗でぬめる腹へと当たる彼の性器はとても熱い。 「またイっちゃったんだ」 からかうような口調に羞恥を覚え体温が上がる。それすら楽しいのだろう、どこか調子の外れた笑い声が降ってきた。 「声、ちいさく……んっ」 唇を塞がれる。湿る息が当たる。乏しい乳房を押し潰すように体重が掛けられる。舌の裏と付け根を貪られて注意の続きは消された。 ほんの一分足らずの間に私の口腔を犯し終え、満足そうに囁く。 「誰に聞かれるっていうの」 「……」 確かに、屋敷の広すぎる廊下と分厚い扉は、睦み事を立ち聞きするには不向きだ。 あるいは―――知っていて、誰も近づかないのだろうか。知っていて誰も止めようとしないのだろうか。 実の姉と弟の、忌まわしいまぐわいを。 ねえ、と甘えを装い命令される。 「姉さんばっかりずるいよ。今度は、姉さんが僕を気持好くさせてよ」 意味するところは分かっていた。 彼が身体の位置を替えるのに従い、少女めいた容姿には不釣合いにいきり立つものへと顔を寄せる。 鼻をつくにおいに、この子も『男』であったのだと実感した。 先端を軽く舐め、沿えた手でやわく逆撫でする。 不満げな気配。 言い訳が許されるなら、その、いわゆる心の準備が必要なのだ。 この躊躇いと怯えを押しやってしまうだけの時間は持たせて欲しい。 やや乱暴に髪が梳かれた。 彼はこういう時酷く我儘になる。まるで今まで抑えてきた苛立ちの全てをぶつけるかのようだと思う。 私にしか―――私しかこの子の欲求を聞けないのはきっと哀しいことなのだろう。 口にすれば否定されるだろうから黙っている。 沈黙したまま苦い体液を滲ませるソレへと舌を這わせた。 根元から裏筋に沿って味蕾をひとつ残らず圧しつけんばかりに涎を垂らし往復する。 鼓膜を叩く音に、甘い喘ぎが加わる。 きっとこんな表現を年頃の男子である彼は好まないであろうが、残念ながらこれ以外に彼を表す語彙は私にはない。 一旦離れて頂点より口腔に含む。のみこむように、頭を下げる。 上顎と舌で挟んで擦ると体積を増した。 息苦しさから噛んでしまわないよう気をつけて、更に、奥へ。 呻き声。 頭が強く押さえつけられる。 息が詰まる。 溢れかえる精液にえづきかける。鼻腔に流れそうになって慌てて手を振り払い口を離した。 「全部飲んでって言ったのに」 「え、飲んだじゃな……っ」 口元を拭う指が無造作に唇をこじあけ侵入する。 「嘘つき」 体液をこびりつかせたままで歯茎をなぞり、舌を絡めるよう要求する。 「こぼしちゃ駄目じゃないか」 そのままに抱き寄せられて膝を割られる。 もう片方の手がじくじくと湿る秘所へと滑り込み、粘つく水音を、立てて、 「……っ!」 逆らう術など持たない。ただ口内でうごめく他人の身体に歯を立てぬよう、息を詰めて意識を集中する。 そっと、肩に預けられる、頭。 さらさらとした黒髪が同色の私の髪と混じる。 「―――今度はちゃんと全部飲んでよ?」 時折、下らないことを考える。 夜毎痴態を重ねながら、私は一度たりとも完全な形で受け入れたことが無い。手で口で欲望を放たせても、本来あるべき部位には、ただの一度も。 ここまで情欲に反応するようになっても未だ処女と呼ぶか否か。 そんな馬鹿々々しいこと。 私達をぎりぎりの線で引き止めているのはきっとあの日の記憶。 黄ばんだ腹を上向けぽかり浮かぶ、白く濁った眼の紅い魚。 歪んだ姿。 罪の発露。 血を同じくする者の交わりの末。 さあ、 私とあの子は何時まで忘れずにいられるだろう。 End 目次 |
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