カサス×ポムニット



「コないでクだサイ、ポむにっトサン」
薄暗い部屋の中、荒々しい息遣いだけが無機質な壁に反響する。
「カサスさん?」
近づこうと一歩踏み出すと、まるで怯えるかのように後ずさる。
「コないでクだサイ!あナたを、襲っテしまウから!」
悲鳴にも近い、絞り出すような声。
その気迫にたじろいだものの、それでもなお近づこうとする。
自分の大切な人を襲ったとき、どれほど殺してやろうと思ったことか。
それなのに、この人はあまりにも自分に似ていて。
「大丈夫ですよ。わたくし普通の人よりは頑丈ですから」
そっと触れる、暖かい肌の感触。
部屋の隅で、何よりも自分に怯えている青年に、何かできることがあるのなら。
「それに、腕を怪我させてしまったお詫びです」
自分には拾ってくれる人がいた。青年には拾ってくれる人もいなかった。
ただそれだけの差で、ここで怯えているのは自分だったかもしれないから。
「わたくしでよければ、貴方のお相手をさせてくださいましね」
大切な人のために生きようとすることを、放棄してしまった。
悲しむ事を知っていながら、拒まれるのが怖くて逃げ出した。
そしてあわよくばあの人たちの手にかかって、忘れることが出来なくしてしまいたい。
凄く悲しんで、傷ついて、自分を恨んでくれればいい。
その罪は、きっとこんな事で消えるわけではないだろうけど。
「さあ、お好きにしてくださいな」
この青年に、せめてもの悦びを。

「んっ、ふぁ、あぁっ」
せめて破いてしまわないように、そう言われて脱いだ服が散らばっている。
貪るように唇を奪われ、意識が少し遠ざかる。
押し倒されるように床に倒れこむと、石のひやりとした感触がした。
「ゴめん、ナさイ」
耳元で、呟くような声が聞こえた。
何か言わなければ。貴方のせいじゃないのに。
そう思って身を起こそうとして、胸にはしるざらりとした舌の感触に押し戻される。
滑らかではないけれど、痛みを感じるわけでもない。まるで猫の舌のような。
「あっ、んぅ、やぁっあぁ」
擦りあわせる足の間に、少し大きな手が入ってくる。
快感への期待に塗れた秘所は、簡単に指を受け入れた。
「あぁっ、カ、サスさんっ」
のばされた白い足が、ビクッと痙攣する。
淫靡な水音が、乾いた空気を振動させる。
意識が白濁していく途中で、不意になかに入っていた指が引き抜かれた。
小さく弓なりに体をそらせて、息をつくと新しい刺激に責められる。
「んぁあっ、ふぁっ、やぁっ、んっ」
ゆっくりと舐めあげる、暖かい感触。
絶え間なく与えられる快感が、何度も背筋をのぼっていく。
「あぁあっ、も、だぁめ、ぇえ」
快感が頂点に達して、目の奥がちかちかと電気が走るように明滅する。
小さくなっていく快感の波に、ため息のような喘ぎが漏れた。
「…カサスさん」
悲しそうな瞳をした青年に、ゆっくりと手を伸ばす。
薄闇に浮かぶ白い指が頬をなでて、ゆっくりと口付ける。
ふかく、ふかく。互いの埋まらない傷を舐めるように。
「わたくしは大丈夫ですから。最後まで、お付き合いしますから」
「デも、傷ツけてしマうカモ、シレなイから…」
「大丈夫ですから。カサスさんなら、平気ですから」
例え今は、傷を舐めあうための行為だとしても。
いつかはきっと、優しい思い出として溶けていく日が来るから。
「最後まで、してくださいまし」
首に腕を絡ませ、体を預ける。
入ってくる熱い塊にたまらず喘いで、絡ませた腕に力をこめた。
「あぁ、あついぃ、あついですぅう」
ゆっくりと押し広げるように進んでいく熱が、中ほどで止まる。
奥へ進めようと締め付ける壁と、快感を求め進む腰を抑えて苦しそうに囁く。
「がマン、できソウ、二、ないでス。ゴメん、なサい」
言い終わるか終わらないかの刹那に、体が床に投げ出される。
そのまま一気に奥まで貫かれ、いきなりの快感に意識を手放しそうになる。
「あぁああっ!んぁあっ、やぁっ、ぅあっ」
まるで獣のように乱暴に、叩きつけるような衝撃。
絶頂の快感に身をゆだねる暇もなく、大きな快感が押し寄せる。
散らばる意識を必死にかき集めても、すぐに突かれて崩れていく。
「やぁあ、らめぇえ、も、らめですぅうう!」
何度目かの絶頂に、一層強く中の物を締め付ける。
「…くっ」
小さなうめき声と一緒に、熱いものを奥へ奥へとぶちまける。
いつまで続くかという快感に、何もかも忘れて陶酔した。

「…カサス、さん」
せき止める物を失った白濁液が、ごぽりと音をたてて流れ出た。
床に散らした紫の髪と、白い肢体が作り物のように美しい。
「ごメンなサい、やっパり、傷ツけてシマって」
足首についた、爪の跡に指を這わせる。
「わたくしは平気ですけれど。もしも、責任を感じるのでしたら、死なないでくださいまし」
うつむく青年の額に口付ける。
「責任をとるのもなにも、死んでしまったらできませんもの」
責任から逃げてしまった自分が、言うことではないけれど。
「じゃア、アナタも」
髪に隠れた瞳が見開かれ、真っ直ぐに見つめてくる。
「責任ヲとる相手がイナくなっては、責任、トれマセんかラ」
優しい微笑みに、胸が痛くなる。
大切なものを壊す事を恐れて、死に逃げようとしているのに。
死にたくない理由が、湧き出してきて決心を鈍らせる。
「解り、ました。なるべく、努力しますね」
覚悟は揺るがない。それだけのことを自分はしたから。
でももしも、もしも全てを受け入れてあの人たちが許すといってくれたら。
もしもこの優しい青年が、命を削らず生きていけるときがくるならば。
「今度があったら、優しくしてくださいね」
そのときは慰めあうのではなく、愛し合う行為が、できるかもしれないと思った。


おわり

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