ルシアン×フェア「リシェルに恋人?」 「うん。ポムニットさんが電話で話してるのを聞いたんだ。姉さんにはまだ直接聞いてないんだけど……」 「……そっか、だからなかなかトレイユに戻ってこないのね」 あはは、とルシアンは苦笑いを浮かべた。フェアはため息をつく。 無事に金の派閥に入ることになったリシェルは、本部で見習い活動に励んでいる。 なかなか忙しいらしいのだが、それでも月に2~3回は宿屋に顔をみせていた。 だが、近頃その数がめっきり減った。心配になったフェアが弟のルシアンに尋ねたところ、冒頭の答えが返ってきたという訳だ。 「元気みたいでよかったけど……」 「え?」 「ちょっと複雑かな。恋人、ね」 フェアはまた深いため息をついた。空を見上げると綺麗な星が輝いている。 リシェルみたいだ。近くにいる筈なのに、いきなり遠くなってしまった。 一つしか歳が違わないはずなのに、女の子にとっては大きな差をつけられたような気がする。 (確かに、ちょっとリシェルが可愛くなってるなーと思ったりもしたけどまさか恋人なんて!) 「フェアさん、どうしたの?」 「あ、ごめんね!なんでもない」 「それならいいけど…」 ルシアンが心配そうにフェアの顔を覗き込む。 その瞳があまりにも優しくて少しだけ泣きそうになった。ルシアンはフェアにとって家族みたいなものだ。 いつも支えてくれる弟みたいな――― 「それより、ルシアンも頻繁にこの街に来ていて大丈夫なの?お兄ちゃんから聞いた話だと軍学校って大変なんでしょう?」 「全然平気だよ。それに、姉さんの分も僕が補わなくちゃ」 「そんな事気にしなくて良いのに。無理してない?」 「大丈夫。僕が好きで来てるんだし、それに……フェアさんにも会いたいし」 「え?」 ポツリ、と呟かれたルシアンの言葉はフェアには聞き取れなかった。 「もー今度リシェルに会ったら、いっぱいからかってやるんだから!」 「フェアさん!?」 突然フェアが立ち上がった。 「親父の馬鹿ーーーーーーーー!!」 「シンゲンはそろそろお金払えーーー!!」 「ま、まわりに迷惑だよ!」 叫び始めたフェアの隣りでルシアンはオロオロするしかない。 「いつもの、って言われてもこっちは何十人も相手してるのに覚えてるわけないでしょーーー!!」 「野菜残すなーーー!」 「フェアさんっ!!」 「彼氏欲しいーーーーー!!」 え、とフェアを制止しようとしていたルシアンの動きが止まる。 フェアはそれに気が付かず、日頃のうっぷんをはらすように叫び続けていた。それは、最近増えてきたマナーの悪い客についてだ。 「お酒は取り扱ってないって何度言えば―――」 「フェアさん!!」 ルシアンの大声にフェアは驚いて、顔を向けた。 辺りが暗いのでルシアンの表情は伺えない。 どうしたの、と様子がおかしいルシアンに問いかけた。 「フェアさん、彼氏欲しいって……」 「そ、そんな事いってた私???」 フェアの顔が赤くなる。 思ったことを夢中で叫んでいたので、半分以上何を叫んだか思い出せない。 なんだかもの凄く気恥ずかしい。こんな男勝りで女っ気もない様な奴がそんな事を言って、ルシアンは呆れたのだろうか。 フェアは、恥ずかしさと気まずさでなかなかルシアンと目が合わせられない。 妙な沈黙が二人を包んだ。 「あ、のっ!」 「は、はい!」 両者とも俯いていて互いの表情は分からない。 「フェアさんの彼氏、僕じゃ駄目、かな」 「……え?どういう意味、」 「僕、小さい頃からずっとフェアさんの事、その……好きだったんだ」 その時、やっとフェアとルシアンの目が合った。 真剣な瞳に、思わずフェアは圧倒された。 あ、とかう、とか上手く言葉が出てこない。 (えーとえーとこれって、告白?あれ、いまなんて言われたんだっけ。え、なにが) 呆然とした顔をしているフェアに痺れを切らしたらしいルシアンが、フェアの肩を掴んだ。 最近になってルシアンの方がほんの少し身長が高くなったが、二人の目線の高さは変わらない。 「んっ…ちょっ…」 唇が押し当てられて、フェアはやっと状況を把握した。 キス、されている。苦しくて、フェアの目の前が滲む。 その隙に、咥内へ生暖かいものが侵入した。遠慮無く歯列をなぞり上げられ、フェアは力が抜けるのを感じた。 座り込みそうになるのを、咄嗟にルシアンに支えられる。 さらに口蓋をぬらりと擽られると、もう何も考えられなくなった。 全体重をルシアンにかけると、やっと唇が離れた。 口元からこぼれ落ちる唾液が、凄く恥ずかしい。 酸素を思いっきり吸い込んだために、フェアは咳き込んだ。 目次 |
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