コーラル×ライ 3どくん、どくん、どくん。 心臓が鳴る、さっきまでとはまったく違う理由で。 自分のひざに収まるほどの小さな身体。憂いの色とは裏腹に紅潮した頬。 期待と不安に潤んだ目は、退くも進むも貴方次第と、しかしそんな姿の前に、選択肢なんてものは存在しなかった。 「ったく…、本当にお前は卑怯だよなぁ。」 緊張と照れで赤くなる顔を隠すようにライは顔を逸らし、わしゃわしゃとその銀の髪をかきむしる。 こんな可愛らしいおねだりをされて、どうかしないほうがどうかしてる。 「ずるいのは、お互い様かと…。」 くすり、と膝の中でコーラルが微笑む。 もっとも、ライの場合は天然で、コーラルの場合は作為的という違いはあるのだが。 「そうだな、ったく…。」 そんなことは気にしないで、ライは笑い、コーラルの頭を撫でてやる。 「ん…。」 くすぐったそうに、コーラルは目を細め、そして猫のように手に擦り寄って甘える。 そんなこの子を見るだけでなにか満たされる感じもするが。 「…また大きくなってる。」 「う。」 コーラルの言うように、ライのそこはまた大きく張り詰めていた。 出していないのだから当然といえば、そうなのだが。 「また…舐める?」 「いや、流石に、もういいぞ…。」 直球で聞かれて一層赤くなる。 「っていうか、お前あんな事どこで覚えたんだよ。」 すこし聞きたかったことを聞いてみる。肌を重ねるには、まだ少し心が落ちつかない。 「…何処って…ここ。」 そういってコーラルは自分の頭を指す。 ――つまりアレか。継承した記憶の中に混じっていたと、そういう事か。 「…なんかお前の本当の親像がちょっと崩れた気がするぞ…。」 ライのイメージでは、コーラルによく似た女性で、気品がああって清楚で儚そうな、そういうイメージがあったのだが…。 「子供のボクに欲情してるお父さんにいわれたくないかと。」 小悪魔の笑み。ライは再度がっくりとなる。 …ああそうですよ、俺は自分の子供に今から――知識だけでしか知らないけど――あんなことやこんなことしようとしてる親ですよ。 「しょうがねぇだろ…、お前の事、好きなんだからさ…コーラルは嫌なのかよ。」 「ううん。」 即答だった。撫でる手を自分の手で包み込み、ライを、を見上げ、コーラルは言う。 「大好き。貴方も…貴方にもらった名前も…。」 そして、ライの膝の上に座る。彼は複雑な表情をするけれど、それでもいい。 この人のこれは、照れ隠しだって知ってるから。 「…ばかやろ。」 やっぱりライはぶっきらぼうにそう言って、それでもゆっくりと抱き寄せてくれた。 やがて、どちらからともなく、唇をあわせる。 「ん…っ…。」 「は…ら、ライ……んっ!?」 コーラルは口の中の異物感に驚く。生暖かくて、柔らかいとも硬いともつかない妙な感じ。 口内を這おうとするその何か… (これ…舌?) 「ん…んぅっ…!」 逃げようともがくが、ライに後頭部をしっかりと抑えられてしまっているために、それも適わない。 「は、あぅ、は…。」 苦しい…頭がぼうっとする。 入ってくるそれをどうにかしようと、いつの間にかコーラルも、舌を動かす。 「ふ、あ、くちゅ…」 「ん…む、ぷ、ぁ…。」 唾液と唾液が混じり、粘った水音を立てる。 舌と舌が絡み合い、ざらりとした感触が、お互いの舌を這う。甘い。味覚で感じないのに、頭がおぼろげとそう感じる。 脳が痺れる、すごく気持ち…良く、て…―。 「ふ…あ、ぷはぁっ…。」 ようやく、唇が離れて、コーラルは大きく息を吐く。 「――…舌入れろって最初に言ったのはお前の方だからな?」 「あ…ふ…。」 「コーラル…?」 ゆらり、とコーラルの身体が傾ぐ。それをあわてて抱きとめて、ライは初めて、この子の異常に気づく。 「…お、おい?」 「ふ…あぁ…ライ…?」 とろんとした目がこちらを向く。声と同じくぼんやりとした焦点。 「…な、なんか気持ち、いい…かと。」 「そ、そうか?」 「ん…熱い…。」 ぼんやりとした声。そして、なにを思ったか、自分のスボンに手をかける。 「お、い…!?」 「ん…。」 衣擦れの音も微かに、下半身を覆うものはあっけなく脱げてしまう。 ぽすん、という少し間の抜けた音の後に残るのは、白い脚。そして、水気を帯びて照る女性の性器。 まともに見るだけでも、頭がくらくらするというのに。 「…いじって?」 「っ…!」 コーラルは、完全にライに身体を委ねていた。 くたりとした身体。服の隙間から見える秘裂は、良く見れば、何かを求めてひくついている。 「~~~~~ッ…く、そ。」 本当に正気を失いそうだ。自分の中の獣が、舌なめずりをする。 犯してしまえ、本能のままに、この子を食い散らしてしまえと。 最初のキスで主導権を握ったと思っていたのに、あっという間に逆転をされた気分になる…勝ち負けの問題では、無いのだけれど。 「…どうなっても、しらねぇからな!」 自分へと言い訳をして、ライはおそるおそる、そこに指をあてる。 それは、触れるというよりは、おっかなびっくり、得体の知れないものを確かめるといった感じのものだったが。 「はぅっ…!」 びくん、とコーラルの身体が跳ねる。 息が一層荒くなって、ライの服が握り締められる、ぎゅう、と音がしそうなほど。 「ラ、ライ…っ、ボク!」 ぷつん (ああ、もう―チクショウ。) 「コーラル…っ!」 「ふあっ、あ、あうううううッ!?」 もうまどろっこしい事なんてやってられない。今すぐ食べたい。 勢いのままに、指を差し込む、中はやっぱり濡れていて、肉の感触が、生々しく絡み付いてくる。 「あ、あ、あふ、ひゃああああんっ」 かき混ぜるように、劣情をたたきつけるように、ライは指を動かす。 身体をくねらす、コーラルをもう片方の手でベッドに押し付けると、膣を攻める指の動きは一層激しくなる。 「ひゃ、ひゃうんっ!だめっ、だめぇっ!」 駄目とか、知らない、聞こえない。 さっき散々あんなに、誘惑して、竜眼までかけて。自分だって、それくらいしたいんだ、いや、してやる。やってやる。 「は…、はぁっ…!コーラルッ…コーラル…っ」 「ふぁ、あ、ライっ…く、ぅんっ…ふ、ひゅ、ふええっ。」 指が蜜をかき回して起こる淫猥な音。 涙目が、泣きを含んだ声が、自分の下で快楽にもがくコーラルの姿が、ライをさらに駆り立てる。 中で指を折る、かき混ぜるようだった指の動きはこするように、ひっかくように変わる。 「ひにゃあああああっ!?」 コーラルとは思えないくらいの声が上がる。 伸ばしてきた腕が、ひどい力で、ライの背中を抱く。 「や、やぁっ…やだぁっ…!な、なんか、なんかく…んむっ!」 再び唇をキスで塞ぐ、舌を絡めて、言葉を奪う。 離せば糸を引く唾液が、口に張り付いて冷たいものを残す。 「ライ、ライ…ッ、ボク、も…ふぅにゃあんっ!」 「駄目だ、まだ、いれてもいないんだから…!」 イくなんて駄目だ、もっと、貪りたい、もっと、もっと、もっと。 欲望が流れるままに、ライはコーラルの服に手をかける。 「…この、服、邪魔だよな。」 「ふぇッ…やっ…だめ、だめだよっ!」 制止など聞こえない。ぐい、と引っ張ると、驚くくらいの脆さと予想以上の音で、コーラルの服は裂けてしまう。 「あ、あ、ああ…ぅ。」 肌が露になる。少女とも少年ともつかない、まだ女の兆しも出てないくらいの平面な身体。 それでも、その絹のような美しさは、ライを魅了する。 息を呑む音、その一瞬だけ、あれだけ激しかった彼の動きが、思わずに静止する。 「…。」 「だ、だめ…触っても、たのしく、ない、かと。」 嵐の前の静けさというのは、こう言うことを言うのか。 たった一拍の静寂。コーラルの言葉が引き金になったように、ライの中を、再び言い表しようの無い劣情が支配する。 犯したい、犯したい、犯したい、犯したい、犯したい、犯したい。 味わいたいとか、指で苛めるとか、そんなのどうでもいい、どうでもよくなった。 挿れたい、このズボンの中で張り詰めてるこれを、挿れて、もう――――。 「わああああっ!?」 コーラルが腰を持ち上げられて、悲鳴を上げる。知識はあっても、経験が拙い自分でもわかる。 お父さんは、ライは、このまま――。 「…っ――そんなのやだぁっ!」 快感で散り散りになった身体に力を込めて、コーラルは、一瞬、ほんの一瞬。 ライと目があった瞬間、その瞳にありったけの魔力を叩き込んだ。 …目が覚めると、思った以上に低い天井。 ――――頭がくらくらする、なんだ、どうしたんだっけ、俺。 「けだもの…。」 声がする。その方向に頭を向けると、なぜかタオルをローブみたいに羽織ったコーラルが、視界に入る。 「コーラル…?」 名前を呼んでから、思い出す。竜眼を食らったその瞬間を、そして、その前の情事というには余りにも乱暴な行為を。 ひどいことをした。 コーラルがタオルを羽織ってる理由も、やけにはっきりしだした頭でなら、理解できる。 「…悪い。」 「…。」 謝るが、コーラルは答えない、ぷく、と頬を膨らませ、ライをにらむばかりである。 しかしそればかりではラチがあかないと思ったのか、タオルに顔をうずめ、応える。 「…貴方が、あんなに積極的だなんて思わなかった。」 「俺も、意外…。」 ライもぽつりと返す。 あれだ、我慢してたから、それ分爆発してしまったとか、そういうやつだろうと言いながら、自分で自分を納得させる。 「ひゃ…!」 「それにな、俺は別にそれでもかまわねぇって。」 寝かそうと肩を押すと、抵抗はなかった。白いシーツの上に裸体が横たわる。 ようやくベットの真ん中で出来ると、ライはそんなどうでもいいことを思う。 「いいの…、ほんとに。」 「ああ、いいからさ、な?」 念を押すと、コーラルはようやく安心したようで、にこりと笑う。 「…ばか。」 いつもの物言いに、思わず顔がほころぶ。 「ったく。満足したか?」 「もうひとつ…ボクも、貴方の、裸…見たい。」 言われて気づく。自分が着の身着のままだということに。流石にこれでは不公平だ。 あわてて脱ぎ、コーラルと同じ姿になる。 覆いかぶさり、相変わらず硬さを失っていないそれをあてがうと、流石に自分の心臓の音が耳元で聞こえる。 「――…勢いのまま入れたほうがよかったかもな。」 「緊張…?」 「っ…するぞ…。」 息を大きく吐く。そしてもう一度吸う。 思い切って腰を前に出すと、驚くくらいに抵抗は無かった。 「ん、あ…。」 「う…くっ…!?」 けれど一瞬で、焼けるような熱さと絞り出すような締め付けに変わる。 「あ、はぅ、う、んんんんっ!?」 それはコーラルも同じだったようで、ぎゅっと目を伏せ、挿入の痛みに耐える。 「つ、あ…コーラルッ…。」 大丈夫と思ったのに。 穏やかだった心が途端に、先ほどの状態にまで引き戻される。 ひどい波、奥まで挿し入れると、火がついたように身体の中まで熱くなる。 「ライ、いいよっ…ボクなら、大丈夫、だからっ。」 「お…おぅ。」 促されて動き出す、少し動かすだけで肉が、蜜が絡む。その度に、気を失いそうなほどの熱と快楽がライの意識を襲う。 気を抜けば、すぐにでも、果ててしまいそう。それでも、なんとか正気を保って、動かす。 コーラルが気持ちよくなれるように、何とか自分が暴走しないようにと。 「は…ふっ…ライぃ…。」 「コーラル、気持ち、いいか…?」 「なんか、じんじんする…。」 はぁ…、とコーラルが甘い息を吐く。 この子を抱いている、こうなっている今でも信じられなくて、くらくらする。 「んっ…ライ。」 むず痒いのか、身体をよじりながら、コーラルがライを見上げる。 「どうした?」 「―…大好き、愛してる。」 かなり背伸びした言葉、口にするにはまだまだ自分は子供で…。 それでも伝えたかったから、コーラルは言う。 「…ばかやろ。」 ライはやはり、笑うとも、怒るともつかない顔で、それに答えた。 そして、何度かの後、二人は、甘い熱の中で、果てた。 鳥の鳴き声が聞こえる… 『こーらー、ラーイー、おーきーろぉーっ!』 そして、その中に混じるいつもの声に目を覚まされる、むくりと起きると、ゴツリという衝撃が頭に走り、視界に星が飛ぶ。 ああそうだ、昨日はあのまま寝て、ここは二段ベッドの下のほう…。 「いってぇーッ…!」 「おはよう、ライ。」 痛みにもだえてると、笑いを含んだ挨拶が頭上から振る。 「…おう、おはよう、コーラル。」 「今日はボクが先…。」 そう言って、少しだけ得意げに胸を張る。 そんなコーラルが、いつもと違う服を着てることに気づく。 「それ…俺の古着。」 もっさりしたフード、オレンジを地にして、白のラインを走らせた、ライのお気に入りの服。 ややサイズは大きめで、袖が余っているようだが。 「ボクの服、昨日貴方に破かれたから…。」 抗議する目で、コーラルは言う。しかしすぐに照れ笑いに変わり。 「…似合う?」 「…おう。」 ライはこくり、と頷く。 『ラーイー!?コーラルー!?』 「いかないと、お父さん。」 「…だな。」 ライは立ち上がる。 着替えて、部屋を出ながらライはコーラルにおどけて言う。 「んだよ、昨日のあれは嘘かよ。」 「何…?」 「子ども扱いするなって。」 「…ボクは、ライの一番で、貴方の子供でいたいから。」 さも当然、という用にコーラルは答え、そして、ライの手を握る。 「欲張りだよな…ったく。」 肩をすくめ、ライは空いた手で、コーラルの髪をわしゃわしゃとかき回す。 「じゃ、行くとするか。」 「…うん!」 これ以上あの二人を待たせることは出来ない、なんていったって、今日は休日なのだから。 「よし、遊ぶぞー!」 「…はしゃぎすぎるのは、駄目かと。」 ライの気合と、コーラルの釘指す言葉を残して、部屋のドアが閉められる。 開け放したままの窓からは、春風が吹き込んでいた。 おわり 前へ | 目次 |
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