混ぜるな危険 前編常夜の石が作り出した、満天の星空が闇を覆う世界。 いつもそこで、レオンとエイナは旅路の話に花を咲かせていた。 旅先で出会った人たちのことで笑みをこぼし、時には戦いの話で真剣に語り合ったり。 今回もそうして、二人は体の疲れを癒すはず――だったのだが。 「……どうして私が戦ってるときに、むりやり入れ替わろうとしたのよ?」 レオンを睨みつけるエイナの眉が、険しくつり上がっていた。 その表情は怒りとも悲しみともいい難い。 困惑したように顔を伏せ、重いため息をつく彼女に、レオンは思わず唇を噛みしめる。 「仕方ないだろ!?あの時点でお前の体力は限界に来ていたし……ああしなきゃ、お前は魔物にやられちまってたかもしれないんだぞ。だから俺は、とっさに」 「でもっ、それが原因で今の状況になっちゃってるんだよ」 「う……」 「……ごめん。別にレオンを責めてるわけじゃないんだよ。だけど……」 レオンはエイナのことを思って、そうしてくれたのだ。 もしあの時、彼があの行動をとらなければ、今頃エイナは深手を負っていたかもしれない。 ……彼の優しさが、エイナの身を守ってくれたという事実は変わりない。 やり場のない気持ちを胸に、二人はそのまま口をつぐんでいた。 「くそっ!あの魔物がタイミング悪く妙な攻撃しやがったせいで!」 一人吐き捨てるようにつぶやいたレオン。 抱える不安の原因はエイナと同じものの、彼の表情は、彼女のそれとはどこか違っていた。 そんなレオンを困ったように見つめるエイナが、やがて小さく口を開く。 「とにかく……さ。ファイファーに相談してみようよ?何か解決の糸口が見つかるかもしれないし」 「どうかな。お前らで見つけろって言われるんじゃないのか」 「もう、そういうこと言わないでよ」 疲れたように肩をすくめる彼女を、レオンは無言で見つめる。 ――大剣を振りかざす彼に比べ、ほっそりとしたエイナの腕。 彼なら絶対に鬱陶しくなるような、長く艶のある髪の毛。 そして、鍛えられた男の硬い胸板とは正反対の――柔らかい丸みを帯びた胸。 何もかもが自分とは違いすぎる。 それは当然のことなのだが、今のレオンにとって、その違いは彼に多大なる精神的ダメージを与えるものだった。 「ファイファー……」 「うむ?」 獅子ヶ峰の頂上に住まう、一匹の老獅子。 彼のよく知るその声が、入り口から力なく聞こえてくる。 振り向けば、そこにはピンク色の髪の毛が印象的なエイナの姿があった。 「どうしたのだ?エイナ。お前らしくもない顔をして」 「…………」 ファイファーの問いかけにも答えず、エイナは彼のそばへと歩み寄る。 その沈んだ表情が彼の真正面までやってきた時、エイナはようやく口を開いた。 「……じゃない」 震える声が唇からこぼれる。 かすかに聞こえた語尾にファイファーが首を傾げると、エイナは突如、その燃え盛る体に掴みかかった。 「エイナ?」 「違うって言っただろ」 エイナの甘い声色から発されたのは、その音色には不釣合いな言葉。 そのままうつむき、押し黙る彼女の姿はどうにも違和感がある。 状況が飲み込めず、ファイファーがその顔を覗き込んだとき――エイナの瞳が淡い光に揺れた。 「俺……レオン、なんだよ」 「なるほど……。そなたの説明で、大体の事情は飲み込めた」 ファイファーの手料理を、野菜をよけつつ頬張りながら、レオンはこれまでのことをファイファーに説明した。 ――魔物との戦いで体力が限界にきていたエイナを心配し、レオンが入れ替わって表へ出ようとした。 その瞬間に、運悪く魔物がそれを阻む異常効果の攻撃を繰り出したのだ。 おそらく奇跡的な確率での結果だったのだろう。 気がつけば、肉体自体はエイナのそれであるにも関わらず、レオンの精神のみが表へと出現してしまっていた。 特殊な状態のためか、回復道具を使用しても一向に治る気配はない。 おまけにこの状態の間は、二人の共有する意識は遮断され、内側にいる者には外の状況がまったく分からないのだ。 つまり、常夜の石でレオンと会話する以外に、今のエイナに他人と接触する方法はない。 彼女は孤独な世界に閉じ込められた状況となっているのだ。 「このままじゃ、あいつはずっと身動きの出来ない所で一人居続けることになっちまう。……何か治す方法は知らないのか」 「ふむ……。できることなら我も何とかしてやりたいものだが、さすがの我にも分からぬことはある」 「おい!それじゃあエイナはこのままってことかよ!?」 怒りの形相で掴みかかるエイナ――もといレオンに、ファイファーは苦い面持ちで目を伏せた。 「そもそも、そなた達の一心同体という状況自体が特殊きわまりないものなのだ。その原因も分からぬというのに、今の状況を解決する手段など我が知るはずもあるまいて」 「う……」 「……ほれ。今のそなたはエイナの体なのだぞ?いつも朗らかなあの娘に、そんな歪んだ表情をさせてやるな」 ファイファーの言葉に、レオンは自身の体に視線を落とした。 いつも客観的に見る相棒の体を、真上から眺めるのはやはり違和感がある。 ……今は、レオン自身が彼女の肉体の持ち主なのだ。 彼の作った表情が、怒りの怒声が、すべてエイナの姿で表現される。 (……エイナ) いくら焦燥感にかられているとはいえ、毎日明るく微笑む彼女にこんな振る舞いをさせてしまったことが酷く申し訳ない。 「責めて悪かったよ。……アンタだって、エイナに会えないのは辛いはずだよな」 自分の気持ちだけで先走ろうとしたのを恥じ、レオンは小さく息を吐いた。 これは、自分たちに与えられた新たな試練なのかもしれない。 旅の間、お互いの存在に頼り、その存在に無意識に依存していたから。 一刻も早く解決の方法を見つけ出し、エイナの解放と、レオン自身の体を元に戻さなければ。 「邪魔したな、ファイファー。俺、すぐに出発するよ」 「その体はどうするつもりだ?」 「そんなこと、決まってるだろ」 振り返ったレオンは、エイナの大きな瞳でファイファーに微笑みかける。 「放浪者たる者、真実は自分自身で探さなきゃいけない。誰かに解決してもらおうって考えが間違ってたんだ。――俺たち自身で見つけてみせるさ」 「――なんて、自信たっぷりに言い放ってきたのはいいが」 自分たちの状況にも関係なく、アレスパの町は相変わらずのどかだ。 町娘が道端で会話に花を咲かせ、子供たちは無邪気に走り回っている。 とりあえず、白夜の本部に戻って休憩を……と思ったが、それ以降の計画に関してはまったくの白紙だったりする。 (あとで、常夜の石でエイナと話し合――) 「どうしたのですか?エイナさん。そんな辛気臭い顔をして。いつものあなたらしくないのです」 突然背後から聞こえた、鼻にかかる物言いにレオンの口元がひきつる。 振り向けば、そこには訝しげな目線でこちらを見つめるオーレルの姿があった。 「やたら不満を抱えてそうな、その顔!まるで常に不機嫌な面構えをしてる、どこかの誰かさんみたいですよ」 「常に不機嫌な面構えで悪かったな」 「ア、アウッ……!?」 無意識に出た言葉に、レオンは慌てて口を押さえる。 忘れそうになるが、今はエイナの姿なのだ。 事情を話せば早いのだが、他の仕事に追われている彼らに余計な心配はかけたくない。 ただでさえ一つの肉体に二つの存在が入り込んでいるという異常な存在なのだ。 おまけに精神と肉体まで入れ替わって交代不可能になりましたなんてことを話せば、役目をそっちのけで心配し、大騒ぎになる可能性もある。 「いや、オーレル、その……今のはなかったことに」 「エイナさんがこの僕に、あんな言葉を……!今まで僕が調子づいていたことに対して、怒りが爆発したのでしょうか?た、確かに気の弱い僕が唯一大きな態度をとれる相手でしたが、 それは彼女を見下していたからではなく、非常に話しやすい人だったからで、けっしてそんなつもりでは……ブツブツ」 なにやら恒例の独り言が始まったのか、オーレルは壁に向かって何かを話している。 出来る限り面倒ごとは避けたい。レオンはオーレルから逃げるようにその場を立ち去っていった。 (とにかく、ややこしいことは後回しだ。まずは風呂でも入って落ち着いて――) ぴたり、とレオンの足取りが止まった。 ……今、何か爆弾発言を口ずさんだ気がする。 風呂に入って。風呂に――。 「…………風呂」 考えてもいなかった。 今の自分がエイナの肉体を持っているという事を考えれば、これからの様々な行為もすべて、彼女の姿で行わなければならなくなる。 今までは、風呂やトイレに行くときはお互いにあえて意識を遮断していたが……今回ばかりはそうもいかない。 トイレはさきほど、目をつぶって何とか済ませたが……。 「こればっかりは、どうしようもないだろ……」 共同の女湯の脱衣所にて。 さすがにこの姿で男湯に入っていくわけにもいかず、レオンは泣く泣く女湯へと足を踏み入れていた。 みんなが仕事で出払っている時間帯なので、他には誰も居ないにしても。 ……眼前の鏡には、戸惑いに頬を染めたエイナの姿がある。 目をつぶったままの入浴は無理だといっても、彼女に無断で肌を見てしまっていいものだろうか。 「だけど、ずっと風呂に入らずにエイナを汗臭くさせるわけにもいかないしな……」 重く目を伏せる。 心地よい入浴に、これほど思い悩んだことがかつてあっただろうか。 「……ゆ、許してくれよ。エイナ」 ――早く体を洗って風呂を出なければ。 頭の中ではそう思っているのだが、肝心の体がいうことを聞いてくれない。 洗い場で正座したまま、レオンはその身を長時間こわばらせていた。 二の腕に触れる柔らかい二つの感触が、胸を絶え間なく高鳴らせる。 薄っすらと目を開けると、視界にはエイナの白い肌が。 慌てて目を閉じ、また固まってしまう。 万が一のためにと常夜の石を持ってきたが、こんな物が使えるはずもない。 「え、ええいっ!さっさと済ませて服を着れば終わりだっ!」 ヤケになりながらレオンは叫び、頭のてっぺんから湯をかぶる。 鼻に入った水に咳き込みながら顔を上げると、正面の鏡にびっしょりと濡れそぼったエイナの姿があった。 「あ……」 濡れた髪に湯気が重なり、その姿は妙な艶を帯びて見える。 ふと、視線が鏡に映る胸へといった。 特別大きくはないが、エイナのふっくらとした丸い乳房はレオンの視界に鮮明に映し出される。 そのふくらみの中心で、淡く色づいた突起が愛らしく立ち上がっていた。 ――どくん、と胸が震える。 同時に鏡に映るエイナは、頬を紅潮しながら唇を噛んだ。 ……エイナもこういう表情をするのか。 そんなことを考えながら、レオンは慌てて我に返る。 これは自分自身の表情だ。エイナじゃない。エイナがやったんじゃあ――。 そう言い聞かせながらも、視線は再び鏡のほうへ。 こみ上げる妙な感覚に戸惑うエイナの表情が、ひどく可愛く思えてしまう。 「お、おかしいことを考えるなレオンッ。これは俺だぞ!変態か俺はっ……、はぁ……」 ため息とも何とも分からない吐息に、鏡が曇る。 とっさに鏡に近づき曇りを拭くと、間近にエイナの恍惚の表情があった。 「……う」 思わずごくり、と喉が動いた。 ――仕方ないのだ。 (だって、俺は男だぞ。普段は無愛想でも、女の体を見て何も思わないわけがない。それに、今は体を洗わなきゃいけないし、つまり、なんというか) 両手をゆっくりと上げ、レオンは深呼吸を繰り返した。 吐き出す息が、弱々しく震えている。 「体を洗うだけだから、許してくれ……」 手のひらに、みずみずしい感触がじわりと伝わってくる。 同時に、胸のふくらみをほっそりとした指先が愛撫した。 「エイ、ナ……」 鏡には、エイナが自身の乳房を両手で弄ぶ光景が映し出されていた。 エイナの恍惚とした表情に、レオン自身の罪悪感による戸惑いが入り混じっている。 その悩ましげな姿を見つめるレオンの口から、無意識に声が漏れた。 「んっ……はぁ……」 だがそれは、エイナの甘い嬌声で彼の耳へと届く。 レオンが指を動かすたび、声を出すたび、その行動がすべてエイナとして表現されていく。 こちらを見つめるエイナの瞳が、とろんと潤む様子はあまりにも妖艶だ。 (洗うだけ、洗うだけだ……!) 固く目を閉じ、その指がへその下を伝い、ピンク色の茂みの中へと滑り込んでいく。 上気する肌とともに荒くなる呼吸を抑え、乳房を揉みしだきながらもう一方の手を秘所へと進ませていった。 (これが、エイナの……) 割れ目に沿って動かす指に、ぬるぬるとした感触がまとわりつく。 エイナの体を見つめ、愛撫を行ううちに、レオンの意思に従って体が反応を示したのだろう。 溢れる愛液の出所を探り当て、奥へと続く道に指をあてがう。 ……正直、もう迷いなどなかったのかもしれない。 指先を飲み込んでいくエイナの肉襞は、多少の抵抗感はあるものの、愛液のおかげで痛みもなく受け入れていった。 ピストンを繰り返すたびに粘着質な水音が浴室に響き、レオンの感情を昂ぶらせていく。 「んふっ、あぅっ……!」 どれだけ喘ごうと、聞こえるのはエイナの甘く上擦った声だけ。 これが自分の声なら途中で我に返ることも可能だったかもしれない。 しかし淫らに悶えているのはエイナの体だ。 膣肉をかき回しながら、立ち上がった陰核を指で押しつぶし、その感覚に嬌声を上げる。 「え、エイナッ、悪い、本当にすまない……けどっ……」 心の中で何度も謝るが、その体は乱れることをやめられなかった。 エイナの体をむさぼるたびに、指は男の快感を覚え、体には女の未知の快感が絶え間なく押し寄せる。 本来なら一方の感覚しか知ることのできないものが、今はそのどちらもを楽しむことができる。 「もうすぐ、終わるっ、からっ……あぁっ」 両方の快楽に溺れながら、「エイナ」の嬌声がひときわ激しさを増したあと――レオンはくたりとその場に崩れ落ちた。 「はぁ、はぁっ……」 ……果ててしまった。 しかも、エイナの体を使って。 全身を襲う脱力感に力なく息を吐き、レオンは冷たいタイルに頬を押し付ける。 火照った体はまだ疼くのか、秘所から蜜を溢れさせていた。 ……エイナの知らないところで、彼女の体を弄んでしまった。 今頃になって、その事実がレオンの心に重くのしかかる。 「と……とにかく、体をちゃんと綺麗にしないと」 肩で息を繰り返しながら、だるい体を起こそうとしたとき。 「エイナおねえちゃん、なにやってるの?」 つづく 目次 | 次へ |
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