『箱悪魔』(…!ミツケタゾ…!!) 純粋で高次元の霊気。霊界の存在であることを証明する翼。そして、無垢で無防備な魂!私の寄代としての条件を兼ね備えた、哀れで絶好の獲物! (ソノカラダ、ワガモノトサセテモラウ!) 意識の全てを対象に傾け、相手の魂と脳に干渉する。 自分の意識が相手の全てを組み伏せていくのを感じ、私は安堵した。 どうやら乗り移ることに成功したようだ。力は衰えてはいない。 「ふふふ…。」 声が漏れる。現実の空気を揺らして起こる現象。この世に体を得た証。 「ははは、あーっはっはっはっはっは!!」 帰ってきた!私は帰ってきたのだ!それも、前回の敗北からまったく間を置かずに! 「あはははは!帰ってきましたよ。大悪魔、メルギトス様がねぇ!!」 思い切り叫び、企みがうまくいったのを喜んだ刹那、 記憶が私に復讐を求める。たかだか人間ごときに負わされた屈辱。 「許さん…許さんぞローラーめ!二度どころか三度までもこの私を!しかも、今度はセイバーなどという存在まで現れて屈辱を味合わせてくれましたね!この借り、100万倍にして、魂だけと化しても魔界で辱めてくれましょう!!」 そう、私こそは姦計と虚偽の大悪魔。人間ごときに破られて大人しくしているわけにはいきません。 早速、部下どもを呼び出して、手はずを整えるといたしましょう。 「我は呼ぶ、魔界に眠りし悪魔の魂よ…!」 大悪魔にふさわしい威厳のある声と共に、私は腕を前に突き出します。 腕を…腕を…あれ? 「おかしいですね。腕が伸びませんよ。」 体がまだ完全には慣れていないということでしょうか。 まぁ、いいです。ゆっくりと慣らして動くようにしていけばいい。 そう思い、私はとりあえず詠唱を続けます。 「汝が名はビーニャ!主たるこのメルギトスの名において、リィンバゥムに降り立つがいい!」 魔獣使いの名を呼んで、霊界との接続がなされるのを待ちます。 待ちます。待ち…続けているのですが、何の変化も起こりません。 「おかしいですね…魔力の方も、付いてきていないということでしょうか?」 そんなはずはありません。私が寄代として選んだ者は、確かに高い霊格を備えていたはず。 「羽もこうやって…えっ?」 羽ばたかせてみようとするのですが、羽の感触を感じません。 私が躊躇して足踏みすると、ガチャンガチャンと違和感のある音が。 どうやら、私の足元から、いえ、私の足が鳴らしているようです。 ほんの少しだけ、嫌な予感を覚えながら足元を見てみると…。 「な、何じゃこりゃあああ!?」 足が、足が!機械の足じゃありませんか!!それも粗末な、ブリキの人形のような! 確かに私は機械と融合したこともありますが、こんな粗末なボディに覚えはありません。 それに、私は天使らしき姿を認識して、それに取り憑いたはずなのです。 もしかして、と思いながら、腕を伸ばしてみようとしてみます。 案の定…腕は『伸びない』のではなく、『存在しない』ようです…。 「馬鹿な…一体何の手違いがあってこのような姿に。」 「ふー、良かった。成功成功。」 突然の声に驚いて振り返ると(その時にもガチャンガチャン鳴ります。うう恥ずかしい…)、そこには、私を葬り去った者の一人、豊穣の天使アルミネの転生した者の姿が。 「おやおや、アメルさん。先日の戦いではお世話になりましたね。何が成功されたんです?私にも教えていただきましょうか。」 私は精一杯の余裕を見せようとします。何か非常にまずい事態になっていることは分かっていますが。 私は、復活したこととそれがどうやらうまくいかなかったという衝撃で、周りの状況を確認することすら忘れていました。 周りは木材で構成された小部屋、定期的に揺れる床。ここは…船内か。 「おはようございます、メルギトスさん。あ、ここは、あなたの残りを退治した帰りの船ですよ。私、あなたの召喚にばっちり成功して、とても嬉しいんです。」 私の召喚!?何を言うのでしょう、この元天使の小娘は。 私は自分の意志で…意思で!?まさかこの姿は!? 「お気づきになられました?それ、私がクノンさんから頂いてきたボクスなんです。プログラミングがどうしてもうまくいかなくて、廃棄してあったそうなんですけど。」 終始笑顔で説明する天使。なんということを。愕然とする私に、天使は説明を続けます。 「メルギトスさんのカスラの残りを引き寄せるために、ちょっと私の力を放出してたんです。それで、あなたが来てくれたのを感じて、代わりにその機体を置いておいたんです。」 そ、そんな馬鹿な。私がそんな撒き餌釣りみたいな単純な手に引っかかったと? しかし、確かに最初に見た天使の魂は、この小娘のものと酷似しています。 どうやら、私はまんまと罠にかけられてしまったようですね。 「ふん…中々考えたものです。それで?私を呼び寄せて消滅させるつもりですか。」 罠にはかかってしまいましたが、私のカスラはまだ全て消滅したわけではありません。 この体を消されたとしても、何とか生き残る可能性はあるはず。 そう思い直し、私の心は少しだけ落ち着きました。 「いえ、そんな勿体ないことするはずないじゃないですか。」 は?今何と? 『みんなを苦しめた大悪魔、倒させてもらいます!』とかそういうセリフじゃないですか、ここは。 私が困惑していると、天使はさらに言葉を続けます。 「あなたは、人間の欲望を操ることができますよね。それを、利用させていただきます。」 「ほほう、この私を使う?大胆なことをおっしゃいますね。」 内心驚きましたが、しかし申し出自体は珍しいことではありません。 悪魔の力を利用しようとする人間はどこにでもいるものです。 「しかし、恨みのあるあなたに私がそう簡単に従うと思って…。」 「思っちゃいけないんですか?せっかく私が復活させてあげたのに?」 すぅ、っと部屋の温度が下がった気がしました。殺気!?笑顔のままで? 余裕を消された私の目に、恐ろしいものが映ります。 天使の後ろにチラチラと見えるあれは、あれは、大悪魔の亡骸、パラ=ダリオ! いつの間に召喚していたのか。まずい。非常にまずいですよこれは。 こんな体であの瘴気を受けたら、私の意識ごと消滅してしまいます。 いくら人間の欲望がある限り不死身のこのメルギトスでも、そう何度も何度も消されてたのではたまりません。殺される感覚はあるのですから。 「待ち、待ちなさい!何も従わないとは言っていませんよ。落ち着いて。そう、こんな時っていきなり応じたら何だか癪だし色々要求されるでしょう。ね、お約束って奴ですよお約束。」 私は必死で言い訳をしてしまいました。そんな…私大悪魔なのに…。 自分で言った言葉で傷ついて、なんだか犯されたような気持ちになってしまった私。 「もう、そうなんですか?私てっきり召喚者に逆らう悪い子だと思って、消しちゃおうかなと思っちゃいました。ごめんなさいね。」 ニコ、と、アメルは笑顔を作りました。裏なんて、まったく見えない笑顔なのに…。 「それで、私にさせたいことというのは何です?アメルさん。」 「『さん』?命の恩人の召喚者に『さん』?」 「何でございましょうかアメル様。」 どうやら、プライドは本格的に捨て去らなければいけないようですね。ああ…。 つづく 目次 | |
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