こうですか分かりません><空からミルリーフが降ってきた。 そう表現するとかなりの語弊がある。 正確にいうならば、宿の庭にある大きな木から落ちてきたのだ。 ライはたまたまトレーニングの休憩がてら、その木陰に入った時、甲高い悲鳴と共に、小さな少女が彼めがけて落ちてきた。 とっさにライはミルリーフをキャッチしようと身構えた。 いつもの彼ならば、ミルリーフの小さな身体ぐらいは容易に受け止めることが出来ただろう。 だが、この時ばかりは勝手が違っていた。 落下する風圧がミルリーフの衣服を捲り上がらせ、彼女の下半身を露わにさせたのだ。 一瞬、息を呑んだ。 ミルリーフの大事な部分を隠す布生地は見当たらなく、つるつるの肌色がライの目に飛び込んできた。 彼女は何故かノーパンであった。 「な、なんで?」 ミルリーフの身体がすっぽりと少年の腕に入ったのはライの間の抜けた声と同時である。 ちょうど真正面に向かい合うように抱きかかえたが、ライの脳内の大半は驚きで占められ、そのまま体勢を崩し、芝生の上に転倒した。 「あんッ…」 ミルリーフの小さな声。 倒れ込みながらライは彼女にくる衝撃を少しでも和らげようと強く抱き締めた。 激しく動揺しながらもミルリーフを庇うのは、彼に保護者としての、父親としての無意識の判断が働いたからだろう。 そのまま仰向けに倒れ、その上にミルリーフが乗る格好となった。 「パパー、パパー、しっかりしてぇー」 ミルリーフを抱き締める腕を解き、しばらく茫然としていた所為だろう。 少女はその円い瞳に涙を溜めながら、必死にライに呼び掛けた。 いきなり木から落ちてきた少女を受け止める救出劇よりも、ミルリーフの何も穿いていなかったという事実の方がライはショックを受けていた。 「あ、あぁ。平気…。俺は大丈夫だよ…」 やっとショックから立ち直ったライは上半身だけ起き上がり、腹部に座っているミルリーフの頭を優しく撫でた。 そう言えば、少女は何も穿いていない、と思い、腹部に乗りかかる柔らかな肉の感触に邪な気持ちを一瞬、芽生えさせてしまい、ライは自省した。 「よかったよー、パパー!」 そんなライの心の変動も知らずにミルリーフは、溜まっていた涙をポロポロと零し、父親に抱き着いた。 「なあ? どうして木なんかに登ったりしたんだ?」 ひとしきり胸の中で泣かせた後、ライはミルリーフに問い掛けた。 ライの質問に、ミルリーフはハッと驚き、頬を可愛く紅潮させて首を横に振るった。 「し、知らないもんっ」 「知らないことはないだろ。あんな高い木に登って…。もし、大ケガしたらどうするつもりだったんだよ」 少しだけ厳しい目付きでミルリーフを睨む。 先程、抱いた邪な気持ちに対する罪悪感からか、良い父親を演じたいのかもしれない。 「だってぇ…、だってぇ…」 やっと泣き止んだと思ったら、再び少女は瞳に涙を溜めてぐずり始める。 「だってじゃないだろ!」 つい大きな声を出してしまう。こんなことをしても逆効果だと分かっているつもりだったのだが。 「ふぇぇ…」 案の定、ミルリーフは泣き出した。 ライは罰が悪そうに頭を掻く。 「ごめん。大きな声を出して悪かったよ。じゃあ、なんでパンツを穿いてないのだけ、教えてくれないか?」 「知られたくなかったからぁ…、ひっくっ…、っく」 「知られたくない? 何を?」 「おねしょ…を。うっく…。ふぇぇん…」 その言葉にピンときて、ライはさっきまでミルリーフが登っていた木に跨り、上を目指した。子供の頃、何度も登った木だ。 頂上まで行くのもそんなに苦ではない。 「あ!」 途中の枝に小さな布生地が置かれていた。 やれやれ、と思い、それを手に取ると、ライはそこから地面に飛び降りた。 布生地の正体は言うまでもなく、ミルリーフの下着である。 その生地の船底部分はほとんど濡れていた。 つまり、こうである。ミルリーフはライのトレーニング中、昼寝か何かをしていた。 竜とはいえ、まだ子供なのだ。彼女はおもらしをしてしまった。 それに気付いたミルリーフは慌てて、この木の上に登った。 多分、誰にも見つからずに乾かす場所はここしかなかったのだろう。 しかし、運悪く、休憩をしにライが木陰に涼みに来てしまった。 ミルリーフは動揺して足を滑らせ、木から落ちたというわけだ。 「パパ、ごめんなさぁい…、うっ…くっ…。もうおねしょしないからぁ。ミルリーフのこと嫌いにならないでぇ…、ふぇぇ…」 まったく、ライは心の中で溜息をつく。 おねしょぐらいで嫌うわけがないだろう。 「まあいいや。今度からは、おねしょしちゃったら、俺に言うんだぞ?」 「怒ってないの?」 「怒るわけないだろ」 優しく微笑むと、ようやくミルリーフは泣き止み始めた。 「パパぁー」 そして、またしてもライの身体に縋りつく。 「とりあえず行くぞ…」 「行く? 何処に?」 「何処ってお風呂だよ。汚れたところを洗わないと…」 言葉にしてライは気付いた。 今まで彼女の入浴はミントかリシェルに頼んでいた。 だから、ミルリーフと一緒に風呂に入ったことなど、一度もない。 いや、そんな願望は無かった筈だった。 先程、ミルリーフの秘裂を見るまでは。 「えー、やったぁー! パパとお風呂だぁー!」 何が嬉しいのかミルリーフは完全に涙を止め、両手を上げて、バンザイをした。 そうだ、ミルリーフのためだよ。何も疚しい事はない。 ライは自らそう言い聞かせて、ミルリーフと手を繋ぎ浴場に向かっていった。 おわり 目次 |
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