リンリ×エッジ・後編「本当にいいお湯ね……」 「…………」 お互いの身体に染み付いた、汗と欲望の証の液体をひとまずお湯で流して、 リンリとエッジはもう一度温泉に入っている。 「本当は、しっかりと身体を洗ってからでないといけないのだけど……この際、仕方ないわよね。 ここは天然の温泉だから、お風呂のように設備が整ってもいないし」 「…………」 「それにしても……身体に染み入るわ。疲れた時には温泉が一番よね、エッジ君」 「…………」 「エッジ君……?」 横に並んで座っている、ほんの少し前まで激しく愛し合っていた少年の顔を見る、と。 「…………」 顔を真っ赤にして俯いて、ちっともリンリの方を見ようとしない。 「どうしたの?」 「そ、そのっ……」 かぼそい声で何か言おうとして、また黙り込む。 どうも照れているようだが。 「あ、あんなことを……リンリさんに……」 「あんなこと……?」 「僕の、その……あれを、あんな場所に」 声がどんどん小さくなっていって、終いには聞こえなくなる。 純情にしても度の過ぎるところがある、そんなエッジに、リンリは少しだけ困ったような笑みを浮かべた。 「それは、エッジ君のおちんちんで、私のいやらしいおまんこを貫いて汚して最後にはたっぷりと子種を注ぎ込んだこと?」 「リリリ……リ、リンリさんっ!?」 限界点を越えると、黙ってもいられなくなるらしい。 「な、何てこと言うんですかっ!」 「言葉を取り繕っても仕方ないでしょう? 私が、エッジ君からそうされたのは事実なんだから……ね?」 「で、でも、言い方ってものが――」 エッジが困っている時ほど、リンリの笑顔は楽しそうな色を強くする。 簡単に言ってしまえば、からかっているというのが大きいのだろうが、対象のエッジはなかなか気づかない。 「それじゃあ、エッジ君ならどんな言い方をするの? 事実を正確に語るなら……」 「それは……ええっと……ぼ、僕の……もので、リンリさんの、……あそこを……」 もう一度。リンリはくすりと笑う。 「指示語ばかりでちっとも分からないわよ? 私が国語の先生だったなら、落第にしてしまうところね」 「そんなぁっ!?」 「この場合の正解はね……」 言いながら、彼女は隣のエッジを――ぎゅっと抱きしめた。 「……あ……」 「今更、何をどう言葉で語ったところで無意味よ。私もエッジ君も、お互いにとても気持ちよくて…… 確かに、貴方と繋がることが出来た。その事実だけで、他には何もいらないわ」 リンリに比べて、やや小柄なエッジの顔は、抱きしめられると丁度彼女の乳房に押し付けられる。 顔全体を包み込む柔らかさに、意識が飛ぶような危惧を覚えつつ、 「……リンリさんと繋がった……んですよね、僕……」 彼女の言葉を、改めて噛み締める。 憧れていた人と、心と身体、二つの面でしっかりと繋がり、一つになった。 「だから、何も心配することなんて無い。そうでしょう?」 「は……はい!」 素直に返事をするエッジを、リンリはより強く胸に抱きしめた。 「――ところで」 「はい?」 す、と抱きしめた腕から力が抜ける。 つられて、エッジの身体も彼女から離れた。 「それはそれとして……実は、一つだけ問題があるの」 「問題?」 今、心配することはないと言われたばかりなのに。 「そう、問題……」 リンリの右手が、お湯の中に隠れている下の方へと伸びる。 「な、何ですか?」 「……確かに、エッジ君は沢山私の膣内に注いでくれた。私をいっぱいに満たしてくれた……けど……」 その指のうち、二本がまだ名残によって開いている秘所にもぐりこむ。 「……んっ……はぁ、ん……」 そのまま、ゆっくりと動かし始めると――お湯に阻まれて音はしないが、再び膣内から液体が零れ始めた。 「それで、問題って……」 「私、また一度も達していないのよ」 「……ご、ごめんなさい!」 考えてみれば、絶頂に達したのはエッジばかりである。 最初は彼女の口の中に、そして二度目は彼女の子宮目掛けて。 けれど、リンリ本人は、貫かれて喘いでいたものの―― 絶頂には、届くことは無かったのだ。 「まだ大丈夫よね、エッジ君」 「え、ええ……」 時間を置いたことと、豊かな膨らみに押されたことでエッジのペニスは硬さを取り戻していた。 濁ったお湯の中でも、目を凝らせば見えるくらいに容積を増してきている。 「それなら……もう一度、味わいましょう」 ――エッジは、多大な期待感とかすかな不安感の中で、肯定の返事をした。 岩の上に腰掛けたエッジの、その上からリンリは腰を下ろす。 お互いが向かい合ったまま、座る体勢での結合を目指して。 「ん……ここね……」 片手でエッジのペニスを掴み、もう片方は挿入しやすいように秘口を開く。 エッジは、そんな彼女の背中に手を回して抱きしめようとする。 「……ふふっ」 そして、ペニスの先と肉孔の入り口が触れ合い、その時が来たことを告げる――と。 「一気にいくわ……入れただけで出さないように我慢してね?」 「……リンリさんこそ、入っただけで……なんてことは、無いようにしてください」 「あら……成長したわね、エッジ君」 「いやあ……それ程でもないです」 ――瞬間、リンリの腰が落ちた。 ずぶぶ……と、一息に硬くなったペニスが膣肉を掻き分けて進む。 「はぁっ……!」 「う、うわあっ!?」 不意打ち気味の挿入に、エッジは戸惑った声をあげ――幸い、射精はこらえた。 「リ……リンリさん、いきなりはずるいですよ」 「エッジ君が生意気なことを言うから、よ……」 はぁはぁと、今の一撃で乱れた呼吸を整えつつ、リンリは悪戯めいた瞳でエッジを見つめる。 「もう、情けない姿はしないようにって……そう思ったから……」 「そう、なの」 「……だからっ」 背中に回した腕で、しっかりと彼女を抱きしめると、少年の腰が動いた。 ずん、と激しい勢いで突き上げる。 「ひぁっ!」 「だから、僕も全力で……リンリさんに捧げますからっ」 「そ、それなら、私も……しっかり答えてあげる必要が……はぁっ……あるわね……」 ぐちゅっ、ずちゅっ、とエッジの突き上げは激しさを増す。 日頃の鍛錬で鍛えられた少年の腰から繰り出される動きは、一撃ごとに子宮口を叩いてリンリを痺れさせた。 ざらざらとして、ペニスを包み込んで締め付ける肉壁も、この激しさにはたまらない。 「ああ……そう、そうよ、エッジ君、この……この強さが欲しかったの……!」 エッジの腰の上で、リンリの身体が揺さぶられる。 少年に抱きしめられたその身体から、飛び出るように張り出した二つの膨らみもまた、揺れて存在を示す。 エッジにとっては、目の前で揺れる乳房に視覚でも快感を受け取らされている格好だ。 「んぁ、はぁ……はぁ、ね、エッジ君、それっ……私のおっぱい……」 「は、はいっ」 と、リンリもまた腰を使い始めた。 エッジのデタラメな突きに対応するように、上下動をして深く、浅くペニスを咥え込む。 「それ、吸ってみて……ん、はぁぁぁっ」 「っ……!」 ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を響かせながら、鍛冶師の少年と鬼神の眷属たる女は、肉の奥で交わる。 そうして、エッジは言われた通りに、揺れる膨らみの片方に――むしゃぶりついた。 「ああっ」 「んっ」 ぴんと尖った乳首が口に入る。 それを言われた通りに吸いたて、時に甘く噛みながら、一心にエッジは突き上げた。 「ふぁ……あ、吸われてる、吸われてるわ……ああ、奥にも来てるっ」 二箇所を同時に責められて、リンリも陶酔した声と顔になってきた。 「くぁ、あ、ああっ」 「ん……んん、んっ!」 声にもならない喘ぎ声をあげながら、二人は高みに近づいていく。 今度は、リンリもすっかり翻弄されて、一緒になって快楽を貪っているのだ。 「ああ……ああ……これが、本当の……悦びなのね……」 「……んんっ」 今や、二人の腰の動きは完全に同調していた。 エッジが突きたい場所があれば、自然とリンリの腰が動いて、位置をしっかりと定めてしまう。 リンリが奥を貫いてほしいと思えば、エッジの勢いは大きくなって子宮に届くほどの突き上げを見せた。 この絶妙な交合に、最早割り込む要素などどこにもなく、やがて―― 「エッジ君……私も、もう、果ててしまいそう……っ」 「んっ……!」 エッジは。 咥えている乳首を、吸い上げながら軽く噛み。 そして――今一度、膣奥にペニスを届かせ、位置を固定して、 「あああっ……あ、来る、来てしまうっ……!」 「……んんっ!」 膨らんだ亀頭の先から、三度目の――それでいて量と粘度の増した、飛びっきりの精液を。 びゅるるるっ! びゅる、びゅるっ! 「――ぁ……ああああああっ!」 絶頂によって激しく収縮する膣内から、小さく開いた子宮口目掛けて―― びゅ、びゅる、びゅっ。 「ん……ぁ、あ……」 漏れ出る隙間も許さないほどに、浴びせかけていった。 背中を仰け反らせて達していたリンリが戻ってきたのは、そんなに長い時間の後でもなかった。 エッジに全身を預け、心地よい疲労を味わいながら、彼の耳元に顔を寄せる。 「やっと……二人で昇り詰めることが出来たわね」 その囁きに、唾液まみれになった乳首を口から離したエッジが答える。 「さっきより……ずっと、良かったです……」 「そうね。私も、同じよ……」 はぁ、はぁ、はぁ、と。温泉の音以外には、その呼吸音だけが響いて空間を満たす。 「ねえ……エッジ君」 「……はい?」 「貴方、私の膣内……それも一番奥で精を出したでしょう」 「あ、え……え、その、はい」 それも二度だ。 「あんなところで出したら、私のお腹にしっかりとエッジ君の子種が入ってしまって…… 赤ちゃんが出来てしまうかもしれないのよ……?」 「……それは、その……分かっています」 「それでも……いいの?」 抱くことに夢中になっていた時は考えていなかったが、確かに――それはそうだ。 考えてみれば、とても無責任なことをしてしまったような―― 「それでも……構いません」 ――いや。 何も迷うことなど無かったのではないか。 彼女の全てを受け止めようと、そう誓ったのだ。子供が出来るなら、むしろ望むところでさえある。 「そうしたら……僕、リンリさんと結婚して……」 「……ふふふ」 「大丈夫よ。今日はまだ安全な日だから。 ……それに、鬼の眷属と人の合いの子は、生まれる可能性が零ではないにしても……低い。 一度や二度の膣内射精で、孕むようなことは……あまりないのよ」 「え……」 安心したような、残念なような。何とも言えない気分がエッジを包む。 「……でも、その言葉は本当に嬉しいわ。有難う……エッジ君」 「それは……いいんですけど、でもやっぱり……」 「私を孕ませたかった?」 「……ちょ、ちょっとだけですけど」 答えてから、エッジはしまったと思う。何故なら。 「それなら……もっと沢山、出してくれないとね……?」 リンリが妖しい笑みを浮かべながら、再び腰を動かしはじめて―― 「ま、まだいきなりはっ……」 「……そんなことを言って、もう硬くなってきているのが分かるわよ?」 「あ……そんな……」 ――終わらない温泉浴の予感に、エッジは飲み込まれていくばかりであった。 「…じんさま、ご主人さま」 「……ん……」 「ご主人さまぁ……」 「……ん!?」 気がつくと、そこは温泉から少しはなれた岩場の陰で。 目の前には、心配そうな護衛獣がいる。 「ああ、やっと起きたです……ご主人さまぁ」 「え、僕……どうかなってた?」 涙の蓄えられた目を擦りながら、獣人の少年はこくこくと頷いた。 「はいです。ボクが帰ってきたら、ご主人さまが温泉の外で倒れてたです」 「え……の、のぼせちゃってたのかな?」 「そうみたいです。すっかり赤くなっちゃって、ご主人さま茹でたタコみたいでした」 「そ、そんなに凄かったんだあ……」 戸惑いながら、エッジは疑問に思う。 ――まさか、今のは全て夢? 「……そんな、こと……」 「どうしたですか?」 不思議そうなアーノに、少年は少しばかり必死さを滲ませて、問う。 「僕以外に、誰か見かけなかった!?」 「だ、誰も見てないです」 「……そっか」 エッジはがっくりと肩を落とした。いくらなんでも、あんな夢を見てしまうなんて。 (リンリさんにも失礼だよ、もう……) たまらなく気持ちはよかったが、やはり本人に無断であんな夢はまずい。 (また会えたとしても、今度こそ顔合わせられないよ) ため息とともに思う。 ――だが。 「あ、でも、倒れてたご主人さまの横に、手紙みたいのがあったです」 「……手紙?」 「勝手に読んじゃいけないと思ったですから、まだ中身は見てませんですけど……」 「ほ、本当に!?」 「はい、これです」 ひったくるようにして、アーノが差し出した手紙を見てみる、と。 『あまりリョウガを待たせてもいけないから、私はここで帰ります。 本当はエッジ君が起きるまで待っていたかったのですが、時間が無くなってしまって。 やっぱり、温泉の中で、それも連続で六回もしたのが問題だったのでしょう』 「……夢じゃなかったんだ」 「誰からのですか?」 「ああ、うん、それは……」 生返事をしながら、エッジは先を読み進める。 『だから、今度は五回にしておきましょうね。 その時を楽しみに待っています』 「また会える……そうだよね、しっかり繋がったんだから。 それに……五回、かあ。今度はもっと体力つけておかなくちゃ。」 頬が緩んだ。五回という約束もそうだが、リンリとまた会えるということが素直に嬉しい。 「ご主人さま! 誰のなんですか、その手紙?」 「……うん、リンリさん」 「リンリさんですか! 無事だったんですね!」 「うん、そうだね」 一緒になって喜んでくれるアーノに、エッジはとびきりの笑顔を向けた。 「ご主人さまも元気になったです……やっぱり、温泉は凄いです!」 「……そうかも、ね」 憂鬱の状態から、男の子としての健全な状態へ。 温泉の効能は、しっかりと発揮された――ようであった。 「――ところで、六回とか五回って何のことです?」 「……え」 おしまい。 前へ | 目次 |
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