偶然じゃなくて確信犯なんだけど僕が僕として産まれて来る為の発展途上の女体の神秘を見ようというロリコンと愉快な仲間達の挑戦忘れじの面影亭。その宿屋兼食堂の一角に、知る人ぞ知る癒しスポットがあった。 そう――浴場である。 倉庫の反対側、丁度店の正面からは死角となる庭の裏に、それはひっそりと建っていた。 住宅を改造して造った面影亭の中に大きな浴場を造るのには無理があり、そのため宿屋自体と切り離して浴場を造ったのであった。 男湯女湯がしっかり分かれており、宿の規模と比べればずいぶん大袈裟な風呂である。 大きな湯船。そして広々とした洗い場。 トレイユの一般家庭でこれほどの風呂を備えた家は、まず無い。 とくれば、その浴場の存在を知った友人知人が風呂を使いにくるのは当然の事である。 幼馴染のリシェル、ルシアンはもちろん、そのおつきのポムニット、姉分のミントや駐在のグラッドも、その風呂と、店主フェアの料理を目当てに毎晩のように訪ねてくるのであった。 さて、夜は月夜ばかりではない。 時は日もたっぷりと暮れた晩、月が無く、幽かな星の明りのみが辺りを照らす夜である。 その薄暗闇の中、静寂を何者かが破る。 鳥か、はぐれ召喚獣か、竜の子か。 いや、ロリコンである。 ロリコン―便宜上シンゲンとしておく―は使命に燃えていた。 下調べは十分である。男湯脱衣所から女湯脱衣所、そして女湯へのルートは完璧に頭に入っている。 先ほど、女湯の方へフェアが入っていくのにわざわざ声をかけて確認した。 ちなみにこの確認作業には、「自分は男湯に入ってましたよぉ~」というアリバイ工作でもある。 時間にズレが無ければ、そろそろリシェル、ルシアン、ポムニット、そしてミントとそれにほいほい付いて来た駐在が入浴を始めるはずである。 リシェルが入れば、フェアを引き止めて騒ぐはず。 その時こそが、喧騒と今日の星の無い闇に紛れて、眩しい楽園を垣間見る好機である。 普段タートルネックと長い袖、そしてミニスカートの下にしっかり履いた七部丈のパンツに隠された、そう、その隠されし楽園を今日こそ拝まねばならなかった。 万全を尽くさねばならぬ。 衣擦れの音も大事に至る危険性がある。ということで脱衣所に着物を置いてきた。 従って、褌一枚である。 褌一枚で、脱衣所の窓から外に飛び出す。華麗に着地し、今に至る訳であった。 「うわぁ!変態!」 「うむ、これはまごうことなき変態であろうな」 速攻でばれたのであった。 「と、止めたって無駄でござんす!」 庭に立つ褌一丁のロリコンと、脱衣所の窓から顔を出す龍人セイロンと、ボンボンのルシアン。 怪しいと一言で片付けられないモノがある。 「変態!・・・だと思ったら、シンゲンさん!?」 「いや、変態だろう。・・・ずばり覗きだな」 「ええっ 覗k「だまらっしゃい!!!!!!!」 シンゲンとしては覗きと大声を出されるのを阻止したかったのだが、それを打ち消した言葉も相当の大声であった。つくづく迂闊である。 まずい、予定がどんどん狂って行く。 このままではフェアがあんなところやこんなところを洗うところが見れなくなるではないか。 そして、意を決したシンゲンは未だ騒ぐルシアンとセイロンに背を向け、闇の中に飛び込んだのであった。 「ふぃ~~・・・きっもちぃい~~~!」 一方女湯。広々とした浴槽にリシェルが大の字で浸かる。 大股開き、決して人様に見せられた格好ではない。 「おじょうさま!そ、そんなはしたない格好をしてはなりませんっ!!」 真っ白な肌を上気させて叱るポムニットはその横で慎ましく浸かっている。 誰が覗いてるわけでもないんだからいいでしょ~、そう言ってリシェルは浴槽の縁に引っ掛けた足をぷらぷらとさせる。 実際問題、覗きを強行しようとしているロリコンが居るわけだが、そんなことを彼女が知る由も無い。 「フェアーっ!はやく浸かりなさいよ!」 「ちょっと待ってよ!ここの汚れが・・・!」 リシェルが呼ばったフェアは、洗い場の隅でいつの間にかこびり付いた汚れとブラシで格闘していた。 汚れに顔を近付け、四つん這いになって親の仇でも見つけたような苛烈さで汚れを擦りまくっている。 さぞ良い眺めであろうが、残念ながら彼女は普段のジャージエプロンである。 透視能力でも無い限り穴は見えない。 「(曇って見えない・・・!!!)」 「(きっと界の意志ですよ、シンゲンさん!覗きなんて、駄目ですよ!)」 「(汚れが取れない・・・と。店主殿、どこをそんなに熱心に洗って・・・)」 窓は閉ざされていた。湯気で完膚なきまでに曇った窓に、シンゲンは諦め悪く張り付く。 興味本位で付いて来たセイロンと、変態ロリコンを正しい道に導くべく付いて来たルシアンの声もやはり状況が状況なので小さくなる。 「(どこを・・・)」 (ぬるぬるとした謎の液体がその薄い股座の狭間を伝って落ちて行く。 こすればこするほど溢れだすその液体をぬぐおうとフェアはその根源に指を伸ばし以下略) 妄想である。 「「「(・・・)」」」 妄想たくましい男どもに夢を与えこそすれ、 どんなに目を凝らしても、曇った窓は楽園を見せてはくれないのだった。 「あら、ずいぶん入ってるみたいだね。」 女湯には新たなる客人が現れていた。ミントである。 ミントは、小さく入り口の戸を開けて中を伺っている。 大きめといっても、一般家庭よりは大きい、なわけである。 湯船はリシェルが大の字で占領し、更にポムニットも入っているのであと一人入るかどうか。 「大丈夫だよ!ミントお姉ちゃん。入っていって、お湯もったいないもん」 「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな。」 またゆっくりと擦りガラスの戸が閉まる。その向こうの脱衣所ではミントが衣服を脱いでいる。 再びミントが洗い場に現れたときにも、フェアは汚れと格闘を続けていた。 「フェアちゃん、大変ね・・・手伝おうか?」 「んっ・・・いいよ、あとちょっと・・・・」 なんてしつこい汚れだ。ちょくちょくお湯をかけながら擦っているのに一向に落ちない。 「何かつけて擦ったほうが効くと思うよ。ただ力任せにやってもだめよ」」 「(!!!!!)」 (そしてミントが液状の石鹸を手に付け、優しく、力任せの幼い手淫に赤みを帯びた秘所にあてがう。 ぬるりとしたその液はするりとその小さな肉豆を包み込み、入り口とそれを包む花びらをぬらぬらと照らし以下略) 妄想である。 「(オイオイオイオイオイオイオイオイオイ手伝っちゃうの!) 「(み、ミントさん、フェアさんと何をっ・・・!)」 「(力任せに何を擦っていたんだ・・・店主殿!)」 いよいよ、三者当初の目的を忘れて壁に張り付いている。 もはや辛抱たまらん。 シンゲンがその純白の褌から己のモノを取り出さんと取り出さんとした瞬間、ガシャン!と耳障りな、非常に派手な、金属が落ちるような音が響いた。 それはまるで、駐在がいつも持っている槍が地面に落ちて跳ね返るような――そのものの音であった。 「おっ、おまえら!!!ののののののののののののののぞk」 「うわあああああああああ!ちがうんですうううう!!!!!!」 覗けてはいない。音を聞いて妄想していただけである。 「覗き!!!?ルシアン!そこにいるの!!?」 「おぼっちゃま!!?」 覗きという用語に対する女湯の反応感度はすさまじい物がある。 即時に戦闘態勢に移行、リシェルが窓を開け放つ。 そこには、倒れた駐在と、その駐在に必死に申し開きをする弟の姿であった。 その瞬間のセイロン、シンゲンの動きたるや、神が乗り移ったかのようであった、と後にルシアンが語っている。そう、あの速さは人間業ではありませんでした――と。 背後の駐在が声を発するや、方や鳩尾に掌底、方や後頭部に手刀を食らわせたのである。 いくらDFに定評のある駐在といえど、一軍で活躍する拳闘担当と横切り担当のダブルアタックに、崩れ落ちる他無かったのである。 その後の判断も素晴らしかった。 叫ぶルシアンを放置、夏空ロケット装備の6速でその場を離脱。 シンゲンは脳内で新しい覗きルート・・・つまり 『賊を探しに飛び出してきたバスタオル一丁の微乳ポロリを狙うコース』 を叩きだす。彼の辞典に諦めという文字は無かった。 因みに微乳、幼女、その他諸々の用語には朱色で印がつけてある。 ポロリコースに進路を変更したシンゲンの後ろをセイロンがぴったりと追走する。 庭を突っ切れば、浴場の入り口近くへ出るはず・・・! はず、であった。 シンゲンが急に速度を落とす。反応が遅れたセイロンはシンゲンより前に突出する形となった。 「どうし・・・」 ひゅん、と頬を弓矢が掠める。 すんでのところでかわして身構えると、前方の庭木の上に月がかかっている。 いや、あれは・・・! 「そこまでですわ!!」 「おとなしく縄にかかれ!」 光り輝く羽、そしてその光りを受けてギラリと光る矢じりの閃き。 御使いが双角、リビエルとアロエリである。 「ふっ・・・我に弓ごときが通じるか!!」 TEC重視、見切りも俊敏も何でもござれのセイロンに弓矢は通じない。 放たれた矢を最低限の動きでかわし、その場を離脱する為に踏み出そうとした瞬間。 がっしり。 「今です!アロエリ殿!裾を狙いなさい!!!」 「なっ・・・シンゲン、貴様・・・!」 シンゲンが後ろからがっしりとセイロンの動きを封じる。 主犯はこやつだ、と叫ぼうとすると、シンゲンが先手を取って叫ぶ。 「黙りなさい女の敵っ!」 「騒ぎを聞きつけて風呂に入ろうとしたのも途中でやめて駆けつけてみれば・・・!」 嵌 め ら れ た ・・・! 説明的な台詞を口走りながらシンゲンは暴れるセイロンを押さえつける。 そうしてリビエルとアロエリに引き渡した後、 「まだ逃げた覗き魔がいるようでござんす・・・自分は追跡せねば。では失礼ッ」 「待たんかっ裏切り者めぇぇぇぇ・・!」 直後、リビエルとアロエリに眠らされ、セイロン、無念のリタイア。 やった!やった!! とうとう残りはシンゲン一人である。宿屋の他のメンバーが事態に気づくにはまだ時間がある。 その間に・・・! めくるめく官能の予感に打ち震えながら、シンゲンは褌一つで疾走する。 次の角を曲がれば、楽園もとい浴場の入り口である。 「まちなさい!」 「!!」 楽園までの最終コーナーに立ちふさがったのは、楽園で自分を慰めるはずの微乳、もといフェアであった。 何故かポロリはあり得ない普段通りの服装である。デッキブラシを装備している。 大誤算である 「ふふふ・・・そっちから出てくるとは、手間が省けたってもんです」 最早、覗きという目的はどこかに吹っ飛んでいる。 並々ならない気迫にたじろぐ。しかし、ここで引き下がるわけには行かない。 殺らなければ殺られるなら先手必勝が彼女の信条だった。 「ふっふっふ・・・」 じりじりと距離をとる両者。 シンゲンは褌一丁、丸腰である。デッキブラシを装備したこちらのほうが有利だ―そう踏んだフェアが飛びかかろうとした刹那。 ばらり 「っ・・・きゃあああああああああああああ!!」 「ふっふっふ・・・」 ばらり、という効果音から何が起きたかは推して知るべし。 幼い頃のルシアンのモノくらいしか見たことの無かったフェアは、ひたすらそのとんでもないものから逃げようと後ずさる。 「来ないで!来ないで!!!」 今度こそ全裸になったシンゲンは腰だめにじりじりと距離をつめて行く。 「いやっほ~ぅ!!!」 「いやああああああああああ!」 (暗転) 後日、覗き事件の日から寝込んだフェアが何も覚えておらず、現場に倒れていたグラッド氏の供述もあいまいだった事から、主犯と思われるセイロン氏と現行犯のルシアン少年二人は女性陣による制裁を受け、グラッド氏とシンゲン氏は一部に疑惑の目を向けられながらも平穏に暮らしたという。 罪を全て他人に擦り付けた真犯人曰く、 「覗き、ダメ、ゼッタイ。」 まさに外道。 おわり 目次 |
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