鍵と社会の窓は確認を忘れるな時刻はそろそろ日付が変わる頃か。 ハヤトはベッドに転がり、読んでいた本──と言うかテキストをぽいと投げ出した。 内容は彼のパートナーが用意した『この世界』の語学の勉強用の物。……お子様用のだが。 最初は話せるんだからいーじゃん、とか思っていたが 『やっだー。字が書けないのって3歳くらいまでだよねー』 などと言われてはさすがにヘコむ。 「……とは言え、英語で詰まってるような俺には先の長い話だなー」 そうまで言うならちゃんと教えろよ、と言ってみれば渋々ながら教師役を引き受けた彼女だが、課題をどさりと積んであと放置、は無いのではなかろうか。 もうちょっとこう、サービス精神溢れてしかるべきではないのか。 例えば…… などと考えていると。アレだ。察しろ。 一つ屋根の下に年頃の女性が多くいたりすると色々思う所もあるのだ。 まあ結局自分で処理することになるのだが。 ええい、無駄に健康な体め。すぐ楽にしてやる……。 「……はぁ。やれやれ」 何やらかなり虚しくなってきたが、体を起こしてズボンを下ろし、ナニの準備。 さて── 「ねぇ、ちょっといい?」 ひみつその1:よくノックを忘れたりするドジっ娘。ドジも愛嬌と笑って~♪ 空気が固体化したような気まずい沈黙。 アタシ ゲドウショウカンシ コンゴトモ ヨロシク。 ──もとい、目が点になっている少女。 その場で唯一動いているドアはのろのろと戻って行き、ぱたんと乾いた音を立てて彼女の姿を隠したのであった。 廊下では、ネコ柄パジャマの少女が必死に動揺を押し殺していた。 (……落ち着くのよあたし。今のは何かの見間違いなの。ていうか大人としては見間違いにしてあげるのがやさしさなの) 全米が泣いた。このやさしさを賞賛せよ。 それからおよそ2~3分。これだけ待てばいいだろう。 再度ノブをひねって、足を踏み入れる。 「ねぇ、ちょっと──」 さっきのは無かったのよとばかりにトレースしたような動きで部屋に入り 「──何で出しっぱなしなのよ!」 彼女の──カシスの右腕から、烈火の勢いで投擲されたサモナイト石がハヤトの顔面に突き刺さった。 「ハイ、終わり」 ×の字に絆創膏を貼り付けられたハヤトの鼻をぺしんとはたく。 彼女、いささか不機嫌な様子──なのも無理はない。2連コンボだし。 突然のことで上も下も硬直してたんだ、と言い訳してみれば、それで上手いこと言ったつもり!? と火に油を注ぐ結果に終わった。 「それはともかく、何の用だったんだ?」 「──あ、そうそう。話があるんだったわ」 む。こんな時間にわざわざやってくるとはさぞかし重要な話に違いない。 カシスの口から切り出される言葉を待ち── 待って── 「──おい」 あさっての方を向いて目が泳いでいるカシス。 「もしかして……」 それ以上を言わせず、カシスの怒りが炸裂した。 「仕方ないでしょ!? ショックで記憶が飛んだのよすぽーんと!」 「俺のせいか!?」 すぽーんとひっぱたかれるハヤトの頭。 さすがに理不尽な思いが強くなったのか、珍しくハヤトがカシスに食って掛かる。 「そうは言うがなー。お前、見られたこっちの方が被害者だろ普通」 しかも見られた瞬間がアレだ。素っ裸見られた方がまだマシと言える。 「だいたい初めてってわけじゃないだろ。一度は、その……事に及んでるんだし」 「……っ!」 『その時』を思い出したのか、かぁっと顔が紅くなるカシス。 確かに、やや雰囲気に流されたきらいはあるが、望んで一夜を共に過ごした事はあった。 「でっ、でも……あのときは暗かったし……その……」 体をもじもじとさせながら、だんだん声が小さくなっていく。 まあこっちもあの時は頭がいっぱいでじっくり見る余裕無かったけど。 「ああもぅっ! いーじゃないそんなこと!」 逆ギレか。 「大したことじゃないでしょ! 細かいこと気にしちゃダメよ! ちょっと見られたからって別に死ぬわけじゃないし!」 「ふーん。じゃ、お前も見せてみろよ。大したことじゃないなら」 「へ?」 ひみつその2:時々迂闊なほどうっかり属性展開。 「ばばばバカなこと言わないでよ! 何であたしがそんな──」 「あー、ひょっとして人には見せらんないくらい凄いことになってたりするのか? 俺の知らない内にキバでも生えたとか」 「どこの妖怪よそれは!? さらっと失礼なこと言わないでよ! ごくフツーよフツー!」 「ならいーじゃん」 「そ、それとこれとは……!」 テンション下げたり上げたりの連続でテンパり気味なカシスに対して、にこにこと笑う必殺ハヤトスマイル。 もはや勝負とかそれ以前になってたり。 そんな彼女の周囲で見せろ見せろとさらに煽り立てるハヤト。 「──っ! ほ、ホントにちょっとだけだからね……!」 ![]() 「5m以上離れて! あと触ったら手加減抜きで吹っ飛ばすから」 「……いや、この部屋で5mは無理だろ」 結局カシスはベッドの上、ハヤトは反対側の壁にもたれて座り込んだ。 へたり込むように座ったカシスは、ちらちらとハヤトの方を気にしながらふるえる右手をズボンの下へ── 「下脱いで」 ぎしっ、とカシスの体が硬直する。何その死刑宣告。 「じょっ、じょーだんでしょ!? これ以上……」 「俺ってどんなカッコ見られたっけ」 しれっと言うハヤトに、きりきりと歯噛みし、どうしてもイヤだと主張する彼女。 協議の結果、『パンツは脱がない』で妥協することに。 裸も見たかったが、今回は羞恥に堪える顔を見せてもらうのが目的なのでOKとする。 「後で覚えてなさいよ……!」 涙目になりながらするっとネコ柄パジャマの下から足を抜き、その場に落とす。 裾を両手で押さえて隠そうとしているが、白い脚と純白の下着がちらちらとのぞく。 いかん、凄まじい破壊力だ。 カシスは改めてベッドに腰掛け、ためらいがちに右手が下着の中へ入れていき 「んっ!」 手が一瞬止まり──下着に隠れて見えないが『何か』に触れたのだろう──びくっと小さく震えた。 下着の中でもぞもぞと手が動くたび、体は小刻みに震え、閉じた唇から抑えた声が漏れ出す。 「んっ……はぁっ……」 だんだんと少女の声に艶が帯びてくる。野郎の方はごくりと生唾飲み込んだり。 「あぁっ!」 ひときわ大きく背を反らすと、そのまま背中からベッドに倒れ込んだ。 いやとても良い物を見せてもらいました。いろんな意味でとても盛り上がってきた。 もう十分だから服着て──と、声を掛けようとすると 「やっ……ぁっ……!」 まだ手が動いてる。 ベッドの上で横になり、猫のように背中を丸めて。 あの、もう良いんですが、と頭では思っても言えないのだ男として。 こちらが見ていることなどもはや頭には無いのか、手の動きがだんだん複雑になってきたり。 ぴったり閉じた脚で少し隠れてはいるが、下着がやや透けているような。 くりくりといじり回すだけだった指も、次第にちゅくちゅくと水音を立てながら飲み込まれるような動きになり── 「んっ……ああっ……はやとぉ……」 ごふっ。 いやそこで名前を……ッ! 「っ!」 はっと我に返り、己の愚を悟るカシス。 上気して赤くなっていた頬がみるみる紅く染まっていく。 「あっ……い、今のは……。ち、違うの……あの、その……」 ベッドの上を後退りながら、ぶんぶんと手を振り否定を示すカシス。 ばすん、と頭の中で音がする。 スイッチが入ったというか、『理性』と書かれたブレーカーが落ちたというか。 むしろリミッター解除とかV-MAX発動とか。 「もー我慢できるかー!!」 朝のコーンフレークなど眼中に入らんほど、青少年の我慢限界値を大幅に突破。カシスに向かって飛びかかる。 「ちょっ、ダメーっ! 伏せ!おすわり!待て!テテ!」 「誰がテテだ!」 もうゆるさん!(性的な意味で)とばかりに光速のタックルで吶喊する。 カウンターを打ち込まれる前に一気に襲い掛かる『電撃奇襲(ブリッツ)』だ。 いつも吹っ飛ばされているが、単純な力比べならそもそも勝負にすらならない。 腰に抱きついたままベッドに押し倒し、すりすりと胸に顔をすりつける。 「や、やだ……ちょっと……! ひゃん!」 薄布を通して柔らかい感触が伝わってくる。 ぺたんことか思われがちだが、手のひらサイズくらいにはあるのだ。 火照った体に、うっすらと汗ばんだ女の匂いが性欲を持て余す。 カシスの腕は懸命に押し返そうとするが、力がまるで入らず対抗できない。 そうこうしている内にハヤトはカシスの両腕を押さえつけて組み伏せ、はぁはぁと獣のように息を荒らげる。 もはや抑えることなど不可能。一気に── 「……いたい。やさしくしてよ、バカ……」 ──ずきゅーん── 何かが胸のあたりを撃ち抜いていった。 ひみつその3:直球に弱い ……って途中から俺のになってないか!? 胸に風穴が開いたおかげかはわからないが、猛烈に熱暴走していた頭が少しだけ冷えてくれた。 いつもならThat's はいぱーてんしょんなところを踏み止まる。 彼女を傷付けることだけは避けたいのだ。 さっきさんざんからかって遊んでたじゃねーかと突っ込まれるだろうが、 そこはそれ、日頃いじめられている分の意趣返しというかかわいい仕返しである。 ……とは言え、さすがにやりすぎた。 本当に泣かれでもしたら非常に困る。 「……その、悪かった。もうやめとくからできれば召喚術とかは使わない方向で──」 拘束した腕を放し、謝りながらお仕置きの軽減を訴え── 「……別に、イヤじゃ、ないけど」 あれ。 「え? あの、今なんて……?」 「だから、やさしくしてって言ったのよ……! 前の時はすっごい痛かったんだから……」 蚊の鳴くような声で何度も言わせないでよ、と赤い顔がそっぽを向く。 素晴らしいほど的確にツボを突かれる。お前の理性はあと3秒だ。 「お前がいいなら、俺の方はやめる理由なんてないわけだし。まあ前の時は初めてだったからな。今度はそこまで痛くないと思う。……多分」 「……不安になるようなこと言わないでよ」 力抜いた方がいいぞ、と軽く合わせる程度のキスをする。 「……もっと」 何かねだられた。 カシスの腕が首の後ろに回り、ぐっと引き寄せられる。 「ん……ちゅ……」 たっぷり30秒ほど深く唇を重ねる。 二人とも良い具合に力が抜けたようだ。男の一部除いて。 色々あってぐっしょりと重くなった下着に手を掛けと、カシスがわずかに腰を浮かせてくれる。 恥ずかしそうな顔を堪能しつつ、ゆっくりとずり下ろしていく。 そのまま片足だけ引き抜かせ、膝のあたりに引っかけておく。 「……何で片足だけ?」 「そういうもんだろ」 上は乱れたパジャマ、下は素っ裸と何ともたまらない姿。 見てるだけで満ち足りるというかあふれてくる感じだ。 ハヤトはいそいそとズボンを下ろし、すでにあふれそうなそれを取り出してカシスにあてがう。 そしてぐっ、と身を沈め── 「んに゛ゃぁぁ!?」 ずるっと一気に奥まで入ってしまった。狭い壁に締め付けられ、背筋にぞくりとした感覚が走る。 「……っ。だ、大丈夫か……?」 カシスは肩で荒い息をつきながら 「……はぁ、はぁ……危うく意識が飛ぶとこだったわ……。 優しくって、言ったじゃない……」 「わ、悪い。前はなかなか入らなかったから、つい力が入っちまって……」 前の時は初めてだったし、今回は万端すぎるほど『準備』されていたのを失念していた。 そのままカシスの息が整うまで待ち、慣らすようにゆっくりと動かし始める。 「んっ……んぅっ……」 十分にほぐれて濡れていることもあり、前はがっちりと挟み込むようだったそこは 今は何というか吸い付くような感じになっている。 一人で色々やってたなこいつめ、などと邪推してしまう。 そしてほどなく 「ふぅっ……んっ……もう、いいよ……。だいぶ楽になったし……」 そうですか。 「じゃ、遠慮無く」 ハヤトは繋がったままカシスの体を抱え上げ、半回転させてとすんとベッドに下ろした。 カシスは投げ出される体を両腕と膝で支え── 「やっ……こんな恥ずかしいカッコ……!」 実に恥ずかし乙女。普段は見えない彼女が見えたような気分になる。 「ね、ねぇ……さすがにこーいうカッコはやめ──ひぁっ!」 ぐいっと深く腰を突き入れる。 「ちょっ……!やめ、……ひんっ!ぁんっ!」 まさに外道。もはや聞く耳持たず今まで溜まった分を一気に叩き付ける。 ごりごりと根本まで深く突き刺し、一気に引き抜く。 挿入のたびに互いの腿がぶつかり、ぱんぱんと乾いた音を立てる。 「やだっ!……やっ!……あぁっ!」 「……やだやだ言いながら腰を振ってるのはどうかと思うんだが」 気まぐれに動きを止めてみると、くねくねと動く目の前の腰。 「……ふぇ?」 腰の動きが止まると同時に、後ろからでも分かるほど耳が真っ赤になる。 「やーい、エロ娘ー」 耳元に近づき、やや棒読み口調で囁いてやる。 ぼふっ、と湯気が出そうなほどに熱くなるカシスの顔。 顔から火が出るとか言うが、火炎放射くらいしそうな勢いだ。 「てい」 頬を赤く染めたまま、深々と刺さったままの腰をぐりっと捻るカシス。 痛さより、急な刺激に危うく暴発しそうになる。 「余計なことは言わないでいいから」 「……わかった。じゃあこれからはお前をもぉめっちゃくちゃにすることだけに集中する」 「ちょっと、さわやかな顔して何さらっととんでもないこと口走──んぁっ!」 またも上がる声を遮る形で腰を打ち付ける。 あふれるほどの蜜で滑りが良くなってはいる物の、閉じるようにきついことには変わりなく。 ハヤトは四つん這いであえぐカシスに腰を動かしながら覆い被さり、両手で胸のあたりをまさぐっていく。 こりっ、と指先に堅い感触。パジャマの上からでも分かるぴんと立った突起。触れた瞬間、体が小さく震える。 そんなカシスを焦らすように突起だけ避けてゆっくりと円を描くように胸を撫で回す。 「ふぁっ!あぁんっ!待っ……!おかしく、なっちゃ……」 快感にあえぐ中、途切れ途切れの抗議を上げながら顔だけ後ろを向けると、視界に入るのはすまなそうにしながらも満面の笑顔を見せる外道のツラ。 「もう自分でも止められないんだこれが。めちゃくちゃにしてやりたくてたまらない」 きゅっ、と服の上から強く突起を挟み込む。 「ふぁぁっ!」 びくんと仰け反り、脱力したカシスの体を支えてやる。 力の抜けた人の体は重いものだが、無駄に力が余っているハヤトには楽なものだ。 「じゃ、ラストスパート」 「ちょっと、待っ、て……少し、休ませ……え?」 支えていたカシスの体を反転させ、背中からベッドに下ろす。 「やっぱ最後はお前の顔を見ながらの方がいいな」 「……っ、恥ずかしいこと、言わな──ひぐっ!」 これで三度目。 「やっ!あっ、あん、ぁんっ!」 残った力を全て出し切り、少女の華奢な体が壊れそうな勢いで突き上げる。 抱きついてきたカシスの爪が、服の上から跡を残すほどハヤトの背中に付き立つ。 「はぁっ……も、ダメ……」 「こっちも、そろそろ、限界だ……」 最後の力でカシスの一番奥まで貫き、それと同時に力いっぱいハヤトを抱きしめる。 「くっ……!」 「ふあああああぁっ!」 溢れ出す熱い精を受け、絶頂に達するカシス。 大きく背中を仰け反らせ、そのままベッドに倒れ込んだ。 「はぁ……はぁ……。あたし、このままここで寝るから。もー動けないし」 乱れた息を整え、さらっと発言。 「おいおい……と言いたいとこだけど、俺ももーお前を運んでいく体力残ってないし。ただし、ベッドは平等にな」 ベッドを占拠するつもりだろうがそうはいかぬ。 「おっけ……。7:3ね」 ころころと転がってベッドをキープすると、落ちるように眠ってしまった。 何だろう。7:3が平等になる力関係なのだろうかこいつと俺は。 まあそんなもんかもと思い、ハヤトも落ちないように気を付けながらベッドに横になった。 ──心の方はすっかりオチてしまったが。 「────────────────────!!」 何やら凄惨な音と声にならない悲痛な叫びが朝のフラットに響き渡る。 「……リプレ、朝飯二人分な」 「……うん、消化の良い物にしとくね」 厨房へ消えるリプレを見送り、さっと胸元で適当に十字を切るガゼル。せめて生きていろ友よ。 何があったかは知らないが、この尋常でない怒り様から察するにロクでもないことをやらかしたのだろう。 と、そこへふぁぁと大きな欠伸をしながらもう一人、別の人物が起きてきた。 サマーセーターの女性はそのままテーブルにつき、こぽこぽとティーポットから紅茶を淹れる。 ふわりと立ち上る香り──フラットへは度々来るので良い葉を持ち込んでおいたのだ──を鼻腔一杯に楽しむ。 「うぅん、清々しい朝ねー」 んんっ、と大きく伸びをし、ずれた眼鏡を軽く調整してティーカップに唇を付けた。 「清々しい、ね……」 悲鳴で始まる朝がかよ、とガゼルは心の中で突っ込んでおく。 これだからSの国からやってきた女王様は始末に負えない。 「そういやアンタ、いつもこっちにいるけど仕事はいいのかよ?」 一昨日「仕事があるから~」と帰ったばかりだというのに。と言うかフラットに居る方が多いのはいかがなものか。 「ギブソンが一晩でやってくれてるわ」 今もやっているだろう。徹夜で。 「……悲惨な野郎ばかりだな」 「────────────────────!!」 悲鳴はしばらく収まりそうにない。 今日の教訓:それはそれ、これはこれ。心に棚を作れ。 おわり 目次 |
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