レックス×アズリアあいつと初めて出会ったのは、私がまだ帝国の士官学校に在籍する学生の頃だった。 当時は私のこの黒い髪もまだ短く、肩に届くかどうかくらいの長さだったろうか。 その日は定期試験の総合順位が貼り出される日で、本校舎内にはどこかいつもと違う雰囲気が流れている。私は“いつも通り”自分の名前がある順位表の一番上、つまり一位の場所を見て唖然とした。いつも一番上にあるはずの私の名前が、その時に限って上から二番目にあったのだ。 アズリア・レヴィノスの名の上には堂々とあいつの名があり、あの時に感じた悔しさは今でも忘れない。私はその日の内にあいつ──まだ顔も知らなかったが──の下へ行き、目の前で宣戦布告をしてやった。と同時に、それから……、まぁその……、惚れたわけだ。 これは随分と後になってあいつから直接聞いた話しだが、片思いだと思っていたのは私だけでなく、あいつの方もそうだったらしい。 お互いに惚れていたのに、付き合い始めたのは出会ってから一年以上も経った後だという、なんとも情けなく笑える展開だ。 ゆっくりと静に、それでいて消えることなく力強く燃える炎の様なあいつの赤い髪。 私はあの美しい赤い髪が穏やかな夏風になびく美しい様を、今もこの瞼を閉じれば鮮明に思い出せる。 私達二人が残した思い出の様に深い色の青空、まだ夏の陽射しが色濃く残るその季節、こうして私はあいつと出合った。 ◆ 私達二人は直ぐに仲を深め、時間さえあれば一緒に過ごすようになった。 休日は本校舎内にある図書館で兵法や極地戦に置いての対応策を勉強し、食堂ではあいつのお気に入りのメニューがカレーだということも分かった──今度私が作ってやろうか、きっとあいつは驚くぞ。 本校舎の中庭では講義をサボって、二人して木陰にあるベンチで昼寝をしたこともあった。 優等生が聞いて呆れる。 それでも相変わらず私が定期試験の総合順位で一位になれることはなく、どんなに勉強をしてもあいつは常に私の何処までも先を進んでいて、決して同じ場所に立てることはなかったように思う。 こうして私達は、良き友人で良きライバルの関係を築いていたのだ。 そしてその関係が変わったのは、あいつと出会ってから調度季節が一巡りした頃だった。 「ねぇ、アズリア」 「なんだ?」 一日の終わり、夕闇に包まれる帝都の街中を二人で並び歩いていた時のこと。 「俺達ってさ、傍から見ると付き合っているように見えるのかな?」 唐突にあいつはそんな話題を切り出した。 「全く、何を言い出すのかと思えば」 「今日さ、講義室で隣の席のやつに聞かれたんだ。 “レックスとアズリアさんって付き合ってるんだろ?”って」 本音を言うと、この時の私は柄にもなく緊張していた。 もう随分と前から他の学生達の間で、私達二人が付き合っているのではないかという噂話しが流れているのは知っていた。 成績上位者二人が一緒に勉強していたり、一緒に食堂で食事をしていたり、一緒に街中を歩いているところを何度も目撃されれば、嫌でもそういう噂は出て来るものだろう。 けれど今までその噂話しに付いて、あいつはこれと言って私に話してくることはなかった。だからきっと、あいつはそんな噂話しなんて気にも止めていないのだろうと思っていたのだ。 「俺さぁ、周りからそんな風に見られているなんて、思ってもみなかったよ」 「まさかとは思うが、知らなかったのか?」 「うん、初耳だね。 すっごく驚いた」 世情に疎いにも程がある。 私は思わず大きな溜息を吐いていた。 「一緒に話しをする友達すらいないのか、お前には……」 「む、俺にだって友達くらいはいるよ。 現にこの話しだって、友達から聞いて知ったんだし」 眉間にほんの少し皺を寄せて、不機嫌そうな顔で反論してくる。 「いや、すまない。 今のは冗談だ」 兎に角、あいつは本当に知らなかったのだ。 今までその噂話しについて何一つ語らなかったのも、とうの本人が知らなかったからではどうしようもない。 大勢の人々が行き交う帝都の街中、軒を連ねる店からは早めの夕食を楽しむ家族の団欒の声が聞こえてくる。戦争中の国だとはとても思えない、賑やかな時間が流れている。 「……迷惑だろ、周りからそんな風に思われていては」 私は思い切って、以前から気になっていたあることを聞いてみる事にした。 「そんな、迷惑だなんてことはないよ。 それに……」 そこまで言うと、あいつは不意に歩くのを止めてその場で立ち止まり、暗くなり始めた空を見上げる。 彼の目が見つめるその先には、夕暮れのオレンジと夜の漆黒とが混ざり合った空が広がり、そこには一等星が美しくも儚くその輝きを放っていた。 「……それに、ね。 ちょっと嬉しかったりもするんだ」 「──え?」 「いや、だからさ、アズリアと俺が、そんな風に見られているってことがね。 君みたいな優等生で、皆からは憧れの目で見られているような人がだよ? 俺みたいな冴えない男と付き合っているだなんて、噂だとしても光栄なことだよ。だって有り得ない話しだもんね、そんなことってさ」 そしてあいつは「あははは」と笑いながら、再び先に歩き始めていた。 ──言うしかない、と思った。 あいつは噂話しにすら疎いようなやつだと分かったから、これから先こんな会話は二度と来ないかもしれない。私は歩き始めたその背中に向かって、勇気を出して声を掛ける。 「有り得ない話しでもない、と言ったらどうする?」 「ん、なにが?」 「だ、だからな、その、あー……。 お前と私が付き合っている、という話しがだ。 私もな、嫌ではないんだ。むしろお前と同じで嬉しかったさ、周りからそう見られているのが」 自分の心拍数が異常に上がっていくのが分かる。 なんと表現したらいいのか、こんな気持ちは初めてだった。いつも真っ直ぐあいつの顔を見て話しをしていたはずなのに、どうしてだろうか今はあいつの顔を見ることすら出来ない。 「それってさ、もしかしてアズリアも……」 その言葉の一瞬の間がとても長く、数十分にも数時間にも感じられる。 その言葉の続きが待ちきれなかった私は、ついに自分から告げていた。 「だから、私はな。 お前のことが好きなんだ!! 好きで好きでどうしようもないんだ!! お前と一緒に居られる時間が楽しくて、幸せで、それで、だから、その……」 ゆっくりと歩み寄ってきたあいつに、気付けば私は抱き締められていた。 「ごめん。 こういうことって、男の方から言うべきだって思ってはいたんだけどさ。いざ言おうと思うと、やっぱり気恥ずかしくて言えなくなっちゃうんだよね。それに好きでもない男から告白なんかされても、相手を困らせちゃうだけだろうとか考えて……。だから今まで言えなくて、本当にごめんね。 俺もね、アズリアのことが好きだよ」 「レックス……。 はははっ、強ち噂話しもバカに出来ないものだな……」 自分の話す声が震えていた、目の前が霞んで見えなかった。泣き顔なんか見られたくなくて、私はあいつの胸にそっと顔を埋めて泣いていた。 大勢の人々が行き交う街中の片隅、一目も気にせず抱き合う私達の頭上には、一等星が儚くも美しく輝いている。 ◆ その日、私はレヴィノスの家へ帰らなかった。 恋愛小説や恋愛歌劇の中では、女が恋人の男に「今日は帰りたくない」なんていう恥ずかしい台詞をサラりと言ってのけるが、それはきっと今の私のような気持ちなんだろうと思う。 帝都の中心街の喧騒から少し外れた所に、レックスが知り合いから借りているというその部屋があった。 士官学校の広い敷地内には当然寄宿舎もあるが、それを利用するにもそれなりのお金が掛かる。 田舎から出て来たばかりのレックスにそんなお金はないらしく、帝都に住む古くからの母方の知り合いに頼み込み、この三階建ての建物の小さな角部屋を借りているとのことだ。 因みにレックスは奨学金を受けていたが、肝心の寄宿舎の利用代金が何故かそれに含まれていないのだとよく愚痴を洩らしていた。 その小さな角部屋の中には、沢山の教書やら参考書やらが塔の様に積まれた四角いテーブルに、これまたぎっしりとよく詰め込めたなと思えるくらい本の入った棚が五つ、それに壁際に衣装箪笥とベッドがある。 「なんか……、本しかない部屋だな。 将来は古書店でも開くのか?」 少し笑いながら、思わずそう感想を述べてしまう。 「もう、悪かったね。 どうせアズリアの広ぉ~い家とは雲泥の差ですよ」 「はははっ、違う違う。 そういう意味じゃないんだ。 私はもっと殺風景な部屋を想像していたからな、それでこの部屋を見ては、つい笑ってしまった」 でも確かにこの部屋も整理しなきゃなぁ、とこの部屋唯一の机の上や足元にまで積まれた本の塔を見てレックスは面倒くさそうに言う。 そしてベッドの端に腰掛けたので、私だけ立っているのもなんだなと思いレックスの隣に腰掛けた。 「こうしてアズリアと二人っきりで同じ部屋にいるのに、なんか恋人同士っていう感じがしないんだけど……」 「なんだ、お前もか? 多分、私達は友達でいる時間が長過ぎたんだろう。 今までに二人っきりの時なんて、いくらでもあっただろう」 「あー、うん、あったよね。 でもさ、今日は特別……なんだよね? こうしてアズリアも、俺の部屋に来てくれたわけだし」 そこまで言うと、レックスは私の手を優しく握ってきてくれた。私はレックスの手を握り返し、彼の身体に肩を寄せる。 レックスは空いている方の手で私の肩を抱き寄せ、そのままキスをしてくる。 お互いの唇が軽く触れ合う程度のキスを数回繰り返し、次に舌を絡めた恋人同士のキスをした。 「んんっ……、あっ、ふっ、レ……クス」 口の中に入ってきたレックスの舌と唾液を自分の舌と口で受け止め、息が続かなくなるまで貪る様なキスをしていた。 「アズリア……」 「んんっ、あ、ぷはぁっ……」 キスを止め唇を離すと、二人の口の端からはお互いが口の中に送りあった唾液が垂れている。異性との初めてのキス、それも好きな相手とのキスでいきなりこんな深いキスをしたという事もあってか、その光景はまたなんともいやらしく見えた。 レックスは私のことをベッドに寝かそうとしたが、私は慌ててそれを制す。 「ちょ、ちょっと待て。 制服、シワになったら困るだろう?」 「うーん、でも……。 ごめん、ちょっと我慢出来そうにないかも」 「え、あ、こらっ、レックス!!」 レックスは半ば無理やり私をベッドに押し倒す──こういうと語弊があるかもしれないので、レックスの名誉の為に付け加えておくと“あいつは本当に優しく押し倒してくれた”──と、私が着ている士官候補生であることを示す制服に手をかける。 上着を脱がされ、中に着ていたインナーの白いワイシャツのボタンがひとつずつ丁寧に外されていく。 そして全てのボタンが外され、半分脱がされた状態のワイシャツから覗く私の下着に隠された胸が、レックスの目に嫌でも見られているのが分かる。 「その……、あまり自信がないんだが……」 咄嗟に両腕を組み、胸を覆い隠していた。他の同年代の女性と比べても、明らかに私の──その、胸は小さかったと思う。 コンプレックスという程ではないにしろ、やはり好きな人に見られ、これから触られるのであろうから気にはなる。胸を覆い隠していた両腕が、レックスの両手によって解放されていく。ベッドで横になっている私は調度“両手を上げて降参しろ”の状態にされ、その状態のあまりの恥ずかしさからそっぽを向いていた。 「自信ないだなんて……、そんなことないと思うよ。 すごく綺麗だもん、アズリアの胸」 この男、それでいて嬉しくも恥ずかしいことを言ってくれる。 「触っても、いい?」 頬が紅潮しているのが自分でも分かるくらい、恥ずかしくて声すら出せない私は頷く事で肯定の意を表した。ブラジャーをそのまま上にずらされ、レックスの手が私の胸を優しく包みゆっくりと揉み始める。 「くんっ!? あっ、あっ、ふぁっ!!」 弱く、強く、強弱を付けた彼の手で揉まれる度に、どうしても切ない喘ぎ声が漏れてしまう。 自らの手で愛撫したことすらない私の胸は、次第に激しく揉まれ、突起してきた乳首をレックスは重点的に責めてくる。 「そ、そこばっかり、だめっ、レック……あんっ!! んんっ、くあっ、あぁ……くうぅっ!!」 片方の乳首は指で摘まれ、もう片方の乳首は口に含まれ舌の上で激しく転がされる。それは私に、今まで感じた事のない快感の波を全身に齎してきた。 手と口による胸への愛撫は激しさを増し、乳首を歯で甘噛みされた瞬間のことだった。 「──はあっ!? ちょっと待っ……レ、クスゥ!! あっ、や、だめっ、だめっ、やあぁああぁぁあああぁぁっ!!」 「ア、アズリア?」 私はベッドの上で弓なりに身体を反らし、腹筋の辺りと内股を締めびくびくと何度か震えていた。初めて達してしまった私は肩で大きく息をし、頬は桃色に染まり、潤んだ瞳でレックスのことを見つめる。 「んっ、はぁ、はぁ……。 もう、バカ……。 待ってって、言ったじゃないか。 やり過ぎだぞ……」 「ご、ごめん。 大丈夫?」 「いや、でも、すごい気持ち良かった……」 その言葉の意味するところの恥ずかしさから、私の声はどんどん小さくなっていった。 「そ、そう? 良かったのなら、まぁ……いいのかなぁ」 「だから、今度は私の番だ」 「え、ちょ、ちょっと!? うわわ、待ってってば!!」 「私が待ってくれと言っても、待ってくれなかったのは誰だ? ふふっ、さっきのお返しだぞ」 うろたえるレックスをベッドに腰掛けさせて、私は床に膝立ちとなりレックスの両脚の間に身体を入れた。 ズボンを脱がし、レックスの履いていた下着を下ろすと、大きく起立したそれが露になる。 「こ、こんなに大きいものなのか?」 初めて見るレックスのそれは、全く経験のない私でも普通より幾分と大きいというのが十分に分かった。それはびくびくと震えて、先端からは透明な先走りが溢れ返っておりてらてらと亀頭を濡らし輝いている。 恐る恐る手を伸ばし、その根を手で軽く握ってみる。 「っ!!」 するとレックスは苦悶の表情を浮かべて、握っていたそれは私の手の中で大きく痙攣した。 そのままゆっくりと手を上下に動かし始めると、それに合わせてレックスの表情はさらに険しくなっていく。 「ううっ……」 先程のお返しとばかりに私は徐々に手の上下の動きを速める。止め処なく溢れる先走りで、それを握っている私の手が塗れ、上下に素早く扱く度にくちゅくちゅといった水音が狭い室内に響く。私はレックスに気持ち良くなってもらいたかった。 こういう行為のとき、相手に気持ち良くなってもらいたいと思うのは、淫らなことなのだろうか? レックスが達してしまう前に、私は自分で知っている限りの行為を尽くすことにした。 「え? ちょ、ちょっと、アズリア!?」 「──は、ん、んむっ、ん、んくっ!! んんっ!!」 「うわっ、そんなに無理しなく、てもっ……うっ」 相手の股間に顔を埋めて、それの裏筋を舌で少しずつ焦らす様に刺激していく。 さらにゆっくりとそれ全体を口に含んでいき、そして一気に吸い上げてみた。 「……っ!?」 「あ、すまない。 その……痛かったか?」 やはり経験のない私が無理にやり過ぎただろうか。 苦悶の表情と共に呻き声を上げたレックスに、私は慌てて行為を中断する。 「ち、違うんだよ!! つまりさ……、えぇっと、気持ち良かったから、つい……」 「ああ、なんだそうだったのか」 相手も感じてくれていたんだ、そう分かるとなんだか笑みが漏れてくるから不思議だ。私は再びレックスのそれを口で咥えてこんでいく。 手で扱いていたときよりも、明らかにそれは口の中で大きくその質量を増したのが分かる。 「ん、んむっ……ふはぁっ。 ど、どうだ、レックス? ん、んんっ、んくっ。 ひもち、ひいか?」 「あっ、うん……。 そこっ、すごく……い、ね」 「(ここが弱い、のか?)」 亀頭の調度裏筋側から狩首にかけてを舌で何度も往復すると、レックスの呻く声はより大きくなっていった。それと共に先端から溢れ出る先走りは一気に量を増し、私はこくこくと喉を鳴らしてそれを飲み込んでいく。私の身体の方も確実にレックスへの口淫によって反応を示していた。 「んむっ、はぁ……んむっ、んんっ!!」 下腹部は熱さを増しながら疼いて行き、身体はレックスを強く欲している。 気付いたら太股をもぞもぞと擦り合わせて、私の内股にもレックスのそれから出る先走りに似た液が滴っていた。 口腔内でキツくそれを吸い上げては、舌で亀頭を丹念に刺激して舐めるという行為を繰り返す。鈴口も刺激してみれば、少しだけ苦味を伴う先走りがまた口の中に溢れてくる。 「ん、ん、んはっ、んむっ……はぁ、んじゅ」 「くっ、アズリア……。 俺、もうっ!!」 「んんっ!?」 「うわ、出るっ!!」 「んっ、んはっ!? んむ!! んくっ、んんんんっ!?」 口の中で一度痙攣すると、亀頭が大きく膨らんだ気がした。そして先走りとは違う、なんとも形容し難いその味と感触が口に広がる。 「ん、ん、ん……」 目を瞑りこくこくと喉を鳴らしながら、それから出るものが止まるまで飲み続けた。 「も、もういいから!! ねぇ、アズリアってば、そんなに無理しなくていいから!!」 「ん、ん、んくっ……はぁ……。 全く、どれだけ出すつもりだったんだ」 「アズリア……。 ありがとう、すっごく気持ち良かったよ」 そう言うとレックスは私のことをそっと抱きしめてくれた。実はかなり無理をして全て飲み干していたために、私は少し涙目になりながら話しをしていた。 結果、それがレックスに無駄な心配をかけさせてしまったのだろう。 私の無理をした頑張りは、全てレックスにはお見通しだったのだ。それでもレックスはありがとうと言ってくれる、全くなんでこの男はこんなにも優しいのだろうか。 ワイシャツを半分脱がされた状態のままの私は、再びベッドの上へ横になる。 いよいよその時を迎えたのだ。腰を浮かせて制服であるスラックスを脱ぐと、ショーツの上からレックスが秘裂をなぞってきた。 「ひあっ!?」 ショーツの上から触れられただけだというのに、部屋中に響き渡る嬌声を上げてしまう。 レックスはショーツを指で横にずらすと、既にまた硬くその大きさを取り戻したそれの先端を秘所にあてがう。 「いい、アズリア?」 「ああ、優しくするんだぞ」 強がってそんなことを言ってみたが、レックスはにっこりと微笑むと優しく私にキスをしてくれた。 「いくよ……」 秘所の入り口にあてがわれていたそれが、ゆっくりと私の中に侵入を始める。 「あ゙うっ!? くあっ、っつ!!」 「痛いよね……。 やっぱり止めとく?」 「だ、大丈夫だ。 続けてくれ……」 まだ入り口の辺りだというのにこの痛みだ。痛くてどうしようもなく、本当は直ぐにでも止めてと言いたかった。 でもこの初めての痛みを私に与えてくれているのがレックスだと思うと、自然と我慢する事が出来た。 レックスのそれは徐々に奥へと進み、ついに最後の壁に突き当たり、そして。 「あっ、あっ……──あぐっ!? あっ、うあああぁぁっ!!」 「アズリア、アズリア!!」 そのわけの分からない程の痛みにたまらず声を上げた私を、レックスは何度も私の名前を呼びながら強く強く抱き締めていてくれた。 私もレックスの背中に腕を回し必死になって抱き付く。 「ぐっ、つっ、あっ、ああぁっ……」 「アズリア、ごめん……。 ちょっと乱暴だったよね」 「はぁ、はぁ、はぁ……。 い、いや、大丈夫だから。 そのまま動いてくれて、かまわないぞ……」 そういう私にも、レックスは無言のまま暫く動かないで抱き締めていてくれる。 レックスのそれが私の中に入っていると、確かに感じられる。 それは私の中で何度も痙攣していて、私の中もそれをきゅっきゅっと締め付けているのが分かるから。 「ありがとう、レックス。 私ならもう大丈夫だ」 「本当?」 「ああ、本当だ」 レックスは私の潤んだ瞳を見つめると、分かったと頷いた。 本当にゆっくりと、最初は入り口近くの浅いところで腰を前後にグラインドさせ始める。 「んっ……あん、あ、あっ、ふあっ」 そうして私が慣れてきたのを確かめてから、少しずつ腰を奥へと沈めながらグラインドさせていく。 「んあっ!! ふあぁ、あぁっ、ふあっ、くうっ!! すご……いよ、レク……ス、あうっ!!」 「アズリアの中、暖かくて、キツくて、絡み付いてくるっ!!」 レックスの腰のグラインドは段々と速く激しくなり、お互いの身体と身体がぶつかり合い、結合部からはいやらしい水音が響く。 「あっ!! あっ!! も、もっと、ゆっく、りっ……ふあぁっ!!」 私も彼を求めて腰を動かし始め、彼も私を求めて腰を動かし続ける。深く深く疲れる度に私は声を荒げ、着ていたワイシュツは汗でびしょ濡れだった。 「あっ、ふ、深ぁっ!? 奥っ、奥まできてるっ!!」 「ア、アズリア、そんなにキツく締め付けられたら……」 それの先端で子宮口を何度も突かれ刺激され、私はもう我を忘れて声を上げ、レックスと少しでも深く交わろうと身体を密着させる。 「もう、変に……なりそっ!! ああっ、ああっ!! こわれてしま……ひあっ!!」 「すご過ぎだよ、アズリアの中っ!!」 「あ、ああぁっ、いやぁっ!? わ、私、また達し……ってる、んあっ!!」 既に何度と達している最奥を、これでもかとレックスは必要に突いてきた。私の中の痺れが大きな波となり、身体中を飲み込んでいく。達している最中でもお構いなしに最奥を激しく突かれ、絶頂の波は止まることを知らない。 「もう、あうっ、限界だ……。 これ以上……くうっ!! されたら、本当に……おかしく、なりっ、そ、んああっ!!」 「アズリア、俺も、俺もっ、もう出そうっ……!!」 「お願いっ、そのまま、そのまま中でっ!!」 「え? それはっ……」 「あっ、あっ、ふぁ!! い、いいんだ……、レックスになら、レックスになら、私っ……!!」 「うあっ、アズリアッ!!」 そして最奥を一際強く突かれ、レックスのそれの先端から熱いものが噴出されるのを確かに感じた。 「んああっ!? な、なんだ、これ、熱いのがっ、いっぱ──ふああぁあぁああぁあぁぁっ!!」 初めて感じる射精されるという感覚を、私はとても熱いものが長く出されるのだと思った。 「ああっ……、お前の、んっ、私の中で、いっぱい出てるっ……ぞ」 「アズリア、愛してるよ……」 「私も、レックスのこ、と……」 身体中が溶けてなくなりそうな程の快感に支配され、私は最後まで言葉を紡ぐことなく気絶してしまった。 まどろむ意識の中、優しく微笑むレックスの顔とあの美しい赤い髪が、私の目には確かに見えていた。 ──私だってお前のことうを、誰よりも愛しているからな。 この先なにがあっても、ずっと、お前を愛していると誓うよ、レックス── ◆ その日からまたいろいろと面倒もあったのだが、兎にも角にも私達は無事に士官学校を卒業することが出来た。 あまり言いたくはないが、あいつが首席で私が次席だ。私は兼ねてから希望していた海軍に配属され、あいつは陸軍へと配属された。 配属されたはいいが、暫くしてあいつが軍を除隊するという話しを聞いた。 帝国勲章を授与されるような活躍をしたらしいのに、なぜ除隊など希望するのか。 あいつがそんな根性無しでないことは私が一番よく知っているつもりだったが、本人に直接聞いて確かめずにはいられなかった。本国にある陸軍本部に正式な除隊届けを出すといわれていたその日に、私はあいつに会うことにした。 けれどその日、私が知っている、私が愛した男はそこにいなかったのだ……。 そこにいたのはあいつの抜け殻だった。 私はお前のそんな姿が見たいんじゃない、私の愛していたお前は何処へ行ってしまったんだ。 辺り構わず怒鳴り、思わずあいつの顔を一発殴ってからその場を逃げる様にして去った。士官学校を卒業した後も、距離はかなり離れてしまったがお互い恋人同士として問題なくやっていた。 それが喧嘩別れだなんていう、呆気ない幕引きとなったのである……。 なぜこんな昔のことを思い出していたのかと言うと、先程船内の廊下から聞き覚えのある懐かしい声が聞こえた様な気がしたからだ。まぁ、まさかそんな運命の再会みたいな出来過ぎたシナリオがあるはずもない。 この広い世界には、自分の顔と瓜二つの人間が最低でも三人はいるらしい。 なにも世界はリィンバウムだくじゃない。サプレスにロレイラル、メイトルパにシルターン。 それにまだ知られていない世界は無数に存在するだろう。 それならば声だけが似ている人間は五万といるのではないか。 さっき同時にギャレオとビジュの声もしたから、私の聞き間違いだった可能性もある。 これまでにもあいつのことは忘れようと努力はしてきたが、やっぱり初めて愛した──今も愛している男のことはそう簡単には忘れられなかった。 あいつは私からして見ると“仮現説(ドケティスム)”の様なものだったのだ、そう思えば幾分かは私も救われる。あいつの優しさ、あいつのバカみたいに他人を心配する優しい人間性。 それがたまたま私にはそう見えていただけなのだ、と。 でもこれで良かったのだと思う。 喧嘩別れなんていう最後は寂しいが、あいつには私みたいな意地っ張りで頑固者の軍人より、家庭的な女性の方が似合うだろう。 この二つの魔剣を本国へと運送する任務が無事に終わってくれれば、短い日数だが久し振りの休暇となる。 そこで何を思い出したのか、私は「ふふっ」と自嘲気味に笑う。 ふと船室から窓の外を眺めれば、レックスと出合った時のようなまだ夏の陽射しが色濃く残るその季節で──。 END. 目次 |
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