Dream ~The ally of~ 1



 ベッドの上に腰を下ろすと、そこには柔らかなシーツの感触があった。
 隣り合わせて寄り添う二つの身体。意識している。肩がほんの少し触れ合うだけで。
「ん………」
 その存在を確かめるようにすぐ傍にある身体に持たれかかる。大きかった。
 さほど背丈に差があるわけではないのに何故かそう感じられた。心が安らぐ。
「……いいかげん重いぞ」
「何言ってんのよ!失礼しちゃうわね」
 ぶっきらぼうに呟かれる言葉につい反発してしまう。他愛もないいつものやり取り。
 こんな当たり前の中にある確かな幸せ。それがなんとも愛おしい。
「あ………………」
 そんな内にポンと肩の上に手が置かれる。つられて顔を向ける。ほんのりと赤い顔。
 多分、自分も同じ顔をしているのだろう。胸がとくんと高鳴る。
「リシェル……」
 そっとこちらの顎に手を添えて、真っ直ぐに見つめながら名を呟いてくる。目を閉じる。
 そして待つ。次にやってくる優しい感触を。
「んっ……ちゅ……ん……大好きだよ。ライ」
 軽く交わされた口付け。その余韻に浸りながらリシェルはそう呟いた。



 ベッドに横たわるその身体。華奢なものだ。見慣れてはいても都度そう思ってしまう。
「なにぼーっとしてんのよ」
 感慨に浸るうちにかかる声。それはいつもと同じ調子で。
「見とれてたってわけ?やあねぇ。そりゃあたしが魅力的すぎるのがいけないんだけどさ」 
 そんな軽口を叩いてくれる。そこに心地よさを感じる。息が思わず洩れた。
「ちょっと……あんまりジロジロ見ないでよ……その…………」
 見る見るうちに朱に染まっていく表情。呟かれる言葉。
「まだちょっと…・・・恥ずかしいから……」
 ボソッと紡がれる言葉が耳の奥を通り抜けて脳に響く。返しの言葉が頭の中に浮かぶ。
 言わずにはいられない。素直に吐き出す。
「本当に可愛いよな。おまえって……」
「っ!?」
 言われた瞬間にユデダコになる。本当に分かりやすい。思わず苦笑する。
「そんなの当たり前じゃない!あたしが可愛いのなんてこれはもう宇宙が始まって以来の
 この世の真理なんだから。そんな決まりきったこと言うなっての!」
「はいはい。分かってるから少しは落ち着け。嬉しいくせに……」
「うっさい!うっさい!うっさぁぁぁいっ!!」
 わめき散らすリシェルを適当になだめながらライは肩を竦める。営みの始まりはいつも。
 こんな調子で変わらない。そんなマンネリズムがライにはこの上なく愛しかった。






「あっ……ふぁっ……」
 控えめな膨らみの先端。そこにライの指先が軽く触れた瞬間、リシェルは甘く喘ぐ。
 いつ聞いても愛らしい。もっと出させてみようとふにふにと刺激してみる。
「ひやぁ……はぁ……あふっ……意地悪ぅぅ……このすけべぇ……うぅ……」
 ほんのりと色付く乳頭。敏感な箇所を指先でくりくり弄られてリシェルは涙眼になる。
 構わず乳肉を解しながら突起を愛でる。その愛らしさに思わずむしゃぶりつきたくなる。
「ひゃふっ……吸うなあ……この馬鹿ぁ!変態ぃぃ!」
 どうやら意識よりも先に身体のほうが動いていた。口に含んで甘噛みする。舌先で突く。
 口の中に広がってゆく香り。リシェルの匂い。
(ほんとどうかしてるよなあ……オレ……)
 リシェルを堪能しながらライはひとりごちる。喘ぎながら罵ってくるリシェルの声。
 耳に入ってくるそれに思わず頷いてしまう。限りなく変態だ。ド助平だ。今の自分は。
(まあ、そんだけ好きってことなんだよな。こいつのこと)
 ライは目を細める。するとリシェルは涙眼でこちらを恨みがましく見つめている。
 その怒ったような泣き顔も可愛いと思ってしまった。苦笑してしまうと同時に確信する。
 こんなに我を忘れてしまいたくなるほど自分はリシェルのことが好きなことを。
「う~~~~~~」
 目に涙を溜めて唸ってくるリシェル。悪戯がすぎた。いかに埋め合わせをしたものか。
 ポリポリ頭を掻いてから行動に移る。非常にシンプルな動作。口を口で塞ぐ。
「んっ……うっ……んぐっ……」
 軽く交わした先ほどのものとは違って、ライは自分の舌でリシェルのそれを絡めとる。
 濃厚な接触。お互いの舌が柔らかな舌肉で包まれる。盛んに行われる唾液の交換。
「んっ……んむっ……ちゅ……んぅ……」
 顔をくすぐる鼻息がこそばゆい。触れ合う柔らかな唇。口の中で絡み合う粘膜と粘膜。
 息をするのも忘れて夢中に吸いあった。身も心も蕩けて一つになってしまそうだった。
「ぷはっ……はぁ……はぁ……」
 先に口を離したのはどちらだろうか。けれどキスから離れてもまだ二人は繋がっていた。
 お互いの口と口を繋ぐ唾液の糸。確かな繋がりに意識をとられていると。
「馬鹿…………」
 お決まりの台詞でリシェルは顔を赤らめる。その反応にライは感無量になる。




「んっ……はぁ……はふ……はぅ……」
 とくとくと胸の鼓動は高鳴っていた。リシェルは呼吸を整える。
(いつまでたっても慣れないのよね。これって……)
 待ち受ける身体は緊張に強張っていた。もう幾度も交わした愛する者との逢瀬。
 経験を重ねるごとにそこには新鮮な悦びがあった。大好きな人を気持ち良くできる。
 大好きな人と一緒に気持ちよくなれる。そんな尊い時間を実感しながらリシェルは言う。
「また鼻スピスピいってる」
「うっ!」
 荒くなった鼻息を指摘されてライは呻く。リシェルは続ける。
「ったく……あんたっていつもそう。エッチになるとケダモノになるんだから」
「しょうがねえんだよ……こうなるのは……」
 憮然とライは開き直る。リシェルは軽く溜息を吐いてから。
「ふふ♪でも許してあげる。それだけあんたがあたしに夢中ってことなんだからさ」
 にっこりと微笑んでそう言う。言われたライの顔は紅潮していた。
「浮気とかしたら絶対死刑だからね!」
「しねえよ!」
「あんたは永遠にあたしの家来で、頭の天辺から足の爪先まで全部あたしのものなんだからね」
「んなこと分かってるって。いちいち言うなよ」
 そう言ってライは少しばつが悪そうにする。するとリシェルは軽く微笑む。
「分かってるんならさあ……」
 そしてぺたりと密着。ライの体温を直に感じながら、リシェルは耳元で囁く。
「あたしもあんたのものだから……あたしの心も身体も全部……あんたのものだから」
 素面のときにはとても言えない台詞。だけど今は素直に言える。
「あんただけなんだからね。あたしにここまで言わせちゃうのって。責任とんなさいよ」
 最高に殺し文句だと自分でも思う。事実、言われたライは悶えかかっていた。
「好きにしていいから。あたしのことあんたの好きにさせてあげちゃうんだから。
 だからこうしてずっと……こうやってくっついていさせてね」
 止めの一言。密着した身体から伝わるリシェルの感触。ライの忍耐はついにぶち切れた。
「う……うぅぅ…うぉぉおお!!リシェルぅぅぅぅぅううううう!!!!」
「きゃぁっ!もうっ!いきなり発情すんなっ!この馬鹿ぁっ!」
 ケダモノと化したライは勢いのままにリシェルを押し倒すのであった。




「ふっ…はっ…あぁっ!ひあぁぁああ!!あっ……っぐぅぅ!」
 ぐちゅぐちゅと卑猥な音をたててリシェルの膣肉はライの肉根にかき混ぜられていた。
 はちきれんばかりに膨張した海綿。それはリシェルの胎内でさらに膨らんでいく。
 ぎちぎちに密着する粘膜。膣肉は男根をこれでもかと言わんばかりに締め付ける。
 それはもう一つの鞘だった。ライのものを受け入れることに特化した肉の鞘。
「リ…シェル……リシェルぅぅ!!」
 自分だけのリシェルを感じながらライは激しく突き入れる。繰り返される挿入。
 パックリと亀頭を咥え込む肉貝。そこから剥き出しの竿が膣内にずるりと滑り込む。
 滲み出る愛蜜は挿入を潤滑にする。そして入れた瞬間に脳を突き抜ける秘肉の衝撃。
 濡れた肉がライの肉を圧迫してくる。揉みくちゃにされる。リシェルの肉布団によって。
「リシェ……ルぅ……」
 リシェルに包まれて、ライは泣きだしそうな顔で至上の悦びを感じている。
「ふぁぁぁっ……あふっ……いいよぉ……ライっ!ライっ!!」
 そしてそれはリシェルも同じだった。胎内をぐちゃぐちゃにされながらリシェルは悦ぶ。
 それは感じることができるから。愛するライの存在を自分の身体全部で。
「あうっ……あぐぁぁ……あふっ……はぁぁぅぁぁ!」
 ピストンは一段に強まる。リシェルの膣肉は激しくめくられる。悶えるリシェル。
「やぁぁ…もっとぉ…もっと激しくしてぇっ!もっとあたしをめちゃくちゃにしてぇ!」
 よがりながらリシェルはねだる。もうすっかり愛欲の虜になっていた。ライに犯される。
 膣奥まで深く。激しく。ケダモノのように。おぞましいまでの歓喜にリシェルは震える。
 子宮が疼く。欲しがっている。ぶちまけて欲しい。何度でも。受け止めたい。ライを。
「ぅ…ぁ……リシェル……」
 襲い来る射精感にライは思わず呻く。呻きだけでリシェルは察する。
「いいよ。ちゃんと受け止めてあげるんだから。あんたを受け止めてあげるんだから!」
「くぅぅぅうう!リシェルぅぅ!!」
 そして鈴口はマグマのように火を吹く。白濁の奔流はリシェルの子宮を容赦なく叩く。

「ああぁぁぁあああ!でてるぅぅぅう!熱いのでてるぅぅ!!」
 逆流してくる熱い液汁。子宮を焼かれながらよがるリシェル。
「うぁぁ……いっぱい……おなかの中が白いドロドロで……いっぱい……」
 射精はしばらく続いた。膣内射精を施されながらリシェルはポロポロ涙を零す。
 それは勲章だから。愛する人を満たせたことへの。
「幸せぇぇ……あたし幸せだよぉ……ライ……」
 歓喜のあまり泣き出しながらリシェルはライに抱きつく。深く繋がったままの状態で。
「俺もだよ。リシェル、好きだ。愛してる!」
 ギュッと離さないようにライもリシェルをきつく抱きしめる。そして言う。
「おまえのこと何度でも抱きたい。おまえとずっと一緒にいたい」
 心からの望み。それをライは正直に告げる。リシェルは即答する。
「いいよ。何度でも抱かせてあげる。あんたの傍にずっとくっついて離れないんだから!」
 そう言って顔を近づける。交わされるキス。甘く濃厚な一時を堪能する。
「んっ………あは♪言ってるそばから大きくなってる……あんたの……」
 引き抜きもしないままで、リシェルの中でライは活気を取り戻していた。
「いいか?」
「いいに決まってるじゃない。いちいち聞くな馬鹿!なんてね♪あはは」
 軽快にかわされるやり取り。まだ始まったばかりなのだ二人の営みは。
「絶対、寝かしてやらねえからな」
「一丁前に言うじゃない。このケダモノ」
 こんな軽口のたたきあいが自分たちには相応しいと二人とも心から思う。
「好きだぞ。リシェル」
「愛してるわよ。ライ」
 言葉にしなくても分かりきっているお互いの気持ち。けれどあえて言葉にする。
 それは二人にとっていつもと変わらないあたりまえの時間。二人で営む幸せの時間。
 そんな当たり前の日常の中に飾らずある幸せをライとリシェルは満喫するのである。


つづく

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