大きなアメルの木の下で「アメル……」 彼女が巡りの大樹へと姿を変えてから、もう随分と時を経た気がする。 いつか彼女がここへ戻ってくる日が来るはずだ――そう自分に言い聞かせながら、マグナはアメルを待ち続けていた。 彼女がいないのは寂しいが、一度もそれを悲しいと思ったことはない。 (アメルは……消えたわけじゃないもんな) 自分の隣にはいなくても、彼女は今もこうやってマグナを見守り続けてくれている。 見上げれば、そこにはいつもと変わりのない青々と茂った大樹の姿がある。 木漏れ日の優しい暖かさは、初めて彼女と出会ったときのことを思い出させた。 (いきなり木の上から降ってきてさ……。ははっ、そういやアメルって、結構おてんばだったんだよな) ――過去のことを思い返せば思い返すほど、胸の内に溢れてくるのは愛しい人への届かぬ想いばかりだ。 まだ戻ってきてくれないのか。それとも、もうここに戻ってくることはないのか。 ネスティやハサハたちの前では強がっていても、先の見えない今の状況に耐え続けるマグナの精神は、いつしか脆く崩れようとしていた。 ……木漏れ日を見つめる視界が、突然揺れる。 上を向いているからこぼれはしないものの、きっと瞳には涙が溢れているのだろう。 そっ、と木に手を当てる。 「アメルッ……俺、もう耐えられないよ。限界なんだっ。君が帰ってこないと、このままじゃ、俺……」 固くまぶたを閉ざすと、大粒の涙がぽたぽたと滴り落ちた。 (君がいないとっ……) 「俺はっ……一生、 童 貞 なんだぞっ!!!」 マグナの悲痛な絶叫に、森の鳥たちが一斉に飛び立つ。 「なあ、分かってるのかよアメル!?俺は君じゃなきゃ駄目なんだ!この世界で一番愛してるのは君なんだ!君を裏切りたくないんだよ!!」 幹を乱暴に叩き、一心不乱に叫びながら嗚咽をあげるマグナ。 「君のために操を立てて、俺はいつも寂しくオナニー三昧だ!空想の世界では君が恋人!現実では右手が恋人!!こんなの健康優良児に対してあんまりじゃないか!!」 脳裏に思い浮かぶのは、彼の周りを取り囲む、多種多様の魅力的な女性たちの姿だった。 『こんにちは、マグナさん。調子はどうです?今日はバイト先の新作ケーキを持ってきたんですよ。さっ、おひとついかがですか?』 「俺はそんなケーキなんかより、アンタのこれみよがしな乳と太ももに生クリームを塗りたくって女体ケーキを作りてぇよパッフェルさんっ!くそっ、クソォッ!!」 『おにいちゃん……元気だして?おにいちゃんが悲しい顔してると、ハサハ……』 「あああなんて可愛いんだよハサハぁっ!!俺だってお前の可愛い顔を曇らせたくないんだよ!ほらっ、お前の大好きなおいなりさんだぞ!?そのちっちゃなお口で一生懸命ほおばるんだ!そうすればおにいちゃんは満面の笑顔だ!!」 『なんて顔してんのさ!そんなシケた面してると、アメルに笑われちまうよ?そうだ。気分転換に道場で相手してくれないかい?』 「モーリンッ!この俺をそんなあからさまに誘惑してきやがって!よし、俺の寝技を嫌というほどその体に教え込んでやる!」 『最近ずっとここにいるけど、勉強はどうなの?なんなら、先輩が教えてあげましょうか?』 「ええ教えてください!身も心もとろけるほどのオトナのテクを俺に教えてください!今の俺のならミモザ先輩のメガネも顔もその巨乳も真っ白にしちゃいますから!!」 『今度、自由騎士団を設立しようと』 「お前はいい!!」 「――はぁ、はぁ……」 ひたすら絶叫し、力尽きたように肩で息をするマグナだが、溜まりに溜まった欲求は治まることを知らないらしい。 ふと俯けば、彼の下半身はズボンの下から頭をもたげ、ファスナーを押し上げていた。 ここのところ、少しでも妙な想像をするだけで彼の下半身は反応を示すようになってきているようだ。 「見てくれよ、アメル……。ちょっと君のことを考えただけで、この有様なんだ」 力なく肩を落とし、マグナは重いため息をはく。 こんな近くにいるのに、心から愛する女性は物言わぬ木となって静かに立ち続けている。 通じ合えない心は二人の距離を遠ざけているような気がした。 「俺たち、いつになったら結ばれるんだろうな……?」 小さなつぶやきは、森を駆け抜ける風のざわめきにかき消されていた。 ――そんな彼の目の前を、一匹の小鳥が舞う。 食料を探しに来たのか、小鳥は大樹のくぼみに忍び込むと、なにやら探りだす。 しばらくして小鳥は一匹のミミズを咥えながら、空へと飛び立っていった。 「鳥……ミミズ……穴……」 「マグナはまだ戻ってきていないのか?」 食事の支度を始めたネスティが、ひとりポツンと座っていたハサハに声をかける。 こくんと頷く彼女を見て、ネスティは目を伏せると小さく息を吐いた。 「まったく、しょうがない奴だな……」 「でも、おにいちゃんはアメルおねえちゃんを心配して」 「それは分かってるさ。だが、そうやって自己管理をおろそかにされては、僕も兄弟子として心配しないわけにはいかないだろう」 巡りの大樹を守る番人となってから、マグナは頻繁な外出のために、風邪を引いたり食事を抜いたりすることが多くなっていた。 それだけ彼がアメルを想っているということなのだろうが……。 「以前に比べて、あいつはずいぶん痩せてきていると思わないか」 大樹を守るだけでなく、ある意味マグナの子守まで担っているネスティにしてみれば、これ以上重荷を背負いたくはなかった。 体調を崩して寝込まれる前に、なんとしてもマグナの生活を正さなければ。 「ハサハ。一緒にマグナを迎えに行こうか」 「うん……」 ネスティが差し伸べた手に、ハサハは嬉しそうに頷いていた。 さわさわとゆれる木の葉に、小鳥たちの心地よいさえずり。 木の実を抱えた小動物が、のどかな森を軽快に駆け回る。 そんな平和な光景が――再び悪夢に見舞われた。 「キイィ――――ッ!!」 「ギギィッ!?」 ただならぬ気を感じ取ったのか、彼らは地面を転がり、木の幹にぶつかりながら逃げ惑う。 レルムの村を彷彿とする、新たな悲劇の再来か。 森の中で規則的に響く謎の音。それは途切れることはなく、ますますその音を早めていく。 謎の音の発生源とは――。 「うおおおぉぉぉっ!!アメルウゥゥ――ッ!!!」 巡りの大樹。アメルの分身。 マグナはそれに抱きつき、頭をもたげた自身の一部を木のくぼみへと打ち込んでいた。 絶望の淵から遂に幻覚を見始めたのか。 それとも、真剣に狂っているのか。 「こうすればっ、君と結ばれることが……できるじゃないか!俺って案外賢いな!」 真剣にバカだった。 (くそっ……バカとでも変態とでも好きなように罵れ!俺以外の奴に、この辛い気持ちが分かってたまるか!) 手の届かないところにいる女性を一途に想い、近くの数多の女性には手を出せない歯がゆさ。 盛りのついた若い男が、右手だけで性の快楽を堪能するなど不可能なのだ。 (ああ、アメルッ。木の幹はこんなに堅くてザラザラだけど、君の体はきっと柔らかいんだろうなあ……) 思い浮かぶのは、ベッドの上で白い肢体をさらけ出した、愛しいアメルの姿。 胸を両手で押さえながら、恥ずかしそうにこちらを見つめている。 小ぶりなお椀型の胸の先には、ピンク色の小さな突起がついていて……。 「下半身には、きっとまだ誰も知らないはずの、アメルの大事な部分が……部分がぁっ!!」 「……おにいちゃん?」 「ハサハ……そっとしておいてやるんだ。むしろ、見なかったことにしろ……」 木のくぼみに下半身を打ちつける弟弟子の姿を背に、ネスティは静かにその場を立ち去っていた。 時は流れ、アメルが大樹になってから季節は二度巡っていた。 マグナの信じる思いが奇跡を起こしたのか、待ち続けたそれは――遂に現実のものとなった。 「おはようございます、マグナ……」 「ア、アメル……!?」 目の前にいるのは、二年前のときと何も変わらないアメルの姿。 ただ違うところがあるとすれば、彼女は一糸纏わぬ姿でいるというところか。 思わず肌を手で覆い、うずくまるアメルにネスティは慌てて立ち上がる。 「なにか彼女に着るものと、あと皆を呼んでくる!マグナはそばについていてやれ」 「ああ、わかった」 走っていくネスティの後姿を見送ったあと、マグナはちらりと視線をアメルへ向けた。 同時に視線がぶつかり、彼は思わず視線を逸らす。 静かな場所にたった二人っきり。おまけにアメルのほうは裸なのだ。 あれほど心の中で求めていたものが目の前にあるというのに、人間はいざとなるとそれに手を出せなくなってしまうらしい。 「マグナ。あたしを見てください」 「えっ……」 振り返った瞬間、彼の体を柔らかいものが包み込んだ。 栗色の髪の毛が、マグナの喉をさらりとくすぐる。 ……アメルが抱きついてきている。その状況を理解するのにそう時間はかからなかった。 「もっと、あたしの存在を確かめてください。不安なんです。マグナに触れないと、これが現実なのかどうか分からないから」 「アメル……」 それはマグナにしても同じことだった。 二年もの間、確信もなく彼女の帰りを待ち焦がれていたのだから。 ようやく舞い戻ってきた天使をそっと腕に包み込み、マグナは感動の余韻に浸った。 夢の中で、妄想の中で何度も見たアメルの素肌。 それは彼が思い描いていたものと同じ、白く滑らかなものだった。 ――彼女はここにいる。柔らかくて、温かくて、優しい彼女が。 (アメルが……ついに俺のところに……) どくどくと鼓動が高鳴る。 来た。ついに来たのだ。 二年間における地獄の自慰生活に終止符が打たれる日が。 「アメルッ、好きだアメルッ!!」 「はい、あたしも……んっ!」 彼女の言葉が終わる前に、その唇はマグナに塞がれた。 柔らかく甘い感触をより求めるように、マグナは激しく唇に吸い付く。 最初はうろたえ、されるがままに固まっていたアメルだが、この場の雰囲気と彼の感極まったらしき感情を読み取ったのだろう。 「んふっ……は……。マ、グナ……」 頬を染めながら、ぎこちなく自分からも彼を求め、深く唇を重ねようとしていた。 ……急な行動に対しても、アメルは意外にまんざらではなさそうだ。 上昇していく彼女の体温を感じながら、マグナの脳内では次の段階への構想が着々と練られていく。 「俺の前で隠さないでよ。君の綺麗な体、もっとよく見たいんだ」 「え……あっ!?」 返事を待たず、マグナはアメルを芝生の上へと押し倒した。 その衝撃に、彼女の乳房がぷるんと揺れる。 わずかに開いた足の間からは――ほんのりと赤みを帯びた、秘所が顔を覗かせていた。 「は……」 アメルのすべてが眼前にさらけ出され、マグナは思わず息を呑む。 明るい日差しの下での、まばゆいばかりの健康美だった。 「す、凄いよっ。俺、こんなの初めて見た……」 丸い乳房を手に取り、中心の突起を無心でしゃぶり、残りの手は断りもなく彼女の足の間に伸びていく。 「まっ、待ってマグナ!?そんな、いきなり……」 強引な彼の行為に戸惑いは隠せなかったが、触れる感触は羽根のように軽く優しい。 次第に火照っていく肌とともに、じわじわと体を支配する快楽はアメルの思考を溶かしていった。 「はぁ……ん……」 ぼんやりと焦点の定まらない視界に、至福の笑みを浮かべたマグナが写っている。 彼の顔がアメルの耳元へと近づいたとき、それは発言された。 「ごめん、アメル。今ここで……君を抱きたいんだ」 「えっ……?それは――って、きゃあっ!?」 アメルの両足を開き、覆いかぶさるマグナは高速の勢いでベルトを外し、ファスナーを下ろしていく。 健康な成人男子がここまで行為を続け、途中放棄などできるわけがない。 頬を真っ赤にしながら首を振るアメルに熱く唇を重ねると、マグナはズボンの中から男の証を取り出した。 「んっ……、マグナ、あたしっ……」 「だ、大丈夫!調律者の名にかけて、君に痛い思いはさせないよ!」 興奮しつつ、ガチガチに全身を強張らせながら、マグナはいきり立ったそれを彼女にあてがう……はずだった。 「……あ、あれ?」 どういうことだろう。 手に握りこんだそれは、普段と変わりない姿でぐったりと萎えていた。 彼女を抱きたいと思っているはずなのに、心とは裏腹に、下半身はまったく反応を示していなかったのだ。 さすがにアメルも疑問を抱いたのか、遠慮がちに彼の下半身を見つめ、小首をかしげる。 「あの……こういう時って、普通は硬くなってたりするんですよね?」 「あ、ああ。そのはずなんだけど」 それなら、どうして今はこんな状態になっているのだろう。 アメルが戻ってくるまでは、この下半身は充分に機能していたはずだ。 いつもアメルを想いながら、ある日から巡りの大樹を彼女の体と考え、その幹の穴にヤケになって突っ込み続けていた。 そう、たびたび思い立っては、あの大樹のくぼみに欲望のたけを吐き出して――。 「…………大樹」 「あっ!?よかった。大きくなりましたよ、マグナ!」 「…………………………」 つう、とマグナのこめかみを、冷たいものが流れ落ちていった。 (も、もしかして俺は……) 「ねえマグナ。あたし、不思議なんです。木になっていたときの記憶は全然ないのに、あなたがすごく身近にいてくれた感覚だけは残ってるんです」 「………………」 「しかも、その感覚が、なんていうか……凄く恥ずかしいのに、なんだか気持ちよくって……やだっ、あたしったら恥ずかしいこと言って。嫌わないでくださいねっ」 「………………」 アメルと再開した日の夜、ネスティは自室でいつも通りに勉学に励んでいた。 弟弟子は今頃、恋人と一緒にどこかに出かけてでもいるのだろうか。 澄んだ星空を窓から見上げ、静かに笑みを浮かべたそのとき。 「ネスウゥッ!!俺にっ精神鑑定をっ!!病気を治してくれっ!!」 「なっ!?」 ドアを蹴り飛ばして侵入してきたマグナに驚き、ネスティは椅子から滑り落ちた。 「そんな古いギャグやってる場合じゃないだろ!?この俺が病気だっていうのに!!」 「病気って……なんの病気だ」 「巡りの大樹勃起症」 「君はバカか」 「ああそうだよ俺はバカだよ!!人として最低の人間だよ!!」 突然わけもわからず泣き崩れるマグナに、ネスティが疲れたように息を吐く。 「とにかく話してみろ。君の言う……なんとか症のことを」 「本当に君は……何年たっても大バカだな」 マグナから事情を聞き、ネスティの口からはもはやため息すら出ることはなかった。 彼が巡りの大樹にナニかをしていたことは密かに知っていた。 しかし、まさかそれから性欲の対象が、アメルから大樹へと切り替わってしまっていたとは。 「アメルのことはちゃんと好きなんだ!体に触れたいし、キスだってしたい。でも、なぜか勃たないんだよ!」 「自業自得だ。神聖な大樹を汚すようなマネをするから、そういうことになる」 冷たい兄弟子の言葉に、がっくりと肩を落とすマグナ。 しかし、次の瞬間マグナは思い立ったように顔を上げた。 「じゃあさ、これからアメルとそういうことをする時は、前戯はアメルで、本番は大樹を思い浮かべながらするっていうのはどうかな!?これならきっと大丈夫だ!」 「まあ。ナイスアイディアですね」 「そうだろ!?ネスもたまには俺の意見に賛どおおおぉぉおっ!!?」 いつの間にかドアの前に立っていたアメルの姿に、マグナは奇声を上げて飛び退く。 「凄い驚きようですね?あたしはただ、あんなことをしてる最中に、血相を変えて帰ったマグナを心配して来たんですけど」 おそらくマグナは、二度目の行為でも反応を示さない下半身に確信を抱いたのだろう。 満面の笑顔で言うアメルだが、そのこめかみには彼女からは想像もつかないような太い青筋が浮き上がっていた。 ……確実に内容を聞かれている。 助けを求めてネスティを見れば、彼は必死に何食わぬ顔を作り勉強を再開していた。 ――ふっと、マグナの正面をアメルの影が覆う。 「……ア、アメル……」 晴天の下、復興作業を始めたレルムの村には芋畑が作られていた。 アメルが戻ってきたときのために用意していたものと、彼女が作り始めた畑だ。 「アニキ。こんなに芋の畑ばっかり作ってどうするつもりだよ」 「そういうなよ、リューグ。いいじゃないか。アメルの芋料理は絶品なんだからさ」 ざくざくと耕しながら、口を尖らせてリューグがつぶやいている。 「そうはいっても、当のアメルはあんな様子だぜ?」 リューグが指差した先をロッカが見ると……そこには思いがけない状況が繰り広げられていた。 「マグナ。腕の振りが甘いですよ。腰に力も入っていません。日が暮れますよ」 「は、はいっ……」 「返事はきちんと」 「はいっ!!」 「な、なんだ?あれは……」 「まるでどこぞの刑務所の、囚人と監視員みてぇだな」 アメルが立つ横で、マグナは彼女の指示を受けながら必死で畑を耕していた。 理由はもちろん、大樹となったアメルの体にあんなことをしでかした罰である。 彼女に別れを切り出されはしなかったものの、許す条件として、一ヶ月この畑の世話をするハメになってしまった。 「はぁ、はぁ……」 「もう疲れちゃったんですか?ダメですよ、そんなんじゃ」 「そ、そんなこと言ったって、さっきから休みナシだぞ!?」 全身から汗を流すマグナを見つめながら、アメルは口元にわずかな笑みを浮かべる。 そっと顔をマグナに近づけると、彼の耳に甘い吐息が吹きかかった。 「夜になったら……あたしの相手もして貰うつもりなんですからね?」 「!?」 彼女の口から発された大胆な言葉に、思わずクワを持つ手が止まった。 相手というのは、やっぱり……。 「アメル、それって」 「あたしを見てちゃんと抱けるようになるまで、何度でもチャレンジして貰いますから」 「なっ……あ……」 小悪魔のような上目遣いの笑みが、マグナを見上げる。 顔面を紅潮させながらぱくぱくと口を開いたのち、彼は瞬時に顔を引き締めた。 「よしっ!!このマグナ=クレスメント、即行で畑を耕し尽くしてやるぞーっ!!」 「おい、アニキ。今度はマグナの奴、ものすげえ勢いでクワを振り始めたぞ」 「はははっ。明日は全身筋肉痛だね」 ――双子のささやき声も意識せず、マグナは一心不乱で畑を耕し続ける。 すべては愛しいアメルのために。 (俺はアメルのことが大好きなんだ!!昼間は畑を耕して、夜はアメルという名の畑で種を蒔くんだよ!!) 鼻息荒くクワを振り回し、ふとアメルを見る。 目が合うと、彼女は笑顔を浮かべていた。 それは以前と変わることのない、優しく温かい微笑みだ。 ――体は反応しなくても、この心だけはいつもそんな彼女にときめいている。 それならば、体の調子を取り戻すことだって絶対に可能なはずだ。 「目指せ、種まき!!」 「とりあえずは、畑を耕してくださいね」 「ああっ、もちろんさ!!」 その後、リィンバウムでネスティの頭を悩ませるマグナ2号が産声を上げるが……それはまた別の話である。 おわり 目次 |
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