セイロン×フェアこのごろのわたしはおかしい。 「どうだろうか、店主殿」 例えば今セイロンが差し出している、小さな桃の形をしたお饅頭。 そんななんでもないことで、このごろのわたしはすぐにおかしくなっちゃう。 「わあ、かわいい」 「この淡い色を出すのに苦労したのだよ」 少し得意気な顔をしたセイロンは、その饅頭をそっと撫でる。 「店主殿のお眼鏡にかなったのなら良いのだがな」 フェアとは違う男の節くれ立った指が、なめらかで柔らかな曲線を辿っていく。 桃を形取ったその輪郭を。 うっすら色付いてぷっくりと丸い、割れ目のある……。 「どうかしたのかね?」 慌てて顔を覗き込もうとするセイロンに背を向けたが、真っ赤になった頬は見られてしまったのだろう。 「フェア」 セイロンは、声を低めて名前を呼んだ。 いわゆる付き合っている、という関係になってからも、フェアのことは今まで通り「店主殿」と呼ぶのが彼の常だ。 しれっと何事もなかったように振る舞って、リシェルたちはもちろん、ポムニットでさえしばらくは二人の関係に気付かなかった。 特に厨房では鬼妖界の礼節というものなのか、むしろ以前より他人行儀になった気がする。 恋だの愛だのと浮き足立たれても彼らしくないが、もう少し優しくなってもいいのではないかと思うくらいだ。 そんなセイロンがわざわざ名前を呼ぶ時は、決まっている。 生死が掛かっているくらい真剣で深刻な時と、もうひとつは……。 「あ、あの、いいと思うよっ。可愛くて、女性のお客さんにきっと人気、」 饅頭を撫でていた掌がフェアの腰に伸びて、丸みを楽しむように撫で上げた。 「ひゃう!」 たったそれだけのこと。 「善し悪しは味わってみなければわかるまいよ、店主殿」 セイロンの口調は、また「店主殿」に戻っている。 すぐに指は離れたし、ほんの冗談なのだろう。 それにここは厨房で、神聖な、とまではいかなくても、フェア自身それなりに厳粛な気持ちでいたい場所だった。 細かな作業をする手元を照らすために、眩しく灯りもついている。 泊まり客はいないし、私室へは廊下をほんの少し移動するだけでいい。 それなのに。 「……あ」 フェアは、俯いたまま振り返った。 体の奧が熱い。 じわり、と、湿った熱が疼いて体中に広がっていく。 「あの、ね」 熱くて、がまんできない。 「あの……」 「店主殿は、違う味見がしたいと見える」 「えっ!?」 顔を上げると、セイロンのからかいを含んだ半眼が覗き込んでいた。 覆いかぶさるように近付いてきて、ふわりと調理台に押し上げられる。 ストラの呼吸を応用した動きは、抗えないほどの力強さを持っているのに、なぜか滑らかで軽やかだ。 下半身を包んでいた服が取り去られて、靴が片方だけ床に落ちる。 その性急さに、フェアは膝を割ろうとする手を慌てて掴んだ。 「セ、セイロン!」 「どうした?」 からかいの笑みを含んだまま、唇が合わさる。 「ん……んむ、」 言い掛けた隙間から割り入って、内側の粘膜を辿り、舌を絡め取り吸い上げる。 同時に脚の間へ滑り込んだ掌が湿った割れ目をゆるゆると撫で、つぷりと指先を柔肉へ潜らせる。 「ふぁ……っ」 慣らされた体は十分に潤い、そのままゆっくりと付け根まで埋め込まれた指を、ピクピクと震え締めつける。 セイロンは深く沈ませた中指をそのままに、親指で肉芽をやんわりと押した。 「ひぁっ、きゃう!」 「存分に味わってもらいたいところだが」 鋭い快感に反りかえった背を空いている腕で捕らえられ、いきなり指を引き抜かれたそこへ、熱い高ぶりが押し付けられる。 「まだ仕込みが残っているのだし、そうも言ってはおられぬな」 「あっ、やっ!!」 そのまま、一息に最奧までを貫かれる。 「あああああっ!!」 いつもとは違う乱暴ともいえる挿入なのに、強烈な快感が突き上げた。 「あ、あ、やだ、あァ……やっ」 逆らうように、逃れるように首を振る。 でも。 「ひぁぁんっ!」 エプロンとスカートを捲り上げられ、硬く立ち上がった蕾を舌先で弾かれる。 気持ちがいい。 貫かれる度に生まれる快感が、フェアの体も意識も女という生き物に変えていく。 ぐちぐちと粘膜の触れ合う水音と、互いの息遣い。 「ん……いいっ」 膝の裏を押さえ付けられ、結合部が灯りの下に晒される。 全てを見られている。 こんな場所で、明るくて、いやらしい声を大きく挙げて。 そんな羞恥心も、覚えたての快楽を貪る意識の抑制にはならない。 「気持ち……い……ぁ、いいっ!!」 だって、がまんができない。 狭い粘膜を突き上げる熱の塊を、体の奧が欲しがっている。 愛しい熱を逃がさないように、内側が絡みついて締めつける。 腰が無意識に、淫らに動く。 「あふっ、いい……ァあっ、あぁぁん……いいっ、気持ち……いい、よぅ……っ!!」 もっと突いて。 もっと犯して。 めちゃくちゃにしてお願い気持ちいいの奧にちょうだい強くお願い。 身仕度を手早く済ませたセイロンが、体を拭いてくれたフキンを洗っている。 フェアはのろのろと身を起こして、下着を身に着けた。 服をどこへ投げたのかなと探す目に、先刻の桃饅頭の入った蒸籠が映る。 思わずひとつを摘み上げて、可愛らしいその菓子をぱくりと食べた。 「あ、おいし」 「蒸したては格別だが、冷えてもなかなか美味なのだよ」 「っ!?」 いつの間にか、セイロンが後ろに立っている。 慌てて振り向くと、靴の片方を差し出している表情は真面目で、もうすっかり普段通りの態度だ。 なんだか自分だけが置いて行かれたような気になって、フェアは急いで靴を履いた。 「店主殿」 「は、はいっ」 自分から誘ってしまった。 しかも、こんな場所で。 今さら恥ずかしさが込み上げてくる。 「我としては餡についての助言を聞く前に」 「ひゃう!」 ふいにセイロンの手が伸びて、太腿を素速く撫で上げた。 「この蠱惑的な肌を隠してもらわねば困る」 相変わらずしれっとした普段の口調だが、流水に触れて冷たいはずの指は、とても熱かった。 「……もっと真面目かと思ってた」 「我が、かね?」 「わたし……ううん、両方!」 「あっはっはっは。良いではないか。我はそなたを想うておるし、そなたも同じように想うてくれる。それだけのことであろうよ」 そうかも、しれないけど。 でもやっぱり、このごろのわたしはおかしい。 だって、もう次のこと期待しちゃってる。 「さあ、店主殿。手っとり早く済ませてしまえ」 セイロンがわたしを急かすのは、早く部屋へ行きたいって。 そういうことかな、なんて思っちゃったりする。 このごろのわたし、なんだかおかしい。 おわり 目次 |
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